2024/08/16 のログ
ご案内:「歓楽街」に里中いのはちさんが現れました。
里中いのはち >  
――『いやだから、ガチで見たんだって!忍者!マジモンのさァ!』

時は夕暮れを過ぎ、夜の街がいよいよと目を覚ます頃合いか。
今しも、長期休暇を謳歌する若者の一群がそんな話をしながら大通り過ぎていった。

さて、若者の口から飛び出た“忍者”その人は、その大通りから細い路地に入り込んで角を曲がった路地裏にて、精神統一の為の刀印を結んでいる真っ最中である。

配管や室外機、薄汚れたゴミ箱に野良猫。忍者。此処に今在るのはその位。
大通りの賑わいは届くが、何処か他人事のように余所余所しく路地裏を駆け抜けて消えていく。

里中いのはち >  
数日かけて島を巡り、凡その地理と学園だのの表立った概要は把握した。
そして、己が確かに異界に迷い込んでしまったのだという確信も。

それ自体は構わない。丁度与えられていた任務を終えたところであったのが幸いした。そも、何が何でも帰還せよという命は受けていない。

わけもわからずこの地に文字通り落ちてきた時は、わけもわからない侭ただ枯れ果てる迄荒野に在り続けるのが我が身の定かと思いもしたが。
偶然通りすがった少女と話す内に、なんとなくの流れで「まあ帰る術を探す努力くらいはするでござるか~」なんてゆるい指針を立てることになったので、その為の情報収集にひた走ったというのが、日ノ本に在る忍びの里、いの組八位を冠する――便宜上――里中いのはちと名乗るこの男の現状である。ニンニン。

「しかし……、」

ちらりと頭巾から唯一窺える墨色の瞳が室外機の上で大欠伸をかます野良猫を見る。

「面妖な世にきてしまったものでござる。どこもかしこも石だらけ、鉄の箱やら鉄の馬やらが駆け回り――極めつけは“これ”でござる。」

印を解いて懐から取り出す手のひら大の薄い板――道行く若者からちょろっと拝借した携帯端末。学生手帳である。

里中いのはち >  
人差し指と親指で上辺の角を摘まむように持ち上げる。画面は暗く、沈黙を貫いていた。

「にのじゅうであらばこの絡繰りも見事使いこなしてみせるのでござろうなぁ。」

里で変わり者と称されていたはらからを思い浮かべる。然し当然此処にはいない。
薄汚れているくせに毛並はやたらと艶やかな野良猫へ、「貴殿はご存知かな?」と問うてみるが、そっぽを向かれてしまった。
ふ、と頭巾の下で微かに笑む。

「手段を選びさえしなければ、ただ生き永らえることはできよう。
 然し、帰還の術を探るとならば……うむ、学園に籍を置く方が事は円滑でござろうな。あまり深く潜るのも面倒ゲフンゴフン……でござるし。」

(勝手に)借りた端末をプラプラと揺らしながら思案を巡らせる。

――考えるというのは酷く億劫だ。口内で溜息を噛み殺す。

ご案内:「歓楽街」にDr.イーリスさんが現れました。
Dr.イーリス > そっぽを向いたと思った野良猫が再び忍者の方へと視線を戻した。

猫「あなたが、お噂の忍者でございますね。ご存知とは、私に何かご質問でしょうか?」

猫がきょとんと小首を傾げつつ、少女の声を発する。
この猫、実はDr.イーリスが造り出したメカのにゃんちゃん。
イーリス自身は大通りで忍者の噂を聞きつつ、猫型ロボットを通じて忍者さんに声を発していた。

里中いのはち >  
とはいえ、だ。
なんとなくの流れであったとしても、口にしたからにはその為に動かねばなるまい。否、動かなければならないのだろうか? 多分、きっとそう。恐らくは。有言実行というやつだ。

「だが、調べてみるに時期がよくない。否、準備期間と考えれば、適した時機と言えなくもないでござるかな。
 ……まァ、結論を急くこともあるまい。道筋はひとつきりでなし。」

溜息の残骸を呑み込んだ口を開き、ぼやく。
――と、男の声に重なる少女の声。

「ッ!?」

さしもの忍びもぎょ、とする。瞬時に猫――青くも丸くもない、ちゃんと耳がある――型ロボットへ身体ごと向き直り、端末を持つ手とは逆の手を自身の背後へと。

少女の声は確かに猫――と男が思っているモノ――から発せられた。視線はそれへ定めた侭に、周囲の気配を探る。――近くではない。然し、遠くもない。

「……然り。拙者は確かに忍びの者。貴殿は物の怪の類でござろうか?」

よもや絡繰りなぞとは思いもせぬ。より注意して猫以下略を窺えば、ロボというからには生き物にはない駆動音なんぞは拾えるだろうか。

Dr.イーリス > 猫「ふふ。驚かせてしまい申し訳ございません。私は、というよりこの《ミケ三型試作機》は遠隔操作で動かしている猫のメカでございますね」

外見は紛れもなく猫。駆動音は静かであり、人の聴覚ではまず拾えない。超人的な聴覚をしているなら話は変わるかもしれない。
見た目がまんまねこちゃんという意味での猫型。あまり猫に見えないような青くて丸っこいボディはしていない。

