2024/07/07 のログ
■『虚無』 > 「ああ、邪魔だ。だからさっさと塗りつぶしてしまおう」
紅はこの3色で塗りつぶす、幸いにしてこの3色は塗りつぶすにおいてかなり強い3色だ。
「そもそも堂々と公安を名乗るのがお前くらいだからな。だがまぁ、コールサインで呼ばせてもらう」
言わないが内通者を含めると公安とのつながりはゼロじゃない。だからコールサイン呼びに。
その後のやり取りも了解したとばかりに一瞬目線を向けるだろう。
「同じくだ、まぁもしかしたら賑やかしの馬鹿が沸いてる可能性も考えたが……いい出会いだった。こちらこそよろしく頼むぞ単独調査本部」
そう言って男は出入口へ向かう。
「とりあえず、小物を潰して回ってくるさ。そうだな……まぁ、まずは。あの不良達と同数程度の紅を消してくる」
手向け。口にはしないがそういう意図をもってそう返して男はこの場を後にする。
外から響くのは金属を叩いたような甲高い音だろう。
ご案内:「戦闘の跡地」から『虚無』さんが去りました。
■『単独捜査本部』 >
「あァ」
あらゆる返事を、短く込めた。
三本目の煙草を銜える。火を点ける。
――新月から一日。夜空は月を欠いている。
「ふーっ……だとさ、イーリスちゃん。君が思ってる以上に、君は孤独じゃあ、ないンだぜ」
そんな呟きを、紫煙の後に吐き出して。
男は自分のやるべきことの、最優先の一つに向かって、歩きだす。
ご案内:「戦闘の跡地」から『単独捜査本部』さんが去りました。
ご案内:「戦闘の跡地」にイーリス・ロッソルーナさんが現れました。
ご案内:「戦闘の跡地」にエルピス・シズメさんが現れました。
■瓦礫の山 > 違法魔術研究所廃墟だったもの。戦闘の傷跡が今も残り、今はその半分以上が瓦礫の山。兵器の残骸が所々に散らばる。
戦闘終了時はまだ無事だった中央部の塔も、爆発に巻き込まれた事で下層階が傷つき、それにより今は倒壊している。
誰の姿も見かけない。ただ静寂とした戦闘の跡地。イーリスの姿すらも、そこにはない。
夕闇で包み込むこの場所は、光源がない真っ暗な場所だった。
実のところ、エルピスさんに送られたSOSのメールは、イーリスが直接送ったものではない。
自分の身に何か起きた時に自動で送られるようプログラムされているものだった。
だから、エルピスさんがメールを返そうとも、送られる返信はない。
そんなエルピスさんに送った自動送信メールに添付されていた地図。指し示す地点はこの瓦礫の山なのだが、さらに地図を拡大すればより細かく指し示す場所があった。
そこはただの瓦礫。
──ではなく、よく見ると瓦礫と瓦礫の合間にハッチが見えるだろうか。
そのハッチを開ければ、地下へと続く階段が姿を見せる。
地下には、真っ暗な闇が広がっていた。
■エルピス・シズメ >
流れを読み、道を択ぶ。
青のバックパックがちゃんと閉まっていることを確認して全力で移動する。
争いの空気をすり抜け、『紅』の類との交戦は『今』は避ける。
(この異能と技能で良かった。)
異能から得た経験に感謝しながら、探し人のことを思い返す。
たまたまジュースを買えない子がいたので、親切心から手伝った。
偶然、その子が機械に詳しく頼りになりそうなのと、友達が欲しかったので連絡先を交換した。
イーリスちゃんと出会ったのはそれが初めてだった。
最近、義腕の調子に不安を覚えたので、彼女に調整を頼もうとメールを交わしてた。
そしたら、突然『SOS』の文字と画像ファイルが添付されたメールが届き、連絡が途絶えた。
(位置そのものは、この筈だけど……)
流れに頼りながら、再度スマートフォンを開いて『地図』を読み直す。
(どうみてもただの瓦礫、じゃないね。)
目敏くハッチを見つけ出し、その辺で金属の棒切れを一つ拾ってから中に入る。
入ってから閉め直し、その棒で軽く支える。追っ手が来たら分かるようにと。
念には念を入れてから、階段を下りる。
暗闇だ。……スマホのライト機能で地面から前方を照らす。
■地下 > 真っ暗な地下。階段を降りていけば、やがて機械が置かれた部屋に行きつく。
その部屋あるもの、それはキメラの失敗作のようなものが入った割れたカプセルの数々。その失敗作キメラは腐っている。
この違法魔術研究所は元々《新世魔術師会》なる違法部活が使っていたもの。なので、それと関係あるのだろう。
いや、よく見ると全員が動けないキメラという事ではなかった。
一体だけ、機械のキメラが動いている。
