2024/08/21 のログ
■蒼き春雪の治癒姫 > 「……どう、もん?」
何を言っているのか、さっぱりわからなかった。
けれど。
「……助かります。」
少なくとも。
胡散臭い言葉ではなかった。何か、"つながり"があるのだろう。
「欺いて、どこかへ連れ去ろうという気はない、
ってことだよね。それで……良い?」
普段緋月様の前じゃ猫被ってるけど、もういいか。こっちが素。
「……怪しい、か。だよね。分かるよ。誰だってそう思う。」
一つ、呟いた。
……緋月様は、寝ている。
なら。
「誰にも言わないで?」
「私」
逡巡。
「……"おばけ"なんだ。」
「だけど。」
「この方を想う心は贋りではないつもり」
「この方を想えなくなれば消えるつもり」
「おばけらしく、跡形もなく、永遠に」
「同門の意味は分からないけれど、何かあるんだよね」
「なら、今の話も、収めておいて。」
ただ
彼女の事を想う気持ちだけは
怪しいと思われたく、なかったから。
■九耀 湧梧 >
「――――「斬月」。」
男の口にした言葉は、書生服姿の少女が扱う異能の名前。
それを、確信を持って言い放つ。
「最初にもしやと思ったのは、あの蟻の怪物に詰め寄った一足。
「神足」の念法術に、恐ろしく似ていた。
確信を持ったのは、あの蟻を斬り裂いた一撃。
体捌きもだが……さる一族が、「魔剣」に近づく為に、血筋での継承を試みたという「斬月」という「才能」。
書物に載ってた情報だけだったが、実物を見て確信した。
このお嬢ちゃんは――分派で分かれたが、大元は俺と同じ剣術を学んだ者だと。
ま、言ってみれば先行き長い若人に対するオッサンの期待と骨折り、と思ってくれ。」
つまり、この男は書生服姿の少女が扱う剣術と、分派で別れはしたが、大元が同じものを扱う、という事。
たかが、それだけ。されど、それだけの「期待」が、男を動かした。
「――信じるか信じないかは、お前さん次第さ、青いお嬢ちゃん。
少なくとも、俺は今のお前さんの話を信じる事にする。
今の話は、俺の胸だけに納めて置こう。
もしも、このお嬢ちゃんが「それ」に辿り着いたなら――」
す、とまた蒼い少女に視線を送る。
「それは、このお嬢ちゃんの覚悟と、意志の結実だ。
逃げずに、向き合ってあげてやりな。」
■蒼き春雪の治癒姫 > 「ざん、げつ。」
「……なるほど。少なくとも、偽りで人をさらう作り話とは、思えない。
それに。確かにそれは斬月と……聞いてた。
詳しい事は、分からない。でも……任せとく。
一つ言うなら……妙な縁もあったもんよね。」
暫く、黙して聞いていた。
後の事は―――全くわからない。
分からないけれど、人を騙してさらう偽りではないのはわかる。
こうして深く語るのも、…期待あってのものだろう?
