2024/06/23 のログ
■先生 手紙 >
きっかけは、煙草の火が落ちたところだった。
ジュ、と乾いたアスファルトらしからぬ消火――もとい消化音。
――何よりも早いというのであれば。この男の運動神経ではなく意思決定だろう。地面が揺らぐ……刹那、片手でイーリスを抱えて再びポストの上に乗る――!
「――あーあ。出遭っちまったか」
まるでB級映画のような、地面からサメが現れるという事態はけれど、驚嘆には及ばない。なにせこれで三度目だ。
そして映画と違い、コイツはSS級である――
「ごっめーんイーリスちゃん!本業だわ。一緒に逃げた仲だし、エクソシストセンジョーの手伝いしてくれる?」
――もとい。この怪異の特性を考えるとヘタに逃がして彼女を『汚染』されるよりマシだという判断。今ならポストも武装している。何言ってンだろおれ。
■Dr.イーリス > イーリスは改造人間であるが、それは高度なコンピューターを体内に保有し遠隔でメカを操るのに優れているというだけで戦闘用ではなかった。
現在、戦闘で頼りにしている《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅲ》は遠くでリトルドラゴンの構成員達相手に戦闘中。手元にいなかった。
イーリスが保有する主な戦力は、逃走用に用意した郵便ポスト型マシン……。
「……異常な反応です! 手紙さん!」
体内のセンサーに異常な反応が検知された。
しかし、戦闘用の改造人間ではないイーリスは突然襲撃してくるキバを避ける事は出来ない。
迫りくる牙に、目を見開く事しか出来なかった。
……このままだと、牙の餌食だ。
そう覚悟した時、イーリスは手紙さんに抱えられてポストの上に戻っていた。ちなみに札束が三つ入った袋は地面に落としている。
「あ、ありがとうございました。助かりました、本当に……」
手紙さんに助けられて、安堵で胸をなでおろす。
「もしや、噂に聞くSS級怪異とはこれの事でございますか……? 《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅲ》が手元にいないこんな時に……。ひとまず分かりました。共闘といきましょう」
手紙さんにこくんと首を縦に振った。
イーリス側は普段戦闘で扱っている漆黒のアンドロイドがいない。万全な戦力を有さない今のイーリスにとって、共闘できる手紙さんはとても心強かった。
■紅き地泳グ酸鮫 > スッ―――!!!
空を薙ぐ牙ッッ!!
それの意味するところは"避けられた"という事ッッ!!
またこれか!
貴殿はッ!
この男は"物理法則を捻じ曲げる"と認識しているッッ!!
そして女の方は―――!!!?
女の、方は。
―――!!
すぐに、分かった。
"この女、回避手段を持っていない"
"男が女を庇った"
そうか
そうかそうか
ならばやることは―――
一つではないか!!
女を、女だけを狙う!!
さすれば諸共殺せよう!!
さぁ、死ね。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!
打ち出すは"死ね"の意思表示の乱射酸液弾!全部狙いは女ッッ!!
何処に当たったっていい!そんな雑な狙いの攻撃!
卑劣?卑怯?好きに罵るがいいッッ!!
ハズレ弾も大量だが、1発でも当たれば儲けもの!
だが本命はこっちだ―――!!
貴殿らのすぐ下の大地をその体躯にて叩き割ろうッッ!!
ポストなんぞに飛び乗って
気安く立つ間隙など!!
休む暇など与えるモノか!!
■先生 手紙 >
――まァ。おれも驚いたよ。文明人だけど。怪異はどうだ?
「いいかいイーリスちゃん。おれから離れるなよ。ンで、ポチの操縦頼んだ」
ポチとは勝手に呼んでいるだけだが。
このポスト、兵器なンだぜ――?
