2024/07/04 のログ
ご案内:「《常世フェイルド・スチューデント》のアジト」にDr.イーリスさんが現れました。
ご案内:「《常世フェイルド・スチューデント》のアジト」に龍宮 鋼さんが現れました。
Dr.イーリス > 夜。スラムの一角にある《常世フェイルド・スチューデント》のアジトは、廃屋を軽く改装したような所だった。
落第街やスラムにアジトは点在しているが、その中でもこのアジトはイーリスが現在メインの拠点として使っている。
落第街の大通りで待ち合わせした鋼先生と共にアジトへと向かっていた。
先日、右腕や右脚を欠損していたイーリスだったが、今は元に戻っていた。ただし、昨日命を削る激しい戦いをしていたので、イーリスの顔は少しやつれ気味。

そしてアジトにて。
イーリスは鋼先生を応接室のような部屋へと案内する。応接室と言っても特に家具などがあるわけでもなく、古びたテーブルとそれに向かい合うよう古びたソファーが二つあるだけの殺風景な部屋だった。
そんな部屋に大勢の不良達が集まっている。人数にして数十名であるが、不良集団《常世フェイルド・スチューデント》の全員がこの場に集まっているというわけでもない。本日集められる一部の構成員を集めた。

不良A「“伝説の不良”鋼パイセンっす!!」
不良B「鋼パイセン、ちーっす!」
不良C「パイセンの輝かしき武勇伝は聞いてるっすよ!」

一部不良達が鋼先生に尊敬の眼差しを向けていた。
そしてソファーにふんぞり返って座る緑髪で目つきが鋭く、左腕と右足が義手の青年は、不良集団の頭エメラルド田村。
エメラルド田村は、威圧的だった。大人しい雰囲気で丁寧な言葉遣いをするイーリス、ガラが悪いがどこか三下なところがある他の不良と比べて、このエメラルド田村は“この中で最も不良らしい不良”といった風貌で威風堂々としている。一目で頭である事が理解できる程の存在感であった。

エメラルド田村「よお、鋼先輩。貧乏なもんで粗茶も出せずに悪いが、まあ座れよ」

そんなエメラルド田中は挑発的に、顎をくいっと動かして対面のソファーに座るよう促す。
エメラルド田村の座るソファーの後ろには、黒いアンドロイド《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅲ》が佇んでいる。
イーリスもエメラルド田中の隣に腰を下ろした。

龍宮 鋼 >  
アジト、と言うには随分殺風景な部屋。
扉をくぐり、その様子を眺めて扉を閉める。

「センパイじゃねェ、センセーだろ悪ガキども」

嬉しそうな不良共をぐるっと一通り睨み付け、一番偉そうな生徒の前に立つ。
示されたソファは一瞥もくれない。

「躾がなってねェみてェだな。
 センセーが来たら席を立つっつーのはジョーシキだろうが。
 親から教わらなかったか、あ?」

彼らの出自は勿論知っている。
知った上での不良らしい挑発。

「俺ァ野生動物の躾に来た訳じゃあねェんだぞ。
 人として最低限のレイギは示してくれよ、なァ?」

彼の座るソファに片足を乗せ、顔を近付けて威嚇。
言葉の割にめちゃくちゃ楽しそうな笑顔である。

エメラルド田村 > 不良D「すいやせんっす、先公!」
不良E「は、覇気が違うっす……!」

震え上がる三下不良。
だが、頭のエメラルド田中は鋼先生を微塵も恐れない。

「アァ? 自分のルールを押し付けんじゃねぇ、ここは俺のアジトだ」

イーリス「いえ、私がメインの拠点にしているアジトであって、あなたの管轄するアジトではありません」

主な持ち主はイーリスであるアジトらしい。

「うるせぇ! 《常世フェイルド・スチューデント》のアジトだ! 生憎、教えてくれる親なんてものはいないもんでねぇ! 先公が来たら席立つだぁ? 何様だ、てめぇ」

不良の頭は鋼先生にガンを飛ばしていた。
あくまでソファーから立つ事なく、ふんぞり返ったままだ。

「野生動物……だぁ? 言ってくれるじゃねぇの。礼儀ぃ? クソ喰らえだ、おらぁ!」

エメラルド田村が右手をすっ、と動かす。
すると、一部の不良達はマシンガンやらライフルやらレーザー銃を構えた。兵器を構えたのは十数人であり、全体のほんの一部である。
残りの不良は何が起きているのか把握しきっておらず、おどおどしていた。

