2024/08/04 のログ
ご案内:「違法感染ウイルス工場跡の花畑」にDr.イーリスさんが現れました。
Dr.イーリス > 「綺麗な花、育っておりますね」

落第街の一角。
眼前に広がるのは、月下で光る色とりどりの花々。所々に建物の跡とみられる柱がある。
この場所は元々、違法で危険な感染ウイルスをつくっていた工場だった。故に、この場所にはあまり人が寄り付かない。
ウイルス培養のために非道な人体実験を行っていたが、そのウイルスが工場内で漏れ出し阿鼻叫喚。
風紀委員が駆けつけた時には工場全体が封鎖され、工場内部は悲惨な状態になっていたらしい。

なんだかんだあって防護服を着た風紀委員達が工場をぶっ壊しながら異能などを用いて消毒などを行いつつ制圧。
ウイルスが外部に漏れだす事なく犯人グループの違法部活は逮捕。ただし、違法部活のメンバー、人体実験の被害者含めて、逮捕後もしくは救出後に三日を超えて生きていた者はいなかった。
そんな惨劇があった工場。ウイルスにより土は腐り果て、百年は雑草すら生えないと言われていた。

「これだけ過酷な大地で育ったなら、大抵の所で元気よく育ちそうです。花々が元気に咲いてくれて、よかったです」

イーリスは草の上にぺたんと座り、花々を見て目を細めて微笑む。
これは今年の春あたりからイーリスにより行われていた緑化実験。
凶悪なウイルスで汚染されてしまった大地でも育つ強い植物をつくる事。そして、その花々が大地を清浄化させる事。それらが可能かどうかの実験だ。
眼前に広がる光景を見ての通り、その実験は成功していた。例え非道な実験により生み出されたウイルスに汚染された大地でも、ちゃんとこうして綺麗に蘇る。
それは、イーリスが頑張って育てた花々だった。
今では、感染ウイルスによる影響はなくなっている。

イーリスの傍には、護衛でつれてきていたキメラ型メカが草の上で気持ちよさそうに丸まって眠っている。元々、ある地下ラボの門番をさせていたキメラ型メカ。
キメラ型メカは、狐と狼、二つの頭を持つ四足歩行のメカで、機械の爪と翼を有し、尻尾は機械の竜であった。
昼頃に不良集団のアジトのラボで《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅲ》をメンテナンスして、続きは明日にしようと今は置いてきている。

ご案内:「違法感染ウイルス工場跡の花畑」に紅き死ノ花園さんが現れました。
紅き悪魔ノ針鼠 >     見つけたぞ。最優先撃破目標(Dr.イーリス)―――!!!
紅き死ノ花園 > 昨日からずっと
落第街上空から貴殿を嗅ぎまわる卑怯者がいた

緑化した大地

逞しく育った花々

そこに座り込んで楽しそうにしている
怪異はその理由など知りはしない

だが

そんな…

花なんぞと…

楽しんでいる暇が…

貴様に…

あると思うか…?!


突如として、そこに次々と紅き花が転移してくる

"呪いは既にDr.イーリスの場所を示す事はない"

だというのに

正確無比にその場所を探り当てて
確信をもって工場の跡地へと送り込まれて


花園を成した。

包囲し切る、花々。

最早数え切れぬ程多数の花の中に
とりわけ巨悪の殺害欲を放つ薔薇が咲いていた。

では
殺そう

殺害欲に塗れた猛毒の嵐が巻き起こる―――!

"卑怯"だ等と戯言を抜かすなら嗤おう
殺すのが目的の行為に"卑怯"などありはしない―――!

Dr.イーリス > お花畑を眺めて楽しんでいたが、この園芸が緑化実験である事も忘れてはいけない。

「お花を眺めて楽しんでいる場合ではなかったですね。経過記録を取らなければです」

普通に園芸を楽しんでいるわけではなく、科学者としての本分も果たそう。
そう思ってイーリスの眼前、虚空に画面を映し出した、その時だった。
月下の綺麗なお花畑に、突然の乱入者。
無数の、死ノ花。
ここが花畑という事もあり、死ノ花が生えてきているようにも感じられた。

「…………!? ……死ノ花!!」

“王”が予告した、大量の死ノ花だ。
イーリスとキメラ型メカが立ち上がる。
それは一輪だけでも厄介なもの。 
この街には紅き屍骸が多くおり、その屍骸達は意思疎通している。つまり、何らかの屍骸がイーリスを見つけたという事。
潜入に優れた羽搏ク針鼠あたりだと思ったが、手紙さんから針鼠は討伐されていると聞いている……。
だが“王”なら、針鼠を蘇らせる事も可能だろう。

