2024/07/16 のログ
ご案内:「違反部活群 最深部-忘れられた廃ビルの地下」に『拷悶の霧姫』さんが現れました。
ご案内:「違反部活群 最深部-忘れられた廃ビルの地下」に『無形の暴君』さんが現れました。
『拷悶の霧姫』 >  
落第街、その最深部には、誰からも忘れ去られた廃ビルがある。
もう何年も放置されたままのその廃ビルは、
人の近づいた形跡が微塵も見当たらない。

或いは何者かが出入りしていたとて――一切の痕跡は抹消されている。

そんな廃ビルの更に地下深く、何重もの秘匿魔術で秘された扉、
その先の階段を降りていけば。

そこには、都市伝説が息づいている。

落第街の都市伝説(違反部活狩り)――『裏切りの黒(ネロ・ディ・トラディメント)』が。


廃ビルの地下、その一室。
部屋には余計な家具や装飾などは一切置かれていない。

ただ、部屋の中央に大きな木製のテーブルと、
決して座り心地の良くない簡素な黒のソファが設えられているだけだ。

テーブルの上に浮かび上がるのは、魔術的に視覚化された、数多の情報の海だ。
落第街の様子や、何人かの二級学生の顔が、そこに浮かんでいる。

そうしてそんな情報の海(青白い光)を受けて、
暗がりの中には白い顔がひっそりと、浮かび上がっていた。

天から降り落ちてきたばかりの、純粋で無垢な白雪のようなその肌と、髪色。
美を追求した芸術家が、魂を込めて掘り出したような輪郭、そして宝石の如き瞳。

何処までも深いこの闇には、触れただけで溶けてしまいそうなその容貌は
不釣り合いともいえようか。
肌、髪、瞳、表情、そして肢体。
少女の持つそのどれもが――何処か生気を感じさせず、非現実的な香を漂わせていた。


「――入って来ていただいて、構いませんよ」

ソファに腰掛けていたエルフ(幻想種)は、部屋の奥へ向けて声を投げかける。
闇に、しんしんと降り積もる雪のような音が響いた。

『無形の暴君』 > 足音を忍ばせる
慣れた動作のように、自然と無の空気を纏い、それは歩く

見た目は、金色
太陽の光のような髪は、闇にあってもほの明るく浮かぶ
それでいて、黒に溶けるように揺らめいている

その足が、止まる

「……ああ。では、失礼する」

当然のようにかけられた声に、当然のように答え
部屋の中に、するり、と入り込む

「……急に、どうした?」

中の先客に、静かに声をかける
その声は、中性的…というよりは、どちらととっていいか判じ難いものだった

『拷悶の霧姫』 >  
「ご足労、ありがとうございます。『無形の暴君(ソレイユ)

少女からは感情という感情が、すっかり抜け落ちているのだろう。

その表情も声色も、一切の彩りがない。ただただ純粋な、(やみ)だけがあった。
実のところ彼女に、そういったものは存在しない。
感情は、とうの昔に壊れている。

故に彼女が見せるそれらしい所作は全て、
かつての感情(りんかく)をなぞる虚しいものに過ぎない。

軍服の意匠を多分に施した黒のワンピースに、
身を包んだ白の少女――『拷悶の霧姫(ミストメイデン)』は、
ソファから立ち上がり、そっと瞼を閉じると、来訪者に向けて頭を下げた。


闇から現われたのは、眉目秀麗の男装の人。

その来訪者は、ここに予め呼び出していた人物であった。
裏切りの黒のメンバー、ヴィランコード(二つ名)は『無形の暴君』。

かつては個を有していたが、今では異能により他者を模倣し続けた結果、常闇の蜃気楼の如くそこにある存在。

そして、『拷問の霧姫(ミストメイデン)』エルヴェーラにとって、長きに渡り共に歩ん
できた、信頼の置ける存在でもある。

「近頃は、目立つ闇が表側(学園)で暴れていましたね」

テンタクロウのことである。
受け取り方によっては、
メンバーである『虚無』に痛手を与えた存在もそこに、含まれるのかもしれないが。
いずれにせよ、何の波もない音で、エルヴェーラは静かに語った。

