2024/09/24 のログ
ご案内:「落第街 廃ビル群」に大麦 初さんが現れました。
大麦 初 > その日、爆発が起こった。
大麦 初 > 爆発はくすんだ灰色のビルたちに光と衝撃を与えた。
爆風はその合間を縫い、粉塵は周囲にもうもうと滞留し
大きな爆炎と煙は空へと放たれ、遠目から見れば傘のような姿を成している。

大気はビリビリと帯電したようにしびれ、その爆発の轟音がいかに凄まじいかを
その場にいなかったものにすら伝えるだろう。
爆発の中心には人影は存在しなかったが、その周囲には不良学生であろうものが数人転がっていた。

爆発の規模に対して被害はあまりにも軽微。
爆風にふっとばされたようだが、ほぼ無傷と言ってもいいか。

大麦 初 > その爆発が起こったであろう場所から少し離れた所で少女は半泣きになりながら走っていた。
とても素晴らしいフォームで。
まさに全力疾走。
メロスもかくやという勢い。
そんな少女の胸中は、それこそ恐怖に塗り固められていただろう。
あの爆発の蕎麦にいたのであれば。

「やっちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

まさか、まさかである。
曲がりなりにも学園が孤島で運営しているような都市にこのようなスラムがあるなどと…
普通に考えて誰が思うだろうか?
誰も思うまい。

少女が浅はかであったなどとは誰も思うまい。
思うなよ。
転校してきたばっかだから、ちょーっと散策して、ちょーっと薄暗いとこ見つけて
ちょーっとした好奇心で、ちょーっとお散歩しただけである。
それであんなんに絡まれるなんて思ってもいなかった。

大麦 初 > ひとは死なないようにやったはず。
建物は壊れないようにやったはず。
死んだり怪我したりしても異能ちらつかせて絡んできたほうが悪い。
秘書が勝手にやった。
コムギコカナニカダ。
彼女は大麦だが。

「やっちゃったやっちゃったやっちゃった!
三日目!三日目なのに!!やっちゃったぁぁぁぁ!!」

早く逃げなければ!
下手したら転入三日目でお縄だ!
散歩してただけなのに!!
どうかしてるぜ!!

大麦 初 > この学園、なにかが変。
それはそう。
異能とか魔術とかなんやらやってるんだからそらそうよ。
おかしいに決まっている。

決まってはいるのだが、治安が死んでるとかは聞いてない。
いや、イメージ維持とかあるしいうわけないのだが。

「ままま、また絡まれたらもっかい爆発させるしかない!!」

その目は渦巻きのようにグルグルしていた。
常世学園の才能あるかもしれない。

大麦 初 > 爆発させずに穏便に済むならそうしよう。
いくらでもそうしよう。
だが、暴力をちらつかされたとき、手から大麦出してできることなんて
相手に投げつけて目潰しにするくらいである。
そんなんで不良が黙れば誰も苦労はしないのだ。

なので爆発も仕方がない、仕方がないのだ。
コラテラル・ダメージ、致し方ない犠牲というやつである。

「私は悪くない!私は悪くない!!」

ものすごい頑張っては知っている…。
フォームは素晴らしいが、特別足が速い訳では無い女子の平均的なスピードだ。
いや、運動部ではないから中の下くらいといえる。

大麦 初 > ついでにスタミナもそれほどあるわけではない。
爆心地から100mちょっと。
その場に立ち止まって、ぜひぜひと息を切らしていた。
まだまだ廃墟っぽい雰囲気が続いている。

この島広くね?

「………こんだけ広いなら、今のくらい大したもんじゃないか…」

それに現場から離れてるし…。
よし、ポリスメン的なものに絡まれても無関係で乗り切ろう、そうしよう。
先に不良がきたら…

「まぁ、一度やっちゃえばあとは同じかぁ…」

大麦で救えない命もあるのだ。

大麦 初 > そう考えると多少は気持ちが楽になった。
走るのをやめて歩き出す。
メロスも歩いてたっていうし、まぁええやろ。

絡んできたほうが悪いのだと思うと多少気も大きくなるものである。
それに異能者がいっぱいなんだし少しくらい爆発してもポリスメンもしゃーないっていってくれる。
そう言えばパンフとか流し読みした程度だから行政とかあんま覚えていない。

「もうちょっと浅いとこなら探検しても、まぁ…なんとかなる、か?」

今日はちょっと変なとこに来ただけ。
次があるさ、多分。
余裕ができたので歩きながら廃ビルを見上げる。
多くの人々は爆心地の方に釘付けだろうし、いけるいける。

大麦 初 > 爆発のあとということもあって、淀んだ空気が一気に吹き飛ばされた清涼感すら感じる。
空気が美味しい、やや焦げ臭いが。
感謝しろよお前ら。

「しっかし広いってことは、探検には困らないってことだね!
何事もポジティブに考えなきゃ。
いやー、ダンケダンケ」

こうやって歩く分には、廃墟探索的な趣があって悪くない。
たまにビルの陰をひょいと覗いたり、路地裏に視線をやったり…
さっきまで半泣きだったのも忘れて探検を楽しんでいた。

また問題が起こればそのときは…そのときは仕方ない。
その日、二度の爆発が起こった。となるだけだ。

ご案内:「落第街 廃ビル群」から大麦 初さんが去りました。