イーリスが特に注目したのは薔薇の死ノ花。おそらくこの死ノ花園を統括する存在……。

「せっかくお花が育っているこの場所にわざわざ死ノ花を送り込んでくるなんて、随分と悪趣味ですね、“王”!」

お顔を顰める。イーリス側から呪いの繋がりを“王”に繋いで、“王”に発した。
だが死ノ花は相対した事があるのでその行動は分かっている。イーリスはキメラ型メカに乗り、初撃の嵐が届かないところに即座退避する。
イーリスは馬もろくに乗りこなせないが、体内コンピューターで操作しているメカなら別。文字通り自分の意思で動かしているので、キメラ型メカの激しい動きでも振り落とされる事はない。

花畑のいたるところにある柱、そこから複数の小型ガトリングが出現する。侵入者を迎撃するために、念のために設置しておいたものだ。
小型ガトリングが火を噴き、様々な角度から死ノ花を銃撃していく。

紅き死ノ花園 > 貴殿の想像は当たっている。
紅き薔薇は、全ての花に栄養でも送るように
そのツタを接続しているのに気付くかもしれない

機械と、最優先撃破目標に退避される。

実は―――それは"狙い通り"だった。

この嵐は、貴様らを狙ったものではない…!!

真の狙いはここに咲き誇る花畑の花。

それらすべてを蹂躙し、
紅く染めなおすためのものだッ!!

死に絶える花々
そして紅く咲き誇り生き返る花々

大量の花が蘇生する中
生前と同じように蘇生するものもあれば、
……一部、生前より凶悪に、殺害に向いた形状に蘇る花もある。
棘が生える
毒蛾を生み出す
刃物のような根が生える

可愛らしい花園を、死ノ花園へと変えようぞ

そして

銃撃
圧倒的な大量連射のガトリング砲
だが、それも想定内。
何故なら依然紅き死ノ花を前に、マシンガンにミサイルにと、
多量に打ち込まれたことを"覚えている"からだッ!

次々に紅き六角形の障壁が明転して、銃撃を遮断する
単体への攻撃だったなら、質量で押しつぶせただろうけれど

この数を前には、幾多の銃撃すら無力―――!

>  
「あっらあ、酷いなぁイーリス♪こんな場所があるなんて黙ってて~」
「キミがこんな花畑作ってるなんて知らなくってね!」
「王様、ほんとはもうちょっと後にしようと思ってたんだけど~」
「感極まって送っちゃったぁ!!」

「楽死んでくれると、嬉ちいなっ♪」

Dr.イーリス > イーリスはキメラ型メカに乗り嵐を回避できた。
そして死ノ花園の狙いもなんとなく察していた。
察した上で、もはや何もできない。

イーリスがこの過酷なる大地に植えた花々。
上手く育たなかったお花もある……。
イーリスが色々工夫したりもして……。
いつしかイーリスもそんな花々に愛情を抱くようになり、
やがて元気に育ってくれた。

そんな花々が一瞬にして、死滅していく……。

「…………そんな事って……」

毒の嵐が吹き荒れた時に覚悟をしていた、しなければいけない事だった……。
だが実際に、花々が悍ましい姿として復活していく光景には、悲しみで顔を青ざめる。

小型ガトリングの弾は花々に届かない……。
一輪一輪が強力なお花という事は、先の戦いで把握している。

「……フェイルド・スチューデントの仲間達に続き、よくも私が育てた花々を……! この場所をあなたに知られるべきではなかったですね……! 本当に、空気を読んで後にしてほしかったです」

今は戦いに集中しないといけない。絶望や悲しみを今は一旦振り切り、怒りを“王”にぶつけてしまう。

今ある戦力では絶対に勝てない……。
メンテナンス中だった《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅲ》を遠隔操作この場に来させるようとするにはそれなりに時間が掛かる。はっきり言って、メカニカル・サイキッカーが到達する前に、イーリスが持たない……。

「……どうすれば…………」

それは体内コンピューターのAIが判断した。
エルピスさんのスマホに、「SOS」の通知が届く。

> 「イーリス」



「お前の生きる意味全てを否定してやる」

そうすれば、
最後は自分で命を手放したくなるだろう?
空気を読んで行動してほしい―――?
違う、違う…
これが最善手だッ!