そして今日の先生手紙は『完全武装』である。スーツのジャケットが翻り、腰から二挺――拳銃を抜いた。
「『オモイカネ8』。対怪異アシストシステム起動」
懐の携帯端末――常世島最先端の『学生手帳』が主の声に応える。
【システム・オールグリーン。アシストスタート。酸性の飛沫を確認。怪異特性から着弾は避けてください】
簡単に言ってくれる。まァ――こちらも不良少女を置いて逃げるわけでもないし、コレをこのまま野放しにするつもりもない。
「――七つ目ダイス』――!」
飛沫から“飛散力”を減衰させる。スローモーションの雨のようだ。そこに、
■先生 手紙 >
――ッズダダダダダダダダッ!
■先生 手紙 > 雨には雨を。二丁拳銃が火を噴いた。ばら撒かれる、祭祀局謹製の『対魔弾頭』
放たれる殺意を迎え撃つに、有り余る――!
■Dr.イーリス > 「任せてください」
手紙さんにこくんと頷く。
イーリス自身に戦闘能力はないが、されど異能や魔術の技術を複合させた科学力とそれにより生み出したメカがある。
違法部活《リトルドラゴン》からお金を分捕って、その逃走用に使っている郵便ポスト型マシンだが、複数の重火器が装着されていた。
「きゃあぁ……!」
迫りくる酸。だが、その対処はひとまず手紙さんに任せる。
手紙さんが酸の対処をしている最中だった。
「わわっ!」
突然、地面が揺れてよろけてしまう。手紙さんの体にしがみつく形となって落ちないように踏ん張る。
「手紙さん、振り落とされないようしっかりとどこかに捕まっていてくださいね。イグニッション」
スマホをぽちっとタップ。
すると、郵便ポストの下部から突然炎が噴き出し、その推進力により空中に飛び上がっていく。
上空十メートルあたりでポストはぴたりと止まった。
「相手はどうやら地面から攻撃してくるようですね。ならば、空中ならば比較的安全圏です」
ただし、足場はポストの幅しかないので落ちたらすぐ鮫の餌食……。
機関銃を地面に向ける。しかし……今の装備では、地面の下にいる敵への攻撃は難しい……。
■紅き地泳グ酸鮫 > またかッッ!!
遠隔攻撃はいつもいつも"減衰させられる"!!
しかもこの女も良い的ではない!!
―――なんと、ポストが空を飛んだ!!
否
不思議な事ではあるまい。
鮫が大地を泳ぎ
海月が空を飛び
花が瞬間移動をする
ポストが飛行することだってあろう!
だが
高い位置を取りやがって!!
これでは"遠隔攻撃しかできない"ッッ!!
しかも"遠隔攻撃は減衰させられる"ッッ!!
何か
何か方法は―――!!!?
―――否
貴殿らもまた、攻撃手段に困っている……?
ならば
今が力を溜め込む隙だ
溜め込んで
溜め込んで
溜め込んで
―――叩き落としてやる。
恐らく―――強烈な"酸液"と"異能力"の高まりが検知されよう
ああ、そのまま空高くで"ひと時の安息"を楽しむがいい――!!
■先生 手紙 >
「うっそォ!?」
こちらはニンゲンだが、怪異よりも納得に時間がかかった。ポストが機関銃ぶっぱするだけでも手紙は手紙を出すのためらう明日が見えるのに飛ンじゃうンだもんなァー!
ぐらりと揺れる足元。一方1mもない四辺を領地の空中浮遊。膝立ちでぎりぎりバランスを取る。
【警告。妖力反応肥大】
――となると、攻めあぐねてる間に大技ぶっぱする気か。
「……イーリスちゃん。ちょっと無茶するから右脚持ってて。重くはないと思うから」
言って。右脚を少女に預ける。残る左脚を、下がった機関銃の背に引っかけ――ぐるりと空中で逆さまになった。
【照準アシスト。地上十一時方向です。慎重に照準を定めてください】
「――させるものかよ。文字通りこっちは辛酸食らった身だぜ?」
逆さまのまま二挺を構える。引き金を引く。
――ッッドドドドドドドドドドドンッ!!!