イーリス「なっ!? なにをやっているのですか……!」

イーリスはあわあわと、武器を構える不良達を止めようとしている。

龍宮 鋼 >  
「んな身勝手なルールが通用すると思ってんじゃねェぞクソガキィ!
 教えてもらわなきゃなんも出来ねェってんなら、テメェら誰に犯罪行為を教えてもらったァ!?
 教わってねェから出来ねェんじゃなくて、やりたくねェからやらねェだけだろうが!!
 テメェの不幸を言い訳にしてんじゃねェぞ!!」

怒号。
口調こそ明らかにキレているそれだが、顔は未だに笑っている。
彼らがかなり気合の入った不良であることが相当楽しいらしい。

「この俺に向かって何様だァ……?
 知らねェなら教えてやるよ」

ソファに置いた脚を退かし、テーブルを蹴り飛ばしてそこに仁王立ち。

龍宮 鋼 >  
「常世学園数学教師、龍宮鋼センセーだ!!
 文句あるやつァ掛かってこいやァ!!」

龍宮 鋼 >  
叫ぶ。

エメラルド田村 > 「先公如きが、吠えてんじゃねぇぞ! アァ! はっ! 俺達は、俺達の生き方をする。それだけの事よ。どんな先公かと思えば、頭のネジぶっ飛んでるなぁ? 不幸話なんてする気はねぇよ。だがよぉ、てめぇもしゃしゃり出るんじゃねぇよ!」

鋼先生にテーブルを消し飛ばされた。
武器を構えていない側の三下不良は震え上がるが、エメラルド田中は額に筋を浮かばせる。

「おいてめぇ……。文句おおありだ、おらぁ! 物は大事にしろって教わらなかったか? 俺達に説教垂れといて、自分は棚に上げるのか? 俺等貧乏学生……テーブルを一つ確保するのにどれだけ苦労してると思ってるんだ、アァ!!」

エメラルド田村は立ち上がって、鋼先生の胸倉をつかもうと両手を伸ばす。
アジトの物を壊された事にキレている様子だ。貧乏だからね。

龍宮 鋼 >  
「苦労?
 どんな苦労だ、言ってみろよ三下ァ」

胸倉を掴まれても顔色一つ変えない。
顔色どころか、そのまま引っ張られても体幹はビクともしないだろう。
力加減に寄っては、引いたエメラルド田中の方が前によろめくぐらい。

「どーせゴミ捨て場漁ってちょうどよさげなテーブル拾って来て、廃材でツギハギするぐらいだろうが。
 それとも人数揃えて家具屋襲って、テーブルのついでに金やらなんやら巻き上げてくるか?
 どっちにしろロクな努力じゃあねェよなァ」

その辺に転がったテーブルだったものをガツン、と脚で踏みつぶす。
テーブルだったゴミは、廃材にもならない木片になり果てる。

「テメェらが貧乏なのはテメェらの好きに生きた結果だよ。
 知らねェわからねェっつって調べもせず好き勝手生きて人にメイワク掛けて。
 その結果がテーブルの一つもロクに買えねェ貧乏生活だろうがよ。
 それが不幸話じゃねェっつうならなんだっつうんだ、アァ!?」

エメラルド田村 > 鋼先生の説教を最後まで聞き、そして熱が冷めたかのように胸倉を放す。
テーブルを脚で踏み潰されようが、エメラルド田村の目がぴくりと動くのみだった。

「はぁ……」

ソファーに座り直して、眉を動かして再びふんぞり返る。

「これ以上はただの煽り合いだな。ちょっと正義感を持った一般人が不良を煽り散らかすなんてよくある事だ。まともに相手するだけ、体力の無駄でしかない。俺達ァ、別に無意味に喧嘩したいってわけでもないしな」

