2024/07/26 のログ
ご案内:「落第街大通り」に九耀 湧梧さんが現れました。
九耀 湧梧 > 「ふぅ――。」

小さく息を吐き、黒いコートの男は携帯食を口に運ぶ。
口の中の水分が奪われ、口内がパサつくが、この際文句は言えない。

真夜中の落第街、大通りの外れ。
軽く気配を隠しながら、黒いコートの男は佇んでいた。
刀剣狩りを廃業してから今までで襲撃を受けた回数は4回。
思った以上に噂の広まり方が大きかった、と思わざるを得ない。

最も、襲撃者の大体は数頼みのチンピラ共。
幸いというか、不幸にしてというか、最初の一件以外に魔剣や妖刀の類を持っているような
危ない手合いを相手に回す事はなかった。
しかし、あまりに襲われる回数が多いと流石に多少疲れてくる。

「この際、魔術でも使って倒した相手の直近の記憶を消させて貰う位はした方がいいかね…。」

またもため息が漏れてしまう。これはよくない。
携帯食を食べ終えると、一緒に買っておいたボトル入りの水で口の中の渇きを洗い流しつつ、水分を補給する。

九耀 湧梧 > ボトルの水を飲み干すと、軽く口を拭い、空のボトルをコートの裏地へ放り込むように仕舞う。
なるべく節約はしてきたつもりだが、換金出来そうな宝石類の蓄えも少し怪しくなってきた。
食事にかかる金もバカにはならない。

「……用心棒の真似事でもするかな。」

少し考え、路銀稼ぎの策の一つに思い至る。
こういった後ろ暗い街だと、そういう仕事を求められる事も多い。
後々に悪影響を残さない働き口を求めると、少々面倒になって来るが、背に腹は代えられない。

「ひとまず必要なのは……顔を隠す為の仮面辺りか。」

あまり顔を覚えられるのも避けた方がいいだろうか。
そんな事を考えながら、携帯食の小さな紙箱と内袋をぐしゃりと握り潰し、これまた無造作にコートの裏に放り込む。

ご案内:「落第街大通り」にシアさんが現れました。
シア > 「んー……」

街を見て回って、歩いて、歩いて……そして、いつしか"何処か"へと足を踏み入れていた。
空気が違う。匂いが違う。気配が違う。
そして、わかりやすく景色が、違う。

「危険な場所といわれてたやつかな、もしやこれは」

小さく首を傾げる。
当然といえば当然ながら、このお上りさんのような少女を見つめる影は多い。
すわ、カモか、と。

「思い込みはいけない、何事も?」

少女は臆すること無く、歩みを進める。
それに従って、怪しい気配の幾つかもついて回る。

「んー……」

それでも変わらず、まっすぐに足を進めていく

九耀 湧梧 > 「ん……。」

奇妙な気配に思わず目を細める。
己に向けられたものではない、だがこの街では明らかに異質な気配。
そっと視線を向ければ、ジャージ姿に軍手の少女がひとり。
背は低めの部類だろう。

(おいおい、正気か…?)

つい思った事は、何とか口には出さずに飲み込んだ。
自分の勘が錆び付いているか、余程欺瞞隠蔽が上手いかでなければ、何処からどう見てもごく普通の少女である。
この街では明らかな異物であり、同時に「餌にされる」タイプだろう。

少し観察すれば、怪しげな気配がいくつかついて回っているような雰囲気。
ひったくりか、誘拐か、さもなければ口に出し辛いような行いを企んでいるか。
どちらにせよ、穏やかではない。

(……見てしまったからなぁ。)