「……あなたも十分ご存知だとは思いますが。
 真に警戒すべきは、こういった大きな動きの裏で、
多数の影が次第に膨れ上がっていることだと考えます。

枚挙に暇はありませんが、たとえば大きな動きで言えば――」

そう口にして、エルヴェーラは青白い魔術光で構成した、
宙空に浮かぶ画面を指さした。

そこには何人かの人物の顔と共に、ある文字が浮かび上がっていた。

『拷悶の霧姫』 >  
「――『GRANADA』。

まだ表立って動いてはおらず、組織として完成しては居ないようですが、
旗揚げの為にかなり派手に動いているようです。

落第街のみで暴れる分には構わないのですが、
まぁ……態々名前を挙げたということで、お察しでしょう」

エルヴェーラは、淡々と語を紡いでいく。

『裏切りの黒』という組織は、落第街の暴力を否定しない。
犯され、侵され。殺し、殺され。
それは、落第街の日常に過ぎない。

『裏切りの黒』は、正義を騙り、違反部活()を討つ組織でも、
落第街の浄化を行う組織でも、決してない。

彼らが真に動くのは、表と裏の均衡が崩れかねない時、である。

つまり、現状『GRANADA』は学園へ何かしら良からぬこと
行おうとしている動きがあるということだ。

「……この状況、私も動かねばならない時ではないかと考えました。
近頃は網にかかった者達の精査に時間をかけて、
色々と皆さんに任せきりでしたから。

そこで、信頼できるあなたに、相談をした次第です」

眼の前の人物に送られたメッセージは、『身体を解してほしい』。
たったそれだけだった。

『無形の暴君』 >  
「……」

手帳を取り出し、しばし黙考する。
確かに、ここのところ表側(学園)が騒がしかった。
多少此方に関わりがあろうとも、しかし所詮は騒ぎがあった、程度のものである。
裏側(落第街)にとってはいつものこと、でしかなかった。

しかしーー

「なるほど。それは確か……元々、向こう側(学園の秩序を担う者)だったか。
 少々遊びが過ぎたにしても、許容内。最近は大人しくしていたと思っていたが……」

ありがちな、堕落した男の一人、であったはずだ、と記録を掘り返して確認する。
だが

「……おじょ……『拷悶の霧姫』が出るほどのこと、か?
 それだけの、連中だと……?」

わざわさ、そこまでを危惧する。
そんな相手なのだろうか、と。

「いや……きっと、そうなのだろうな。
 更なる調査も必要だろうか?」

それならば、私が出よう、とそんな意図を乗せて問う

『拷悶の霧姫』 >  
 
彼女は、毎日記憶を失っていく。
紙製の記憶領域(手帳)を取り出す様子を確認すれば、
エルヴェーラは静かにそれを見つめて、待っていた。

「……あくまで、『GRANADA』は一例として挙げたまでです。
 他にも、一目見ただけでは到底見通せない落第街の暗がりの中で、
 様々な者達が活動を開始しています。

 網にかかればまだ良いのですが、全てがそう簡単に見つかる訳でもありません」

エルヴェーラは、目立った抑揚のない声で、補足を行う。

「表が騒がしいからこそ、境界線が曖昧になってきていると、そう考えています。
 だからこそ、備えておくことは必要かと考えました。

 ……『無形の暴君』。
 私は、組織の重鎮でも何でもありません。
 組織の備品です。
 
 しかし、だからこそ、組織の為に動けるのであれば、動けるように埃は払っておきたいと
 そう考えています」

組織の備品を自称する少女は、静かにそう口にした。

「協力痛み入ります。私の方で調査を進めていますので、
 また何か進展があり、あなたに助力を求める必要が生じた際には、
 お声がけをします」

そこまで口にすれば、エルヴェーラは腕を前に突き出した。
指さすのは、『無形の暴君』の背後。よく組織の者達が模擬戦を行っている場所だ。
かつては、この二人も。

「さて、メッセージでお伝えした通りですが。
 今のところあなたにお願いしたいのは……その埃を払うことです」

そこには、かなり広い空間が広がっている。光は、月明かりの如く
天井から照らされた魔術光のみ。

『無形の暴君』 >  
「そう、だな。私も少々気になっている事象があるにはある、しな」

光あるところに影がある
本来であれば、その二つは対の存在であり混ざり合っても溶け合うことはない

……しかし
今、強過ぎる光が。強すぎる闇が。
その間隙を歪め、更なる蠢きが歪みを強くさせていっている
そういうことか

「……そう、だな。」

“備品”
その言葉に、少し考えて答える。
目に前の彼女は、自らをそう規定する。
それは昔から、未だ変わることのない規定。

で、あればーーこの身は?

