2024/10/09 のログ
ご案内:「歓楽街」にリリィさんが現れました。
リリィ >  
音もなく降る細かな雨粒が、夜の街をしっとりと濡らす。
鮮やかなネオンが滲んでいく様をぼんやりと眺めながら――……

(おなか、すいたなぁ。)

そんなことを考えている。

ご案内:「歓楽街」にラヴェータさんが現れました。
リリィ >  
煌びやかな建物の隙間に立ち、行き交う若者たちへ瞳を向けた。
男も居れば、女も居る。笑ってたり、憤っていたり、様々な表情を浮かべている。

(おなか、すいたなぁ。)


その誰も彼もが、

―― “おいしそう”。


ひとの精気を糧とする種族としては極々当たり前の感情。
だが、まるで禁忌に触れてしまったかのように目を見開いては顔を逸らした。

「……?」

心臓が早鐘を打つ。
胸元を抑えては芽生えた衝動と其れを諫めるだれかの声に首を傾げていた。

ラヴェータ > 「どうかしたのか?」

胸元を抑える少女に背後から声をかけるのは黒い軍服に身を包んだ白い(獣人)
どこからか湧いて出たのか、先ほどまでは気配すら無かった筈。そこにあるのは影ばかり
その瞳に映るのは心配でも善意でもない、ただ興味。
こんなところでナース服の悪魔が雨に打たれている状況が気になったのだろう。

そんな狐だが、少女からすれば美味しくなさそうに見えるかもしれない。

「一先ずこれを貸してやる。そのままでは風邪をひくぞ」

身体を折って地面に触れたかと思えば、そこから傘を引っ張り出す。
そして開いた状態で差し出すだろう。

リリィ >  
内側で諫めるだれかの声が耳鳴りのようで酷く不快だ。

――ひとの精気を喰らうなんて。
――でも、“わたし”はそういういきものだから。
――喰らわずとも生きていける手段はあるのに?

「……だって、おいしいんだもの……。」

これは自問自答だ。
過ぎていく誰も彼もは唯の背景。此の場にいるのはこのポンコツだけ――

の、筈だったんだけど。

「っ、ぇ。」

間抜けな声が出た。
気付けば前のめりに折っていた身体が、弾かれたように真っ直ぐ伸びて其方を振り向く。
微雨にうすらと濡れて透けた瞳にありありと驚愕を宿してその姿を見た。

「わっ、え、ど……あ、ありがとう、ございます……?」

目を白黒させながら、半ば反射のようにその傘を受け取らん。
人のことは決して言えないことは分かっているが――軍服。
つい先程迄頭にあった内容が内容だ、気まずくって目を逸らしてしまった。後ろめたさが見て取れる。

ラヴェータ > そんな少女の自問自答は狐の耳にも届いていたが、一先ずは聞かなかったフリをする。
傘を受け取った少女を見て自分も傘を取り出し開く。
先ほど差し出したものと同じ、内側が黒く外が白い傘。

「どうかしたか?私が怖いのか?
突然現れたからか、影から物を取り出したからか、尻尾が生えているからか、軍服だからか」

その場で好奇心の視線を浴びせながら問う。
悪意も攻撃性もない、ある種純粋な瞳を向け続ける。

「なに、別に貴様を捕らえに来た訳でも責めに来た訳でもない。私はただの庶民であり一般人だ。
この服も趣味のようなものだ。
先ずはだ。視線は合わせなくていいが、どうして逸らすのかから教えてくれないか?」

尻尾を左右にゆっくりと揺らしながら問う。
傘で防ぎきれない雨水が白い尻尾を濡らせばすぐにやめた。嫌だったらしい。

リリィ >  
ふいと逸らした視線の先で、狐の尻尾が嫋やかに揺れているのを見た。
両手で握った傘のお陰で、我が身に雨粒が届くことはない。

「い、いえ、すこしびっくりしましたが……
 怖くは、ないです。」

傘を貸してくれたし、と、小声で告げる。
矢継ぎ早に向けられる問いに見えるのは好奇心ばかり。

此方を安心させる為だろうか。
自らの立ち位置を明確にせんと説明する言葉に、確かに安堵はしたけれど。
否、軍服が趣味だというのには、安心どころかくすと笑ってしまった。

「うふふ、趣味なら安心……ですね。
 ――……なぜ、と、言われると、……何故でしょう。気まずかったから、かな。」

お言葉に甘えて視線は先と同じく道を行き交う人々へ。
煌びやかな光の海を泳ぐ黒いシルエットは忙しなく過ぎていく。

「狐さんは、……好きな食べものとか、ありますか?」

ラヴェータ > 狐の軍服は元は職業を示す本来の目的通りのものであったが、今は違う。
別の服を着る事だって出来るのにそうしないのは、趣味だからなのだろうか。

何故か笑う少女に小首をかしげながらも話の腰を折らないために流そう。

「気まずかった、か」

相槌を兼ねて呟きながら「ふむ」と顎に手を添える。
人に見られていたと気づいて気まずくなることは多く、人それぞれだ。
何かしていたようには見えないし、余程おかしなことでも考えていたか、と思考を巡らせる。