「お友達も」
「お花も」

「ああ、そうだ、キミの大切な彼も!」

紅き死ノ花園 > 花園の包囲を振り切り、
そしてメカに乗って抜け出したイーリス

ガトリングを障壁で阻みながら

紅き死ノ花は…

以前は決してしなかった行動を開始する。



繰り出されるのは、
氷の弾丸だった

吹雪のような氷冷の礫が次々に繰り出されていく。
その威力は鉄すら抉る程

溶岩に沈められて殺められた事
機械には手も足も出なかった事

それを今

克服するッッ!!

> 「あっ」
「折角だからお花ちゃんには王様の慈悲で」


「愉快な能力を与えてみたよん♪」

Dr.イーリス > 「……生きる意味の否定……? ……!? 私を殺したいのなら、エルピスさんではなく私を狙えばいいです……!」

声を荒らげた。
とは言え、イーリスの取れる手段は精々時間稼ぎ……。
メカニカル・サイキッカーが到着してから反撃に転じればいい。
到着まで時間は掛かってしまうが、堪え切れさえすれば溶岩の異能で全て溶かしてしまえばいい。
既に……イーリスが愛情を注いできた花畑はそこにはないのだから……。

そこでイーリスは思い出す。
パワーアップしている死ノ花。
はたして、溶岩はどれ程通用するのだろうか。溶岩で溶けない花はありえるのだろうか……。

不安にかられて、メカニカル・サイキッカーが到着するまえに倒されてしまったら元も子もない。
相手は毒を撒くのが主。その毒をキメラ型メカでなんとか避けつつ、例え吸ってしまっても耐えきれさえすれば……。

「直接的な攻撃……!? そんな……!」

以前には見られなかった攻撃。
だからほとんど反応できなかった……。
キメラ型メカの前足を含む全身の至るところが砕かれていく。

「のわっ……!!」

キメラ型メカが倒れ地面に投げ出されるイーリス。
その倒れているイーリスに容赦なく氷塊が迫るも、キメラ型メカが最後の力を振り絞ってイーリスの盾となる。

「……ッ!!」

だがそれでも盾となっているキメラ型メカの間を擦り抜けるようにして、一つの氷塊がイーリスの右脚を粉々に粉砕した。

「……ぐ……ああああぁぁぁっ…………!!」

悲鳴が花畑に響き渡る。
ガトリングが通用せず、キメラ型メカはもはやただの残骸、そして右脚を失って立つ事もままならなくなったイーリス。

> 「あっはっはっは!!そうだねえ!」

「つまり―――"どっちも狙う"!!」

「それだけだよ~」
「王様にはそれが出来るんだ」

「王様は数多の家臣がいるのだから」

紅き死ノ花園 > 何故氷を選んだか。
それは単純な攻撃手段もそうだが

一番は機械を害し、
花を焼かれないための対策だった。

二度と同じやり方で破れはしない。

ただの氷属性の汎用量産型異能。

誰でも使えるようになる極めて低レベルの異能。
弾丸を作って飛ばす程度でしかない異能。

だが。

"全ての花"がそれを扱えるなら、
最早それは脅威だと言えるだろう。

そして

それだけの異能の力があつまれば―――
1つ1つは弱くても―――

紅き薔薇が号令をするように、
花々に力を注ぐ

吹雪のような氷が生成されていく

たてなくなったイーリスを狙って打ち出される



大量の氷の殺意の礫が乗った嵐―――!
機械すら容易く砕け散らす嵐―――!


これで、終わりだァァァァァーーーッッ!!!

死ね!
死ね!!
死ねェェェ!!!!!!

Dr.イーリス > 「……うぅ…………エルピスさんは狙わせません……」

早く“王”を討たなければ、さらに取り返しのつかない事になってしまう……。
その声は、右脚を失った痛みで弱々しいものだった。

……それ以前にこの場を切り抜ける方法がない。
“王”が死ノ花に氷の能力を付与したのはおそらく炎を対策したがため……。

既に残骸になっている唯一の戦力キメラ型メカ。
右脚を失って倒れているイーリス。
死ノ花々は続けて、数多の氷塊をイーリスに放っていた。

「…………!!?」

こんな所で死にたくない……。
そう願っても、もはや終わりだった。
抵抗する力なんて一切ない……。
イーリスの手は“王”に届かず、ただ死を待つだけ……。

死を悟った時に、走馬灯のように蘇る“彼”の姿……。
お人好しと思えるぐらい優しくて、とても強くて、可愛らしくて、だけど決める時は決めてそこが凄くかっこいい。
彼の事が好きになって、いつの間にかに彼を目で追っていて……。
一緒に幸せを見つけると約束したのに、もはやその約束も果たせそうにない。
結局、彼の義手をメンテナンスしてあげる事すらできなかった……。