一斉射撃。一発だって外さないといわんばかりに、命懸けの掃射を行った。
■Dr.イーリス > 常世島なので、ポストが空を飛ぶ事もあるだろう。
大地を泳ぐ鮫であるからに、やはりそう簡単に空には手を出せないようだ。
だがある程度の安全圏を確保したというだけで、ある問題点は全く解消されていなかった。
「……弱りましたね。さすがに、このポストは地中にいる敵へ攻撃できる装備に欠けています」
何せ何の準備もない。
ミサイルや爆弾で地面を多少抉れるが、地面を自在に泳ぐ鮫に対してはあまりに非力。海で泳ぐ鮫相手に、海水の表面だけ殴りつけるような行為だ。それでも鮫が上がってくる瞬間ならば攻撃できようが、潜ってるままだったらどうしようもない。
大きな異能の力をセンサーが感知して、イーリスは目を見開いた。
「……!? 手紙さん、あの鮫から大技がきます……!」
慌てて、大技がくる旨を手紙さんに伝えた。
「右脚を……ってどうするのですか?」
指示通りに、右脚を支える。イーリスは人間一人支えるのが不可能な筋力しかないが、手紙さんが機関銃に左足を引っかけているという事でなんとか支えられている。
そうして、必死に支えながら手紙さんから放たれる一斉射撃を見守る。
■紅き地泳グ酸鮫 > そうやすやすと攻撃を喰らうかァァァ!!!!
決死の攻撃を露と消してやろう!!
然り!然り!然りッッ!!
そうとも!
水中に潜りこんだ魚に対して水面を殴ったとして、魚を殴ることはできぬ!
それと同じ―――ッッ!!
鮫は卑劣にも地中に潜り込む!
そこにあるのは大地のみ!
銃撃は―――決死の、高度10mからの銃撃は"地面"が喰い尽くす!
抉れはしよう……
だがそれだけだッ!
一撃たりとも喰らってなるものか!
深くまで潜水―――否、潜地ッッ!!
こちらから次なる一手を打つまでは―――潜り続けて、最大限の力を浴びせてやろう!
卑怯とでも、なんとでも言うが良い!!
何故なら怪異は
"戦い"がしたいのではない―――!
"殺し"がしたいのだッッ!!
■先生 手紙 >
「――――!」
アクロバティックに放った掃射が、地面に穿たれるのを見た。決定打にならない――!
「くそ」
じゃこん、と空になったマガジンを落とす。レッツ腹筋。
「よ、っと。ありがと、イーリスちゃん」
そしてまた、ポストの上に戻る。
【反応、以前増大中】
「……イーリスちゃん、アレにもし当たったら仕留められる兵装、このポストに積んである?あるなら当てられる状況を作るンだけど」
こっちは遠隔戦で火力不足だ、と言ったうえで。『手はまだある』とも言った。マガジンを換装させる。一挺に、一弾頭。
「で。マジで内緒にしといて欲しいンだよね」
――自身の能力であれば、この怪異の殺戮を止めて、着弾させてみせる、と。身分の怪しい間柄に、信を置けるのかを問う。
■Dr.イーリス > 手紙さんの銃撃。
だが、やはり地中に攻撃が届く事はなかった。
「あの怪異……。とても知能が高いですね……」
あくまで地中深くに潜って力を貯め続けている。
「……残念ながら、ポストに積んである装備であの鮫を仕留めきれるかは分かりません。対怪異の想定なんてしていない兵器です……」
例えば、ポストマシンは本気で戦闘するなら切り札の《メカニカル・サイキッカー》をサポートする役割に過ぎない。
それでもランクが低い怪異にならなんとかなる可能性があっても、相手はSS級怪異。
突然の襲撃で完全に準備不足だ……。
「分かりました、内緒にしてほしい事があるならば口外しません。しかし、今はひとまず敵の攻撃を回避できる位置取りをしましょう」
鮫が安全圏から力を貯めているならば……。
実際のところイーリスもストリートチルドレンな不良として中々卑怯な事をする事もある。
綺麗事なんかでは、ストリートチルドレンの世界を生き延びる事はできない。
なんと、推進エンジンの火力が突如として上がり、さらに上空へと飛んでいく。
距離があれば攻撃は減速し、回避が容易になる。相手が安全圏から動かないのならば、こちらも安全圏に行くのみ。
手紙さんの作戦を実行したいとは思うけど、郵便ポスト型マシンでは残念ながら彼が提示する「SS級怪異を仕留められる」という自信がない。
■紅き地泳グ酸鮫 > ―――想定、外。
貴殿らが向かうは更なる"高所"。
これでは…
これほど離れられては
"また無駄にさせられかねない"ではないか!
