2024/06/01 のログ
ご案内:「落第街 崩落ハイウェイ」に橘壱さんが現れました。
橘壱 >
夜の月明かりが雲に陰る落第街。
崩落したハイウェイを爆走するのは黒塗りのバン。
法定速度に縛られないほどに速度を上げるバンを補足するように空から降り注ぐ明るすぎるライト。
決してそれは月明かりではない。空を滑走る"蒼"から出すフラッシュライトだ。
青白の炎を背中のブースターが排熱し、夜雲を切り裂く鉄の蒼白。
冷たい鉄のパワードスーツ、AFの姿だ。
胸部のスポットライトはピタリとしてバンを離すことはなく、追従していく。
『────そこの車。早く止まった方が良い。
風紀委員会から警告だ。もう逃げられはしない。大人しくしろ。』
鋼鉄の奥からくぐもった少年の声が、バンへと警告を出す。
全身の鋼鉄に身にまとった風紀委員、橘壱。
歓楽街にて、違法薬物を表へと売ろうとした売人、及び違反生徒の追撃を任された急行した次第である。
全身から感じる高速の衝撃をヒリヒリと感じながら、ヘルメットが映す液晶の前で笑みを浮かべていた。
個人的には、抵抗してくれたほうが非常に嬉しいのだが…──。
橘壱 >
胸部ライトが捉えている限り、逃がしはしない。
乗用車程度の速度では、決してAFの速度からは逃げられない。
だが、ライトの中にいた黒塗りのバンは、明かりがあるにも関わらず文字通り"闇に溶けていく"。
そう、忽然として消えてしまった。少年は困惑ではなく、ほう、と感嘆の声。
『異能か?改造車か?どっちにしろ、僕とFluegeleからは逃げられない。』
<main system engaging scan mode>
ヘルメット内に響く電子音声とともに機体の全身から円状の光が一瞬で広がる。
対異能者、人外用のスキャンソナー。こういう連中をあぶり出すのに最適だ。
モニターに無数のデータが表示される中、キッチリとバンの姿が表示される。
ニヤリと笑みを浮かべると、腰にマウントされたライフルを引き抜いた。
『────警告はした。』
実力行使だ。"望んだ展開だ"。
引き金を引くと同時に青い閃光が宵闇を切り裂く。EMPライフルだ。
放たれた電磁波に殺傷能力は無いが、機械には甚大なダメージが入る。
青い稲妻が見えないバンを円状に包み込み、制御を失った結果横転。
ギリギリとアスファルトを削り、漸くボロボロの柵にぶつかって横転した。
相手は犯罪者だ。抵抗する以上は、怪我をさせてでも拘束する。初めからそういう気概だ。
強引にバンを引き止め、Fluegeleが大地へ降り立つ。
瓦礫を巻き上げ、バックパックのスラスターから白煙が排熱された。
静寂の一瞬。
『……終わりか?』
橘壱 >
その呟きは文字通り落胆だった。だが、すぐにでも杞憂だということを教えてくれる。
バンの扉が轟音とともに夜空へと高く舞い上がった。同時に反り立つ大きな影。
その正体は樹木だ。瞬く間にバンを苗床にしたかのように周囲を生い茂る緑の数々。
流石にこの程度で伸びてはくれないようだ。ありがたい。落胆がすぐに笑顔に代わり、スラスターに火が灯る。
『そう来なくちゃな。この程度でくたばるなら、落第街じゃやっていけないだろうしな。』
仮にも向こうは落第街を根城にしている違反生徒。
有象無象ならまだしも、それなりのシノギを行っていけるのは何かしらの実力がなければ生き残れない。
表社会は、自身を守ってくれる秩序なんてありはしないのだから。
即座に地面にいるのは危険と判断し、再び空へと舞い上がるFluegele。
バンの中から出てくるのは緑髪に全身のバリバリのタトゥーをした女性。
どうやら、連中のボスのようだ。仲間は仲良くバンの中か、戦闘力の要は彼女らしい。
女は殺意に目を見開き、片手を掲げるとドロリと全身から緑の液体が滴っていく。
それらがアスファルトを侵食し、無数の木々が生い茂っていく。
その殺意を表すようにツルがトゲのように夜空へと突き出た────!
