2024/06/02 のログ
ホロウ > 「余計な事をしてしまい申し訳ございません」

己の非礼を詫びる。とはいえ、本来謝罪が必要な行為ではない筈。
あの状況を楽しんででもいたのだろうか。戦闘行為に興奮を覚える感情は可能性として理解可能な範疇だ。
それを邪魔してしまったのであれば、現地住民にとっては面白くなかっただろう。
そういう人間もいるという事は、頭の隅っこにでも置いておこう。

「あなた様は風紀委員会もしくは公安委員会に所属する生徒であると推察致します。
この島における活動の為に必要な手続きを行いたいので、窓口を教えていただけないでしょうか?」

彼の口ぶりからして、あまり込み入った事は教えてもらえそうにないし、質問できる数も限られていると理解する。
ならば、最も知るべき事から聞くべきだろう。
それに、護送という言葉から彼が何かしらの組織に属する人間であり、そこで伸びている女性らはその敵対者であると予想される。
違う可能性もあるが、おそらく彼は警察のような組織の人間であると予想される。
同じ呼称であるならば、恐らく風紀委員会か、公安の人間。
ならば島の運営機関とコンタクトをとる方法も知っているであろう。
その方法は、この島での円滑な活動の為にも知っておく必要がある。

橘壱 >  
『ハァ?』

思わず素っ頓狂な声が漏れてしまった。
何?急に現れて入学希望と来たものか。それこそ話すべき相手を間違えている。
まさしくどうでもいい、興味がない。さっさと放っておいて帰るべきか。

『…………。』

ブースターの火を付ける直前に、先日の先輩の言葉が脳裏に過る。
風紀委員会としての責任の重さ。組織に所属する上での立ち回り。
ある程度理解、納得はしたが今でもこのAFにおける行動が最優先であることは間違いない。
今は腕章はつけていないが、このAF(ツバサ)は今は風紀委員として装備でもある。
つまり、"責任"が生じる以上、これは立派な職務放棄になり、周りに迷惑がかかるのではないだろうか。
液晶の光に照らされる少年の表情はアンニュイなもの。
鉄仮面に隠されて見えないだろうが、数分の無言が続いた。

main system engaging scan mode(メインシステム、スキャンモード起動)

ソナーの光が周囲に広がる。やはり未確認少女(アンノウン)の材質から何から何まで不明だ。
少なくとも人ではない自立型の兵器。未知のアンドロイド。
そんな彼女に受診できるかわからないが、一つやってみよう。
もう一度、未確認少女(アンノウン)へと向き直る。

橘壱 >  
『……お前のことは心底どうでもいいけどな、僕も一応組織の人間だ。
 見ろ。この島の、常世学園のロードマップだ。一応データ上として受信出来るようにはしている。出来るか?』

『お前の出自がどういう経緯かは知らないが、此処はデッカい"学校"なんだよ。
 どっちにしろ、お前は"生徒"か"教師"でなければ活動はできない。』

『何よりも今はただの不法入島者。無法者と同じ拘束対象だ。』

人差し指を立てて馴れない講釈。生憎そういう柄ではない。
ただ、"仕事"となれば仕方ない。機体の胸部ライトはプロジェクターにもなる。
瓦解したハイウェイのアスファルトに移される常世学園のロードマップ。
気だるそうではあるが、ほらみろ、と少年が顎で差した地点に赤い点。

「生活委員会」と表示されている。

『僕は新参者だから知らないけど、お前のように"うっかり"島にくる奴はいるらしい。
 そのための組織だってある。まずは此処に掛け合ってくれ。多分、悪いことにはならない…はず。』

少なくとも敵意のある存在ではない。
入学の意思、学ぶ意思があれば懐の広い学園である以上、受け入れてくれるだろう。
我ながら、何をしているんだと鉄仮面の奥はなんとも言えない顔をしていた。

『……ただ、そうだな。落第街(ココ)の事は口外するなよ。一般生徒は知らない場所。』

『まぁ、禁止区域というか、そういう場所だと思ってくれ。』

だが、悪い気分ではない。
風紀委員としての仕事なのかは怪しいが、人(人?)助けにはなっているだろう。

『後の細かい所は……知らない。ともかく、困ったときの生活委員会だと聞いてる。
 何をするにせよ、入学しなきゃ始まらないんだよ。お前が侵略者でなけりゃ、受け入れてくれるだろうさ。』

『……まぁ、こんなところか。話はわかったか?』

ホロウ > 数分の無言を眺める。
生命反応に異常はないし、立ち去ろうとする様子もない。
恐らく、何か考えているのだろう。先ほどまでの様子からして、ここで下手に刺激するよりもおとなしく待機しておくことを選択する。
機械とはいえ、感情には理解も馴染みもある方だ。人間、こういう時もある。