狐と狼、二つの頭を持つ四足歩行のメカで、機械の爪と翼を有し、尻尾は機械の竜であった。全長1.5m程。明らかに生物ではないので、他の腐ったキメラと比べて異常だった。
背中にミサイルなんかも搭載されている。
メカのキメラ「ぐるるるる……」
メカのキメラがエルピスさんの前に立ちふさがり、道を塞ぐ。
ただし襲い掛かる事はなく、攻撃の意思もなく、ただエルピスさんを警戒しているだけの様子だ。
メカのキメラが守っているのは、どうやら奥の扉のようだ。
■エルピス・シズメ >
(僕に届いた理由は、偶然かもしれない。)
僕が直近の連絡相手だったため、そこに送ったのかもしれない。
『例の配信』を見ても、彼女には多くの人が集っていた。
もっと親しい人もたくさんいる様に思う。
(それでも、友達の危機は見過ごせない。)
「で……これはどうしようかな。」
多くのキメラ、違法な何かを研究した痕。
そして立ちふさがる機械のキメラ。
「ちょっと親近感を感じちゃうキメラさん、こんにちは。
僕はお友達を探しに来たんだ。……通してくれないかな?」
スマートフォンを開き、『地図』を見せる。
通じるかどうかは分からないけれど、彼女と直接的な繋がりを示せるものはこれ位だ。
■メカのキメラ > メカのキメラはエルピスさんを見据える。
そのキメラに感情のようなものは見えない。
だが、エルピスさんが見せてくれる地図をじっくりと見ていた。
首を傾げていた。どうやら通じていない。
改めてメカのキメラはエルピスさんを眺める。
エルピスさんの顔を双眸のカメラに移して、内部の機械が何やら検索しているようだ。
メカのキメラ「あなたの事をエルピス・シズメさんと断定。Dr.イーリスの友人。──敵性なし」
機械的な声でそれだけ告げると、エルピスさんに道を譲った。
■エルピス・シズメ >
「ありがとう。通るよ。」
謝辞を述べ、譲られた道を通る。
数歩歩いてスマホを仕舞い、守られていた扉に手を掛ける。
(この扉を開けば、危険から目を背ける事は出来なくなると思う。)
(『紅い』のにも目を付けられて、傷を負って、感染して、死ぬかもしれない。)
(公安や風紀とも、接触しなきゃいけないと思う。だけど、それでもいい。)
「覚悟ならとっくに決めてきた。」
決意を言葉にして扉を開く。
そうして、中へと一歩進む。
「お待たせ……イーリスちゃん、居る?」
■最奥の部屋 > 扉を開けた先にイーリスはいなかった。それは肩透かしのように、扉の先は廊下が続くのみなのだが、そのそれなりに長い廊下の先にある扉、そこを開ければ、様々な壊れた機械が置かれているラボだった。
いや、稼働している機械も中にはあるようだ。
この部屋だけは、モニターなどの光源があり薄暗いと言える程の明るさだった。
この違法研究所を使っていた《新世魔術師会》のとある一派は、ある程度魔術技術を伴った機械も扱っていたようだ。それが壊れた機械として残っているようでもある。
だがそれとは別に、明らかに最近持ち込まれた機械もそこにはいくつかあった。
壁にぐったりと持たれ掛かって座っているのは、所々激しく損傷した漆黒のアンドロイド《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅲ》。
そして、部屋の奥には人の四肢を立ったまま拘束するかのような機械があり、そこに拘束されているのはイーリスだった。
両腕と両足は機械に埋まっており、イーリスの体の所々が溶けて機械部分が剥き出しになっている。そのイーリスには数多のコードや点滴の針が刺さっていた。
そしてイーリスの体全体に刻まれいるのは紅き文様。
拘束機械の傍にいくつものモニターがある。そのモニター画面を見る限り、この拘束機械が生命維持装置のようなものだと想像できるだろう。
そんなイーリスは両目を瞑り、苦しそうに肩で息をしていた。
■エルピス・シズメ >
(もうちょっと、覚悟した方がよさそう。)
扉の先にはいなかった。
"そんなに浅くはない"と自身の短慮と現状を追認し、気を張り直す。
何かあっても困るので、施設の設備や資材には極力触れずに歩くことにした。
最低限の電源は彼女が動かしたものだろうか。
魔導技術の痕跡と、質と年季の異なる機械群を認めながら歩み、部屋の奥までたどり着く。
(イーリスちゃんが繰ってた機械。……酷い壊れようだ。
……あれだけのことをして形を保っているのが奇跡?)