「食べ物か。
そうだな、鶏肉が好きだな。食感、味、香り。どれをとっても素晴らしい。
ついでに炭酸も好きだ。あの口の中ではじける感じが癖になる」

涎が零れるなんてことは無い。
それでも顎に当てていた手が口元に少し移動している。
すぐに元の場所に戻ったが。

「逆に貴様は何が好きなのだ?何をよく喰らう?」

問われたからには理由があるだろう。
聞き返す。悪魔のナースは何を食うのか。案外病魔など食ってくれるかもしれない。

リリィ >  
ナース服と軍服が並んでいると、気が早すぎるハロウィンみたいだ。
時折通りからチラチラと細かな視線が投げ遣られるから、傘を少しだけ傾けて潜む。
とはいえ、まあ、当然ながら殆ど隠れることは出来ないんだけど。

「鶏肉、ですか? お揚げじゃないんだ。」

意外そうに末尾を高く持ち上げた。
狐=お揚げが好き。そんなイメージは漫画やアニメに毒され過ぎだろうか。

――そんなもの、顕現したての此のポンコツは触れたこともないはずなんだけど。


そんなことよりも、炭酸ときいて。
ぱちぱちと弾ける――……、

ごく、と、密かに喉を鳴らした。
首をゆるく振って雑念を散らす。

「わたしは……よく食べるのはバナナですね。というか、ほぼ毎食バナナを食べてます。
 やさしい方がくださるので、それに甘えていて。
 好きなモノは……、」

言い淀む。病魔は食べない。

ラヴェータ > 「お揚げ?この世界の宗教の神格のイメージだったか?
私はこの世界の神格ではないからな」

別に神格があるからといって神な訳ではない。
狐は歓楽街にはそれなりに顔を出しているから視線は殆ど気にならない。
とはいえ、魔法が使えれば隠してやっても良かったのだが。生憎使えない。

「ほう、バナナか。
甘くてうまいが毎食は流石に…飽きないか?」

少々引き気味。
イメージしてしまったのかお腹をさすっている。想像だけでも重たいようだ。

「好きなものは、なんだ?魂でも食うか?」

なんて、当たり前のように問いかけた。

リリィ >  
「お狐さまと言えばお揚げ、お揚げと言えばお狐さまと相場が決まって……あれ?」

はたりと瞬き、首を傾げるが、次の瞬間には「まあいいや」って浮かんだ疑問を放り投げた。
細かいことは気にしないから、此処まで一部分が肥大化したのかもしらん。

ともあれ、だ。

「この世界の、ということは…別世界では神さまだったりするんでしょうか。」

前触れもなく突然あらわれたことや、影から傘を取り出していた姿を思い浮かべながら。

「腹持ちもいいし、栄養もあるし、バナナはいいものですよ。
 まあ、ずっとそればっかりはあの、少し……しょっぱいものが食べたいなぁと思ったりもしますが。
 でも、わたしお金もってないから、厚意に甘えるしかなくて。」

眉を下げての仄かな困り顔。
が、継ぐ句にぎょっと目を見開いて狐の少女を見遣る。

「た、魂なんて大それたものは!
 ただ……ただ、あの、……せ、精気……的なものを……。」

ごにょごにょ……。

ラヴェータ > 「神ではないが、まあ近しいものではあるな」

俗にいう神獣というものだ。
別世界の神格(ルール)である故、この世界では少々歪んでいるが。
それでも特定条件下で突然現れることぐらいは出来る。
傘は仕舞ってあっただけだ。

