2024/08/05 のログ
■Dr.イーリス > 「そうですね、この島の皆さんとてもお強いです。針鼠は一度討伐されていると聞いてます。“王”が蘇らせたのだとすれば、強化されている可能性もありますね。先程エルピスさんが討伐した死ノ花もそうでした……」
無策で深追いすると、どのような危険が待ち受けているかという危機感……。
それとは逆に、被害の拡大が怖いという不安……。
ナナさんの事も心配だと思うけど、イーリスは出会いがしらでナナさんにあっという間に首を絞められ、脅されたりしている。誤解が解けて放してもらえたが。
イーリスが弱すぎたというのはあるかもしれないけど、望んで手に入れた能力ではないとは言えナナさんも弱くない。それはそれとして心配にもなるけど……。
髪を撫でてくだされば、イーリスは心地よさそうに無邪気な笑みを浮かべた。
「エルピスさんが止血してくださったお陰で、血も止まっておりますからね」
右脚が粉砕されている。いくら止血しているとは言え、治療を急ぐに越したことがないのは確かだろう。
それでも今夜だけは、エルピスさんと離れ離れになりたくない。
周囲の枯れた死ノ花を見渡す。
「……実はこの死ノ花の一部は、緑化実験のために私がここで育てたものでした。大切に育ててきた花々でしたが……あのような姿に……」
視線を悲し気に落とす。
大切に育てた花々が、ゾンビに変えられた。
その花々に、イーリスは先程殺されかけた。
今夜、心が暗むような出来事も多かった。それに勝る程、愛に満たされたからこそ、エルピスさんのお役に立てたのはある。
それでも、いやだからこそとも言うべきだろう。
イーリスは、エルピスさんから離れたくなかった。
きっと、エルピスさんから今離れたら、またこの体が不安で震えだすと思う……。
「エルピスさんの初めてをいただけて……嬉しいです。二人での幸せ探し……案外早く見つかったかもしれませんね。ふふ」
照れ隠しのように微笑んだ。
先程まで凄くかっこよかったエルピスさんだったけど、今はなんだかとても可愛らしいエルピスさん。
色んな素敵なエルピスさんを感じられて、そのギャップもまた魅力的に思いつつ、声を上げて笑った。
■エルピス・シズメ >
「復活、か……荼毘に付す必要がある。どの道、王を手折らないと膠着は続くと思う。」
「さすがに無尽復活は王でも厳しいから、裏はあると思いたいけど……」
今は考えないでおこう。
そう判断して話題を区切る。
「……そっか、イーリスの……ごめんね、灼き尽くしちゃって。」
盛大に灼き切ってしまった。
その上で盛大にエネルギーを叩きつけてしまったので、地面も大分荒れ果てている。
イーリスの内心はある程度推し量れても、全てを知っている訳ではない。
ただ、抱えている不安に押しつぶされそうな辛さを経験し続けていることは、なんとなくわかる。
だからこそ、少しでも和らげて、その重荷を軽くしたい。
自己満足や、傲慢かもしれないけれど、それでもイーリスのために、できることはしたい。
そんな気持ちが、彼にはある。
「うぅ……でも、もっと幸せなことも、いっぱいあるよ。
……だからこれからも……がんばろ、イーリス。」
だらしない表情が少しずつ戻る。
少しでもイーリスが前を向けるように、勇気付ける。
「とりあえず、抱きかかえて……えっと、その、お姫様抱っこで、良い?」
■Dr.イーリス > 「その通りですね……。アンデッドの“王”がいる限り、他の屍骸を滅しても時間稼ぎで終わります……。裏は……あるのでしょうか。ただ、“王”は屍骸達の王でとても強大な事には変わりありませんが、“屍骸の一体に過ぎない”存在だと予想されます」
アンデッドの“王”である事は間違いない。
それでいて、屍骸の一角という事……。
逆を返せば、アンデッドの“王”に従う家臣は多いだろうけど、その“王”に従っていない屍骸もいるのかもしれない……。