「……当然でしょうに」
「って言いたいけど。」
「でも」
「私はこの方ほど強くないから」
「逃げ出してしまうかもしれないな……」
今の言葉を吐いて、
はっとする。
緋月様の体から離れて、任せておくからと、告げた。
「……あー。つまんないこと話したね。今のは忘れて?」
蒼い雪は、
男から、
今吐いた言葉から、
……彼女から。
"逃げる"ように立ち去るのだった。
ご案内:「落第街大通り」から蒼き春雪の治癒姫さんが去りました。
■九耀 湧梧 >
「――大切なものは、逃げたら探したくなるものだぜ。」
逃げるように立ち去る蒼い少女に、黒い男のその言葉は、果たして届いていたのかどうか。
ともあれ、書生服姿の少女と黒いコートの男だけがその場に残され、
「……1度死んだ者が死人となって甦る。
なら、「二度目」が無いとも限らんな。」
まるで手品か魔術のように、コートの裏地から、一振りの刀を取り出す。
すらりと抜き放ち、一振りすれば、青く燃えるような剣気が刀身から立ち昇り、
「…成仏しろよ。」
ひとつ、またひとつと、紅い屍骸だったものに向けて突き立てれば、青い炎に包まれて、屍骸は塵と化す。
その作業をすべて終えて、刀をしまい込むと、さて、と書生服姿の少女を見下ろす。
「……公園か、神社の辺りにでも、置いておくか。
歓楽街よりは安心だろ。」
ひょい、と米俵でも担ぐような姿勢で書生服姿の少女を抱え上げ、黒いコートの男は地を蹴って飛翔する。
そのまま、まるで武侠映画のような動きで。
少女を抱えた黒いコートの男は、夜の闇へと消えて行った。
ご案内:「落第街大通り」から九耀 湧梧さんが去りました。
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」にDr.イーリスさんが現れました。
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」に九耀 湧梧さんが現れました。
■Dr.イーリス > 夜。違法パブ「地獄の門」 の個室で予約を取り、湧梧さんと待ち合わせ。
連絡手段には、湧梧さんがエルピスさんに授けた簡易式神を使わせていただいた。
イーリスは席に座り、スマホを弄っている。
湧梧さんから借りた四本の刀剣を桜柄の白い布に包んでおり、謎の傘立てに立て掛けている。
起動式傘立て、つまり移動する傘立てである。ホバー移動する機能がある。
刀剣四本、イーリス一人で持ってくるのは無理な重量なので、起動式傘立てを用いたのだ。
「……私に、湧梧さんに剣を返すというギアスの強制力が働いていないように思いますね」
《月輪の王》を倒すために湧梧さんから剣を借りた。その目的は達成された。
目的が果たされた暁には、湧梧さんに剣を返すというギアスがイーリスに刻まれている。その証が、イーリスの右手の甲に刻まれた剣を意匠化したような痣。
イーリスは、痣を眺める。
誓約では、“目的が完全に果たされた時、湧梧さんに剣を返す”というもの。
《月輪の王》は倒したはずなのに目的が完全に達成されていない扱い? なんだか、とても違和感……。
■九耀 湧梧 >
簡易式神は使用者の身体の一部…爪や髪の毛、微量の血液を乗せたり馴染ませた上で火を点ければ起動し、
火をつけた紙が青白い炎の鳥となって飛んでいく、というものだった。
そして、炎の鳥が飛び去り、それを放った少女が待つこと暫し。
「――待ち合わせだ。こちらで待っている筈のお嬢様にお呼び出しを貰ってな。」
パブのドアが開き、従業員に声を掛けたのは、青白い炎の鳥を連れて現れた、黒いコートに赤いマフラーの男。
ふわり、と熱無き炎の鳥が個室に居る少女の元まで飛んでいき、
「よう、暫くぶりだな。
ギアスからの生存反応はあったが――その様子なら、健康そうで何よりだ。」
黒いコートの男が、歩いて来る。
炎の鳥を指で呼び寄せ、ふ、と息を吹きかけると、青白い火の名残だけを残し、鳥は吹き消えてなくなった。
■Dr.イーリス > 簡易式神の使用法はエルピスさんから聞き、そうして湧梧さんと待ち合わせ。
見覚えのある炎の鳥を見ると、湧梧さんが訪れた事を悟ってスマホを弄る右手を止め、スマホをテーブルに置いた。
個室に入ってくる湧梧さんに、にこっ、と笑みを浮かべた。
湧梧さんが息を吹きかけて消えていく鳥さんには、驚いたような表情を見せる。
「こんばんは、湧梧さん。一時は死にかけてしまいましたが、湧梧さんから借り受けた刀剣の力で《月輪の王》を討滅する事ができました! 本当にありがとうございます!」
