2024/06/12 のログ
エボルバー > <...!>

発射したレールガンに対し、青年が取った規格外の行動を
漆黒のマシンは想定しきれなかった。
彼のAFは発射された弾頭へと突っ込み、爆散した。
普通では考えられない行為に、漆黒のソレは動きを止める。

...いや、それはおかしい。


>シミュレート矛盾検知


<そうだ、殺さない。>

ソレはとっさに反応した。
推力偏向スラスターから繰り出される
人間には到底成しえない超ハイGブースト。
気持ち悪ささえ思えるその機動を翡翠色の光が追う。

<殺さないために、兵装の出力を微調整した。
爆散する可能性は極めて低い。>

だからこそ判断できた。
しかしそれでもなお速すぎるAFの攻撃。
振り下ろされたブレードを
漆黒の機体はギリギリの所で受け止める。
レールガンの砲身がブレードと鍔迫り合い悲鳴を上げる。

橘壱 >  
レーザーブレードと砲身が鍔迫り合いバチバチと弾け合う。
高出力のエネルギー体を受け止めれるほどの砲身。
成る程、そういう使い方も出来るようになっているのか。
弾けるエネルギー光の隙間、無機質な多眼を狂気的に光る単眼(モノアイ)が射抜くように見据える。

『戦ってる最中に"殺さない"なんて似つかわしくないな、正体不明(ミスター・アンノウン)
 戦いなんてのは、結局殺すか殺されるかの極地なんだ。銃口向けといてそりゃないよな……!』

直撃していないから何とも言えないが、ダメージは免れない。
"殺さなければ怪我をさせてもいい"なんてのは罷り通らない。
一度武器を向けたならば、そこに残るのは命のやり取りだ。
仮に機械(マシン)だとすれば、なんと唾棄すべき思想、矛盾した思考なのだろう。
本当に殺す気がないなら、マシンに影響するEMP(パルス)兵器かトリモチとかにすればよかったんだ。

『ゲホッ……!兵器の(すがた)で尊いなんて言うんだな!アンタは!
 何のつもりかは知らないが、タチの悪い故障(エラー)でも出てるんじゃないか?欠陥品(ポンコツやろう)……!』

文字通り血を吐き、挑発する。
機械に通じるかはしらないが、口プレイはゲームの十八番だ。
こんな戦闘をふっかけておいて、兵器を出しておいて何とした矛盾だ。
余計に目的が不鮮明だが、そんな事もう"少年はどうでもいい"。


────今、此の瞬間の悦びこそが全てだ……!


『何であろうと……!』

鍔迫り合い、ギリギリと震える両手アーム。
押し負けないように吹き出したバーニアを"一瞬"だけ停止させ、僅かなバック。
相手に押させることによる受け流すように体勢を崩させるのが目的だ。
相手には自立兵器(ドローン)がある。鍔迫り合いをしていて不利なのはこっちだ。
だからこそ、此の距離で一気に決めに行く。

『勝つのは、僕だ────ッ!!』

どんな勝負であれ、負けず嫌いである以上負ける気はない。
不殺を宣言する機械、闘争を楽しみ一直線に勝利(いのち)へと走り抜ける人間の対比。
即座にレーザーブレードを構え、その胸部めがけて突き出す。

エボルバー > 何故、機械は戦うか。
変化するためだ。

何故、機械は殺さないか。
変数を残すためだ。

変数の無くなった世界に変化は起こらない。


だが、そんな事、生物として血を滾らせる青年に届くはずもない。
血の通わない化け物に熱い思いは伝播しない。
そうして鍔迫り合いの末に、悲鳴をあげていた砲身がついに寿命を迎える。
青年の狂気的な思いが共鳴したかの如く、
紅い光と共にレールガンが融けてへし折れる。

漆黒の機体の姿勢は崩れ
AFのレーザーブレードが胸元へと迫っている。
だが、変わらない事実がもう一つある。
漆黒の機体は両腕が武器腕だ。
片方はへし折れたが、もう片方はどうだ?

