2024/11/15 のログ
ご案内:「歓楽街」に橘壱さんが現れました。
■橘壱 >
常世学園 歓楽街。
学園都市の不夜城と呼ばれる眠らない街。
学生街と比べると全体的な浮ついた雰囲気は、
眩いばかりのネオンライトが雄弁に輝いて語っている。
昼夜問わず騒がしく人の声が聞こえるこの街で、より騒がしく喧騒が起きていた。
歓楽街の一角、とある雑居ビルが何よりも輝いている。
正確には、"燃えている"。きらびやかな輝きに乱反射し、
煌々とした炎が夜空に向かって登っているのだ。
周囲には各種委員会が忙しなく救助活動をしていたり、
辺りの島民、生徒が野次馬としてわいわいがやがや騒いでいる。
こんな事件でも、一部の人間にはお祭り騒ぎと変わらないらしい。
そんな最中、雑居ビルの屋上に影が降り立つ。
土煙と僅かなコンクリートの破片を撒き散らし、
その中から現れたのは蒼白の機人。
『……目標ポイントに到達。システムに異常なし』
機人の奥、装着者の少年、橘壱が呟いた。
歓楽街で火災発生との事で、現場に急行した風紀委員だ。
モニターにはビル内に取り残されたであろう生体反応、
そして、魔力反応らしき計器が酷く反応している。
『火災の原因は魔道具か……?
ともかく、行動を開始します』
<Main system engaging combat mode>
無機質な補助AIの声とともに、青白い一つ目が光った。
■橘壱 >
右上腕部かっら伸びる青白いレーザーブレードを屋上に突き立てる。
出力を抑え、溶接するかのようにぐるりと円を描き、内部に侵入。
降り立ったそこは、ローションマットに浴槽めいた個室。
おそらく、そういうお店らしい。頭部の奥で顔をしかめた。
ただ、既にそこら中火の海と呼ぶに相応しく、
鋼鉄の鎧がなければ今頃真っ赤に燃え上がっていただろう。
「しかもよりにもよって最上階かよ。
高級そうだし、VIP的な場所なのか?」
雑居ビルの中にあるのも珍しい事じゃない。
何でも、いい店を行った"流れ"で来てくれるとか。
モニターに映る表面温度に気を配りながら、
腰部にマウントしたノズルを構え、引き金を引く。
発射口から飛び出すのはゲル状の最新式消化液。
低温と窒息効果により、より素早く消火作業にあたれる代物だ。
まるで何処ぞの奇跡の如く、火の海もこの通り真っ二つだ。
「外でみるよりも火の手が上がってるな……。
崩落も……時間の問題か、急がないとな」
モニターに表示される予定作戦時間を一瞥し、
メインブースタが青白い炎を吹き出し地面を滑走する。
■橘壱 >
左腕部に装着されたタンクからごぷりと消化液が揺れる。
積載量の都合上、液体の容量には限度がある。無駄打ちは出来ない。
だからこそ、このAssaultFrameなのだ。
表面温度こそ高くなってるが、此の程度問題ない。
全域対応の汎用性は、伊達ではない。だからある程度の熱は、突っ切る。
『生体反応は……この先か……!』
火の粉を撒き散らし、蒼白の機人が扉を蹴り開ける。
店内の"個室"で諦めの表情をしていた女性と客。
周囲に上がる炎に消化液をぶちまけ、背を向けるように膝を付く。
『安心してください、風紀委員会です!
さぁ、此方に乗ってください。少し揺れますけど、我慢です!』
Fluegelの背中に背負った大型コンテナが展開される。
救助用の耐戦地用のシェルターコンテナだ。
移住性はともかくとして、この炎の海でも頼りがいのある耐性だ。
すぐさま二人をコンテナ搬送を確認すれば、すぐ立ち上がる。
此処からはスピード勝負だ。ノズルを構え、床を滑走する。
だが、必要以上の破壊行動は全体の崩落を招く。
『最短ルート計算で……突っ切る!』
消火活動と救助活動を最短で。
モニターに表示されるルートを的確に、
炎の海を鋼鉄の翼が切り裂き直進していく。
■橘壱 >
部活動帰りの男子生徒。
ガールズバーの蜥蜴のおばちゃん。
飲食店のコワモテの青肌のおっちゃん。
改めて、此の島の人種の多さには驚かされる。
なんだかんだ10階建てのビルの3階まで降りることになった。
『生体反応は……此れで全部か。
逃げ遅れた人はいなさそうだけど……』
丁度おっちゃんを助けた飲食店だ。
居酒屋らしい。すっかり火の海が上がって面影はない。
辺りの椅子やら何やらはゲル状の消化液にまみれて炭になっている。
背中のコンテナはややすし詰め状態で色々聞こえてくるが、
命あっての何とやらということで我慢してもらおうしか無い。
『後は此の人達を送り届ければ……ん?』
調理エリアの方から魔力反応。
一つ目が青白く輝くと、カメラが捉えた正体は蜥蜴。
全身から炎を纏い何処となく弱った姿がモニターに映し出される。
『火の精霊……?