"地中"と"天空"
これでは"千日手"ではないか?
―――否。
"消耗しているのはあちら"
"増長しているのはこちら"
あれ程の火力推進
永久機関でもなければ
いつしか"燃料切れ"を起こす―――
そうは考えられまいか?
それに、あの狭さ。あの高さ。
ずっとあそこにいるだけでも"不快的"で"嫌"であろう。
つまり"時間経過で消耗するのはあちら"。
対して
酸の異能―――惨劇の激酸<さんげきのげきさん>には使用者の相応のエネルギーが、必要。
言い換えれば―――時間があればあるほど、エネルギーが、たまる。
当然、消耗などあろうはずがない。
つまり"時間経過で増長するのはこちら"。
―――最悪、その距離でもブチ抜けるだけのエネルギーを溜め込めばいい。
貴殿らには"そうしてまで殺す価値がある"。
どこまでも鮫は狡猾にして、卑劣だ。
途中で"燃料切れ"でも"根負け"でも―――
降りて来てくれようものなら…
なお、有り難いがなッ!
■先生 手紙 >
「あーね。学習してるっぽいンだよ。二回やりあったけど、一回目は簡単で、二回目には苦労した。三回目でこうなった。だから早めに元を断ちたいンだが――と、脱線した。うーん」
……実際のところ。本体さえ露出してくれれば質量でどうにかなる怪異だ。SSの等級はその増え方にある。
【妖力、尚も増大中】
オモイカネが告げる。時間は有限だと。
「まァ、このまま逃げちゃうのもいいンだ。でも逃がしたくないのが本音」
――そしてすまんな、怪異くん。ムサい野郎と二人きりならいざ知らず。かわいい女の子と狭い四方でくっついてるのは少なくともこの男のストレスにはならないのだ。男ってバカね。
「あっちはこっちの出待ち。有効打に欠けるって言ったけど実際のところ何が積んであるン?持ち物確認しようぜ」
くるくると左手で拳銃を回しながら、そうイーリスちゃんに提案するのです。あまりにも平常――それが日常会話のような気軽さで。
■Dr.イーリス > 千日手。そんなわけがない。
推進エンジンにどれだけのエネルギーを消費しているか。
これでも魔術的技術の複合で消耗を押さえていたりするのだが、限界がある。
「……ところで手紙さん。残念なお知らせがあります。このようなポストに積める燃料はたかが知れています。これなら、お手紙を入れられる機能ぐらいはオミットして、その分燃料を入れられるようにすれば少しだけ生き延びる時間が伸びましたね……」
つまり、長く持たず落ちる。
あくまで一時的な安全圏。
余談となるが“根負け”に関してだが、イーリスはストリートチルドレンとして暮らしていて無駄に耐え忍ぶ精神力を身に着けてるので、空中に浮かぶポストの上で、二人であっても数日何も食べずに過ごせる。手紙さんが平気なら“根負け”はない。
燃料切れは目の前に迫っているが。
「知能の高さはとても厄介ですね。学習してるとなると、次に会った時はさらなる強さを手に入れていますね」
燃料不足の時間が迫っているといっても、束の間作戦を話し合う時間は……ぎりぎりある。
「機関銃、マシンガン、ライフル銃、小型ミサイル、爆弾、レーザー銃などなど。爆弾やレーザー銃の威力もそこまで高くはないです。あと、自爆装置搭載です。自爆は最終手段ですが、これは逆に私達の命が危うくなる程の威力を誇ります。そのリスクから基本的に自爆装置を除外して考えていましたが、どうやらやるしかないですね」
イーリスは足元の小さなハッチを開ける。そこには、ドクロマークが描かれた赤いスイッチがあった。明らかにヤバそうな雰囲気のスイッチである。
「自爆なので、チャンスはたったの一度きり。失敗すれば、終わりです」
■紅き地泳グ酸鮫 > 然り
然り
死への覚悟は決まったか?
