2026/02/16 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に御雷 天華さんが現れました。
■御雷 天華 >
静かな足音が、仄暗い雰囲気の通りに響く。
歓楽街のさらに奥、怪しい店の立ち並ぶ……存在を公式に語られない場所。
落第街と呼ばれる其処に、似つかわしくない少女の姿が一つ。
年の頃は十代半ば。長い茶髪に、青みがかった黒い瞳。
その身に纏った縦ニットのワンピースは、少々無防備に思える姿。
「……ふむ、こういう所もやはりあるんですね」
興味深げに辺りを見回して、少女はポツリと呟く。
先日は迷子になりかけたのに、どうやら懲りずに歓楽街を散策してたらしい。
ご案内:「落第街 路地裏」にネームレスさんが現れました。
■ネームレス >
「冒険したいお年頃」
その、小さなつぶやきを聞きとがめたかのように。
打てば響くような速さで、
少女の背中を、中性的な甘い声が呼び止めるように。
「……かな?」
小さく囁きかけるような静かな問いであるのに、
おそらく声の主の気配は、十メートルほど離れた背後にある。
振り向くも、先を往くも、少女次第。
■御雷 天華 >
ふと聞こえた声。反射的に視線が動く。
僅かな警戒は含ませたまま、少女は軛を返して振り向いた。
「……今それを言われると、あまり否定もできません、かね?」
視線の先に居たのはレザーコートを着た何者か。
同時に一瞬感じるのは既視感にも似た…なんらかの干渉。
されど、少女の内にあるものはそれを否定し正す。
故に、目の前に居るのが紛れもなく、初対面の何者かだと理解する。
尤も冷静に考えれば、今この島に居る知人などたかが知れている。
この島には来たばかりで、彼女の知人の大半はまだ此方には来ていない。
それが無くとも思考を巡らせ、同じ結論に達しただろうか。
■ネームレス >
取り替えるものがいなくなったのか、それとも誰も興味がないか、
ちかちかと明滅する電灯の下から、ゆっくりとそれは近づく。
奇異があるとすれば片手に提げた、小包程度の大きさの簡素な紙袋と、
その容貌だ。鮮やかすぎるほどの髪、輝く瞳、白い肌。
異常なほどに整った、左右対称の貌。
"こういう所"に、似つかわしいのか、似つかわしくないのか。
「お」
さても、少女が振り向くと、その顔は――
少女の容姿を認めて、意味ありげな微笑から、ぱっと咲くような上機嫌になった。
「大変容スラムは、日本の本土にもあるらしいケド……
落第街のなにが、可愛いキミの興味を誘ったのかな?」
くるり。近づきながら、ざわめく雑多な裏通りを見渡す。
どこか懐かしむような様に、敵意や害意の類はない。
■御雷 天華 >
容姿、容貌だけでその存在の善悪は分からない。
輝く瞳や白い肌も、この島ならば"無くはない"範疇だろう。
何せこの島はそういう存在が集う場所なのだから。
敵意を感じないのなら、今は此方も普通に振舞う。
少なくとも不用意に力を奮うには、まだ早い。
「半分はたまたまですけどね。
地理把握のための歓楽街の散策をしてたのが一つ」
少女はそう言いながら、近付く姿に視線を向ける。
瞳は僅かに細めたままに、相対するようにして。
「もうひとつは……馴染みのある気配が濃かったから、ですかね」
■ネームレス >
「公務って風でもないね。
風紀とか公安のお歴々に、いまボクが落第街にいるコト詰められるとダルいんだケド」
近くに指導してる先輩とか居たら困る――
視線をぐるりと巡らせて、違うようだとあたりをつけた。
「落第街が……?」
さらなる理由が提示されると、少し考えて首を傾げた。
場末に濃くわだかまる、なにか――それにピンと来なかったらしい。
思い当たる節が多すぎて、絞り込むには少女の情報はこの存在に知れていない。
「みずから危険を冒してここに来るコは、けっこうスキだな。
はっきり目的があるならなお、イイ」
気を取り直すようにして、間近まで近づくと、少女に隣り合う場所まで。
後ろを向いた少女に対してこちらは前、振り向く前の、少女の進行方向へ。
「付き合わせてよ。なんなら美味しい屋台も知ってる」
■御雷 天華 >
その物言いからして、真っ当な立場でないのは伺えた。
不法滞在の学生…まず推測で浮かぶのは、そんな立場の人間か。
「まだ入学…転入?を控えてる身ですからね。
言ってしまえば、まだ観光客のようなものですよ」
どうであれ、今の彼女に手出しをする権利ない。
彼女自身もただそれだけならば、妙な真似をする気はなかった。
「……まぁ、感覚的なものですけどね。
実際にそういう手合いはまだ、見つけていませんし」
隣り合う距離にまで近付かれても、彼女は動じない。
どうやらついて来るらしい様子に僅かに眉を歪めるだけ。
「宛てもない散策ですけど、よろしいので?
