2024/12/22 のログ
ご案内:「落第街大通り」に泳夢さんが現れました。
泳夢 >  
それは医療施設からの帰り道。レトロな車椅子が歓楽街を走る。
直線距離ではなく、大回りするように車椅子の少女は移動していた。

理由はそう大したものではない。
まだ帰るにも早い時間で、どうせならその道中に買い物なり、遊びなりを済ませようと思っただけ。
そしてまだ日も落ちるにも早い時間なのだからと、普段は見ないところに足を運んでみようとしただけだ。

「…あれ、大通りってこっちだったっけ…」

そんなこんなで細い路地の道に入ってみたりだとか、散策がてらにしていたら、少女は迷った。
路地を抜けた先の大通りに出れば良いか、と適当に進んでいたら案の定迷っていた。
端末を使えばすぐに大通りまでの道のりは分かるのだが…。
少女は好奇心とちょっとした冒険心で、少々良からぬ場所へと知らず知らずのうちに足を踏み入れていた。

ご案内:「落第街大通り」に桜 緋彩さんが現れました。
桜 緋彩 >  
明日から冬期休暇に入る常世学園。
とは言え今日は日曜日。
実質昨日から入っているようなものだ。
そうなれば当然浮かれた学生たちの数も増えるだろうから、その分巡回も強化することになる。
そんな強化巡回の一環で、今日は落第街を歩いていれば、

「――こんなところでどうされましたか?」

落第街に似付かわしくない車椅子の少女。
様子を見る限り迷い込んだのだろうか。
正面から彼女の方へ駆け寄って、話しかける。

泳夢 >  
なんだか歓楽街にしては雰囲気が仄暗いというか、如何わしい場所だなと。
迷い込んだ少女が抱いていたのはそんな印象。
あまり長居はしないほうがよさそうな場所かな…?とそう思っていた矢先、声が掛けられた。

「わっ、えっと…こんにちは?」

振り向いた先にいたのは、風紀の腕章を付けた恐らく生徒。
何処からどう見ても風紀委員だとわかるその姿に、泳夢は暢気に頭を下げて軽く挨拶を返した。

「ちょっと健診帰りのお散歩してて、適当に移動してたとこで」

桜 緋彩 >  
「なるほど、そうでしたか」

やはり迷い込んだ形か。
確かに、行政上は歓楽街の一部だし、土地勘の無いものがちょっと寄り道していたら迷い込んでもおかしくはない。
車椅子に座る彼女と向き合う様にしゃがみ込み、目線の高さを合わせる。

「ですがここは落第街と呼ばれる危険な地域です。
 立ち入り禁止、と言うわけではありませんが、気を付けた方がよろしいかと」

危険、と言う文字から連想される不安を取り除くように笑顔を浮かべて。
そうして腕の腕章を彼女に見せる様に引っ張って、

「申し遅れました、私は風紀委員の桜緋彩と申します。
 もしよろしければこの地域の外までご案内させていただいても?」

泳夢 >  
そう、嘘は言ってはいない。
適当に散策がてらに裏路地だとか、そういう場所を通ってみたりしただけだ。
目線を合わせてくれる風紀委員の彼女に、その後ろめたさは見せないが。

「なるほどここが噂の落第街…こういう感じなんだぁ」

そして、そんな彼女の説明を聞けば、ふむふむと頷きながらそう納得。
車椅子の少女も、この島で過ごしていればその手の噂ぐらいは知っていた。
そのうわさが正しいとすれば、風紀委員から言わせれば、確かにここは危険な場所。
少なくとも普通の生徒…特に自分のような生徒が来る場所ではないだろう。