「おそらく可能です。
成功しました」

データ受信を試行し、成功する。ウイルスチェック…問題なし。
データの中身を確認するが、以前いた世界の常世学園のものと大きくは違うようには思えないが、やはり異なるもののようだ。
既に受け入れた事実ではあるが、やはりこの世界は別世界。そして別世界といえど、常世学園という組織は大きくは変わらないらしい。

受信したデータと、観測したデータ、そしてプロジェクターに映る映像の3つを確認しながら話を聞く。
彼の語る内容は、概ね予想されていたものと同じものであった。
やはり、自分はこの島ではまだただの不法滞在者。攻撃されたのも、それゆえ。
しかし、生徒という形での滞在は…難しいと感じた。
何せ、機械だ。学ぶべき事などないし、学んだとて何もないだろう。
嘘をつくことも可能だが、常世はそれほど簡単に騙せまい。
機械らしからぬ悩むような表情を見せるだろう。

「はい、承知しました。
説明してくださり、ありがとうございます」

一先ず、感謝を伝える。
おかげで、すべき事が定まった。
問題点が全て消えたわけではないが、これで今後の活動もしやすくなる。

「どういった形になるかは分かりませんが、いずれ何かしらの形でお礼に伺いたいと思います。
お名前と、所属を教えていただけないでしょうか」

目的は後半の部分。
データとして、今後の観測の為にも知っておいて損は無いだろう。

橘壱 >  
別に少年はエスパーでもなんでもない。
此れは過去の経験則による、憶測だ。
かつて、努力で培った結果を持て囃されたもっと小さな記憶。
そして、先日の真新しい記憶を合わせた直感。

『……勉学だけが、学ぶ事じゃない。此処は異能学園なんだ。
 能力の事もそうだが、"別のこと"で学ぶ機会もある。それを教えてくいれる場所』

『……かもしれないな。』

つい先日の自分がそうだったのだ。
勉学だけで言うのであれば、自分だって学ぶことの方が少ない。
だが、そんな退屈な場所で無いことは保証できる。
自分だってまだ、この学園で何かを成し得たわけではない。
ただ、もし同じ考えなら改めておくべきだ。"生徒"とは、ただ勉学を学ぶ存在に非ず。

再度マシンをバンの方へと向ければ手を掲げる。
手首関節部から飛び出したワイヤーネット。バンで大人しくしていた連中ごと締め上げておく。
決して落ちはしないし頑丈だ。乗り心地は悪いだろうが、今までしてきたことを考えれば丁度いい。

『僕はもう行く。お前の入学まで面倒を見る気はない。
 ……だが、まぁ、もし困ったら話くらいは聞いてやる。』

ブースターが徐々に音を上げ、光が収束していく。

『風紀委員会、橘壱(たちばないち)。もし困ったら風紀委員会に僕を呼べ。
 なるべく来てくれないほうが僕としても助かるけどね。……それじゃあ、精々頑張りなよ。』

光が爆発すれば、AF(ツバサ)が煌めき夜空を掛ける。
妙な未確認少女(アンノウン)だったが、言うべきことは言った。
後は当人次第だ。これ以上責任を見る理由も謂れもない。
高速に風を切り、炎をはためかせて夜を掛ける。

『────此方Fluegele(フリューゲル)。違反組織「ダーティーローズ」
 その主要人物の杉原樹希(すぎはらじゅき)とそのメンバーを確保した。これより帰投する。』

その通信を聞いた風紀委員生徒は、後片付けをしない男が後片付けをしたことに驚いたとか驚かないとか……。

ご案内:「落第街 崩落ハイウェイ」から橘壱さんが去りました。
ホロウ > 「仰る通りかとおもいます」

元々常世学園に仕える身ではあるが、それは観測機としてのこと。学生らがどういう事を学ぶのか、彼らが個々どういう学園生活を送っているのか。
そういった事は殆ど知らない。であれば、それを観測…もとい学んでみるのも、よいのかもしれない。
少なくとも常世はそう狭量ではなかった筈だ。機械だから受け入れられないという考えは早計かもしれない。

それにしても、あのパワードスーツは随分と多機能な様子。
観測と飛翔、そして単一の攻撃手段しか持たない機体とは大違いだ。
羨ましいとは思わないが、一度解体してみたいとは思う。

「橘壱様、覚えました。また会いましょう」

パワードスーツがエネルギーを収束させ、飛び立つ。
人間数人を持ち運べる性能があのサイズに収まる事に驚きつつ、その姿を見送った。

「現地住民”橘壱”との接触を終了。巡回観測を再開致します。」

長年続けた報告の口上は、報告先が居なくなった今も健在。
ジェットのエネルギーを滾らせ、その場から飛翔する。
日常的な光景となった闇夜を切り裂く赫耀が今宵も観測されるであろう。

ご案内:「落第街 崩落ハイウェイ」からホロウさんが去りました。