「……ごめんなさい…………エルピスさん……」

死の間際に、“彼”を思い出して、涙を浮かべる。
ぎゅっと目を閉じる。
次にこの目を開けた時は、きっとイーリスは現世にはいないのだろう──。

ご案内:「違法感染ウイルス工場跡の花畑」にエルピス・シズメさんが現れました。
エルピス・シズメ >  
「そんな顔は……しなくて良いよ。」

 優しい夢のような、柔らかい声が響く。
 焔の翼と共に、『彼』が顕れる。

 『彼』は刹那の氷嵐とイーリスの間に割り込み──

 背に生やした翼を燃え滾る焔の巨剣に替え、瞬く間すら赦さずに嵐ごと『花』を薙いで灼き払った。
 悉くを灼いた『彼』の優しい声に秘められた激情は、計り知れない。

「ちょっとだけ、我慢してね。」

 振り返って、右脚を失ったイーリスを優しく抱き寄せて、切断された右脚を焼いて止血する。
 それから自分のトップスを脱いで包帯代わりにして、強く巻いて縛る。

「状況だけど、『かつてのエルピスから回収した炉』を拝借して無理やり使ってる。」
「だから、ごめんなさいはお互い様で……いっぱいのものを、イーリスに直してもらう事になりそう。」 
「メタラグは暫くお預け。」

 イーリスが発したSOSを受け取った彼の行動だが、
 まず修理予定だった『前エルピスから回収した感情魔力混合炉』を拝借して自分に組み込んだ。
 その後、愛用の強硬度サバイバルナイフ2本を携え全速力で割り込み、その激情を以って一帯を灼き尽くし、今に至る。

「流れは断ち切った。……王様のこと、イーリスに勝って欲しいと思っていた。」

 イーリスから離れて立ち上がり、『灼いた跡』へと向き直る。

「『同じ人を好きになった同士』で、それが一方的な略奪愛であっても……」
「イーリスの手で、決め手を与えて(決めてもらって)……乗り越えて欲しいと思ってる。」

「だけど、今はそんなことはどうでもいい。お前たちのことは……」

エルピス・シズメ >   
 
「赦さない。」
  
 

> 「あらぁ~?!」
「エルピスきゅんが攻めて来たよ♪」

「あっはっは、元気がいいねぇ!」


「折角の花束を見る間もなく台無しにされちゃったぁ……」

たはは、と笑う声は。
恐らく呪縛を分かち合った二人ともに聞こえる。

紅き死ノ花園 > 灼ける花。

対火炎の対策をしてなお、焼かれる花園。

なんという火力!
なんという激情!

さりとて

さりとてだ。

このまま黙ってやられるわけ、ないだろう?


一瞬で焼き払われた花の被害を鎮めるように
辺りを氷の異能で冷ますのが

中央に鎮座する

紅き薔薇

どうやらのんびりぶっ殺すってわけにはいかないようだ。



全部中央に力を集めようか。
紅き薔薇は

真っ紅な氷の花と化す―――

全く……

折角の殺しを……

邪魔してくれて……

あと……

一手だったというのに。

Dr.イーリス > 死を覚悟……は出来ないまま、だが眼前に迫る確実なる死に瞳を閉じていたイーリス。
だが氷塊がイーリスを粉々にしたような死を伴う感触はなかった。
意外と死ぬ時は痛みも苦しみもなく、あっさりと死ぬものだと思った。

優しい“彼”の声が聞こえる。まるで羽毛に包まれるかのような温かい声。
今、とても聞きたかった声。


瞳を開くと、そこにあるのは“彼”の背中だった。殿方としては華奢な背中。その背中に、焔の翼が生えている。
その背中が、今はとても逞しく、大きく見えた。

「…………エルピスさん……!」

右脚が粉砕され、血も飛び散り、その苦痛で少し顔を顰めながらも、ぱぁ、と明るい表情になった。

エルピスさんの翼が焔の剣に替わり、そして死ノ花を灼き払われる。とても壮絶な光景。
地獄のような花園が炎に包まれていく様。
イーリスは今生きており、エルピスさんが守ってくれた。

「助けにきてくださったのですね……。私、もう死ぬかと思いました……。エルピスさん……。ひぐ…………」

エルピスさんが抱き寄せてくだされば、イーリスは彼を求めるように震えた両手を彼の背中に回してぎゅっと抱きしめる。
浮かべていた涙でエルピスさんの胸部を濡らしてしまう事になる。
だが今は戦闘の最中なので、すぐ抱擁を解いた。
我慢してね、というエルピスさんの言葉には小さく頷く。

