2024/11/16 のログ
橘壱 >  
燃え盛る屋内は徐々に軋みを上げ崩れ始めている。
AFのパワーならこのまま振り切って問題なく屋外に出れる。
だが、避難自体が完了していない。外は野次馬だらけだ。
二次被害を出すわけにもいかない。モニターに表示される無数の状況。
救助者に耐えられるギリギリの軌道で活路を見出す。

『(崩落ならこのコンテナなら耐えられる。
 この装備で出来ること……、……いや、もしかしたら……)』

一か八かだ。青白い炎をメインブースターが吹かし、急上昇。
そのまま天井を突き破り、少女とともに移動する形だ。

『(なんて無茶苦茶な軌道だ……!?どうなってる……!)』

『生憎と、エスコートはしてあげるけど遊ぶ時間は一瞬だ。キミこそ付いてこれるのかい?』

此方が最高速を出せないことを差し引いても凄い機動力だ。
だが、良い。付いてくれるのは凄くいい。
このまま目標ポイントまで一直線だ。
炎と瓦礫を鋼が風切、ポイントまで──────……。

『……!』

相手の行動のが速い。
燃え盛る火災とは違う、文字通り全方位から炎。
否、火槍と言うべき鋭い殺意が飛んでくる。
だが、この距離なら届くはずだ。蒼白の装甲が僅かに展開し、
電磁(パルス)バリアの青緑のエネルギーが周辺に迸る。

『──────Reject armour(リジェクトアーマー)、機動!!』

瞬間、全ての視界を光が埋め尽くす
大部分のエネルギーを電磁(パルス)バリアに宛てがい、
本来防御兵装としているエネルギーを全放出する大技だ。
破壊の坩堝が火槍を薙ぎ払い、一瞬にして周囲を瓦礫や炎ごと吹き飛ばす。
雑居ビルのエリア一つ吹き飛ばすこと用意なパワーだ。そう、天井を抜くことも。

力の本流に合わせて、更に大量の蒸気が互いの姿を隠すことになった。
その正体は、抜けた天井から溢れてきた大量の水。
上部の店は『海鮮処「たみや」』。新鮮な魚介類を生簀から提供する店だ。
当然、店の大部分は水だ。それを見越し、攻撃と視界を遮る一手を打ったのだ。

イヴリィ > 「あら、そうなの。
 それじゃあ一瞬で決めてくれるのかしら、ナイトさま?」

そう言った瞬間、閃光が視界を覆い尽くした。
同時に放出された電磁パルスが自身の身を焼いた。
だがそれはどうでもいい。
痛みは悦楽へ、傷はどうせすぐに戻る。
故に、その攻撃と防御の一撃は彼女にとっては無意味だ。
しかし、その覆い尽くす水蒸気はだめだ。
暗い場所でもよく見えて、熱を見通すその眼差し。
故に並大抵の目眩ましは通じない。
だが同時に膨大な熱量を吹き出したその目くらましは彼女の視界を覆った。

「――――小癪な真似をしてくれたわね」

魔力を圧として解き放ち、その水蒸気を放つ。
だが、逃げることに徹した鋼の機神にとってその数秒は逃げるに十分だったろう。

橘壱 >  
ご推察の通り、此れは逃げの一手だ。
不死者(アンデッド)と思わしき相手を、
此の装備と救助者込みでは迎撃は不可能だ。
幾ら戦いたいからと言って、職務は放棄できない。

『ふぅ……何とか撒いたか?』

雑居ビルの壁をブレードで切り飛ばし、ネオンライトに照らされる。
あれだけ周囲の委員会関係者が言っているのに、野次馬が減らない。
ある意味歓楽街らしいと言えばらしいのかもしれない。
地面に着地する頃には、周辺にはヘリや消火隊が到着している。
此れだけの数だ。彼女も外には簡単に出れないはずだ。
一息つくと同時に、コンテナを背から下ろした。

『しかし、あの子は一体何者なんだ?
 あんな力を持っている奴が此処にいるなんて……』

此の島にはああ言う怪物がいることは知っている。
彼女だけじゃない。常々色んな者たちがいる。
だが、こんな場所にまでやってくることは滅多にない。

『次会う時は、もっとおもてなし出来ないとね』

徐々に消えていく炎。夜空に立ち上る黒い煙。
そんな光景を尻目にしながら今日も夜が明けていくのだった。

イヴリィ > 「――――のがしたわね」

まぁ、いいわ、と呟いて。
それなりに楽しめた。
今宵はそれでよしとしよう。
燃え盛る炎の中、自身の影に潜れば。
その身はどこかにへと霞み消える。

影を使った転移魔術だ。

そうして逃げ去れば彼女がいた痕跡はすべて溶け落ちたように消えていき。
あとには火災現場と、機神が残した破壊痕のみが残る。
彼の残した報告とは奇妙な不一致が残されるであろう。

まるで童女がそこで彼と遊んだのだと、逆に刻み込むかのように。

ご案内:「歓楽街」から橘壱さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」からイヴリィさんが去りました。