黒いコートの男は純然たる善人とは言い難かったが、それでも悪人ではあり得なかった。
少なくとも、この状況を平気で放置する事が出来る位の悪人では。

用心深く、しかし気取られぬよう注意しながら、明らかに無防備な少女とそれを付け回す気配の様子を探る。

シア > 「暗くて重くて一味違うね、ここは」

ほうほう、とあちらこちらを見回す。
今まで見てきた学生街とは流石に違うことを認識する。
相変わらず、怪しい気配は幾つかついて回る

「……ん?」

少女が小さく首を傾げる。
そのまま、足を止める。
当然のように、周りの気配たちも動きを止め……
空気が、わずかに変わる。
何かのタイミングを図るように

「ふうん?」

きょろきょろと、なにかに気づいたのか、それとも何かが気になるのか、周りを見回す。
もちろん、隠れた気配たちは簡単に視界には入らない。

「……んー。
 荒れてる?結構」

ぐるぐると周りを見回しながら、そんなのんびりした感想を口にした。

九耀 湧梧 > (……気付かれた、って感じじゃないな。)

足を止めた様子を少し遠めに観察しながら、黒いコートの男は状況判断を続ける。
――追いかけている方の気配が変わった雰囲気。
何を企んでいるかは知らないが、事を起こすタイミングを計っているのか。
そして、尾けられている少女の方はやはりというか、全く気が付いている様子がない。

(そりゃ、カモが葱背負って歩いているように見えるよな。あるいは、金蔓か。)

さりげなく。
軽く煙草でも探るような雰囲気で、片手をコートの内側に差し込む。
男の用意は、それで充分。

きょろきょろと周囲を見渡すジャージ姿の少女の注意を引かぬように気配を鎮めながら、
怪しげな気配が「事」を起こすのを待つ。

――出来れば声を掛けてそのまま他の街との境界まで連れて行きたい所だったが、
下手に動いて怪しまれるのは悪手になりかねない。
故に、後手に回り――後の先を取って割り込むという対応を取らねばならないのが、少しもどかしい。

シア > 「……いないね、人?」

相変わらず、周りを見回した少女はそう、言葉をこぼす。
まるで何かを確かめるように。

「……よし」

何かを決意したように声を発すると、大きく伸びをする。
そして、体の各所をぐりぐりと動かし始める。
まるで体操をするようにも見える。

「いいよね、走ろっか。誰も居ないし、広いし」

ダンッと地面を蹴る。
言葉通り少女は走り始めた。
周りの気配が突然のことに慌て始め、一斉に走り出す。

急なことで隠れることすら忘れて、少女を追う

「いい感じ」

少女はと言えば、側転や転回を交え好き放題に道を動き回る。
その行き先は――

九耀 湧梧 > 「――おいおい。」

突然走り始めた少女に、さすがの黒いコートの男も少々呆気に取られてしまう。
だが、その行動が良い意味で尾けていた連中の意表を突いた形になった。
潜んでいた連中が意表を衝かれる形で走り出し、炙り出された格好になった。

(まあいい…こっちにゃ好都合だ!)

最後の一人が自身の目の前を通り過ぎた事を確認した上で、黒いコートの男も素早く走り出す。
その速度は――少女や追跡者が異能でも使っていない限りは、余裕で追いつける速度。
速度上昇の術を使っているので、もし思った以上のスピードでも術の重ね掛けや出力強化を行えば良い。

最後尾を走っていた追跡者を補足すると、コートの裏側から取り出した刀を抜き放ち、一撃で気絶させられる箇所を
一撃で気絶させられる重みで以て狙い、振るう!

(…確かこの先、袋小路だよな。大丈夫か…?)