安心するがいい
生まれ変わり仲間となるだけだ
燃料切れの兆候が伝われば
狙い通りと怪異は貴殿らのすぐ下へ
ふらふらと落ちてきたところを
惨劇の激酸の全力放射にて射抜き殺めて魅せよう―――!!
怪異が今か今かとその時を待ちわびる!
刻一刻と
タイムリミットが迫る―――
さあ
来るがいい
■紅き地泳グ酸鮫 > さあ、さあ、さあッッ!!
ここで諸共殺してやろう…!!!
■先生 手紙 >
「イイね。じゃあ、任せた」
へらりとイーリスに笑いかけ――自らポストから飛び降りた。
落下していくその最中、銃口を自身のこめかみに当て――
――パン。と乾いた音がした。
自決?否。脳漿の代わりに砕け散ったのは可視化された、ガラスのような魔力だった。
「『七つ目ダイス――解除」
――先生手紙の異能。概念を希釈する――自らの『枷』をこの瞬間、外したのだ。
そして。
飛び降りたことにより、紅き怪異は二択を迫られる。
未だ空を飛ぶポストに酸をぶつけるか。
それとも自分を二度も殺した奴を選ぶのか。
――選んで見せろ。時計の針を緩めず……むしろ、
たたたたた、と壁面を駆け降りる男が、その選択の期限を早める――!
「――なァ鮫ェ!オマエ、おれがオマエを殺せること、身に染みて理解ってンだよなぁ!?」
■Dr.イーリス > 手紙さんに任されて、こくんと首を縦に振った。
落下する手紙さんが自身のこめかみを銃で撃った時は驚いたけど、能力の発動条件なのだろうと察する。
手紙さんから少し遅れる形で、ポストマシンの推進エンジンを解除。イーリスを乗せたポストが落下していく。
イーリスは弱いが、その改造した体は耐久性にだけは優れている。落下により死ぬ事はない。
「よもや、このスイッチを押す事になるとは思いませんでした……。自爆スイッチを押せば、多くの物を失いますね……」
自爆は、もう自爆が示す通りかなりのリスクだ。
まずこの郵便ポストメカ。木っ端微塵である。
地面に落とした大金。跡形も残らない。
周囲。結構吹っ飛ぶ。
そして手紙さんとイーリス自身。爆発に飲み込まれるのは避けられない。
そっと自爆スイッチに手を伸ばす。
「……スー、ハー」
深呼吸。
自爆スイッチを押すと失われるものが多く被害が大きいので、イーリスと言えど緊張していた。
深呼吸を終えると、覚悟を決めて自爆スイッチを押す。
郵便ポスト『自爆装置作動。後十秒で自爆します。9──……』
カウントのアナウンスが始まった。ちなみに、わざわざアナウンスしているので、鮫にも聞こえている事だろう。
■紅き地泳グ酸鮫 > 分離―――男と女が別になった!
つ い に 来 た !
落下する男ッッ!!
ポストに乗ったまま遅れて落ちてくる女ッッ!!
"どっちを殺すべき"かだと…ッ!?
決まっている
今無防備で
二度も痛手を喰わせやがった
狙いやすい位置にいる男だッッ!!
溜め込んだ惨劇の激酸のエネルギー
貴殿に全てぶつけてくれる!!
だが
それは
鮫が地中から顔を曝け出し
大きな隙を―――
攻撃の好機を晒すことを……意味する!
だが、良い!
今この男を殺せばッッ!!
後でこの女も殺せるッッ!!
仲良く死ぬがいい―――!!!
打ち出されるは
紅き酸液の破壊の飛沫ッ!
殺戮のみを目的としたレーザー状の極太砲ッッ!!