<非常に、本能的だ。>

機械は疲れも痛みも憤りも知らない。
激戦には似つかわしい冷え切った声色でそう言い放つ。

>照準補正

それは1秒すら遠く感じる時間スケールの出来事。
向かって左の武器腕、鋭利な刃物を思わせる弾頭が貴方を睨む。
ショットガンが向けられた。

橘壱 >  
不意に鳴り響く<Alert(危険視号)

『────!』

刹那の判断。ブレードは胸部には届かず、咄嗟に両腕を交差してガードへと使った。
ブレードが広がりシールドへと変化するも、破裂音は無慈悲に響いた。
揺れる機体。鋭利な弾丸がシールドを、装甲を一部貫いた。
肩か。足か。咄嗟に展開してなければ今頃蜂の巣だったかもしれない。
貫通した肉体から血が流れ、焼けるような痛みを感じても尚笑顔は消えない。
体中から滴る嫌な脂汗さえ、今此の瞬間は気にならない。

『そうかな。楽しい事を優先してるだけさ。
 AF(コイツ)を動かす此の瞬間が、何よりも楽しくて仕方ない……!』

兵器としてあるべき姿。闘争。別に戦い自体に興奮を感じているわけじゃない。
AF(ツバサ)を羽ばたかせている此の瞬間が何よりも楽しいんだ。
ソレの使い道が闘争というだけ。本能的と言われればそうかもしれない。
誰よりもその瞬間を、楽しんでいる。こうして内蔵を痛めつけてまでも笑みが崩れない。
楽しくて仕方ないんだ。非異能者が得た、此の(ツバサ)が。

電磁砲(レールガン)にショットガン、自立兵器(ドローン)とまで来たか。
 どうやって作ってるのかも気になるな。アンタへの興味が尽きない。勿論、負ける気も……!』

再びシールドがレーザーへと変形しようとした時、周囲にまた別の駆動音が響く。
レーダーに反応するのは、風紀委員会のヘリだ。どうやら時間を掛けすぎた。援軍らしい。
無理もない。直ぐ側で救助活動やら何やらをしていた最中だ。終われば此方に来るのも必然だ。
ついぞ白けてしまい、溜息を吐いてブレードを収納する。

『……作戦時間超過(タイムアップ)だな。』

残念だが複数戦闘なんて望んでいない。
飽くまで此の瞬間、二人の凌ぎ合いに意味がある。

正体不明(ミスター・アンノウン)。僕の名前は風紀委員会の橘壱(たちばないち)
 今回の決着はお預けにしよう。次は必ず僕が勝つ。……何時でもアンタと戦ってやるさ……!』

宣戦布告。
そのままバーニアを吹き出し夜空へと舞い上がる。一時撤収だ。
数名の風紀委員は、交戦した対象として追撃するだろうが、彼なら撒くことが出来ると信じている。
想定外のサプライズに、喜びを隠せない。また楽しみが出来たことに胸を躍らせて、夜空の奥へと消えていくのだった。

ご案内:「落第街 建設放棄地ビル群」から橘壱さんが去りました。
エボルバー > 互いに致命的一撃を回避したその刹那。
風紀委員会の増援と思しき存在が近づいてくる。

彼は離れる。

彼の心情を機械は理解できない。

ただ、それこそが彼の強さの本質なのだろう。

<橘壱。記憶すべき存在だ。>

血の匂いは生命を強くするか?
自分を変化させ得る要素を
記憶しておかない理由は無い。

そして彼が去って間もなく
ビル群の間を浮遊する漆黒の機動兵器を風紀委員のヘリが囲み
地上からは風紀の迎撃部隊が迫る。


<キミ達は、どんな力を、持っている?>


折れた武器腕をパージすると、
それらは黒い粉へと化し空中に霧散する。
スラスターの閃光が再び灯った。

ご案内:「落第街 建設放棄地ビル群」からエボルバーさんが去りました。
ご案内:「黒砂被る落第街大通り」にエボルバーさんが現れました。
エボルバー > 暗い。
夜だからではない。
ましては天気のせいでもない。