壁際の漆黒のアンドロイドには見覚えがある。間近で損傷具合を認めれば、顔が歪む。
そしてそれ以上に目を引くものがあった。
四肢を機械に拘束され、多くの管に繋がれているイーリス。
(『保持』されている? 誰が、どうやって……それよりも)
「……イーリス、ちゃん?」
声を掛ける。
気取っている余裕はない。
■イーリス・ロッソルーナ > わりと広い地下であった。
それでもエルピスさんはラボ部屋まで辿り着く。
メカニカル・サイキッカーは動かなかった。
しいて言えば、無数のコードに繋がれている状態である。
そしてエルピスさんがイーリスの姿を確認し、そして声を掛けると僅かながら瞼が動いた。だが、それ以上イーリスの体は動く事はなく──。
代わりに、ラボのどこかに設置されたスピーカーから声が流れる。
スピーカー「える……ぴ……す……さん……。ど……うし……て……ここ……に……?」
その声はイーリスのものだった。ノイズが酷く、聞き取り辛いかもしれない。
イーリス自身の口は動いていない。
今のイーリスの体に、自我はない。イーリスの自我は体を改造した際に電子化されている。故に、電脳世界でもイーリスは存在できる。
体の損傷が激しく、それ故にイーリスはこのラボにあるサーバー内にいた。だが、そのサーバーそのものの損傷が激しく、そもそもイーリス自身の負傷が酷いので、電脳空間ですらその存在が曖昧なものと化している。
■エルピス・シズメ >
「メールでSOSが届いたから。友達だもん。」
反射的に本心を答え、状況を整理する。
まずメカニカル・サイキッカーもコードに繋がれている。
捨て置かれてはいない事を意味する。修理中か、この状態でも稼働できる可能性が浮かぶ。
……動くような事が起きてほしくないのが本心だ。
声はスピーカーから聞こえた。ノイズが酷いが、集中と経験で十分補完できる。
一瞬身体は動いたが、反射的なように見える。肉体と声のずれに違和感を覚える。
(電子ないし霊子バックアップ?クローン? あるいは継……
……頭がいたくなる。そのまま受け入れよう。)
"思考を止め、今のイーリスの状態をそのまま受け入れる。"
「……配信も見たよ。大変だったじゃ……済まないよね。
現状を伝えると、落第街の蟻型の紅き屍が出るようになった。風紀委員も公安委員も大きく動いていると思う。」
「そして僕の感情を正直に伝える。エゴかもしれないけど、危険を承知でもイーリスちゃんの助けになりたい。」
「何かできること、ないかな。」
■イーリス・ロッソルーナ > 電脳イーリス「め……ーる……。ちゃ……んと……とど……いていた……のですね……」
ラボに設置してあるカメラで、エルピスさんの姿を確認している。イーリスが見るラボの光景もまた、ノイズが酷い。
SOSメール、正直なところちゃんと届くかどうか分からなかった。何なら、このような状態なので、メールが届く事すら期待できなかった。
電脳イーリス「ありが……とう……ござ……います……。はい……し……お……はずか…………しい……ところを……おみせ……してしまい……ました……。はな……なしやすいよう……にしま……すから……すこし……まっ…………ていて……くだ……さい」
イーリスが電脳空間で色々と調整し始める。
友達だもん、という言葉に電脳空間内で嬉しさを感じたが、その感情を表すには今の状況が悪かった。
ノイズをある程度消して、イーリスも極力通常通り話せるよう調整。時間にして三分程。
電脳イーリス「お待たせしました。改めて、私のSOSを受けて駆けつけてくださり、ありがとうございます。私は今、外の様子が分かりませんので助かります……。そう……ですか、蟻型の屍が活発に……。風紀や公安もだんだん本腰を入れ始めたという事ですね。作戦が失敗した時に自動で“とある方”に送られたはずの動画が功を成しているならば幸いです」
エルピスさんからの情報を聞いて、イーリスは改めて情報の整理をした。