本来10m先をも射抜くべく
溜め込んで溜め込んで溜め込んだエネルギーを暴発ッ!
その身にたたきつけてくれようッッ!!
さぁ―――!!
死ねッ!!死ねぇぇぇえええええええ!!!!!!
■先生 手紙 >
「はッ」
その最中、男は笑った。殺傷したいだけの怪異。
こちらは、今を生きるニンゲンだ――退治は何のためにあるのか。一度その殺意を宿してわかったことだ。――明日が、訪れるのならそれでいい。
激酸のレーザー。己が全力の異能を以てしても、この異能を打ち消すことなど出来まい。では何にかけたか。
「お……ッ」
自身の脳のリミッターを、0.5秒だけオフにした。この瞬間のみ、人体は損壊を問わない運動が可能になる――!
加速する戦闘論理。過剰に研ぎ澄まされる感覚器官。先刻の銃弾を、鮫の怪異が地面に潜ることで回避したように。
駆け降りる壁の先。落第街の窓をぶちやぶり、スタイリッシュ不法侵入――もとい、激酸を回避する――!
「カウント4――人生の意味とは、それが終わるということだ」
■先生 手紙 > 『七つ目のダイス』――それはイカサマか、あるいはロクではないものということだ。
■Dr.イーリス > ついに鮫が顔を出した。
つまり、好機!!
郵便ポスト「8──……。7──……」
進むカウントダウン。
落下する郵便ポストとイーリス。
自爆まで刻一刻と迫る中、鮫が強烈な酸液を吐き出した。
郵便ポスト「6──……。5──……」
「……さ、酸がこちらにきました……!? 回避……! 回避です……!」
ひとまず手紙さんが酸のレーザーを回避して安堵する、そんな余裕もない。
その直線状に、いるのはイーリスとポスト。
ただし、鮫が狙ったのはあくまで手紙さん。直撃コースではない。
残り僅かな燃料で推進エンジンを作動させた。
「…………んあっ!!」
だが、僅かな回避しか出来なかった。直撃ではないが酸のビームに触れてしまった。
まずポストの脚二本と下部の一部が酸で消失。そしてイーリス自身も右脚から右腕にかけて酸により消失していた。右頬も少しだけ抉れている。
「……ぐっ……あぁ……!」
4──……。
右腕と右脚が酸で消失した事による苦痛がイーリスに襲い掛かる。それでも歯を食いしばり、鮫を見据える。
「……SS級怪異! あなたはこの落第街の“非日常”な“日常”を乱す存在です! “私達”は、“私達”なりにここでの生活を楽しみ、生き抜いています……! あなたに、邪魔なんてさせません……! 命に代えても、あなたを止める……!」
やばい攻撃を受けてしまった……。生き延びる手段を考えようとしたけど、どうやら難しそうだ……。
ならせめて鮫を道連れにして、これ以上この落第街に被害が及ばないよう食い止める。
イーリスとポストは鮫の手前に落下。
イーリスはその場に横たわり、ポストは残った二本の肢でがっしり鮫を掴み地面に逃げないよう押さえつけようとする。
正直、ポストでは鮫に真正面からの力勝負で勝てる気が全くしない。だが後たったの三秒。
三秒後に自爆する。
三秒押さえつけるだけでいい。
自爆寸前の郵便ポストだが、このままでは鮫だけではなくイーリスも至近距離で巻き込まれる事になるだろう。
残り三秒。
■紅き地泳グ酸鮫 > あのレーザーが
外れたッ!!
あの男―――こんな隠し玉まで持っていたのかッ!!?
否
否
否
否!!!!
追えぇぇぇええええ!!!
―――。
―――!!!
―――ッッ!!!!!
男への追撃に加熱していたせいだ
女に嫌というほど隙を晒してしまったッッ!!
酸液は女の、貴殿の肉体を損傷させ、
損傷箇所より
紅き殺意へと不完全感染をさせるかもしれぬ
―――が、それは貴殿の意思が弱ければの話
貴殿の意思の強さは
貴殿自身が最もよく知るであろう
鮫は、取り押さえられる
まずい
まずいまずいまずい
カウントダウンが無常に響く―――ッッ!!!