「いえ、完全感染して紅き屍骸になっている時点で討滅しなければいけない相手に変わっています。紅き屍骸となった時点で生物としては亡くなっておりますので、戻す方法はありません……。むしろ、灼いてくれてありがとうございます。私の育てた花々が誰かを脅かさずに済みましたから……」
もう助からない花々だった。ならば、もう……眠らせてあげた方がいい。眠らせてあげたかった……。
「幸せのスタート地点という事になるのでしょうか。はい、エルピスさんとなら何だって頑張れる気がします」
満面な笑みでエルピスさんに頷いてみせる。
これからは、先程エルピスさんと口付けを交わした時のような満たされた気持ちにいっぱいなれる出来事に出会えるという事なのだろうか。
それはとても素敵だと、思ってしまう。
「その……お姫様抱っこでお願いします……。メカにはそういった事をさせた事があるのですが……素敵な殿方に……されてみたかったので……」
恥ずかし気に、少し声が小さくなった。
「……あの、いえ、メカにお姫様抱っこをさせていたというのは……その……殿方にしていただく機会がなくて……空しかったとかではなくて……」
あわあわと慌てて言い訳を始めて墓穴を掘ってしまった。
我ながら、メカにお姫様抱っこさせていた事もあるとか、空しい……。
■エルピス・シズメ >
「そっか。でも、そうだね。僕からすれば……。」
「王はイーリスにひどいことするイヤな奴。いちばんは、それ。」
正直な認識を告げる。イーリスが明確に拒絶したため、恋敵とは呼ばないことにした。
王の出自や屍骸かどうかよりも、一番は『そこ』の気持ちが強い。
良く言えば王を純粋な一存在として捉えており、悪く言えば王の出自そのものに興味はない。
イーリスが王に勝てれば、ひとまずはそれでいい。
イーリスが幸せになれるなら、それがいちばんいい。
「落ち着いたら、また育てよう。利用される位に育ったことは、確かだから。」
「でもあぶない植物はイーリスが管理できる範囲でね?」
もしも花に意思があるとすれば、安らかではないにしろ"眠って還った"、かもしれない。
少しばかり、強い気持ちで灼いてしまったから。
「……素敵な殿方……う、うん。僕のことでいいん、だよね……」
照れと恥じらいが混ざる。
改めて口にされると、やっぱ恥ずかしい。
両手でイーリスを『お姫様抱っこ』し、第三の手で残った荷物を纏める。
小さなイーリスの身体を優しく、そして落とすことのないように丁寧に抱いた。
「行くよ。今日はゆっくり休もう、イーリス。」
夜の落第街を歩いて事務所へと戻る。
事務所に戻れば手当をしながら、共に夜を過ごした事だろう。
■Dr.イーリス > 「その通りです。“王”は、とてもイヤな方です……!」
実に不機嫌な形相でこくこくと何度もうなずいた。
“王”の事がとても嫌い……。
エルピスさんが“王”に一矢報いて、清々した。
「そう……しましょうか。ここは違法感染ウイルス工場の跡地で、私は元々ウイルスに汚染された大地でも育つお花の実験で使用していました。私の花々で汚染された大地が既に浄化されているここでは同じ実験は出来ませんけどね。危ない植物と言えば、私、人食い花をどう人々に役立たせるかというテーマにとても興味があります」
好奇心でイーリスは双眸を輝かせた。
人を喰らう人食い花で、人に害を与えずに人の役に立たせるというテーマだ。
「あなた以外、誰がいるのでしょう?」
きょとんと小首を傾げた。
そうして、エルピスさんにお姫様抱っこをしていただきながら、帰路についた。
イーリスはその見た目から想像できる程度の重さ、今は右脚がない分さらに軽くなっている。
事務所ではエルピスさんに手当てをしていただき、そしてエルピスさんと一緒に夜を過ごすのだった。
ご案内:「違法感染ウイルス工場跡の花畑」からエルピス・シズメさんが去りました。
ご案内:「違法感染ウイルス工場跡の花畑」からDr.イーリスさんが去りました。