……しかし、それを聞いて少女は密やかに胸を高鳴らせていた。
此処がそういう『危険な場所』だと知って、その口角が思わず緩む程度には。

「あ、私は泳夢っていいます。色々あって委員とかは、まだ入ってなくて…。
 えっと、それじゃあお願いしちゃってもいい、のかな?」

……しかし、それを聞いて少女は密やかに胸を高鳴らせていた。
此処がそういう『危険な場所』だと知って、その口角が思わず緩む程度には。

桜 緋彩 >  
真っ直ぐ見据える彼女の目。
危険な場所、と告げた瞬間、僅かにその目の奥に期待の色が浮かぶのを見逃さなかった。
気持ちはわからないでもない。

「では、ご案内しますね。
 車椅子は……押した方が宜しいでしょうか?」

ぱっと見は古めかしい雰囲気の車椅子。
ここまで一人で移動してきたと言うことは、ある程度の走破性はあるのだろうけれど。
一応尋ねてみる。

泳夢 >  
「電動だから、大丈夫かな。
 充電もしてきたし…止まってもほら、この手があるので」

作り物であることを隠しもしない、繋ぎ目の関節部の目立つ義手をひらひらと揺らし。
大丈夫だとそう返せば、車椅子を軽く前後に移動させて、問題ないことを明るく返す。

「風紀委員さんも、大変なんですね」

此処が如何に興味を擽る場所だとしても、風紀委員の前でそれを口にするほど少女も愚かではない。

ともあれ、彼女の後を付いていくことに決めた後。
世間話がてらにそんな言葉を投げてみる。

桜 緋彩 >  
「なるほど、かしこまりました。
 ではこちらです」

大丈夫らしい。
とりあえず、落第街を抜ける最短ルートを歩き出そう。

「そうですね、長期休暇でも一定の仕事はありますし。
 やりがいもありますが、学生の方が考える以上に大変ではあると思います」

彼女の少し前、完全に前と言うわけでもなく、彼女のことが視界に入る立ち位置で先行する。
比較的浅いところとは言え、落第街だ。
周囲も彼女も、同時に警戒しながら。

「特に興味本位で落第街へ入り込もうとする学生の対処はとりわけ困りますね。
 悪意で動いているわけではない分、尚更」

彼女の方をちらりと見て、少し笑って見せる。
お説教と言うよりは、さっき見えた彼女の好奇心を弄るような、ちょっと悪戯っぽい笑顔。

泳夢 >  
ここまで来た道とはまた違う。恐らくは最短ルートを車椅子と風紀の少女が歩む。
車椅子がぶつからぬように少し横に軸をずらして、数歩ほど距離を離した位置で付いていく。

「やっぱり多いんですか?そういう生徒」

自分の事を完全に棚に上げたかのように問い返す。
悪びれもしていない。事実、自分は偶然にも本当に迷い込んだだけなのだからと。
妙な部分で、少女はどこかいい性格をしていた。

桜 緋彩 >  
「それなりに居ますよ」

ちらりと見ても表情も変えない。
なるほど、見た目に反して意外と図太い性格をしているようだ。
やがて比較的大きい通りに出る。

「この辺りなんかは比較的危険も少ないですからね。
 逃げ足や腕っぷしに多少自信があればなんとかなる、と考えている生徒も多いようで――おっと」

話しながら歩いていれば、通りがかったコンビニの中から、ガラスを突き破って椅子が飛んできた。
そのままでは彼女の車椅子に直撃するコースの椅子。
腰の刀を抜き放ち、そのまま叩き切る。
真っ二つにされた椅子は、二人を避けて派手な音を立てながら道路に転がって行った。

「全く……貴方がた!
 そのままケンカを続けるようならとっ捕まえますよ!」

椅子に続いてコンビニを飛び出して来たチンピラが数人。
彼らはまだケンカを続けようとしていたが、こちらが一括すると一瞬動きを止めて散り散りに逃げ出してしまった。
追いかけようにも彼女をおいて行くわけにも、と思ったところで、数人の風紀委員がどこからか走ってくる。
コンビニ店員が通報していたようだ。

「――こういうこともよくありますしね。
 さ、行きましょうか」

挨拶して来た彼らに一礼を返し、再び先行して歩き出す。

泳夢 >  
このまま普通に帰路に着いていれば、何事もなく普通の道に出るだろう。
そんな暢気に思っていたが、その静寂はあっという間に喧騒へと変わる。

「わっ」

突如、ガラスを突き破る音。
飛来する椅子が一瞬で真っ二つに成り、がらんごろんと地面に転がる。

一括する様子も踏まえれば、さながらアクション映画のワンシーンの様。
素直に車椅子の少女はその光景に目を見開いて、おぉ~…と感嘆の声を上げる。

「今のカッコよかったですね~、すごいなぁ」

何が起きたのか、少女はあまり理解できていない。
そういう反社会的な光景は、当然ながら少女の周りに無いものだからだ。
が、風紀委員の少女が何をしたのかだけは彼女は理解していた。

だからこそ、そんな素直な感嘆の声を上げる。
しかして憧れのような言葉でありながら、其処に羨望のようなそれは無かった。

桜 緋彩 >  
「ありがとうございます。
 あまり人にお見せするようなものではないのですがね」

同じ剣に生きるものや風紀の仲間ならともかく、一般生徒の前で剣を使うところを見せるものではないだろう。
ちょっと複雑そうな顔でお礼を。

「ところで泳夢どの、先ほど健診と仰られていましたが、やはりその身体の関係でしょうか?
 どこも異常などはございませんでしたか?」

降れていいのかな、と少し考えたが、さっき彼女は腕のことを隠そうともしなかった。
ならば下手に話題にしないようにすると言うのもそれはそれで失礼だろう、と思い、普通に尋ねることにする。