祭祀局や図書委員会には……登録されてない……?
おいおい、違法飲食店じゃないか。火事が起きたのも、これか』
熱源や炎の出回るルートからしても、出荷元に違いない。
モニターに吐き出した溜息はやや重苦しい。
ご案内:「歓楽街」にイヴリィさんが現れました。
■イヴリィ > 「あらあら、盛大に燃えているわね」
その背後から響くのは聞き慣れぬ、耳慣れぬ童女の声。
火の海の中でも涼し気に佇む童女が一人。
金色の髪を炎が孕んだ風になびかせながら立っていた。
その緋色の眼は鋼の機神と弱々しい炎の精霊に向けられており。
「ちょっと貸してあげたけれどまさか扱いそこねるなんてね。あーあ、もったいないじゃないの」
その声は裏腹に愉しげに弾んでいて。
■橘壱 >
無論飲食店を出すというのはそれなりの手続きが必要だ。
地形や場所によって出せない店も使えない道具も存在する。
この変容した世界では、こういった魔術やそれに値するものを使う際も、
当然ある程度の認可が必要になってくる場合もある。
古来より火は、生活の助けになるが、使い方を間違えれば、御覧の通りだ。
鋼鉄の足音を響かせながら、火の精霊に手を伸ばす。
『……もう大丈夫。助けに来たよ』
穏やかなノイズ混じりの声音。
疲弊した様子の火の精霊も壱の様子を悟ったらしい。
おずおずと数匹の黒い体色をした蜥蜴がその手元に集まった。
瞬間、モニターが赤く染まる"DANGER ZONE"。
表面温度が一気に危険域に到達したようだ。
鳴り響く<ALERT>の音に、思わず苦笑い。
『流石は火の精霊って事か。流石に長くは持ってられないなぁ。
……此方Fluegel。要求対象全員保護。此れより帰投します』
任務完了。建物が倒壊する前に脱出だ。
そう思った矢先、"新たな反応"が突如現れた。
サブカメラが映したのは、金髪の少女。
要救助者……の、雰囲気はしていない。妙な異質さだ。
『この火災に巻き込まれた人……って、雰囲気じゃないな。誰だ?』
振り返り、一つ目が少女を見据える。
■イヴリィ > 「あら? 私は私の貸してあげた火の精霊を回収しにきたのだけれど」
す、と指先を回収されたであろう精霊に向けて。
けれど、と面白そうに童女は笑う。
「思ったよりは派手に暴れてくれたわ。けれどもう少しおもしろくなった方がよかったのだけれど」
とん、と言う音をあげて、大地につま先をつける。
緋色の瞳は細められる。
「機械……だったかしら。無骨に過ぎて好みではないのだけれど」
けれど、けれど、その緋色の瞳は。
まるで……否、これは正しく。
獲物を狙う狩人の眼差しであった。
「少しは楽しませてくれるかしら人間(ヒューマン)。」
■橘壱 >
くるる、と鳴き声を上げると火の精霊が離れて、少女の下へ。
精霊自体に罪はないが、成る程。何処から仕入れたと思えば彼女か。
気配や雰囲気からして、普通の島民という感じはない。
モニターに照らされる壱の表情も、自然と険しくなった。
『その口ぶり、初めからこうなる事がわかっていたみたいだな。
彼等は怯えていたぞ。店主が何かしたと思ったけどまさかキミが……』
そう口にした矢先、少女の気配が変わる。
獲物を刈り取る、獣のよう気配。背筋に嫌な悪寒が走る。
『よくもまぁイヤなタイミングで……!』
こういう相手は、正直言って嫌いじゃない。
だが、今は救助活動中だ。状況が違う。
即座に外の委員会に避難信号、風紀委員会へ救助信号を送る。
科学の力はあっという間だ。漫画だったら燃える展開だと言うのに、
自分で遭遇するとこうも厄介なのか。嫌になるな。
背中の救助コンテナも……外すわけにはいかないな。
『さぁね、少なくとも退屈はしないだろうさ……!』
青白い一つ目が光り輝き、無機質な光が少女を睨む。
■イヴリィ > 「あら。火霊を欲しがったのは彼ら。
扱いを間違えたのも彼ら。
元凶は私だけれど、原因は私じゃないわよ」
火霊は童女の下にやっていけば霧散していく。
否、違う。
これは――――本来の主の下に帰って元の力を得たと言うべきだ。
その背に火竜の如き威容を背負い、童女は黒き翼を広げる。
「じゃあまずは弾力の確認からね」
その言葉ひとつ、つま先が大地を蹴る。
ただの一足、けれどそれは物理法則を超越し、一瞬で音の壁を突破し、弾丸の如く飛来する。
ただの拳一つ、染みのない白い柔肌。
けれど、何故だろうか。
ああ、一撃もらえばそれだけで装甲は陥没し、えぐられ、臓腑ごと引きちぎられるかもしれないと言う恐怖感。
それは歴戦の勇士である少年だからこそ感じた直感、それに紛れもない。
■橘壱 >