このラボのサーバーは、外部には繋がっていない。完全にローカルな環境となっているので、外の情報が入ってこなかった。
電脳イーリス「私を助けに……嬉しいです。その……ご迷惑を掛けてしまい申し訳ございません。エルピスさん、今の状況を説明しますね」
電脳イーリス「まず、今話している私は、この部屋にあるサーバーにいる私です。私は、この体を改造する際に自我を電子化しました。それ故に、私は電脳世界でも存在できます。私自身の損傷が激しいので、電脳空間においてもそれがフィードバックされて酷い状態なのですけどね」
まず、イーリス自身は動いてないのに、どうして会話できているかの理由を述べた。
電脳イーリス「“あの戦い”の後、私は最後の力を振り絞ってあの漆黒のアンドロイド《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅲ》を動かし、この部屋に逃げ込んで隠れ潜みました。配信を見てこの場にやってくるのが紅き屍骸か、あるいは敵か、味方か、その判断がつきませんでしたからね。なので、私をここで保護している存在はいません」
ここには、イーリスが自分で訪れて、自分で自分を治療しているという事になる。
話している内に、少し離れたところにあるモニターが切れた。さらに、いくつかの機械も勝手に停止する。
電脳イーリス「……そして、もうこのラボにある非常用電源の電力はそう多くありません。元々、このラボは先日の作戦を行う上で仮設で用意したもの……。もし電力がなくなれば、私の命を繋いでいる生命維持装置が停止し、そのまま私はここで死亡するでしょう」
今も電力が減り続けている。
ここに来るまで電気もつけずに真っ暗だったのは、節電だ。つけようと思えば電灯をつけれたけど、無駄な電力を消費したくなかった。
電脳イーリス「もう電力が枯渇するまで秒読みでした……。そんな時に、あなたが……来てくれました」
来てくれた、その言葉はどこか涙声のようなものも含んでいた。
■エルピス・シズメ >
「僕も良かった。腕のメンテナンスを頼むつもりで送ったメールが、こんなことになるなんて。
……ちゃんとメンテナンスの依頼を受けて貰うの、まだあきらめてないからね。」
喜色の声がエルピスの耳に届けば、彼の声色も安堵の色を帯びる。
別に大丈夫、とは言えず調整を待つこと三分。
その間にバックパックを降ろし、荷物を検分する。
少なくとも、一般的な医薬品や食料の出番ではなさそうだと判断したのか、表情が曇る。
「そうだね。僕には良く分からないけど、きっと功を奏していると思う。
今のイーリスちゃんがサーバにバックアップされているのも理解したよ。
そうしても、逃げられない呪いだってことも。」
音の調整が終わり、電脳イーリスと情報の整理をし合う。
彼女も色々策を弄していたらしい。疑問が残る部分はあるが、ひとまず飲み込む。
問題なのは、イーリスの現状だ。
最後の力を振り絞ってここに隠れ、
無理やりメカニカルサイキッカーを操って自己治療を試み、
それでも尚消耗は止まらず、電力を消耗している。
「にしても、自我を電脳に……そっか、それで喋れているんだね。
それで、イーリスちゃんを守るものは誰もいない……。
その上で、何とかこれたのが僕だったのかな。」
(あれ? そうなると入口のキマイラは……)
戦力に数えていないのが、戦力外なのか。
本筋ではないと判断し、思考の隅に追いやる。
とにかく、今の一番の問題は、
電力が尽きるまで秒読みだということだ。
「うん。僕が来た。『電力』をどうにかすればいいんだね。
じゃあ急がなきゃ。電力を供給する場所と、必要な電力は? アテはある?」
焦りからだろう、途端に早口になる。
当然、裏でも思考を回している。
「とにかく、電力を供給できるポイントだけでも。」
■イーリス・ロッソルーナ > 電脳イーリス「申し訳ございません。腕のメンテナンスは……もうしばらく出来ませんね。しかし、一度引き受けたからにはお約束は守ります。いずれ……」
