2026/02/16 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に御雷 天華さんが現れました。
御雷 天華 >  
静かな足音が、仄暗い雰囲気の通りに響く。
歓楽街のさらに奥、怪しい店の立ち並ぶ……存在を公式に語られない場所。
落第街と呼ばれる其処に、似つかわしくない少女の姿が一つ。

年の頃は十代半ば。長い茶髪に、青みがかった黒い瞳。
その身に纏った縦ニットのワンピースは、少々無防備に思える姿。

「……ふむ、こういう所もやはりあるんですね」

興味深げに辺りを見回して、少女はポツリと呟く。
先日は迷子になりかけたのに、どうやら懲りずに歓楽街を散策してたらしい。

ご案内:「落第街 路地裏」にネームレスさんが現れました。
ネームレス >  
「冒険したいお年頃」

その、小さなつぶやきを聞きとがめたかのように。
打てば響くような速さ(レスポンス)で、
少女の背中を、中性的な甘い声が呼び止めるように。

「……かな?」

小さく囁きかけるような静かな問いであるのに、
おそらく声の主の気配は、十メートルほど離れた背後にある。
振り向くも、先を往くも、少女次第。

御雷 天華 >  
ふと聞こえた声。反射的に視線が動く。
僅かな警戒は含ませたまま、少女は軛を返して振り向いた。

「……今それを言われると、あまり否定もできません、かね?」

視線の先に居たのはレザーコートを着た何者か。
同時に一瞬感じるのは既視感にも似た…なんらかの干渉。
されど、少女の内にあるものはそれを否定し正す。
故に、目の前に居るのが紛れもなく、初対面の何者かだと理解する。

尤も冷静に考えれば、今この島に居る知人などたかが知れている。
この島には来たばかりで、彼女の知人の大半はまだ此方には来ていない。
それが無くとも思考を巡らせ、同じ結論に達しただろうか。

ネームレス >  
取り替えるものがいなくなったのか、それとも誰も興味がないか、
ちかちかと明滅する電灯の下から、ゆっくりとそれは近づく。
奇異があるとすれば片手に提げた、小包程度の大きさの簡素な紙袋と、
その容貌だ。鮮やかすぎるほどの髪、輝く瞳、白い肌。
異常なほどに整った、左右対称の(かお)
"こういう所"に、似つかわしいのか、似つかわしくないのか。

「お」

さても、少女が振り向くと、その顔は――
少女の容姿を認めて、意味ありげな微笑から、ぱっと咲くような上機嫌になった。

大変容スラム(こういうトコ)は、日本の本土にもあるらしいケド……
 落第街(ココ)なにが、可愛いキミの興味を誘ったのかな?」

くるり。近づきながら、ざわめく雑多な裏通りを見渡す。
どこか懐かしむような様に、敵意や害意の類はない。

御雷 天華 >  
容姿、容貌だけでその存在の善悪は分からない。
輝く瞳や白い肌も、この島ならば"無くはない"範疇だろう。
何せこの島はそういう存在が集う場所なのだから。

敵意を感じないのなら、今は此方も普通に振舞う。
少なくとも不用意に力を奮うには、まだ早い。

「半分はたまたまですけどね。
 地理把握のための歓楽街の散策をしてたのが一つ」

少女はそう言いながら、近付く姿に視線を向ける。
瞳は僅かに細めたままに、相対するようにして。

「もうひとつは……馴染みのある気配が濃かったから、ですかね」

ネームレス >  
公務(オシゴト)って風でもないね。
 風紀とか公安のお歴々に、いまボクが落第街(ココ)にいるコト詰められるとダルいんだケド」

近くに指導してる先輩とか居たら困る――
視線をぐるりと巡らせて、違うようだとあたりをつけた。

落第街(ココ)が……?」

さらなる理由が提示されると、少し考えて首を傾げた。
場末に濃くわだかまる、なにか――それにピンと来なかったらしい。
思い当たる節が多すぎて、絞り込むには少女の情報はこの存在に知れていない。

「みずから危険を冒してここに来るコは、けっこうスキだな。
 はっきり目的があるならなお、イイ」

気を取り直すようにして、間近まで近づくと、少女に隣り合う場所まで。
後ろを向いた少女に対してこちらは前、振り向く前の、少女の進行方向へ。

「付き合わせてよ。なんなら美味しい屋台も知ってる」

御雷 天華 >  
その物言いからして、真っ当な立場でないのは伺えた。
不法滞在の学生…まず推測で浮かぶのは、そんな立場の人間か。

「まだ入学…転入?を控えてる身ですからね。
 言ってしまえば、まだ観光客のようなものですよ」

どうであれ、今の彼女に手出しをする権利ない。
彼女自身もただそれだけならば、妙な真似をする気はなかった。

「……まぁ、感覚的なものですけどね。
 実際にそういう手合いはまだ、見つけていませんし」

隣り合う距離にまで近付かれても、彼女は動じない。
どうやらついて来るらしい様子に僅かに眉を歪めるだけ。

「宛てもない散策ですけど、よろしいので?
 道案内でしたら、一食奢るくらいの礼はしますけど」

ネームレス >  
「ああ、お礼はイイよ。
 ボクは可愛い女の子がスキなの。それにこっちから申し出たコトだ」

ひらひら、と袋を持っていないほうの手を振った。

芸術家(アーティスト)の端くれでね。
 取材のようなモノでもある――キミと関わるだけでボクには実入りがある、
 ……かもしれないから」

ではなかったとして、その責はまさか問うまい。

「ああ、いちおう」

そう言うと、手首を返した。
腕時計の形をした端末から、闇夜の中にホログラフィクスが浮かぶ。
学生手帳に連動した身分証明機能であり、
正規の学籍と、魔術学会の学士であり、修士課程にあることが示された。
名前欄には――Nameless、とある。