「……ああ、勿論。
 お嬢の望むままに」

調査の依頼だろうと。埃払いだろうと。
望まれたことを、望まれたように。

「軽く慣らしからいくか? それとも、初めから全力で?」

体の向きを変え、背後の空間へと目の前の相手を先導するような体勢をとり
問いかけた

『拷悶の霧姫』 >  
「……恩に着ます、ソレイユ

お嬢、の一言には、瞳を見つめてそう返す。


そんな一瞬の静寂は、重々しい鎖の音にて破られることとなった。

袖口から、一本の鎖が弾丸の様に放たれる。

ブラックオリハルコン制の鎖は、魔力をよく通す。
彼女の腕から放たれた魔力が、彼女が袖の中に隠していた鎖を、
勢いよく、眼前の相手に向けて弾き飛ばしたのだ。

「これは改めてメモしておいても良いかもしれませんね、ソレイユ。
 これがいつものスタイルです」

その軌道を目で追った後に、エルヴェーラ(お嬢)は静かにそう口にした。

『無形の暴君』 >  
「……」

金属の塊が飛んでくる
まるで、解き放たれた獣のように
狙い過たず、自分へと向かって

「なるほど」

ほんのわずかに体を開き、弾丸のようで、それでいてそれ以上の破壊力を秘めるそれを躱す

「礼を失していた。私の落ち度だな」

だらり、と両の手、体、足と全身の力を抜いたような
これから闘うのか疑問にも思えるような体勢で立つ。

「いつもの流儀も封じよう。
 全力で……いく」

弾かれたように
弾丸のように、ソレイユの体が飛び出した

『拷悶の霧姫』 >  
放たれた鎖、そしてその先にある刃は、過たずソレイユへ向けて放たれた筈だ。
しかし、それはいとも簡単に躱される。

彼女(ソレイユ)の誇る圧倒的な身体能力。
弾丸でも躱してみせる、獣以上の反応速度。
だからこそ、彼女を見込んでこの仕事を頼んだのだ。
 
「流石です」

拳をく、と内側へと向ければ、
放たれた鎖が彼女の袖口へと戻っていく。

足に力を込めて、身体を転がす、右へ。
廃ビルの冷たい床が肩を打つのを感じながら、そのまま闇の向こう――
訓練場へとエルヴェーラは駆け出す。

秘匿されてはいるが、幾重にも防護結界が貼られたその一室は、
十二分に戦闘に耐えられる空間だ。

『無形の暴君』 >  
「……さて」

訓練場へと辿り着き、エルヴェーラと対峙する
まるで人形のような彼女は。そして、その恐ろしいまでの異能を備えた彼女は。
しかし、それだけに非ず
実戦でも比類ない力を持つ

それは誰よりも身をもって知っている

「私のことは…もはや、言うまでもないな?お嬢。」

静かに、穏やかに。相手に声をかける
ゆらり、と水のように緩やかに。穏やかに。
そして、静かに
ソレイユは歩み寄って行った

『拷悶の霧姫』 >  
「……語るに及びません」

歩み寄る『無形の暴君』。
身体から放たれる威圧感は、受け手によっては物理的な圧迫感すら覚えるのであろう。
じわじわと喉を締め付けられるような――丸腰で、巨大な獣と対峙したかのような、錯覚。
それほどまでの、暴力がその内側に秘められている。

しかし、エルヴェーラは涼風の如く受け流す。
彼女の心が、機能していれば。
或いは別の展開も有り得たであろうが。
彼女は、そのようにできている

今は、退かない。
右腕と左腕を交差させ、その怪物(フェイスレス)と対峙する。
仕掛けてきたタイミングで、カウンターを狙う動きだ。

『無形の暴君』 >  
「……」

ソレイユ(顔のない怪物)が、歩く
自然な動きの中で、ほんの一瞬ーー
腕がぶれる

”異様“
それは間合いの半歩前
届くはずのない一撃

それが打ち出されーー
エルヴェーラの眼前に迫った

『拷悶の霧姫』 >  
一瞬のぶれ。
刹那、見開かれる紫の宝石(ひとみ)
元より、カウンターを狙う構え。足に込めていた力を一気に解き放ち、後方へ飛び退る。

同時に、その一撃に合わせて、重々しい鎖の音と共に。
身体を、左へと大きく回転させた。

エルヴェーラの足は、身体は宙を浮いて、
その有り得ざる一撃を(すんで)の所ところで逸らした。

あとほんの一瞬でも反応が遅れていれば、
骨が折れる音と共に遥か後方に吹き飛ばされていたことだろう。

しかし、ソレイユに伝わったのは、エルヴェーラの肩、その輪郭を掠めた感触だったか。

無論、ただの回避では終わらない。

回転と同時に彼女の両袖口から放たれた鎖が、二本ずつ。
彼女の身体の動きに合わせてその一撃に絡みつくように襲いかかる。