それは、砂。光を吸い込むような黒い砂。
雪のように降りしきり、黒い霧のような情景を作っている。
人体に害はないようだ。呼吸もできる。
鬱陶しそうにしながら暗部の住民も生活を送っている。
不思議なこともあるものだ。しかしいつも通りいつも通り。


...黒砂の隙間に覗く空、グリーンの光が線を描く。

ソニックウェーブが地上に轟く。


空に投影されるは一つの大きな黒い影。

エボルバー > 間もなくして落第街の一角から眩い魔方陣が浮かび上がる。
絡まる紋章の奥から弾き出される、神秘の弾丸。
それらは空に浮かぶ大きな影へ一直線に。
そして覆いつくすように。
強力な魔力の残滓に耐えながら
杖を握る魔術師の裾には風紀紋章が揺れている。


...影が動く。
落雷のような轟音を連続に轟かせながら
その影は常識外れの速度で。

それは大気中の黒砂をかき分ける。


現れる。
空に浮かぶは一体の人型状物体。
いや、人型というにはいささか無機質さが過ぎるか。
頭には翡翠色に輝く多眼、左右の腕に手は無く武器のようなものと一体化している。
さながら大型二足機動兵器。

背中に備え付けられたスラスターからプラズマジェットが噴く。
右に。
左に。
魔光弾をかいくぐり
人間の目で追うことが難しい程の速さで風紀の魔術師に迫っていく。


>照準補正


ソレは右腕を前に。
凹凸が目立つ不気味な砲塔を彼らに向けた。

エボルバー > 砲身に光が灯る。
熱波と共に乱れ撃たれたのは空気を焼くように光るエネルギー弾。
閉じ込められたプラズマの雨が魔術師達に降り注いでゆく。
光が近付くたびに魔術師の制服を焦がしてゆく。

眩しさに目を覆う魔術師団。
動いたのは一人の少女。
彼女は持っている杖を勢いよく地面に立てる。

魔法陣が浮かび上がる。
呪文が刻み込まれた半球状の魔術防壁が出来上がる。

それは、無慈悲な熱エネルギー弾を受け止めた。
豪雨に打たれる傘のように。
頬を焦がしながら少女は見下す多眼をその瞳で睨み付ける。


<面白い。>


>プラズマ圧縮開始
>照準再補正


ソレはエネルギー弾の一斉射を止める。
代わりに、砲身がまた輝きだす。
先ほどまでとは比べ物にならない程に。
凄まじい灼熱は機械の黒い砲身をも紅く染め上げる。

エボルバー > 訪れる一瞬の静寂。

そして見上げる事すら厳しい程に。
彼女らを覆う光が一つなり、灼熱の光線として放たれる。

触れるものを蒸発させながら魔術障壁へぶつかる。
照りつける光線は熱という原始的な力で術式を破壊する。
少女が目を見開いた時には既に遅い。
障壁は真ん中から破るように砕かれ
光線が彼女らの眼前に着弾する。


凄まじい爆発。凄まじい熱波。


制服に刻み込まれた風紀紋章が焦げる。
彼女らは吹き飛ばされ
体を打ち付けながら地面へと転がり
その意識を手放す。


黒い霧の中、緑の目は倒れた者達をただ見つめる。

エボルバー > 敗者に用はない。

浮かぶ物体はそう吐き捨てるように背中を向け
背中のブースターを噴かせると高度を上げる。
違反部活の廃ビル群を潜り抜け
その中央の空に浮かぶ。

緑の目は見渡す。変化の種を。

変化する。ただその為に機械は動き続ける。

風紀の紋章。それは強者の証。

機械はそれを絶対に見逃さない。

機械の進化は止められない。

ご案内:「黒砂被る落第街大通り」からエボルバーさんが去りました。
ご案内:「落第街・地下ライブハウス」にアッシュさんが現れました。
アッシュ >  
──轟音、異音、爆音。
およそ、不快であると形容されるのが"普通"のサウンド。