―――この女は"回避手段すら持たないザコ"ではなかったのか?!
非力だ―――だが、それは…!!!
3秒を稼ぐには
十分すぎる
貴殿らは……
"互いに足を引っ張り合ってくれる鴨が葱を背負って来たモノ"だと怪異は思考した
だが
違った
……この結末は、二人そろって迎え撃ったからこそ
そういえよう……
畜生が…ッ
■紅き地泳グ酸鮫 > 畜生があぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあああぁぁーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!
■先生 手紙 >
――ドカァンッッッ!(ダイナミック退去)
■先生 手紙 >
窓を割り、室内に入り、そのまま床をぶち抜いて地上階――極限まで練り上げられた気で以て再び戦場に躍り出る男。
カウント2
イーリスを抱き留めながら、震脚。水面を揺らし……
――八極、背面打撃……『鉄山靠』を、駄目押しとばかりにポストに叩き込む。地を泳ぐ鮫を、液化したアスファルトに叩き込まん……ッ!
■先生 手紙 >
「――ジャスト一秒。間に合ったかな?」
■Dr.イーリス > 2──……。
意識があまりはっきりとしない中で、イーリスは手紙さんに抱き抱えられ、離脱。
それでもカウントが進んでいく。
──出来る限り、遠くへ。
言葉に出来ないまでも、気力だけは保ち続ける。
──カウントが0となり、
郵便ポストは大爆発を起こす。
辺りを飲み込む爆風と火炎。地面をも抉り、その風景すらも変えていく。先程まで手紙さんがいた建物、あれはもう至近距離すぎて細かい瓦礫となるのは一瞬だった。
半径二十メートルの建物は全て崩れ、窓ガラスが割れた範囲はさらに広範囲にわたる。
鮫が出現したので、避難する人はみんな避難している計算だ。
直後に発生するきのこ雲はそれなりに遠くからも見えたという。
辺りを破壊しつくす自爆。
最終手段に相応しい威力ではあったが……鮫を討伐するためとは言え、それは被害も含めて強大なものであった。
手紙さんの退避速度によるが、イーリス共々巻き込まれていてもおかしくない。爆心地から離れた場所なので、少なくとも死亡する程のものではないだろう。
■紅き地泳グ酸鮫 > 全てを破壊するかのような爆轟ッ!
地を泳ぐ鮫は押し付けられ、抵抗も出来ぬ。
そのまま、鮫は貴殿らの目にも触れぬまま焼き払われていく。
"人として明日の為にただ生きよう"という想い
"この街の非日常たる日常を守ろう"という想い
―――それが、今は成った事を示そう。
やけて朽ち果てた鮫
紅色が抜けきり
"怪異"が"怪異"ではなくなった事を顕す残骸が
それを証明する
―――見事。
勝負は、貴殿らの勝ちだ。
ご案内:「落第街大通り」から紅き地泳グ酸鮫さんが去りました。
■先生 手紙 > ザザッ。
「……SS【鮫】駆除、完了」
ピ。とオモイカネがどこかへとその報を送信したようだ。
……スーツの上着は衝撃と爆発で消え失せていて、火傷も少々。……だが、自損ではこの怪異は異能に至らない。
「……イーリスちゃん無事……じゃねェな。機械の身体……つっても重症か」
さて、この子は見るからに正規の生徒ではない。逃走劇から闘争劇まで付き合ったりしたものの、ハイさようなら、というわけにはいくまい。
「…………ま。おれは善人じゃあ、無いからな。君の義肢を直せる場所って心当たりある?」
負傷を感じさせない、あまりにも普段通りに――努めて、少女を労わる声色で問う。
■先生 手紙 >
毎度のことながらしんどい。祭祀局あたりが一斉浄化してくれねえかなあーと愚痴を零しながら煙草を銜える先生手紙なのであった。
■Dr.イーリス > 最終手段、自爆を用いなければ勝てない相手だった。
そもそも、まともにやって鮫を滅する事が出来ただろうか。
自爆という格上に通じる手段を用いて、やっと討滅する事ができたのだ。
故に、その損害は甚大だ。