「…………ぐっ……!」

大量の血が出ていた、切断されたあとの右太腿。エルピスさんによる熱の応急処置で苦し気の声をあげるも、無事に血が止まった。
自身の服を包帯代わりにして、止血した傷に巻いてくれる。

「……はぁ……はぁ……。ありがとうございます。お陰で、血が止まりました」

荒くなっていた息を整えていく。

「……あの炉は修理している最中、どれぐらい使えるかは分かりません。はい、ごめんなさいを言うのは、老後がいいです! エルピスさんの義手のメンテナンスもしたいですからね。メタラグ、楽しみにしてます……!」

だんだんいつもの調子を取り戻していき、明るくこくんと頷いた。
死んでしまってごめんなさい、という謝罪だから老後に取っておきたい。

エルピス・シズメ >  
 対策の上から灼き尽くす。(だからこそ灼き尽す。)
 彼の激情は、そういうものだ。(合理的でないからこそ強く轟く。)

「はろー、王様。エルピス・シズメだよ。ようやくお話が出来るね。」
「同じ人を好いた同士語り合いたい気もするけど、」

「今はそんな気分じゃないから……また今度。」

 呪縛越しに言葉を投げる。
 呪縛による悪縁も、想いを伝えるには都合が良い。

 即座の反撃はない。
 何か企てている様だが、時間はこっちも欲しいと思っていた。
 猶予があると認識して、再度イーリスに近寄る。

 ゆっくりと言葉を交わす余裕はない。
 イーリスの言葉を受け取りつつ、急いで必要な事を告げる。

「状況は好くない。だからイーリス、もう少しだけがんばって……僕に力を貸して。」
「具体的には、僕の異能を介して(想いを継いで)イーリスの胸にある炉に干渉して、少しだけイーリスの炉の力と想いを借りたい。」
「やったことのない試みだけど……あの時みたいに、僕を受け入れてくれれば、出来る気がする。」

 壊れかけの炉では出力が足りない。
 それ以前に、先の一撃でリソースをだいぶ使ってしまった。

 他の手段は無くもないけれど、この方法がきっと最善。

「イーリス」

 想いを告げで、イーリスの胸に機械の右手を伸ばす。

Dr.イーリス > 「私、エルピスさんの事大好きですけど、“王”の事なんて大嫌いです……!! 私はエルピスさんのものですから、“王”はお呼びではないです……!」

もはやエルピスさんと“王”が恋敵とか、そういった関係である事が不服という主張。
エルピスさんとイーリスが恋人同士なので、“王”には蚊帳の外でいてもらいたい。

エルピスさんの提案に柔らかく笑みを浮かべて首を縦に振った。
死ノ花は一輪一輪が厄介な敵、状況が芳しくないのは明らか……。

「私の想い、受け取ってください。エルピスさん……愛してます」

エルピスさんの手が、イーリスの旨、炉が搭載された《パンドラ・コア》のある部分に触れる。その炉は想いをエネルギーに変えるもの。エルピスさんから借り受けているものだった。
頬を赤らめて、愛を言葉にした。
エルピスさんの事が好き。
凄く好き。
大好き。

「……エルピスさん…………」

もっと愛で満たしたく、エルピスさんの首に両手を伸ばす。
エルピスさんが拒まないのであれば、自身の唇をエルピスさんの唇に近づけ、重ねようとする。

それが叶ったなら膨大な愛情、それによる膨大なエネルギーがエルピスさんへと流れこむ事になるだろう。

エルピス・シズメ >   
 一度、主張を受け留める。
 自分も本心ではそう思いたい──だけれど、イーリスと王の縁は何処かで禊ぎ落とす必要がある認識だ。
 だけれど今は、それは考えない。
 
「うん……わかった。」

 想いを受け留める。
 身体を寄せる。
 抱擁する。
 接吻を交わす。

 大胆な告白に心が揺れなかったかと言えば嘘ではない。
 それでも、あるいはだからこそ、決心のもとにイーリスの想いを受け留める。

「愛してる。イーリス。」

 触れるだけでは留まらず、抱擁と共に接吻を交わす。
 朱く染まった顔は、焔の反射で片付けるには無理のある色。
 
 異能を介して、強い想いを力を受け取った彼の姿に、僅かながらの変化が見え始めた──
 

紅き死ノ花園 >  


    ―――で?

   茶番(ゆいごん)はもういいかね?