そんな厭音逆巻く小さな地下ライヴハウスには目一杯に落第街の住人が入り、音に声に、酔いしれていた


From the beginning I was stupid and far from understanding(生まれた瞬間からの"愚鈍" 理解なんざは遙かに遠く 及びもしねえ)

I couldn't laugh, I couldn't cry(笑うことも、泣くことも出来やしない)

Before you judge me, look at yourself(オマエがそんな俺をどう見るか…まぁまずはオマエ自身を見てみな)

Look down on people and live in lies(人を見下して、嘘の中で生きてんだろ)

───卑屈、鬱屈されたような歌詞(リリック)
それが、歪みと暴力に彩られたサウンドに乗せられ、咆哮が如く放たれる───

アッシュ >  
You pass by, hurting me without regard for all the pain in my heart(オマエは俺が痛がろうが気にもしねえ。気付きもせずに痛めつけて去っていく)

I hate what you do(オマエのすることを、俺は憎むさ、クソが)

And you have no right to hate me(だがそれでオマエが俺を憎む権利はない)

I'm the only one who's hurting───(その時に痛かったのは、俺だけなんだ)

理由なき差別。
無自覚の暴力。
落第街に満ちる、劣等と理不尽を叫ぶ───。

KILL! KILL! KILL!(やれ、◯せ、ブチ◯せ)
KILL! KILL! KILL!(◯せ、◯せ、◯し尽くせ)

サウンドと暴虐の歌詞にオーディエンスは湧き上がり、拳を突き上げ口々に己のストレスを吐露する。
確かな一体感(グルーヴ)が、その場には生み出され───。

アッシュ >  
You look down on me like I'm the scum of the earth(オマエは俺を見下したな。まるで地球のゴミのようだと)

Fxxk!! you're right, that's who I am, vulgar and obscene(クソが! 仰る通りそれが俺だ 下品で猥褻で結構さ)

I don't like it, but at least I don't criticize or command others to be better(俺はそれが不満だ。だからといって俺は誰か見下したり非難したり命令したりしねえ)

ステージ上の男もまた、拳を高らかに突き上げ、喉が枯れんばかりに、叫ぶ。

Not like you──(テメェらとは違うんだよ──)

アッシュ >  
溢れんばかりの熱気と怒号。
客席では殴り合いの喧嘩すらも始まり、血すらも流れた。

──唖々、解き放たれていく。

人が人たる尊厳と、不満を叫ぶ轟かせる権利が。

演奏が終わっても尚、狂騒は治まりを知らず。

ステージ上でマイクを構えた男が一言を発するまで──それは続いた。

アッシュ >  
「お前らは此処で腐ってろ。一生学園の恥部として暗い儚い生活だァ…」

「無能だと言われたか? お前の力に人権はなかったか?」

「何を言おうが叫ぼうが連中は理解りゃしねェ。
 示せ、有り様を。お前が此処に在るのを証明できるのは、お前自身だけだ───」

轟音。
ステージ脇に仕掛けられた小規模な花火が炸裂し火花を散らす。

───時間にして1時間23分。

地下ライヴハウスでの狂騒劇が一端の幕を閉じて。

アッシュ >  
───"楽屋裏"

『めぼしいヤツはいたか?灰人(アッシュ)

「いねぇな。どいつもこいつも流れに流された腑抜けた無能共ばっかりだ。
 ──ゾーク《Zorch》に誘えそうな異能者は見当たらねえよ。所詮二級学生ってところか」

『危険視されて追放されたヤツなんかもいるだろ?』

「カカッ…そんなヤツが100人中に何人いるってんだよ──。
 まぁイイんだよ。俺は俺の好きに演る。上がグダグダ言ってンなら、そう伝えな──」

ライトも点けられていない、楽屋裏でのバンドメンバーの会話。
それはそのまま闇に紛れる様、誰の耳にも入ることなく。

ご案内:「落第街・地下ライブハウス」からアッシュさんが去りました。