鋼先生へと視線を向ける。

「てめぇ、俺達に喧嘩売りにきただけなら、もう帰れ。俺達は喧嘩屋ってわけじゃねぇからよ」

どうやら喧嘩が好きで日々喧嘩に明け暮れるタイプの不良ではないらしい。
鋼先生を喧嘩腰なだけ、と判断したエメラルド田村は逆に冷静になっていた。

Dr.イーリス > 「ど、どうしてこうなったのでしょう……」

イーリスは、今の流れに頭を抱えていた。

龍宮 鋼 >  
「なんだ、つまんねェな」

久しぶりにケンカが出来るとちょっとワクワクしていたのに。
本当に詰まらなさそうな顔。

「ま、とにかく立ち上がったなら良しとしとくか。
 言われたことちゃんと出来て偉い偉い」

こちらもソファに腰を下ろす。
埃っぽいが、それはそれでなんだか懐かしい。

「ある意味ではケンカ売りに来たっつってもいいかもしれんがな。
 一言で言やァ、テメェらのチーム乗っ取りに来たって訳だ」

余りに言葉が過ぎる。
そのままグルンと頭を逸らし、後ろにいるであろうイーリスの方を向き、

「そォだよなァ、イーリスゥ?」

ニヤニヤ笑いながら。

エメラルド田村 > 鋼先生の詰まらなさそうな顔に、エメラルド田村は怪訝な表情をしていた。
この先公、本当に先公できてんのか? と言いたげな表情。

「……勝手に言ってろ」

ソファーに座る先生が発する言葉に、この場にいる一同、「は?」と声を上げた。イーリス含め。

不良A「乗っ取る……」
不良B「だと……?」

先程まで鋼先生尊敬オーラだった不良まで、反感を表情に出し始めている。
エメラルド田村は、神妙に先生を睨む。

Dr.イーリス > 「……そういう話……でしたっけ……」

入学手続きする上で、身元引受人の代理になってくださるという話だったような……。
という感じで、イーリスも頭上にいくつもクエスチョンを浮かべていた。

「……と言いますか……エメラルド田村さんの言う通り、一応苦労して手に入れたテーブルを壊されて、私も若干不信気味になっているのですが……」

少し言い辛そうに。

龍宮 鋼 >  
「あぁ、そりゃまぁ、悪かったな。
 俺もちょっとテンション上がっちまってよ。
 あとからテーブルとか色々買ってやるよ、ついでに欲しいモン言っとけ」

そこに関しては流石に反省している。
つい昔のテンションのままで来てしまった。

「――冗談だよ。
 ま、こいつから聞いてると思うが、オマエら今正規学生じゃねェんだろ。
 学園にゃそう言うやつらへの支援制度があるんだが、オマエらがそれ使うんなら身元引受人がいるんだわ。
 で、オマエらが正規の学生になってちゃんとした教育受けたいって言うなら、俺がまとめて面倒見てやるっつー話だ」

バリバリと後頭部を掻く。

「ただまぁ、正規の学生になったら悪いことはほぼ出来ねェ。
 やろうと思えば出来んこたないが、やりゃ当然風紀の世話んなる。
 元不良ってことで見る目も厳しくなるしな。
 身元引受人っつーのはその辺の監督も任されるんで、オマエらのチームの乗っ取りっつーのもある意味ではそうだって話だな」

Dr.イーリス > ようやくまともに話ができる雰囲気となって、安堵の息を漏らすイーリス。
ついでに、テーブルを買ってくれるという言葉にも安堵している。
貧乏人……物は結構大切にする。

「鋼先生の仰る通り、ひとまず正規の学生になり、支援制度を受けられるという所までは悪くない話だと思います」

エメラルド田村 > 「そういう話なら先に言え……。確かに、基本は俺達にとってありがたい話ではある」

本題を聞けば、エメラルド田村は真剣に考慮している様子だ。

「だがよ、鋼先輩。俺達全員分の身元引受人になるのか? ここにいる奴で全員じゃないぜ。このスラムや落第街の各所に、俺達の仲間がいる」

龍宮 鋼 >  
「センセー、な」

先輩、と言う言葉にいちいち訂正を入れる。
昔ならともかく、その辺はキッチリしておかないといけない立場だ。
さっきケンカ吹っかけてたけど。

「まー俺一人で全員の面倒直接見るっつーのは流石に手が足らねェやな
 直接面倒見るのはオマエらのチームの上の連中で、下の連中はオマエらで間接的に見て貰うっつーのが無難じゃねェの?」

勿論何かあった時には自分が責任を取るつもりではある。
あれやれこれやれと指示だけ出してふんぞり返るのは趣味じゃない。

「これでも昔チームの頭張ってたんでね、それなりの経験と人脈はある。
 とりあえず全員分の仕事探すぐらいは、まぁ頑張ってやるよ」

エメラルド田村 > 「細けぇ事気にすんじゃねぇ、先輩」

先輩という呼び方を続ける不良の頭。

「……まァ、現実的にはそういう事になるよな」

鋼先生を言葉を聞いて、エメラルド田村は天井を仰いだ後、再び鋼先生に視線を戻した。
イーリスも少し俯き気味に視線を落とした。全員が正規入学するのはやはり現実的ではない、という事からの反応だ。

「不良っつっても、様々なタイプがあるよな。喧嘩に明け暮れる不良もいれば、義理人情を尊ぶ不良もいる。鋼先輩は、どんなタイプの不良だった?」

唐突に、そんな質問を投げかけた。