 

紅き死ノ花園 > 随分長々と
面白おかしく
熱々なところを
見せてくれたではないか?

お陰で此方も準備万端よ

確かに山ほど花は焼かれたが

そこに撒いた全ての異能力(エネルギー)を一極集中させた

まるで
水晶のような凍てつく氷の薔薇がそこにある。
一見して理解出来よう、あふれる程の氷結の力。

花が広げる障壁すら凍り付く圧倒的な冷気。

1,10,100―――さて、幾つの花の力を集中させたか。
まぁもうどうでも良い事だ。



一撃。

氷の弾丸が花広がるように撃ち出されると、
それは急速に冷気を拡散させて無数の棘となり

薔薇の花の形を描き広域に炸裂する

二人殺すには

過剰な程の広範攻撃

Dr.イーリス > トクントクンと、《パンドラ・コア》のすぐ近くにある心臓が鼓動している。
その鼓動が、想いが、愛が、《パンドラ・コア》に搭載された炉が膨大なるエネルギーに変えていた。

それは、少し前までは生きている間に叶う事はないであろうと思っていたファーストキス。

「…………ん……」

溢れ出す愛情によりエルピスさんに注がれていく膨大なエネルギー。
敵の前なので、そう長く接吻していられない。
イーリスはエルピスさんから唇を離し、そして彼を見て恍惚と微笑んでみせた。

「……エル……ピス……さん」

とても満たされた愛を感じている。
その想いがちゃんとエルピスさんへと届いた感触もある。
それもあってか、エルピスさんの体に変化が生じていた。

敵はいつまでも待ってくれるわけでもない。
花々から繰り出される氷の強烈な広範囲攻撃。
だけどイーリスは、慌てはしなかった。
エルピスさんに注がれた愛情、それによるエネルギーが膨大であると分かっているから。

エルピス・シズメ >  
「捕まって。」

 イーリスを抱きしめ、焔の翼で飛ぶ。
 イーリスから受け取ったエネルギー()を十全に活用する。

 飛来する無数の氷棘。
 "それが無数かつ過剰な弾幕"であった事は、彼らにとって有利に働いた。

アツくなりすぎてくれて、よかった。(人のこといえないけど)
 
 心なしか、いつもより"流れが"見える。
 【既視感】による経験では済まされない程、"先の流れが読める。" 
 未来を視ているようにすら思えるぐらい冴えている。

 強い想いが頭と身体を駆け巡っているのに、冷静に読める。
 ──こんな力は感情魔力混合炉にはない。だから、イーリスの想いの中にあるものだろう。
 
 狂気的な氷棘の弾幕の流れを追って、避けて、切り拓いて、飛ばして、進む。
 一切の被弾無く(ノーミスで)薔薇の中心、上空まで迫り──

「──ここだ。」

 受け取った莫大なリソースをサバイバルナイフに込めて、
 障壁があれば力を加えてそれを貫き、薔薇の中心を刺す。
 初撃の灼熱以上のエネルギー(愛情と激情)が、ナイフを伝い薔薇を内から外へ砕かんと奔り──弩級の破壊を齎す。

 狙うは、一撃必殺。
  
   

紅き死ノ花園 >  


    ――― ズ ド オ ―――― ッ ッ ッ !!!



 

紅き死ノ花園 > 数多の障壁が阻む

凡そ銃弾では永劫射抜けぬ障壁。

それが100を超える数。

阻むが―――

なんだ、これは…?!


次々に障壁が罅割れ

砕ける


そして




氷が融解する

ド真ん中から、華麗に引き潰される。


指揮官となる薔薇を喪った花は

まるでそれに伴うように枯れて逝く―――



一撃必殺が、成った。

> 「うーーーんッッ!!」

「強いねぇ~~~!!」
「お見事お見事、おじさんびぃぃっくりしちゃった♪」
「敵前でのアツアツのキス!」
「素晴らしいなぁ!感動しちゃった♪」


「だけど」

「ちょーーーっと"おイタ"が過ぎたんじゃないかなぁ…?」



「まいいや」
「後々で王様をコケにしてくれたことはちゃんとやり返すからね♪」



「おつかれちゃ~ん、バイバ~イ♪」

―――王の声は、途絶えた。

ご案内:「違法感染ウイルス工場跡の花畑」から紅き死ノ花園さんが去りました。
Dr.イーリス > こくんと頷き、出来る限りエルピスさんの動きを阻害しないよう首をそのまま抱きしめている。