泳夢 >  
「うん、そんな感じ」

隠すようなことではない。正確に言えば、隠しようもないことだからこそ当たり前に少女は答えた。

「義肢の調整とか、そういうのを含めて定期的に行かないといけなくて。
 成長期だから大きさとか調整がいるだろうし…とかなんとかで」

それを示すように、右腕で反対側の義肢を付け外しする様な処を見せながら、世間話のごとく。

「他に身体が悪いってわけじゃないんだけどね。
 ちょっと手足がないだけだし」

桜 緋彩 >  
ちょっと手足がないだけ。
流石にちょっとではないだろう。
思わず苦笑。

「私からすれば、ちょっと手足がなくなるのは一大事ですけれど。
 足はともかく、剣が振れなくなる手は困ります」

手を失うことそのものよりも、剣を振れなくなることの方が一大事だ。
それはそれでちょっと感覚がずれているのかもしれない。

「義肢は成長しませんからね。
 聞いた話では、成長に合わせて義肢も調整しないとバランスが狂うとかなんとか」

泳夢 >  
「あはは…私にとっては保護された時…記憶がある時からこうなので」

そういうものだと、元より受け入れているからこそ。
手足の自由さに羨ましさがないではないが、それ以上に達観しているだけなのだ。
手がないことが、どれほど不自由なのかは、少女はよくわかっている。

流石にちょっと黒いジョークだったことには、苦笑で誤魔化したが。

「らしいですね。と言っても、私はそこまで成長してないみたいですけど…。
 緋彩さんくらい成長したら、確かにバランス崩れちゃいそうです」

ぺたんぺたんで、なんて胸元を摩るようなジェスチャーを飛ばす。

桜 緋彩 >  
「なるほど、最初からなかったからこそ、そう言うものだと受け入れられると。
 しかしそれはそれで、記憶が無いと言うのはこう、不便と言うか、困ったりはしないのですか?」

記憶がないと言うのは自分がないのと同じだろう。
もしかしたら、手足がないよりもそちらの方が辛そうだ。

「これはこれで、剣を振るのに不便だったりしますよ。
 もういい加減慣れましたが……」

ちょっと困った様な顔。
胸が大きくなり始めた頃は、よく剣を振る動きで潰したりして痛かった。
流石に今では慣れたが、邪魔であることには変わりない。

泳夢 >  
「一般常識とか言葉とか、そういうのは覚えてた…らしくて。
 あんまり不便だとかは気にしたことなかった…かな?」

親が居ないだとか、保護者がどうこうだとか、身元がどうとか。
そう言ったことすら、意識が明確になった頃には終わっていた話。
ありのままに現状を受け入れ、与えられた日常をただ過ごす。
それに不満を抱いたこともなければ、疑問を持ったことすらない。

無論、興味がないかと言えば嘘にはなるが…調べたところでこれまで何もわからなかった。
だから、諦め慣れた少女にとって、それは二の次の事になっているのだ。

「へぇ~、胸って大きいとそういうのあるんだぁ。
 大きければいいってもんじゃないんだなぁ…羨ましいけど、それはちょっと不便かも」

その上でも羨ましいと普通に口にするのは、容姿に関する事。
純粋な乙女心として、魅力的な容姿は羨ましいものであったらしい。

桜 緋彩 >  
「なるほど」

この辺りはあまり触れない方が良いのかもしれない。
一言だけ返事し、この話題を切り上げておく。

「後はそうですね、足元は見えにくくなりますし、揺れると結構痛いです。
 あぁ、後これはよく言いますが、肩も凝りますね」

よく言われる胸が大きくて不便な事。
実際不便だからよく言われるのだ、と言う様に。
特に最後のは結構深刻。
お風呂上りのストレッチは欠かせない。
肩をぐるん、と回しながら。