『────面白そうな異能じゃないか。』
植物を操る異能。いや、生成さえ出来るようだ。
薄青いモノアイが怪しく光り、機体を旋回させて回避する紙一重。
僅かに掠めた装甲が容易く切り裂かれた。直撃すれば、自分ごとの威力だ。
『綺麗な薔薇には……って言うけど、そんなレベルじゃないな────!』
一本や二本では済まない。
無数に伸び立つツルの槍。そして、生やした樹木さえ威嚇ではない。
足元からの攻撃、そして樹木を倒壊させて押しつぶす挟み撃ちだ。成る程、考えられている。
ご案内:「落第街 崩落ハイウェイ」にホロウさんが現れました。
ホロウ > 「現地住民複数名による戦闘行為と思わしき反応を確認。
観測の為に現地に急行致します。」
落第街からは離れた空から、すさまじい勢いで飛翔する赫耀。
闇夜によく映える輝きが、赤い痕跡を残しながら近づいてくる。
その正体は以前より常世の空に確認されている未確認飛翔体。
有害ではないとされているが、同時に目的も不明のその存在が、風紀委員と違反生徒の遥か頭上で急停止し、見下ろしている。
「―現地住民との接触による観測を行います。それに伴い、先ずはこの状況を解決致しましょう」
急降下し、パワードスーツの現地住民の横5m程度の同高度まで降りる。
「初めまして。私はホロウ。あなたとの接触を希望する観測者です。
その為にも、あちらの現地住民の無力化に協力したいと考えております。よろしいでしょうか」
違反生徒を指さし、機械的な音声でパワードスーツの現地住民に確認を行う。
無機質、とまではいかないが些か生気に欠けているように感じるだろう。
橘壱 >
ヘルメット奥底、脳内に過る死の香り。
ひりつく実戦の空気。それでも尚、笑みは消えない。
そうだ、こういうのを望んでいた。追い詰められてこそ、AFの真価は発揮される。
バレルロールでツタを回避し、この状態を覆す方法に高速思考を巡らせ────……。
瞬間、それらを覆したのは自らの力ではなく赫耀の閃光。
樹木を切り裂き、自らの前に現れたのは少女だった。
増援か?と、違反生徒の女性も目を見開いた。
『……何だ、お前?』
冷えたモノアイの光の奥、少年の声は冷ややかなものだった。
少なくとも風紀委員の仲間ではない。機動力に優れる自分が単独で突入する手はずだった。
増援にしても、早すぎる。何より雰囲気でわかる。コイツは風紀委員じゃない。
そう、正しく"水を差された"気分だ。自分の闘争、求めるべき場所を汚された。
モニターに乱反射する少年の表情は、酷く強張っている。
『用があるならもうちょっとシチュエーションを選ぶべきじゃないか?
まぁ、いい。助けたつもりかもしれないけど、余計なお世話だ。』
『けど、助けられたのは事実だから礼は言ってやる。
協力したいなら勝手にしてくれ。僕は僕で勝手にやる。』
結果的にとは言え、そうなったなら言うことは言っておく。
ただ、彼女の見込み違いを言うのであれば、少年に協調性は全く無いことだ。
当然、違反生徒の女は待ってくれるはずもない。滴る液体が新たな生命を生み出す。
生い茂る緑の咲き誇る色取り取りの花々。夜を彩る鮮やかな花弁。
その正体は、大きな口弁を開いた食人花。大きく開いた大口が、四方八方から襲いかかる────!
『来るぞ。』
少年は機体を敢えて直進。
柔軟な機動力を活かして、花の間を縫うように移動する。
さて、向こうはどうだ?死んだか?一応センサーで様子くらいは見ておこう。
ホロウ > 「邪魔をしてしまったようでしたら、申し訳ございません。
ご許可はいただけましたので、ご助力致します。」
申し訳程度の申し訳なさを感じるトーンで返答する。
本当にそう思っているのか微妙なラインだが、上辺だけという訳では決してない。
…声色、言葉選び、モニターに映る表情。
何かが気に障ったのだろうか。パワードスーツの現地住民からは強い悪感情が見て取れる。
別に助力の必要性を感じた訳ではなく、あくまでも彼との接触の上での障害を取り除きたいだけなのだが、彼にとっては不快だったようだ。
パワードスーツの中から声を掛けられる以前に、飛翔体は動き始めていた。
大きな口を持った植物が生成され始めた段階で、腰のジェットから噴出される赤いエネルギーの出力が強化され、ランスのような形態へと変化する。
とった選択肢は奇しくも同じ。直進である。
この機体は、それほど戦闘能力は高くない。
それでも、飛翔性能と観測においてはすさまじい性能を誇る。
自分へと襲いかかる花を最小限の動きで回避しつつ、途中で加速し片翼を前方へと動かす。
共闘者よりも前方へと躍り出れば、前方へと動かした片翼を振り、共闘者の方へと延びていた花の茎を切断する。
そのまま前方へ、後方へと踊る様に飛び回り、共闘者に襲いかかろうとする花を只管に狙い続ける。
その動きは、共闘者が敵本体に辿り着く最短コースを開ける事が出来るように、計算されたもの。
飛翔体が飛べば飛ぶほどに、邪魔な花から地に落ち減ってゆくだろう。