「す、すごいです……!」

氷棘の弾幕をものともせず回避したり、邪魔な氷を切ったりして、そして薔薇に迫るエルピスさん。
だが、エルピスさんを阻むのは数多の障壁。

「……そ、そんな…………。障壁の数が多すぎます……」

今のエルピスさんなら薔薇に届く、そう思った矢先の事。
その障壁の数には焦りを覚える。

しかし、エルピスさんはサバイバルナイフで障壁を次々と貫き、薔薇を葬ってみせた。

「わあぁ、エルピスさん、やりました! 死ノ花園、倒せました!」

エルピスさんをぎゅっと抱きしめて、満面の笑みで喜ぶ。
とても強くて、とてもかっこいい、それでいてぽかぽかと優しいエルピスさん──大好き。

だが“王”の言葉には、イーリスはぴくりと眉を動かす。

「おイタが過ぎるのはあなたです……! もう黙っていてください……!」

むくっとしつつ、エルピスさんが“王”に言葉に返してからになるが、感情のままにこちらからも呪いの“繋がり”を切ってやった。

エルピス・シズメ >  
 サバイバルナイフは限界を超え、砕け散る。
 ここまで保った事が奇跡だ。

「イーリスのおかげだよ。」
「僕一人じゃ削り切れなかった。」

 大きく息を吐く。
 激戦の結果、焔も氷も空気も地面も散り散りになり((熱冷乾湿すべてが乱れ)、一周回って落ち着いている。

「……その、えっと……さっきの言葉、凄くうれしかった。」

 地面に座ってからぎゅっと抱きしめようと、手を伸ばした。
 激戦では答えられなかった想いを、改めて返す。

(おいたが過ぎる、か……)

 正直な所、派手にやってしまった事は否めない。
 イーリスも怪我をしている。

 委員に頼るにも状況が複雑すぎる。説明しようと余計な大ごとになりかねない。
 頼れる伝手は非常に限られる。

 好い状況で戦えていない。
 恐らく、同じ轍を踏まない為にも、十全の状態で攻め込む必要がある。

「何にしても……イーリスの怪我が優先。だね……
 ……ラボに向かうよ。大丈夫?」
 

ご案内:「違法感染ウイルス工場跡の花畑」に紅き悪魔ノ針鼠さんが現れました。
紅き悪魔ノ針鼠 > はいはーい、おつかれちゃ~ん。ってなあ!

いやー
楽しそうにしてたなあ
ええ?


そんじゃあ悪いとはカケラも思わないけどここで死ねや


"獲物倒した時が一番気ィ抜けるからなあ"


自律移動する針が、

夜空から突き立たんと迫る―――!!!

エルピス・シズメ >  

「知ってた」

 
 

紅き悪魔ノ針鼠 >  


精々マヌケっ面晒して
2人仲良く死んでくれや!!


 

エルピス・シズメ >  
 頭は冴えているし、"流れ"はまだよく読める。
 次に起こりそうなことぐらい、気配とかそういうものでなく、よくある流れとして──わかる。

「このくらいの必然なら、冴えていれば抗える。」
「舐めないで。」

 残っていた一本のサバイバルナイフで、針を砕き飛した。
 もしもその軌道上に針鼠が残っているならば、一刃報いる可能性はある。
 
 

紅き悪魔ノ針鼠 > チ…ッ

弾かれたか。

つまんね。マヌケっ面晒してくれるかと思ったのになァ!


完全なる隠匿。
卑怯な技能。

それを活かした不意打ちと偵察が、俺の持ち味だ。

殴り合いは勘弁だぜ。


―――針鼠の姿はもうそこにはなかった。

ご案内:「違法感染ウイルス工場跡の花畑」から紅き悪魔ノ針鼠さんが去りました。
Dr.イーリス > 「私の想いが役に立てて、よかったです」

右手を自身の胸部にもっていき、目を細めながらぎゅっと握った。

「炉も、とても頑張ってくださいました」

イーリスの想いを力に変えてくれた炉も握らう。
凄くうれしかった、という言葉にイーリスは頬を染めてしまう。
だがすぐ頬を染めながらも微笑んだ。

「私も、嬉しかったですよ。愛してると言ってくださって。ふふ」

地面に座って、抱きしめ合う。
エルピスさんの肌の温もりがとても心地よかった。

「私を助けにきてくださったばかりに、ナイフが破壊されてしまいましたね……。申し訳ございません……」

砕けたナイフを見ると、眉尻を下げる。
敵は既にエルピスさんが倒してくれた。
だから、イーリスはとても安心していた。
右脚を粉砕される重傷を負ったけど、少しずつ治療していけばいい。
だが今日の戦いはこれで終わりだと思っていた。