道案内でしたら、一食奢るくらいの礼はしますけど」
■ネームレス >
「ああ、お礼はイイよ。
ボクは可愛い女の子がスキなの。それにこっちから申し出たコトだ」
ひらひら、と袋を持っていないほうの手を振った。
「芸術家の端くれでね。
取材のようなモノでもある――キミと関わるだけでボクには実入りがある、
……かもしれないから」
ではなかったとして、その責はまさか問うまい。
「ああ、いちおう」
そう言うと、手首を返した。
腕時計の形をした端末から、闇夜の中にホログラフィクスが浮かぶ。
学生手帳に連動した身分証明機能であり、
正規の学籍と、魔術学会の学士であり、修士課程にあることが示された。
名前欄には――Nameless、とある。
「先にこの島に来てた身だ。いまは学生をやってる。
悪いコトに巻き込もうってハラじゃないよ。
キミがそのつもりじゃなければね――で、キミはなにをお探し?」
行こう、と促しながら――ここに彼女を誘った気配とは、いかに。
■御雷 天華 >
「もしかして、ナンパの類でしたか?」
冗談めかして言いながらも、その瞳は何処か観察するよう。
目の前に在る存在の真意を探ろうとするかの如く。
言葉の通りにただの変わった芸術家なら、それはそれで良し。
そうでなくとも、気に掛けて損はない相手だろうと判断して。
視界の端、視えたホログラフィックを記憶する。
その名と学籍、魔術学会の学士に眼を細める。
「であれば此方も、御雷 天華。
入学前故に立場はありませんが」
相手は明らかに偽名の類に思えるが。
さりとて、こちらは正しく名を知らせ返して礼をする。
「……明確に、何かを探してるわけではないのですけどね。
ただそうですね、悪気、邪気…そういう類が在れば自然と脚が向くのです」
■ネームレス >
「え? うん」
ナンパかと訊かれれば、もちろんそうですケド……?と、
不思議なことでも問われたかのように、きょとんと首を傾げた。
そうするとあどけなさが覗く。人種の違いから、外見年齢の認識は互いに曖昧であろうが。
大人と言い切るには幼い顔立ちだ。
「ボクのことはスキに呼んで。よろしく、てんか。
どういう字を書くんだい?……あァ、漢字はある程度判るから」
日本語も喋れている。滑らかすぎるほどに。
「犯罪者や、単なる悪人の類ってイミじゃないよな」
視線だけを彼女のほうに向けながら、隣り合ってゆっくりと歩く。
「だったら落第街以外にもたくさんいる。
ソトにいるのは、隠すのがじょうずではあるかも」
手袋に包まれた手が、空中をするりと撫でて…店先を指さした。
香ばしい匂い。煙を立てる屋台には、串焼きが並んでいる。
■御雷 天華 >
あぁ、まさか本当にそうだとは思わなかった…と。
そう言わんばかりの、少しだけ呆れたようなジト目を向けつつ。
さりとて無理に断る理由も今は特には無いのでそれだけだ。
「ではネームレス、と。
私の名は天上の天に、華麗の華で天華と」
そして、会話が成り立っていた以上、日本語の習熟具合は疑問には思わない。
この島には数多の国や、ともすれば世界から人が集っている事くらいは知っても居た。
行くのが分かっているなら相応に、下調べくらいはする性質なのである。
今のこの散策だって、そうした下調べの一環なのだから。
「まぁ、そういう手合いの話ではないですね。
そういうのは私の管轄外ですし」
ともあれ宛てもなく、少女はただ進むだけ。
あの屋台の主も聞く限り、反社会的な存在なのだろうか。
■ネームレス >
「天上の華、と」
へぇー、と感嘆の音を立てて、指先がするりと空中に踊る。
手がかなり大きく、指も長い。それは指揮棒を振るようにして、
綴られた名を記してみる。天、華、と。
漢字の書き順というよりは英字を筆記するような動きで。
「あ、そーなの?不埒者として裁かれちゃうかと思った。
我两个、……キミは口説かれるだけのものだと自覚して欲しいな」
流暢な中国語で屋台に声をかけると、二本。
紙袋の取っ手を手首にずらせば、両手に持って、片方を彼女に差し出した。
「おなかを壊したことはないよ――それで、」
朗らかな笑顔のまま、
「狩りたいの?」
仲間探しでないのなら、獲物を求めての冒険だろうかと。
雑談の流れで、そう問うた。何を探すかよりは、何故探すのかと問うた。
■御雷 天華 >
「雪、を意味する熟語が由来だそうですよ」
自分で言いながら、何処で聞いたかも忘れる程に些細な雑学を述べつつ。
実に慣れた様子で屋台で串を買う姿を少女は見つめる。
やはり、彼女…或いは彼かもしれないが。
目の前のネームレスを名乗る人物は、此処に住みなれているのだろう、と。
「ありがとうございます」
差し出された串を受け取り、少しだけ思案してから口にする。
程よい味わい、少なくとも屋台で売っている商品としては悪くはない。
「生憎と、狩猟なんて楽しいものではないですよ。
もっと義務的で、もっと利己的な、掃除のようなものですから」
実に淡々と、さも当然のように少女は雑談の如くそう語る。
歩みも実に堂々と、宛てもなく先へ先へと進んでいく。
■ネームレス >
「……ああ、ナルホド!たしかに、花びらが舞い降りるみたいだもんな。
顕微鏡で覗かなくったって……てコトは、冬生まれかい?」
串に噛みついた。
雑に甘く濃い味付けではあるが、それも懐かしむように咀嚼した。
「義務に押されてのことならたしかにつまんない話だね」
赤い舌が唇に残る味を舐めて、あっさりと言いきった。
「でも、利己的なものなら話は別。
まして……動機としてはそれに勝るものなんて存在しないと思うよ、天華」
視線を向けた。その物言いに興味を惹かれたらしい。
「自分で望んで、意志決定をしてやっているんだろう?」
笑みのない顔だ。伺い、探るようだ。
取材、と言っていた。興味があるのは、他人の行動動機のようだった。