2024/07/01 のログ
ご案内:「落第街大通り」にカロンさんが現れました。
カロン > 人の往来はまるで波のようだと、何度かこの島のあちこちを巡って思った事がある。
細波のようにゆったりと、時に喧騒の津波の如く。だからこそ、影は人の多い場所は苦手だ。

「……大通り…落第街の中でも特に賑わう一角のようで。」

全身黒衣に黒い櫂を担いだその姿は、周囲に溶け込んでいるようで、同時に浮いてもいる。
その歩き方は少し奇妙で、普通に歩いているようでまるで地面を滑っているようでもある。
それでいて、往来の人々にぶつかる事も無い。その隙間を流れる水の如く擦り抜けていく。

カロン > ここの住人達の生命エネルギーは、あちら側と違って…一言で言うなら『濃い』。
エネルギーが凄まじいとかそういうものではなく…とても個性的、というべきなのか。
それに混じって、ヒトではない生命エネルギーみたいなものも時折感じる。
だが、それに干渉する事は無い。あくまで【渡し守】の対話の相手は死者であり魂だ。

(…不本意ながら怪異と対峙する事もありますが。)

そもそも、第三者から見れば…【渡し守】の存在自体、怪異とそう変わらない。
似通った者はいずれ引き合う…そういう何か引力みたいなものはあるのかもしれない。

カロン > (…まぁ、せいぜい怖い組織に目を付けられないようにしないといけませんか。)

怪異やら妖物やら、そういうものに対処する専門機関が確かこの島にはあった、と聞いている。
誰から聞いたのかと言えば、勿論、彼岸に送った死者からだ

…そちらだけではない。こちら側…落第街にある無数の組織にも変に目を付けられる行動は避けたい。
何せこっちはただただ、一人で魂や呪いを彼岸に送り届けているだけなのだから。
最も、そんなものはこちらの都合で周囲には全く関係無い他人事でしかないだろう。

(……とはいえ、こうして大通りを歩く程度ならそこまで問題は無さそうですが。)

カロン > 時々、食べ物の店を見かけると無意識に足が止まりそうになる。
…あのご老人に付き添って”打ち上げ”に行った時の食事が思ったより影響を与えているらしい。

(……参りましたね。本来私に食事は必要無いのですが。)

睡眠もそうだ。少なくとも食事に関しては栄養面は関係なく、嗜好品扱いとなる。
だが、この半人前の生真面目な【渡し守】がそういう嗜好品を持つ事は無い…筈だったが。

「……これは良い変化なのか、悪い変化なのか…。」

彼/彼女には分からない。そういう変化が【渡し守】の仕事に影響を及ぼさなければいいのだが。

カロン > そんな食べ物のあれこれを振り切るように、滑るような足取りで大通りを抜けていく。
精神堅牢の特性が最近どうにも揺らいでいる気がしてならないが。

「……ほんの些細な事でも、何かしらの変化になっているのでしょうか。」

【渡し守】自身も自覚のない微細な変化。本来、【渡し守】に個性は必要ない。
それに振り回されている気がしてならない…矢張り自分はまだまだ半人前か。

(…いけませんね、切り替えて己の役目を粛々と果たしましょうか。)

緩く頭を振る。隠れたその素顔がどんな表情をしているのかは誰にも分からない。
やがて、影は雑踏に紛れ掻き消えるようにその姿を消した。

ご案内:「落第街大通り」からカロンさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に黒條 紬さんが現れました。
黒條 紬 >  
『落第街 路地裏』。

たったそれだけの、シンプルなメッセージ。
シンプルだからこそ伝わる、緊急性。

『今向かってます!』

すぐに本文なしのメッセージを返して、走り出してから既に
それなりの時間が経っていた。

――復帰直後にこれですか……!

ほんの少し前に、病院で会った人物の顔を思い浮かべる。
文句は心の内に秘めておく。
今はそんなことより、彼女の安全が第一だ。

仮面を被っていなかった、とは言わない。
それでもあの一瞬、交わした言葉は、
友達ごっこ等では決してない

闇夜を駆ける。
生ぬるい風が、頬の横を物凄いスピードで抜けていく。

荒事(最終手段)はあまり得意ではない紬であるが、
体力がない訳ではない。
風紀と公安との二足の草鞋。忍耐力の必要な潜入捜査。
常日頃から、肉体のトレーニングは欠かしていない。

路地の入口に目をやりながら、走る、疾駆る、奔る――。

黒條 紬 >  
路地、人影。
背格好は彼女に似ている。

近寄る、が。
違う、全くの別人だ。
風紀の制服を見て、怪訝そうな表情を浮かべている。

首を振って、すぐに駆け出す。

次の路地へ、そのまた次の路地へ――!

全力疾走をこれだけの間。
加えて、湿気もある。身体中が汗塗れだった。


走って、走って、走って――

「……あれかッ!」

見つけた、彼女だ。
マズい状況、自明の理だ――道の上に転がってなんかいたら!


周囲の安全を確認。
ラストスパートだ、息を吐いて。
軋み始めた二つの足に力を込めて、
全力で腕を振って。

「……悠ちゃんっ!」

大の字で倒れている彼女へと、駆け寄ったのだった。

黒條 紬 >  
 
――あぁ、こんなの。きっと、私らしく、ないですねぇ。 
 
 

ご案内:「落第街大通り」から黒條 紬さんが去りました。