敵本体の鎮圧は、共闘者本人が行った方が都合が良いであろう。そういう判断故の行動であるが果たして、共闘者はどう思うか…
橘壱 >
直進を取ったのは向こうも同じのようだ。
赫耀に一直線に進む動きはまるで彗星。翼のようなランスが突撃の助力と成り、障害を薙ぎ払う。
少なくとも、自分が知る限りの兵器の推力はしていない。
軍用のAFの高速戦闘に追従し、更には異能者に遜色ない戦闘力。
そういった機械の異能…とは違う気もする。直感だから当てにはならないが。
『…………。』
そういう献身的な性格、或いは機能とでも言うべきらしいこの未確認少女は。
此方としては余計なお世話にほかならない。AFにおける最高の瞬間、熱量が過ぎた。
そもそも既に2対1、余程の実力差に開きがなければ勝敗は見える。見えてしまう。
未確認少女の露払いがあるからこそ回避行動は取らない。
スラスターの出力を上げ、未確認少女の影から一直線。
一瞬だけ、相手の視界から消えることによる不意打ち。
女子生徒が驚愕する頃には、もう遅い。目前のモノアイと視線が合う。
『……悪いな。』
此方としては、こんな予定はなかった。
腕部アームから飛び出した二本の特殊警棒が飛び出し、腹部に突き立てる。
強烈な電流が女子生徒の全身に迸り、その意識を刈り取った。
極限まで殺傷能力を落とした電流。どうやら、植物を操る以外自身への防御態勢はないらしい。
正しく、勝負は一瞬でついた。バンの中に隠れていた仲間も、両手を上げ降伏の姿。
"望まぬ形"ではあったが、勝負はついた。特殊警棒が収納されると共に、溜息が漏れた。
『……それで……。』
振り返る事なく、気だるそうな言葉が漏れる。
『……僕に何の用だ?』
ホロウ > 「敵性の現地住民の無力化を確認」
共闘者が敵本体を気絶させ、仲間とみられる他の人間も降伏の姿勢であることを確認し、エネルギー出力を低下させながら地面に降り立つ。
此方に対して不快感を隠す事無く要件を尋ねるパワードスーツの現地住民の様子に、失敗を感じ取る。
これでは、まともな観測は難しいであろうと。協力を得られそうにない為だ。
「改めまして、ホロウと言います。常世島を観測させていただいております、機械生命体の観測機です。」
現地住民の3mほど前でジェットを停止させた状態で改めて口上を述べる。
彼らにとって自分は未確認飛翔体、いわゆるUFOやUMAと言ったものと大差ないだろう。
何度か島の防衛隊と思わしき存在から攻撃を受けている事もある、正体は正しく明かすべきだろう。
「あなた様のそのパワードスーツと思わしき装備と、この島の現地住民の認識に興味がありまして、声をかけさせていただきました。
幾つかお尋ねさせていただいてもよろしいでしょうか?」
先ほどの戦闘でパワードスーツについてはいくらかデータは取れた。
だが、この世界の科学水準や社会構造を知るには圧倒的に不十分なデータだ。
あわよくば、この島や世界を運営する機関との交流も計れるかもしれない。
橘壱 >
別に死にたがりでも、マゾヒストでもない。
ただ、AFを動かしたい事が至上の感覚。快楽。
あの全力の攻防、ブースターをオーバーロードさせて草木を焼き払い、肉薄したギリギリで乗り切る予定だった。
だが、傷つくこともなく、苦戦することもなく、戦いの決着は付いた。
熟成された料理の最後に余計な調味料が加えられた雑味感。
ヘルメット奥はずっと不機嫌そうに表情を歪めていた。
ゆるりと蒼の鋼鉄が未確認少女へと向き直る。
『…………。』
念の為、ヘルメット奥の液晶に名簿を表示し検索する。
風紀委員会、並びに常世学園に関係する名簿には表示されていなかった。
代わりに、風紀の監視対象。文字通りの未確認少女(アンノウン)のようだ。
余りにこういうのに興味はないが、確かにあの飛翔体を捕獲するのは骨が折れる。
敵意が無いから、などと宣うが"あの戦闘力"は脅威ではないのか。
自分が言うのもなんだが、余りにも存在が疑わしい未確認少女だ。
少年の表情も訝しげに眉を顰めた。
『お前の目的はどうでもいいし、僕は興味がない。
次の相手を選ぶ時は、助けを求めてる相手だけにしてくれ。』
声音もつっけんどんと不機嫌なもの。
それもそのはず、上質な違反生徒(たいせんあいて)を呆気ない結末にしてくれたのだ。
少年自体がそもそも人付き合いに興味を持たないが、その上で初遭遇最悪。
致し方ないとも言える態度だが、それでも前の先輩の説教が聞いているらしい。
ライフルを腰のハンガーへとマウントし、再び背を向ける。
『……答えれる範囲なら答える。"一応"助けられた礼もある。
けど、僕はこいつらの護送もあるから手短にな。』
前までなら戦いが終わればそれで終わり。
事後処理は他の連中に任せて迷惑を掛けていた。
だが、今はその辺りも自分で行う気があるようだ。
一応、違反生徒達が逃げないように睨みを効かせながら、未確認少女の質問を待つ。