一度立ち上がって、ぺこり、とイーリスは湧梧さんに頭を下げる。
「湧梧さんにお礼したいです。今日は私に奢らせてください」
着席し直して。
■九耀 湧梧 >
「それじゃ、お言葉に甘えて失礼させて貰うか。」
奢らせて欲しい、という言葉には素直に頷き、自身も続く形で席に着く。
然し、その表情は少しだけ渋い。
「一時は死にかけた、か――そりゃそうだろ、あそこまで派手な真似をしちゃな。
…見えてたぜ、随分と綺麗な太陽がな。
言った筈だぞ、あの剣を使うのはあまり勧められないと。
しかも、どうやったか知らないがあれだけ派手な真似をして――死んだらどうするつもりだったんだ?」
――そう、あの戦いを直接…ではないが、発生した太陽を、この男はしっかりと見ていたのだった。
当然、それが己の貸した剣によって引き起こされた事だろう、とも見当がついている。
「さて――何か、申し開きはあるか?」
じろり、と鋭い視線。
子供を叱る大人そのものだ。
■Dr.イーリス > 「見守ってくださっていたのですね。“王”とサシというわけにもいかず、援軍を呼ばれたりもしましてね。私の方もエルピスさんが助けにきてくださったりもしましたが、《不落ナル太陽》に頼らざるを得ない戦況になりました」
湧梧さんのご指摘に、気まずそうに視線を逸らす。
《不落ナル太陽》により、太陽のような巨大火球が上空に浮かんでいたので、遠くからよく見えた事だろう。
「う……。燃やされる事は予想していましたが……その予想を遥かに超える太陽の炎でございました……。借りた剣の神話の力を、科学と魔術の力で引き出してたりもしました……はい。勝たなければいけない戦いだったとは言え……し、死んでしまってたら……その……えっと……」
鋭い視線に、びくっ、と震える。
大人から説教を受ける子供。
「も、申し開きのしようもございません……!」
ドン!
イーリスは、テーブルに己の額を打ち付けた。
■九耀 湧梧 >
「――――――――。」
渋い顔をしたまま、黒いコートの男はテーブルに額を打ち付けた少女の頭に手を伸ばし――――
「……ま、こうして生きて帰って来たんだ。
反省もしてるようだし、これ位で無茶をしでかしたのは許すさ。」
ぺし、と軽い音を立てて飛ぶのは、頭頂部目掛けての軽いデコピン。
碌に痛くもない代物だ。
同時に、ぽすん、と一度だけ頭を撫でる。
「――よく生きて戻った。
死にかけたとは言え、今は五体満足なようで何よりだ。」
小さく、笑うような声でそう一言。
「ほれ、頭を上げな。
今のでお仕置きはおしまいだ。」
■Dr.イーリス > 使ったら燃やされる危険な《不落ナル太陽》。
湧梧さんからも、とても警告していただいた末、頼み込んで借りたもの。
使った末、死にかけて……むしろ、奇跡みたいな事が起きなかったら死んでただろうし……弁明のしようもございません。
「あだっ……!」
デコピンにはちょっとだけ痛がって、軽く声をあげてしまう。
その後、頭を撫でてくださって、その手がとても温かく感じた。
そうして頭を上げるよう促されて、湧梧さんの温かい言葉に、頭を上げたイーリスは顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
「湧梧さん……ひくっ……。ありがとうございます……! 湧梧さんの警告……破っちゃって、本当に……死んでしまうんじゃないかって目に遭いましたが……こうして生きて湧梧さんに剣を返しにこれました……! 湧梧さん……私……うぅ……」
湧梧さんの優しさが、生存を凄く願われた事が、とても嬉しかった。
無茶してしまったけど、生き延びてまたこうして湧梧さんと再会できた。生きて帰れた、掛け替えのない日常を取り戻す事ができた。
一つでも欠けていたら、きっとイーリスは生きて帰れなかった。湧梧さんや様々なめぐり合わせ、その奇跡に、とても感謝……。
■九耀 湧梧 >
「ほれ、泣くな泣くな。
命があって、目的を達成できたなら、笑って祝うもんだろ。
こうして無事に貸した物を返しに来てくれたんだからな。」
――と、其処まで口にした所で、軽く考える顔。
「……と、行きたかったんだが。
どうにもギアスの様子がおかしい。
こうして返却の意志を持って、俺の前に来た以上は、戒めが多少なりとも緩くなってくる筈なんだが…。」
考え込むように顎に手を当て、軽く顎髭を撫ぜる。
空いている左手を、握ったり開いたり。
「…お前さんの方はどうだ、イーリス?