暇があれば歩き回り、地理の方はある程度把握していた。
最後尾の追跡者に一撃を振るう合間に、そんな事を思わず考える。

シア > 「あらら」

バタバタと走り出した後からついてくる者が出てくる。
その音に気づいたのか、どうか。
ちらりと後ろをみて、首を傾げる。

「追いかけっこかな、これは?」

意外な速さで道をかけていく。
しかし

「あれ?」

少女は当然といえば当然、落第街の地理など把握していなかった。
走り行く先は袋小路。
ちょうど建物と建物の間で道が綺麗に塞がっている。

不審者達 > 追いかける不審者たちが嗤う

「くそ、急に走り出しやがって!」
「余計な手間かけさせんじゃねえ!」
「だが、そこは行き止まりだぜ?」

そう、口々に叫び追い込んでいく

シア > 「行き止まりだね、確かに」

どう見ても、行き止まりであり後からくる男たちに道を塞がれる形になる。
このままであれば、逃げ場もないであろう。
しかし

「見せてあげるよ、山育ちの力」

少女は壁となって立ちふさがる建物に向かって跳ぶ。

壁を蹴る

反対の建物に飛びつき、蹴る

そうして、見る間に男たちの後ろに器用に飛び降りる。

「ね?」

少女は小さく首を傾げた

それは異能でもなんでもない
ただ、鍛えられた運動神経の成せる技

ただし
それを見た男たちは逆上したのは言うまでもない

九耀 湧梧 > (思ったより足が速い…!
が、やっぱりこうなるか!)

見れば、走っていた少女は袋小路で完全に足が止まっている。
思ったよりも距離が稼げなかった。
こうなったら、加減をやめるしかない。

「はいはい、悪い人達は睡眠の時間だぜ――!」

そう声をかけながら速度を上げ、後ろからの更なる追跡者に目を向けた者に向けて、一撃での気絶を
免れない攻撃を次々振るい、頭数を削りにかかる。

(とはいえ、これでどれだけ減らせるか…!
難儀なものだぜ、全く!)

九耀 湧梧 > と、思ったのも束の間。
建造物の壁を足場にして、器用に包囲を躱し、抜け出した少女の姿に、黒いコートの男は思わず舌を巻く。

(――これは、俺も少し軽く見過ぎたかね。)

位置としては、凡そ自分を挟む形で、少女が走って来た道の方へ、追跡者達が袋小路にそれぞれ位置する形か。
少女の方には自身が叩き伏せた追跡者が何人か倒れている筈だが、気絶しているであろうと思われるので
心配しなくても良い――筈である。

何より、

(人質を取られる危険性は、かなり低くなったか…!)

一番危惧していたのは、少女が人質に取られる事。
が、少女が包囲を抜けだした事でその懸念も限りなく低くなったか。

シア > 「……あ」

ぶぎゅる、と後ろで気絶する男を踏んでしまう。
それで起きるほどではないが。

「んー……」

仔細に貴方の方を見る。
男たちに紛れて、男たちを狩る男を。
そして、小さく首を傾げた。

「裏切りというやつ?これが。
 紛争?抗争?」

危機は感じたのかもしれないが、事態をまだ正確に把握していないのだろうか。
そんな感想を漏らす。

「さて、どうすればいいかなボクは」

そこから踵を返すでもなく、のんびりと様子をうかがっていた。

九耀 湧梧 > 「裏切りとは心外だね。
俺が狙ってたのは、最初からお前さんの後を付けて回ってたこいつらさ。」

ほんの少しだけ後ろを振り返りながら、少女にそう声をかけ、改めて袋小路に追い詰められた形になった
追跡者達へと向き直る。

「――さて、お前らには選択肢が二つ用意されている。
このまま此処で起こった事を忘れて、伸びてるお仲間を連れてお家に帰るか。
それとも――ああして伸びてる連中の仲間入りをして、他の連中に身ぐるみ毟り取られるのを待つか。

さて、どっちがいい。」

少しの殺気を混ぜ、追跡者に対して手にした刀を向ける。
穏便に済ませる選択肢は、人質を取られる危険性が少なくなった事で生まれたものだ。
勿論、抵抗するつもりなら手加減抜きで叩きのめしに向かう心算は充分である。

――もし追跡者連中が、「刀剣狩りの男」の噂を知っていれば、その男の特徴が
黒いコートの男のそれと概ね一致する事が分かるだろう。
「刀剣狩り」の餌食になって、少なくない数の無法者が叩き伏せられた事も。