2024/12/28 のログ
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」にギジンさんが現れました。
ギジン >  
店内に入る。
今日は《ピアノマン》はいないらしい。

いや……それはいないか。
もう年の瀬だ。こんなところにいるほうが問題だ。

サルサのクラーベが音響機器から流れている。
席についてバーキーパーに声をかけた。

「珍しいものは入っていますか?」
「ソフトシェルクラブですか……あまり好みではありませんね」

「マティーニとナッツを適当にお願いします」

そうオーダーを告げて携帯デバイスを開いた。
オモイカネシリーズはだんだん重量が増している気がする。

ギジン >  
明日、トコケットという同人即売会が今年も行われるらしい。
僕も人並みにそういうものを楽しめる感性があればよかったのに。

そもそも同好の士が集まって“好き”を発表する場というのが僕に向いていない。
ポジティブで、明るくて。目が潰れてしまう。

無関係でも無事に開催されることくらいは祈ってもいいのかも知れない。
恙無く、穏当に。

ギジン >  
速報。
落第街に乾ききった肉片。
それも人のもの。
猟奇殺人であることは明白、しかし。

そのどれもが昨日のうちにミンチになった、という見方が有力。

それが乾いているのだから、何かしらの異能犯罪か。
あるいは……悪鬼が餌を漁ったか。

現場には“Wladislaus Drakulya”の血文字(サイン)
本物の吸血鬼? やれやれ、またこの街は騒がしくなりそうだ。

ギジン >  
歓楽街の一部地域で見つかった損壊の激しい遺体から見つかった
DNA型が手配犯と一致。
“ルーフラット”梶田 勝容疑者を殺人容疑で広域指名手配。

小悪党かと思ったら殺しまで。
デビューおめでとう、梶田くん。
早めに退場することを祈るばかり。

美学を感じない悪。
跋扈するのはネズミばかりか。
笑えないな。

スワイプでその顔を画面から消した。

ギジン >  
マティーニを飲む。
暖かい店内でサルサを聴きながらニュースを見て、冷たいカクテルを口にする。
悪くないように思えた。

全世界大変容追悼式。
その日に全ては変わった。
変化の痛みは世界を地獄に変え、そして大戦は命を奪い尽くした。

あまりにも大きな損失。
その慰霊が行われる日。
僕は当然ながらその日のことはわからないけれど。

終わってしまった女なりに祈るくらいはしてもいいはずだ。

ギジン >  
凶星は墜ちた。
テンタクロウは三日前に亡くなったらしい。

藤井くん、君が求めているものに手は届いたのかな。
随分と長くて強靭な手を持っていたみたいだけれど。

彼の遺体は火葬した後に遺骨が崩れてしまっていたらしい。
脳神経加速剤。中和してなお、この毒性か。
恐ろしいものだね。

葬儀は簡素に終わったようだ。
拷問魔だけれど、僕は彼のことが嫌いにはなれない。

ギジン >  
そういえばクリスマスイブに出会った悠薇さんは今どうしているだろう。
ちゃんと温かな場所にいるだろうか。

未来があるのなら。
その先のために動けるのなら。
福音を呼ぶための資格があるのなら。

彼女に幸せがあればいい。
そんなことを思ってしまう、良い子だった。

タバコを取り出して火を灯す。
短い希望は好きじゃない。
フレーバーはチョコレートの香り。

ギジン >  
「会計を」

支払いを終えて立ち上がり、寒空の下へと歩を進める。
フィスティアさん。
この世界は楽園ですか。

それとも、地獄ですか。

ご案内:「違法パブ「地獄の門」」からギジンさんが去りました。