「先にこの島に来てた身だ。いまは学生をやってる。
 悪いコトに巻き込もうってハラじゃないよ。
 キミがそのつもりじゃなければね――で、キミはなにをお探し?」

行こう、と促しながら――ここに彼女を誘った気配とは、いかに。

御雷 天華 >  
「もしかして、ナンパの類でしたか?」

冗談めかして言いながらも、その瞳は何処か観察するよう。
目の前に在る存在の真意を探ろうとするかの如く。

言葉の通りにただの変わった芸術家なら、それはそれで良し。
そうでなくとも、気に掛けて損はない相手だろうと判断して。

視界の端、視えたホログラフィックを記憶する。
その名と学籍、魔術学会の学士に眼を細める。

「であれば此方も、御雷 天華。
 入学前故に立場はありませんが」

相手は明らかに偽名の類に思えるが。
さりとて、こちらは正しく名を知らせ返して礼をする。

「……明確に、何かを探してるわけではないのですけどね。
 ただそうですね、悪気、邪気…そういう類が在れば自然と脚が向くのです」

ネームレス >  
「え? うん」

ナンパかと訊かれれば、もちろんそうですケド……?と、
不思議なことでも問われたかのように、きょとんと首を傾げた。
そうするとあどけなさが覗く。人種の違いから、外見年齢の認識は互いに曖昧であろうが。
大人と言い切るには幼い顔立ちだ。

「ボクのことはスキに呼んで。よろしく、てんか。
 どういう字を書くんだい?……あァ、漢字はある程度判るから」

日本語も喋れている。滑らかすぎるほどに。

「犯罪者や、単なる悪人の類ってイミじゃないよな」

視線だけを彼女のほうに向けながら、隣り合ってゆっくりと歩く。

「だったら落第街(ココ)以外にもたくさんいる。
 ソトにいるのは、隠すのがじょうずではあるかも」

手袋に包まれた手が、空中をするりと撫でて…店先を指さした。
香ばしい匂い。煙を立てる屋台には、串焼きが並んでいる。

御雷 天華 >  
あぁ、まさか本当にそうだとは思わなかった…と。
そう言わんばかりの、少しだけ呆れたようなジト目を向けつつ。
さりとて無理に断る理由も今は特には無いのでそれだけだ。

「ではネームレス、と。
 私の名は天上の天に、華麗の華で天華と」

そして、会話が成り立っていた以上、日本語の習熟具合は疑問には思わない。
この島には数多の国や、ともすれば世界から人が集っている事くらいは知っても居た。

行くのが分かっているなら相応に、下調べくらいはする性質なのである。
今のこの散策だって、そうした下調べの一環なのだから。

「まぁ、そういう手合いの話ではないですね。
 そういうのは私の管轄外ですし」

ともあれ宛てもなく、少女はただ進むだけ。
あの屋台の主も聞く限り、反社会的な存在なのだろうか。

ネームレス >  
「天上の華、と」

へぇー、と感嘆の音を立てて、指先がするりと空中に踊る。
手がかなり大きく、指も長い。それは指揮棒を振るようにして、
綴られた名を記してみる。天、華、と。
漢字の書き順というよりは英字を筆記するような動きで。

「あ、そーなの?不埒者として裁かれちゃうかと思った。
 我两个(うぉーりゃんが)、……キミは口説かれるだけのものだと自覚して欲しいな」

流暢な中国語で屋台に声をかけると、二本。
紙袋の取っ手を手首にずらせば、両手に持って、片方を彼女に差し出した。

「おなかを壊したことはないよ――それで、」

朗らかな笑顔のまま、

「狩りたいの?」

仲間探しでないのなら、獲物を求めての冒険だろうかと。
雑談の流れで、そう問うた。何を探すかよりは、何故探すのかと問うた。

御雷 天華 >  
「雪、を意味する熟語が由来だそうですよ」

自分で言いながら、何処で聞いたかも忘れる程に些細な雑学を述べつつ。
実に慣れた様子で屋台で串を買う姿を少女は見つめる。

やはり、彼女…或いは彼かもしれないが。
目の前のネームレスを名乗る人物は、此処に住みなれているのだろう、と。

「ありがとうございます」

差し出された串を受け取り、少しだけ思案してから口にする。
程よい味わい、少なくとも屋台で売っている商品としては悪くはない。

「生憎と、狩猟なんて楽しいものではないですよ。
 もっと義務的で、もっと利己的な、掃除のようなものですから」

実に淡々と、さも当然のように少女は雑談の如くそう語る。
歩みも実に堂々と、宛てもなく先へ先へと進んでいく。

ネームレス >  
「……ああ、ナルホド!たしかに、花びらが舞い降りるみたいだもんな。
 顕微鏡で覗かなくったって……てコトは、冬生まれかい?」

串に噛みついた。
雑に甘く濃い味付けではあるが、それも懐かしむように咀嚼した。

「義務に押されてのことならたしかにつまんない話だね」

赤い舌が唇に残る味を舐めて、あっさりと言いきった。

「でも、利己的なものなら話は別。
 まして……動機としてはそれに勝るものなんて存在しないと思うよ、天華」

視線を向けた。その物言いに興味を惹かれたらしい。

「自分で望んで、意志決定をしてやっているんだろう?」

笑みのない顔だ。伺い、探るようだ。
取材、と言っていた。興味があるのは、他人の行動動機のようだった。