2024/09/13 のログ
ご案内:「歓楽街」にDr.イーリスさんが現れました。
ご案内:「歓楽街」からDr.イーリスさんが去りました。
ご案内:「歓楽街」に紅き機械ノ女王さんが現れました。
紅き機械ノ女王 > 落第街を出て歓楽街。

「はぁ……はぁ…………」

《紅き機械ノ女王》は、走り続けていた。
フードつきの白いローブを羽織っているのは、紅き文様を隠すためだ。
紅き文様で、不要に誰かを驚かせる必要はない。

先程までイーリスは『数ある事務所』地下の医療ラボで気絶していた。
ちゆきさんの紅き屍骸完全感染を治療しようとしてこの紅き機械ノ女王になり、そして治療は結局失敗。
紅き屍骸化の呪いによる苦痛で倒れてしまったのだ。

紅き機械ノ女王 > だが今は気合で走り続けている。

「……ぐ、ああぁ…………。薬……」

呪いにより苦しみに喘ぐ声。苦痛で両膝をついてしまう。
周囲では、イーリスを心配そうに見る目もあった。
注射器を取り出して、イーリスは自身の首筋に刺した。

「はぁ……はぁ……」

苦痛が和らぐ。
周囲の目は一点、イーリスがやばい薬をやっている人であるかのように蔑んだ目にかわる。
今投与した薬は、かつて王熊がイーリスにかけた呪いの苦痛を弱めるるための薬品の派生。

しかしである。王熊の呪いは単純に苦痛を弱めればよかった。
だが《紅き機械ノ女王》の場合は、薬品で苦痛を弱めると、同時に紅き屍骸としての力も弱めてしまう。
薬による阻害で、《紅き機械ノ女王》の元来の力を発揮できない。

それでも今は、出来る限り長時間、《紅き機械ノ女王》で居続けたい。

紅き機械ノ女王 > どうしてイーリスが《紅き機械ノ女王》で居続けるかと言えば、ちゆきさんに注入している《紅き機械ノ女王》の感染源を制御するためだ。
今は、ちゆきさんの完全感染を治すという方向で制御しているわけではない。ちゆきさんの元々あった感染源を出来る限り刺激しないようにする事で、ちゆきさんの殺害欲を出来る限り押さえようとしているのだ。
今はそれだけしか出来ない。遠隔による制御、しかも薬の投与で苦痛を押さえている状態の万全ではない《紅き機械ノ女王》では、ちゆきさんの感染源を浸食しようとする事自体できようはずもない。

ちゆきさんに注入した《紅き機械ノ女王》の感染源を取り除く事は遠隔の制御であっても動作もなくできるが、それはこの先のあらゆる可能性を潰してしまいかねないので控えたい。
《紅き機械ノ女王》の感染源とナノマシン、ちゆきさんにその二つが注入されているからこそ、イーリスがまだ干渉できる範囲にいて、ちゆきさんをほんの僅かでも助けだせる望みを残しているのだ。

「はぁ……はぁ…………」

息が上がりながらも走り続ける。

紅き機械ノ女王 > ちゆきさんがいる場所は、イーリスのレーダーがとらえているので迷わない。
なぜなら、ちゆきさんに注入したナノマシンがイーリスのレーダーに位置を知らせるからだ。

「ちゆきさんがいる場所は、禁書図書館……。私と会った時もちゆきさんは禁書図書館におそらく向かっていました……」

禁書図書館……。良い予感がするわけがない。
手遅れになる前に、間に合えばいい……けれど。

「ちゆきさんのもとに向かっても……私は、彼女を救う事は……できません……」

救う手立てなんてない。
分かっている……。紅き屍骸を研究してきたんだから……。

一瞬立ち尽くした後、再び走り出す。

ルビー山本 > 「よう、Dr.イーリス。こんな所で会うなんて奇遇なんだよねぇ。ケヘ!」

白ローブ姿でも、イーリスだと分かった。
元《常世フェイルド・スチューデント》のメンバーにして現《ネオ・フェイルド・スチューデント》の総帥、山本は電柱に持たれて風船ガムを膨らませつつ、イーリスに声をかける。

「そんなに急いで、どこにいくつもりだ? なんだよ、紅き屍骸になってんのかよ、あんた」

紅き機械ノ女王 > イーリスは立ち止まり、ルビー山本に顔だけ振り返る。

「ごきげんよう、ルビー山本さん。私は、悲しき運命を背負いし友を助けに行きます。あなたの事もいずれどうにかしたいと思っていますが、今はあなたに構っている場合ではありません」

急いでちゆきさんの元に向かいたい。
ここは歓楽街で人もいる。ルビー山本と言えど、下手な真似はしないはず……。

ルビー山本 > 「冷たいんだよねぇ! 今日は俺もたまたまあんたに会っただけだしここは人目が付きすぎるから、あんたを今すぐどうこうしようって話でもないけどね」

一度割れた風船ガムを再び膨らます山本。

「あんた、《常世フェイルド・スチューデント》にいた頃も随分と俺達を守ろうとして、つまらねぇ理想論掲げていたよな? 《紅き月輪ノ王熊》にかつての仲間を虐殺された事を忘れたか? ケヘ!」

ルビー山本は、イーリスを蔑むように笑う。

「偽りの救世主Dr.イーリス、あんたには何も救えねぇ。理不尽に反逆を、ギフトを得よ。何度も言う、あんたの時代は終わった。叶わねぇ夢ばかり見てねぇで、現実を見ろ」

紅き機械ノ女王 > 救えない。
ちゆきさんは、もう……救える手段がない……。
イーリスは俯いてしまう。

「分かって……ます……。分かってるんです……そんな事……ひくっ……」

イーリスは小さく嗚咽をあげてしまう。

ルビー山本 > 「泣くか? 俺の知っている姐さん(・・・)は本当にどこ行ったんだろうなぁ! 反吐がでるんだよねぇ!」

山本は、近くにあったごみ箱を蹴り飛ばした。
辺りに、中のごみが散乱する。

「消えろよ、泣き虫。あんたみたいな弱虫に反逆しようとしていた自分に腹が立ってくる!」

紅き機械ノ女王 > 「……ッ!!」

イーリスは顔をあげて、潤んだ紅と青のオッドアイでで山本を睨みつける。
その後、再び己が成すべきことのため、走り出した。

ご案内:「歓楽街」から紅き機械ノ女王さんが去りました。