「なるほど、精気か。
だからそちらばかりを見ているのか」

通りの方に視線を向けて、少し間を開ける。

「貴様なら精気を食おうと思えばそう難しくも無いと思うが。
何故そうしない?」

嫌味でも悪意でもない。
純粋に尋ねる。
目の前に食料が溢れている状況で何故こんなところに座り込んでいるのか、と。
食べに行かないのか?と。

リリィ >  
「わぁ、すごい!
 ……握手とかおねがいしても……?」

そわ、としながら少女をチラ見。
ミーハーな顔が傘と前髪の下で見え隠れ。

ごにょごにょしたりはしゃいだり、
かと思えばまた威勢を呑んでおろおろしたり。
仕草が所作が忙しない。

「な、何故って……だって、それは“よくないこと”でしょう?」

その声に含むところがないからこそ、怯んだように応ずる声が微かに上擦る。

「加減をすれば大事には至りませんが、
 逆を言えば、加減しなきゃ……こ、ころして、しまいますし……。」

そしてこのポンコツは、その加減が頗る下手だった。
なにより、

「それに、精気を頂く為には、することをしなければならなくて……
 そーゆうことは、望み望まれすることで……だから、あの、えっとぉ……。」

傘の柄を抱くようにして肩と腕で固定し、
空いた両手はつんつんと指先を合わせて手慰みめく。
声も身体も小さく窄まっていく。

ラヴェータ > 「その程度なら構わんぞ」

握手を求められたのは初めてだ。
狐もすこし嬉しそうに握手を差し出そう。

「そうか?」

上ずった声に小首を傾げる。
続けて話を聞く。

「ふむふむ、そうかそうか」

何か分かったように頷きながらも、再び顎に手を当てて逡巡。
少女の心境には僅かばかしの理解を示しているが共感の予兆はない。

「まず、悪い事とは思わんな。
生々しい話にはなるが、精気を対価にしてでも貴様とまぐわおうとする輩はいるだろう。
そういった連中を見つければ取引が出来る。そうなれば問題ない話だろう?」

加減が下手だとしても、まあそこは事前に承諾させる部分だ。

「それよりはそうだな。貴様はそういう種族だと思うのだが…
苦手なのか?中々に珍しいな」

ふむ、とその瞳を見つめて。

「これまでどうしてきたのだ?精気を食わずとも生きていけるという訳でもないだろう?」

リリィ >  
「! やったぁ、嬉しいです。」

破顔し笑う顔は、言葉通り嬉しいといった様相で無邪気に輝く。
差し出された手を、両手で包むようにして握ったら、上下に揺らして握手。
白くて細い指は、ひんやりとしたつめたさを伝えるだろうか。

堪能したらそっと解いて、「ありがとうございます」と赤らめた頬を柔らかく崩すのだった。


さてさてその後のことである。
握手で上向いた気持ちもあってか、気まずさよりも戸惑いと恥じらいが声に仕草に現れる。
或いはそう、自身とは違いひととは明らかに違う価値観の下、
責めるでなく、共感するでなく、淡々と聞いてくれるからこそ
初対面にもかかわらずこうして内側を吐露することが出来ているのかもしらん。

「わ、わるいこと、じゃ……ない?」

ぱちぱちと薄いイエローの瞳が瞬く。
直接的な表現に顔を真っ赤に染めあげて俯く姿を見て、これが淫魔であると断ずる者が如何程いるのだろうか。

「と、取引、ですか?」

望み望まれする行為を、取引と言ってのける狐の少女の方がよっぽどらしい価値観を持っているに違いない。
取引、取引……と、小声で何度も反芻し、飲み下そうとしているポンコツよ。

「え、えぇ、はい。淫魔です、いちおう。
 だけど……そうですね、苦手……だと、思います。
 恥ずかしいし、やっぱりそういう行為は想いが合ってこそ、というか……。」

初心な生娘が如く思想を零す。とことん種族と合わぬ性質を持っている様子。
ただ、

「でも……満たされるんです。知ってしまったから。実感、してしまったから……わたし、
 ……――わたし、……は、」

何処か譫言めいた言葉は続かない。
茫洋とした瞳を人波へと向ける。

――はたり。

「あ、……え? これまで、ですか?」

きょとん。

「これまで……わたし、は、ええと……?
 ……嗚呼、そう、そうだ……ばななです。バナナを食べていますから。
 バナナは腹持ちがよくて……栄養がまんてん、なので……?」

ラヴェータ > 握手に喜ぶ少女の様子に狐もすこしばかし笑みを浮かべる。
狐は献身的ではないが、それでも喜ばれると嬉しいものだ。
手の冷たさは少しばかし心配になるが、後で鶏肉料理でも奢ってやれば暖かくなるだろうとか考えている。

「ああ、そうだ。襲って奪うならまだしも、取引の上でなら悪い事ではないだろう」

淫魔とは違ったかもしれないと少し考えながら話す。
これはあくまでも社会のルールの話だ。これを縛る法はあれど、価値の交換自体は決して悪い事では無い。

語る少女に「ふむ…」と思考を巡らせる。
この狐に恋愛的感情は殆どない。人の形をとってはいるが本質的には獣なのだ。
人の世にある以上人の道理は知っているが共感出来るかは別の話。
だから少女の譫言も殆ど共感出来なかった。

「まあ通常の食事で生きていけるなら一先ずそれでいいだろう。
買う金が無いというのなら委員会街の方へ行くと言い。仕事の斡旋があった筈だ。
今日は私が鶏肉料理でも奢ってやろう」

簡単な部分から結論を出す。

「想い合う相手でないと嫌というのなら、作ればいい。
信頼出来て、安心出来る。傍に居て欲しいと思える存在を見つければいいではないか」

簡単な事のように言ってのけるが、自分に出来たのだから出来るだろうなんて軽率に考えている。

「そうすれば万事解決だ。満足に食事が出来る」