『そうかも知れないが、わかっててやったな?』
何事もそれは使用者に依存するとは言え、
ハッキリ言って見た目だけでも素行の良い人物とは言えない店主。
遅かれ早かれ、こうなることがわかっているものの口ぶりだった。
間髪入れずに、頭部内に鳴り響く<ALERT>音。
『(──────来る!)』
弾丸の如く突き出される拳。
炎を巻き上げ迫る少女の体を、瞬間加速で回避する。
電磁バリアが僅かに掠り、機体の衝撃が伝わった。
案の定、思っていた通り受けるのは拙い。
救助は背にしたままだが、守るためになりふり構っていられない。
『仕方ない……!』
本来風紀委員の本懐は殺してはないが、やむを得ない。
消火用のゲル液を牽制として噴射し、両肩部が開けば光弾が発射される。
内蔵兵器のパルスミサイル。エネルギーの塊だ。
着弾すれば爆発を起こし、周囲の物を分解する破壊が巻きおこる。
■イヴリィ > 「ええ、もちろん。
わかっててやったわ。
もうちょっと派手にしてくれると思っていたのだけれど」
想定の範囲内の出来事ね、と付け加えた。
ヂッ、と言う音をあげ、拳が電磁バリアをかすめた。
その白磁の肌がパルスに焼かれ表面が薄っすらと焦げる。
しかし、瞬きもせぬうちにまるで逆再生したかのようにその焼け跡は再生した。
「あら……避けられてしまったわね。
別に受け止めてくれてよかったのに。
そして、なるほど、機械だからこそのって感じの武装よね」
吐き出されたゲル液は足元から伸びた影が吸い込むように吸収した。
しかし、後に吐き出されたパルスミサイルは回避する様子も見せず。
着弾し、分子分解を発生させるそれを童女はまるっと受けた。
手足が消し飛び、血すらも漏れない。
ほぼ確実に行動不能に至るほどのダメージ。
しかし、それも表皮の焼け跡と同じように再生した。
否、それは元から定められた形しか保てぬような異常だ。
「ええ、痛いわね。痛くて泣いちゃいそうだわ。
男の子なのに優しくないわね、デリカシーがないとかよく言われない?」
火竜を背負ったまま、こんこん、とつま先が大地を叩く。
同時、鋼の機神に追従するもの。
すなわち――影が蠢き、鋭い槍となって射出された。
■橘壱 >
バリア越しでも衝撃は充分伝わった。
直感でもある。直撃?冗談じゃない。
生憎、戦いたいだけであって死にたがりではないんだ。
『救助者がいなければ受けて上げるんだけどね……!!』
が、軽口を叩くことは忘れない。
どんな時でも笑ってられるのが一流の装着者だ。
ニヤリと口元に笑みを作りながら、メインブースターを吹かし後退。
崩落時間を早めてしまうが仕方ない。無遠慮に壁を突き破り、
炎と瓦礫を撒き散らし店を飛び出した。戦うには、狭すぎる。
『(にしても、あのスピードにあの再生力……不死者の類か?
なんであんなのが此処にいるんだ?まったく、災害の裏にヘンなモノを釣れてきやがって……!)』
後で取り調べの時文句言ってやるぞ店主。
全く応えていない様子ですぐさま此方の動きに追従する少女。
燃え盛る炎の海を並行飛行と来ていたら、
足元から熱くて暗い槍の雨だ。
『痛くもなさそうなのによく言うよ!
そういうキミは、見た目以上におしゃべりなんだ…な!』
即座に旋回しながら影の槍をスレスレ回避。
電磁バリアが乱れ、装甲が僅かに揺らぐ。
後ろの救助コンテナから救助者達の悲鳴が漏れ聞こえた。
それもそうだ。こんな高速戦闘を続けていたら、彼等が持たない。
早く振り切るしか無い。右腕から伸びる青白いレーザーブレードを、躊躇なく少女へと振り切る────!
■イヴリィ > 「あら、連れないわね。
もう少し付き合ってくれてもいいのよ」
壁を突き破り空に躍り出たのを追うように翼を羽ばたかせて。
そして空中に出たのをいいことに、その笑みは深まる。
「狭いところから広いところに出たのだもの。
めいっぱい遊んでくれるってことよね、ナイトさま?」
その翼が虚空を打てば、再度音の壁を飛び越えて。
それどころか、物理法則を無視して直角、鋭角にジグザグ軌道を描き。
人類がこんな動きをしたら慣性でイカレてしまうだろう。
なのに、この童女は涼しい顔をしたまま、ジグザグ軌道で少年の駆る鋼の機神に迫る。
「あら、おしゃべりでもいいじゃない。
言葉は人類の編み出した至宝だもの」
けれど、眼の前の童女は、至宝と言いながら。
訴えかけるのは暴風雨のような暴力ばかり。
周囲を包囲するように飛び回りながら無数の火槍が背負った火竜の威容から放たれる。
それは彼の360度、逃げる場所余さず残さずに計算し尽くした軌道で襲いかかる。