猫「忍者さんは、これから学園に通われるのですね。私、すぐ近くにいますのでそちらに向かいますね」


としばらくして、イーリスが走ってやってくる。
《ミケ三型試作機》がイーリスの方に走っていき、その肩に跳び乗った。

「初めまして。私の事はDr.イーリスとお呼びください。しがない科学者です。近々使う予定の《ミケ三型試作機》の試験運用を行っておりました」

にこっ、と笑みを浮かべて自己紹介する。

里中いのはち >  
「めか? ……!随分と精巧な絡繰りでござるな。」

じぃと真っ直ぐに猫型ロボットを見つめていた男の口許が微かに何ぞを紡ぐよう。
そうして、驚きに墨色の瞳が見開かれるだろう。背後に回していた手を前へ。そうしたことで、少なくとも目に見えるような警戒態勢は解かれる。

「うむ? ああ、否、……あー、是。お待ちしているでござるよ。」

歯切れの悪い言葉を猫型ロボットは聞くだろう。
通おうかなーどうしよっかなーくらいの気持ちであったが、先程の独り言を聞かれていたのだと思うと否定よりも先に気まずさを覚えた。
一先ず、後ろ頭を掻いて少女の到着を待つことに。



程なくして路地裏へ現れたその少女を見遣る。ニコ!と、唯一頭巾から覗く瞳が笑って出迎えん。

「どくたぁいーりす殿。拙者は里中いのはちと申す。
 いやはやしかし、よもや絡繰りとは思わなんだ。すっかり騙されてしまったでござる。」

少女の肩にある猫型ロボットへ墨色を向けつ。

Dr.イーリス > ちなみに、《ミケ三型試作機》が発する声とイーリスの声は同じ声色。
歯切れの悪い忍者さんのお声を聞き、ふふ、と猫は声を上げて笑っていた。そうしてイーリスが現れて。

「いのはちさんでございますね。よろしくお願いします。そうですね、にゃんちゃんをモチーフして頑張って造りました! 造るのに、苦労しましたね。昨日はあまり寝てないです」

イーリスが猫と一緒にあくびをしていた。

「忍者さんという事は、ここで忍ばれていたのでしょうか。ちょうど、《ミケ三型試作機》も偵察みたいなものをイメージして試験運用していましたので、忍ぶ者同士の邂逅でございますね」

笑みを浮かべつつ、自身の肩に乗っているにゃんちゃんを両手で持ち上げた。
《ミケ三型試作機》は、じーっといのはちさんを眺めている。

里中いのはち >  
初手、少女の声が聞こえた際は眼差し鋭く備えていたものの、対する今はそんな姿は影も形もありやせぬ。
絵に描いたような山形のニコニコ笑顔での対面だ。

「なんと!であらば拙者が気付けぬのも無理なきことでござるな!
 此処が異界で助かったでござるよ。里であらば如何程に叱られていたことやら。」

大仰な動作で驚く。
シンクロする欠伸二ツに、「ふはは、寝不足は美容の大敵でござるぞ?」なぞと肩を揺らした。

「否とも是とも。此の世は拙者には眩しすぎる故、暗がりを求めて居たのでござる。
 此処ならば耳を欹てれば表の声も拾えよう?」

折しも、少女の背を若者の笑い声がやんわりと押すか。げらげらとした品のない笑い声だからこそ、そうと知れる程度に届く。
円らな瞳が此方を見て居ることに気が付いたなら、ひらりと手を振る。

「して、どくたぁイーリス殿は学園の関係者なのでござるか?」

先の話題を拾い上げ、未だ手に持つ端末を揺らして見せる。

Dr.イーリス > 「いのはちさんは、“門”を通って異世界から来られた忍者なのですね。帰れなくなり困っている……という事になるでしょうか」

心配げに、そう尋ねる。
この世界には、“門”を潜り抜けて異世界から訪れた結果、帰られなくなった者達が多くいる……。

「……お肌が荒れてしまうのは嫌です! し、しかし……メカを造っていると、いつの間にかに朝になっている事が多いのです……」

頭を抱えて悩んでいた。

「いのはちさんの世界は、真っ暗だったのでしょうか? 太陽の光が弱かったり、お空が常に曇っていたり、などしてあまり地上に光が届かなかった世界だったりとか?」

小首を傾げた。
眩しくて暗がりを求めるという事は、そのまんま暗い世界から来たのだろうかと想像する。

「そうですね、学園の生徒です。あまり授業に出ていませんが……。先程、学園に席を置く事は円満に出来そうと仰っておりましたし、生徒手帳も既に持っているようですから、いのはちさんは学園に通われるのですよね。学園で出会った際はよろしくお願いしますね」

授業にあまり出ていない、とは小声で言った。
だが単位を落とすと進級できないのは悩みどころ……。でも授業は嫌いなので出たくない……。