と、この返事が返ってきたのは音声調整などをしていた三分後であった。
電脳イーリス「食料は普通に助かります。もう二日も何も食べていない状態で……。実はお腹が凄く空いています」
音声調整をしている時もカメラは動き続けていた。エルピスさんの荷物検分中に食料がレンズに映ってそう言葉にした。
電脳イーリス「そう……ですね。呪いは……周囲に迷惑を掛けてしまいます。いっその事、ここで電力を使い切り、そのまま死んでしまった方がいいのではとも考えていました。しかし、今私が死ねば、紅きゾンビと化するでしょう……」
安易に死を選べない。
今イーリスが死亡する事は、紅き屍骸に戦力を与える事を意味する。
イーリスに仕掛けられた呪いの時限爆弾だが、解析の結果爆発まで時間はあるだろう事は分かっている。死を選ぶべきか、考える猶予ぐらいはある。
電脳イーリス「そうなりますね。万が一の時に備えたいくつかの策。途中で途絶えたり、無駄だったものの方が多かったですが、あなたへのSOSは有効に機能したようです。あなたが来てくださり、本当に助かりました」
もし作戦が失敗した時に用意していた策は、そのほとんどが無駄だったけど、エルピスさんが駆けつけてくれて安堵の息を漏らしている。
電脳イーリス「おそらく先程あなたと相対したであろうメカキメラは、このラボを守るようプログラムされているだけのロボットです。私の体内コンピューターが直接動かしているわけではありません。今は、紅き屍骸がもし地下まで入ってきた時に、運良ければ撃退してくれるよう期待して設置しています。このラボの電力が途絶えると、メカキメラも稼働しなくなりますね」
キメラについて疑問に思うだろうという事を察して、キメラについても説明した。
あのキメラはいわば、今の傷ついたイーリスを守る最後の守護者だった。もし紅き屍骸や敵対する者に最後の守護者を突破されたなら、もうどうしようもない。
電脳イーリス「いえ、エルピスさん。別のお願いがあります。どうか、私をここから逃がしてください。この生命維持装置は、私の生命を維持すると同時に治療も施しています。このまま電力が尽きれば物資もなく私はここで死にゆくのみでしたが、外に出ればまた新たな治療を施す事ができます」
■エルピス・シズメ >
「空腹もフィードバックされるんだね。
でも、どうやって食べさせよう……こう?」
嚥下とか大丈夫かな、と思い液状の栄養食を選んで取り出し。
会話の途中で口に添えるように流し込む。咽せたら止める。
会話しながら食べさせるのは、不思議な気分だ。
「そうだね、『そんなに早く会いたかったんだ?』なんて言われかねない。
……正直、呪いを通してこの状況を見ていられそうな気さえするよ。」
"とは言え呪いなどを経由しなくても、あの王はその位はやってのける。"
彼にとってはその様な認識だ。月は見えなくてもソラにある。
だとしても、怯えても躊躇ってもいられないため、話を進める。
「そっか、あの子はここで役目を終えるんだね。」
キメラはただそこに在るだけの防衛ロボットだったらしい。
動力が尽きれば動かなくなると聞いて、キメラを労うような言葉を紡いだ。
「……どうしようもなければ……って、別のお願い?」
焦っていた思考を戻し、イーリスのプランを聞く。
"イーリスを逃がす。"つまり、生命維持装置ごと持ち出せば良いのだろうか。
それともサーバーの自我を確保すればよいのだろうか。
何にせよアテがあると分かれば、焦りは止まる。
「分かった。僕が責任を以ってイーリスちゃんを逃がす。場所にアテはある?」
"『エルピス』ならそれが出来る"
確固たる意志を証明するように、2つの機械の右腕と回す。
「この生命維持装置ごと持っていくとして、サーバの自我の方はどうすればいいのかな。
後は持ち出す間の動力のプラン……きっとあるよね?」