ギアスの印が薄くなったり、色が抜けたりするような様子はないか?」
どうやら、施術者の方でも疑問に思う反応があるらしい。
既にギアスの解除の条件がほぼ達成されているのに、ギアスが解けるどころか緩む兆候すら感じられず。
どうにも、そこに違和感を感じているようだ。
■Dr.イーリス > 「はい! そうですね、嬉しい事があった時は笑顔ですよね!」
白色のハンカチを取り出して、涙を拭う。
そして満面の笑顔を見せる。
だが、湧梧さんの続く言葉には神妙に頷いてみせる。
「……どこかおかしいと思っていました。“王”は確かに討滅しました。しかし……返却を強制させる意思が働いている様子なんてありません。むしろ……その、言い辛くはありますが、まだ返す事を拒否しようとしているような……そんな気さえします」
無事に“王”を倒す事ができて生きて帰ってくる事ができたから湧梧さんに剣を返す、ギアスに関係なくそう強く思っているから、ギアスの強制力関係なしに湧梧さんに返そうとしている。
あとはもう、布に包んでいる四本の剣を湧梧さんに返すだけで、誓約は果たされる……はずである。
「ひとまず、湧梧さんに剣を返してみますね。それでギアスが解けるかもしれません」
立ち上がって、布に包んだ剣を持ち上げようとするけど、四本の剣はイーリスでは中々持ち上がらなかった。
持ち上げる事は諦めて、布だけを取り、そして起動型傘立てをホバー移動させて湧梧さんの傍らへ。
あとは湧梧さんが剣を受け取れば、誓約が完全に達成されるはず……。
■九耀 湧梧 >
「そうだな…まずは其処からか。
ただの懸念だった、って事もある。」
ホバーで動く傘立てを見れば、しっかりと4つの剣が用意されている。
「便利なものを用意してるな。
確かにお前さんの腕じゃ、剣4つ持ってくるのは骨が折れるだろ。」
下手をしたら物理的にも折れかねない。
個人的には、もっと沢山食べてしっかり伸ばす所は伸ばしてもいい筈だろう、と思っている黒いコートの男。
兎も角、差し出される剣を前に、
「……誓約に基づき、剣の返却を受け容れる。」
言いながら、まずは最も大物である《不落ナル太陽》に手を付ける。
傘立てから抜き取るように、剣を取り出し、自身の手に収める、が――――
「……やっぱりか。」
眉根に、皴が寄る。
再び少女の方に視線を向けて一言。
「――どうだ? 一本は受け取った。
色が薄くなるか、一画位が消えていてもおかしくない筈だが。」
……恐らく、刻印には何の変化も起こっていない気がする。
そんな予感を感じながら、質問を投げかける。
■Dr.イーリス > ギアスに違和感がある事は不可解ではある。
だが、ちゃんと誓約が果たさた事になるなら、湧梧さんの言う通りただの懸念だったで済むかもしれない。
「私、非力ではありますが、発明品が凄いのです!」
自慢げに、胸を張ってみせる。
非力な分は、筋力を鍛えるのではなく発明でなんとかする。
湧梧さんが《不落ナル太陽》を手に取るのを見て、イーリスは右手の甲にある痣、ギアスの証を湧梧さんにも見えるように前に出す。
とりあえず一本は、誓約が完全に果たされた……はずであった。
「……な、何も起きません……!? え、えっと……どういう事でしょう……? ひ、ひとまず、他の三本も湧梧さんに受け取っていただいて、痣の様子を見ましょう……!」
焦りを覚えていた。
どうして、誓約が達成された事にならないのだろう……?
どこかで、まだ条件が達成されていない……?