泳夢 >  
「やっぱり重いんだぁ…。想像できないなぁ、足元見えないの」

自分の真下を見つめるような仕草をとりつつ。
肩を上下させるような真似をしつつ、羨ましそうに零す。
体系だけ見れば子供もいいとこな車椅子の少女である。

「あ、でも緋彩さんはアレなのかな。
 お化粧とかお洋服よりも、剣とか運動とかのほうが興味がある的な?」

そのまま、話題を切り替えるようにそう問うてみる。
羨ましいなぁというお話ばかりだと、流石にアレかな?とでも思ったのだろう。

桜 緋彩 >  
「足元は慣れれば大体何があるかわかる様になりますので」

歩いているなら少し先の地面の形などを覚えておくとか。
仕合でなら気配とか相手の視線や動きでなんとなくわかるようになる。

「そうですね、今までは剣以外のことに興味がなかった、とまでは言いませんが。
 お化粧は少し覚えたいかなぁ、なんて思っています」

そう言う今もすっぴんである。
仕事中や鍛錬中は化粧しても崩れてしまうので。

「あぁ、そう言えば。
 二十四日に友人と出かけるのですが、ついでに服も見れると良いかもしれません。
 どこかおすすめの、学生街のお店はご存じありませんか?」

泳夢 >  
「わぁ…まるで達人みたいだぁ……」

まるで、ではなく事実そうであるような気もするが。
少なくとも自分では想像もできないような事が出来る人なのだろうなぁ、とそう納得。

「あ、お化粧とかファッションなら、私も少しは…!
 一日の長というか、ちょっとしたアドバイスならできるかなぁ…みたいな」

だからこそ、なのか。
ちょっと自分でも出来そうな話題が出て来れば、ちょっと大きな反応を見せてしまった。

「んー、どういうファッションかにもよるけど、王道に見て回るなら確かあの辺りには~」

ぺらぺらと、(ちょっとだけ可愛い系に寄っているが)どのブランドの服がどの辺りにあるのかを話し出す。
その口ぶりから、それだけ詳しいのは普段からよく出歩いているのだろうと想像できた。

桜 緋彩 >  
「達人と言うほどのことではないですよ。
 言ってしまえば「足元に注意する」程度のことですので」

ちょっと照れ臭そうに笑う。
歩く先に注意する、と言うのをほんの少しだけ広い視点で気を付けるだけなのだから。

「おお、それはありがたいですね。
 恥ずかしい話、そう言うのには縁のない生活を送ってきておりまして……」

メモとペンを取り出し、彼女が喋る内容をメモしていく。
店の名前や、どういうものがあるかなど事細かに。
わからない単語はその場で聞いて、聞き切れなかったものもメモして、後で調べよう。

「――おっと、見えてきましたね。
 あの通りが歓楽街の大通りです」

そんなことを話していれば、やがて見えてくる歓楽街の煌びやかな光。
何度か着たことがあるならば、見覚えもあるだろう。

泳夢 >  
メモされるようなことでもないが、頼りにされると少しだけ上機嫌に舌が回ると言うもの。

「……~で、やっぱりどうしてもないファッションだと歓楽街のほうに…って、言ってたら付きましたね」

気が付けばあっと言う間に時間も経ってたようで、覚えのある通りへと辿り着いていた。

「ありがとうございます。
 ここまで来れば、迷わず帰れると思います」

これで道案内も終わり。お礼と共にぺこり、と頭を下げる。

桜 緋彩 >  
「歓楽街、そう言えば巡回でしか歩いたことがありませんでしたね。
 今度見て回ってみようと思います」

学生街に比べれば寮から距離もあるし、用事もなかった。
うろついてみるのもいいかもしれない、なんて思いながら。

「いえ、これも仕事の内ですので。
 くれぐれも、興味本位で立ち入らないようにお願いしますね」

こちらも一礼。
ぴしりと綺麗な姿勢。

泳夢 >  
「あはは…その辺りはうん、流石に危ないとこには好きで行かないよ。
 こんなだし、何かあったらなんもできないしね」

少なくとも力試し、で行けるような身体でもない。
興味は在れども、理屈として行ってはいけないことは少女も理解している。
明確な理由もなしに、少女自ら足を運ぶことはない、筈である。

……逆に言えば、理由さえあれば迷いもなく行ってしまうのだが、それを口にはしないだろう。

「それじゃあ私はこれで…えっと、お仕事頑張ってください?」

桜 緋彩 >  
「はい、ありがとうございます。
 帰り道、お気を付けて!」

姿勢を正し、もう一度一礼。
そのまま彼女を見送った後、

「――こちら桜です。
 巡回中に落第街に迷い込んだ一般生徒を歓楽街の通りまで送り返しました。
 これより巡回に戻ります」

無線で報告し、落第街へとまた戻って行った――

ご案内:「落第街大通り」から桜 緋彩さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から泳夢さんが去りました。