「助けにきてくださり、本当にありがとうございました。……ッ。あの地下のラボではなく、不良集団のアジトに向かってほしいです。そこに、設備が整ったラボがありますからね」

右脚の痛みに表情を軋ませながら、そう口にした直後。

「ど、どうしたのですか……?」

エルピスさんの突然の意味が理解できない発言に首を傾げている。
奇襲に全く気付いていない。

「……え? 何が起こって……。針……? 針鼠……復活していたのですか……!」

エルピス・シズメ >  
「本当の達人なら、もっとうまくやるんだろうけど……」

 あしらうだけで精一杯だ。
 大きく息を吐く。

 気配を暴いた訳でもないし、
 刹那の反応を見せた訳でもない。
 
 ただ、悪いものを向けられた風に感じて、"流れ"が分かったから『置いた』。

 ……それにしても、冴えすぎている気もするけれど。

(イーリスの頭のよさ、かな。こんだけ頭がさえていれば、確かに色々作れそう……)

 不思議に感じながらも、エルピスはそう認識する。
 イーリスの想いを受け取れど、彼の異能は誰かの本質を理解するものではない。

「了解。アジトだね。僕が行って大丈夫か不安だけど……
 ……そうだ、今の内にもう一回言っておくね。」

 なんとなく、言っておかないといけない気がした。
 今を逃したら、暫く言えない気がしたから、いう。

「愛してる、イーリス。」
 

Dr.イーリス > 「あの針鼠は隠密、ヒットアンドアウェイが得意な紅き屍骸です。中々、仕留めるのは難しいですね……」

姿を消し、そして不意打ちを仕掛ける。
この前もイーリスは、死ノ花との戦闘で針鼠に不意打ちを仕掛けられた……。

エルピスさんが見せた反応速度がイーリスのものと関連しているという事には、イーリス側からは気づかずではあった。
愛情とエネルギーが流れていくのを感じてはいるけど、厳密にそこに細かく何が含まれているかまでは把握できていない。
エルピスさんの助けになる事を願っていたので、無意識化にエルピスさんにとって役立つものを愛情に含んで届けていた。
何にしても、イーリスが想いがエルピスさんの助けになったならとても喜ばしい事。

「アジトまで……と思ったのですが、やはり変更しておきます。アジトのラボで治療なんてしていたら、今宵は事務所には帰ってこれませんね。今夜は、エルピスさんと過ごしたいです……。治療は明日にしに行きますから、このまま事務所に帰りましょう……」

そう口にして微笑んでみせた。
改めての愛の言葉に不意を打たれ、イーリスは照れてしまい耳まで赤くしてしまった。
だがすぐに、柔らかく目を細めて微笑んだ。

「……エルピスさん…………ありがとうございます。私も……あなたの事を愛しています……」

自身の唇に軽く触れる。

「……接吻、したのですね。殿方と唇を重ね合わせるというのは、あのような感覚なのですね。とても温かくて、気持ちよくて……エルピスさんの味は……とても幸せなものに感じました……」

戦いの中で必死なのもあって、今思い出すととても恥ずかしい。
だけど、とても心地いい。

エルピス・シズメ >   
「ほっておこう。威嚇はできたし、深追いはしない。
「被害の拡大は怖いけれど、ここの落第街の──ううん常世島のみんなは、僕らが思う程弱くない。」
「"お祭り"で見たみたいに、さ。……時には敵わないことも、あるけれど。」

 彼なりの見解。
 当然、その裏で敵わぬものや故エルピスのようなものもある。
 でも、それだけではないと、希望を告げる。

(ナナちゃんは……大丈夫だよね、うん。)

 もう一人の同居人のことも色々な面で気がかりだが、
 彼女は彼女で上手くやれるだろうし、気を使い過ぎても気まずいだろう、と判断した。

 イーリスが事務所に戻りたいと告げれば微笑み返して承諾し、イーリスの髪をそっと触る。
 拒まなければそのままひと撫でして、視線を合わせる。

「……分かった。イーリスがそうしたいなら、そうしよっか。」

 本心では自分もイーリスと過ごしたい。
 少しの余裕ぐらいは持っても大丈夫、と考え直す。

「うん……ぁ、ええと、きす、僕も、僕は初めてで……
 ……何というか……振り返ってみるとすごく幸せだった……」

 だらしなく表情が緩む。幼げで可愛い照れ方だ。
 当然恥ずかしさもあるが、気が抜けるまで意識しないことにしている。