イーリスが知らない間に四本の剣が偽物にすり替えられていたのはありえない。厳重に保管していたのだ。それに、かの《刀剣狩り》なら偽物ならば気づくだろう。
なら、どの条件が果たされていないのだろうか……。
■九耀 湧梧 >
「……そうだな。念の為、試してみるか。」
焦りを感じる少女に対し、少し難しい顔はしているものの、
黒いコートの男の雰囲気はごく落ち着いたものであった。
――前に出されている少女の手の甲、其処に刻印された剣の形をした痣は、全く変化が見られない。
「――これと、これ、最後に…こいつ。」
先に受け取った一振りを、少し邪魔だがテーブルに置いた上で、残りの三振りの剣を受け取っていく。
だが――
(……ラインに、まるで変化がない。
誓約の達成による緩みの兆候すら、感じられない。
という事は――――)
とりあえず、総ての剣を抱え終え、改めて席に着く。
「……そっちは、どうだ?」
改めて確認。
――恐らくは、少女の方にも、何の変化も起きていないだろう、と薄々予感しつつ。
■Dr.イーリス > 嫌な予感はしている。
四本の剣が湧梧さんの手に渡った時、はたしてギアスは達成されるのか……。
痣が刻まれた右手の甲は、湧梧さんに見せ続けている。
やがて、傘立てから何もなくなった。
「だ、だめです……。痣が消えません。ど、どういう事なのでしょう……。これって……何が起きて……」
湧梧さんが総ての剣を抱えても、痣は何の変化もない。
それはつまり……。
「誓約が果たされていない事を意味する……という事になりますよね」
改めて、誓約をおさらいすると、
“《月輪の王》の討滅、その目的を完全に達した時、あなたから借りた剣《甕布都神》、《不落ナル太陽》、《羅睺・日喰月呑》《加牟豆美之刀》を必ずあなたに返します”
“あなたの借りた武器は、あなたが貸してくださった意図通りに扱い、悪用や解析などはしません”
この内容のどれかが果たされていない。
無論、悪用や解析は一切行っていないからその部分の誓いは除外していいだろう。
エルピスさんの呪いを解くのに《甕布都神》の力を借りたが、その呪いはそもそも《月輪の王》によるものだし、まず悪用にはならないと思われる。
■九耀 湧梧 >
「――そういう事になるな。」
一方、ごく冷静な黒いコートの男。
一振り目を受け取った時点で、こうなる事が凡そ予想出来ていた、と言う雰囲気。
とりあえず、テーブルなどに置きっぱなしにしても邪魔になるので、ホバーな傘立ての方に
受け取った筈の剣をそれぞれ戻していく。
「…考えられる事は、いくつかある。
ま、その前に折角こんな店に来たんだ。
気持ちを落ち着ける為に、何か食べられる物の一つでも頼んで置くのがいいだろ。」
一つ息を吐き、ぱん、と手を叩く。
あまり深刻な雰囲気になり過ぎてもよくない、と、店員を呼んで、食べ物の注文を始めた。
主に肉類中心の料理。
「ほれ、お前さんも何か頼みなって。
――勿論、アルコール以外でな。」
未成年飲酒にはうるさいオッサンだった。
■Dr.イーリス > 剣が傘立てに戻されると、ひとまず傘立ては邪魔にならない端っこにホバー移動する。
「そ、そうでした。まだご注文もしていませんでしたね」
注文を促してくださった事で、少し落ち着いた。
湧梧さんは、想定外の事態でも冷静だった。それだけ死線を超えてきたのだろう、と改めて凄いと感じた。
そうして店員が訪れて。
「分かっておりますよ。私、お酒飲んだ事ありません。えっと、スパゲティとアイスコーヒーお願いします」
と店員さんにご注文を済ませる。
そして店員さんが立ち去った後で。
「それで、考えられる事というのは何でしょうか……?」
きょとんと小首を傾げた。
■九耀 湧梧 >
一方、黒いコートの男が頼んだのはステーキに焼き鳥、肉類多めのピザ。飲み物はジンジャーエールだ。
少し時間を置き、まずジンジャーエールに焼き鳥が届けば、一串頂き、一息。
「ま、そう焦りなさんな。
焼き鳥、少し多めに頼んだからお前さんもしっかり食べろよ。」
と、軽く勧めつつ、軽めにお腹を満たして置く。
食の余裕は心の余裕。
軽く世間話を交わしながら、メインに頼んだものが各々届けば改めて口を開く。
「……さてと。
さっきの話の続きだな。
俺の推論では――恐らく、「《月輪の王》の完全な討滅」。
この条項に引っ掛かっている、と睨んでいる。
お前さんやエルピスにはショックかも知れないが――」
■九耀 湧梧 >
「――《月輪の王》の完全な討伐は、まだ果たされていない可能性が濃厚だ。」