貧乏生活の中で造った郵便ポストメカに始まり、札束も全部吹き飛んだ。
周辺の被害も酷い……。
それでも……。
「(私達は生きています)」
右脚と右腕を失い、右頬が抉られながらも、気力で耐えた感染。
先程の爆発により、さらに所々負傷している。
それでも守られた非日常な日常。
爆発で壊された区画については、手紙さんに任せればいいだろうか。彼はおそらく……公安の人だ。
もちろん、彼が公安である事は口外しない。
緩慢に瞳を空けて、微笑みかける。
「んっ……助けてくださり、ありがとうございました……」
酸による攻撃で苦し気にしているイーリス。その顔色はよくない。
それでも、手紙さんにゆるりと微笑みかける。
「私にとって……あなたは……善人でございますよ……。そう……ですね……。裏通りの……〇〇という住所まで運んでいただけないでしょうか……。仲間との合流地点です……」
イーリスの腕も足も義手と義足。だが酸に溶かされたという事で、切断部分であっても生身の肉体なのか義肢なのか非常に分かり辛い状態になっていた。
■先生 手紙 >
そして。この『不良生徒』――おそらくは二級学生を、どうするべきか。
「あらためて自己紹介しておこう。首輪をつけるのは性に合わないからね」
前置き。この少女の言った場所は、公には『違反』の範疇だろう。それを踏まえて。
「……公安委員会。『単独対策本部』、先生手紙。あまり悪いことをすると、しょっ引いちゃうからね」
秘密を共有することで、幾許かの『抑止力』を呈する。
互いの秘密を遵守する限り、ある程度のやんちゃを見逃すことで大きな事件を起こさないように。
「……じゃあ、お姫様をお届けするとしましょうか。柄じゃあないけど、役得だ」
紫煙をひとつ。煙に巻くような言葉で、落第街の深みに、少女を抱いて歩きだす、
――守るべきは公共の安全。そこにはこの街の、俗にいう落第生も含むのだ。全てに手を差し伸べられるほど、強くはないと男は思っている、
それでも。悪事をはたらく少女の内にある、この地で生きるという信念は冒涜すべきではない。そういう生き方を、しているのだから。
■Dr.イーリス > 「『単独対策本部』……? 聞き慣れない部署ですね……。先程の戦いを見ても……あなたは強い方だという事はとても理解しましたので……しょっぴかれないように気を付けなければいけませんね……」
公安という事は察していたけど、その部署自体はあまり情報がなかった。とは言え公安なので、知らない部署がいくつあってもおかしくはない。
名称から考えて、単独で動くエリートといったところだろうか。
「助かり……ます。うっ……」
苦しみで、イーリスは表情を歪ませる。
酸による腕や足の消失。それはもちろんだが、大分収まったが感染に精神力で耐えているというのと、あと鮫の酸が生命力を直接害するというのも苦痛の原因だった。
イーリスは改造人間なので、生身の人間とは違った生命体という事になろう。それでも、生命を削る攻撃を受けた反動はしばらくこの全身を蝕むような苦痛として残りそうだ。
「ぐっ……」
吐血で、手紙さんのお洋服を少し汚す事になろうか。
そうして、合流場所まで運んでいただければ仲間の不良達と再会する。
エメラルド田村「……イーリス……!? 何があった……!?」
不良のリーダーエメラルド田村及びモブの不良達は苦痛で言葉すら話しづらいイーリスに代わり、手紙さんに事情を聞く事になるかもしれない。
事情をきいたエメラルド田村と不良達は、手紙さんにお礼を言ったりしただろう。
余談だが、リトルドラゴンを相手にした不良達の成果だが、逃げる時にお金をばらまいて足止めに使うなど、実際に盗んだ金額よりもかなり減った収入となってしまったという。
ご案内:「落第街大通り」から先生 手紙さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」からDr.イーリスさんが去りました。