2024/08/13 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に狭間在処さんが現れました。
狭間在処 > 一言で言えばしくじった――否、詰めが甘かったというべきか。
何時ものように、人身売買或いは人体実験。それらを主導、あるいは関与する違反組織や部活を潰して回る”日課”。
潰しても潰しても際限なく沸いてくる蛆虫みたいだ…それに終わりなんてきっと無い。
誰かの悪意が、欲望が、野心がある限りこういうのは絶対になくならないだろう。

それでも続けているのは、最早なけなしの意地かつまらない復讐心か。或いは別の何かか。
どちらにしろ――…

「……ッ…!」

舌打ちを零して咄嗟に足を止めて身を捻る。掠めるのは銃弾の群れ。物陰に身を潜めながら一息。

(…やっぱり左足の治りが遅い…俺自身の肉体の問題か…あるいは。)

何時ぞやの仮面の襲撃者。アレが持っていた武器に何かしらの細工が仕掛けてあったか。
お陰で襲撃は失敗。今は一つの違反組織丸々から追跡されている有様だ。
左足が不調な事で機動力を削がれているのが痛い。相棒の三本足の鴉――ヤタは安全圏に避難させている。

(…この足だと逃げ切るのは流石に無理があるか…。)

と、なれば不調であろうと単身できっちり潰すしかない。

狭間在処 > ――ぞくり、悪寒が背中を走った。咄嗟に物陰から跳躍するように無理矢理飛び出す。
隠れていた物陰が突然”爆破”され、青年の体が爆風に煽られて吹っ飛ぶ。
咄嗟に受け身を取りながら転がって衝撃を和らげつつ。

(…爆破…魔術師か能力者か。大方用心棒か幹部クラスの奴にそういうのが居たか――…)

瞬間、再び地面を転がるようにしてその場から離れる。
今度は地面から無数の『金属の刃』が飛び出してきた。
一瞬でも回避が遅れたら足元から串刺しになる所だった…しかし。

(――今度は金属系の能力者か?…流石、そこそこ大規模な組織だけあるな。戦闘要員も居るのか)

休む間など与えてはくれない。左足の怪我は無視して再び走る。
銃弾、爆破、金属の刃。しつこく追撃してくるそれらを紙一重で何とか交わし続ける。
反撃に移りたい所だが、機動力が削がれている上に異能のデメリットも考えると…。

(…おまけに、まだ別の魔術師か能力者が詰めている可能性もある。)

(…今回はいよいよマズいかもしれないな…。)

安静にして居るべきだったと言えばぐぅの音も出ない。
だが、立ち止まっていたら連中がのさばる時間が増える…だったら潰すしかないだろう。

狭間在処 > このまま、身体能力だけでどうにかするのは流石に不可能。
…【四凶】か…あるいは【変異化】か。取るべきはどちらか。

(…変異は流石に持続時間が短すぎる上に、反動が大きすぎて動けなくなる…。)

(…かといって、【四凶】も反動は大きいし…おそらく連続使用が前提。こっちもまともに後で動けなくなるな。)

強力な力を持っていても所詮は【失敗作】(出来損ない)だ。デメリットも無視できないほどに大きい。
かといって、このまま一方的に嬲り殺しにされるのも許容は出来ない。

「………。」

考えている間にも追撃の手は苛烈さを増している。
銃弾程度なら見抜けるが、足元や壁から不意に生えて来る金属の刃、そして爆破。
この二つが矢張り厄介。加えて――…

「―――…!?」

突然体が重くなった。これは…重力か?動きが鈍った所に、見計らったように金属の槍衾。
強引に身を捻って回避するが、幾つか体を掠めて血飛沫が舞う――…いや、まだだ。

(3人…!これ以上は流石に勘弁して欲しいな…!)

回避した所に連続爆破。直撃だけはギリギリ避けたが、至近距離で爆風と衝撃を貰って吹き飛ぶ。
そのまま、廃屋のガラスを突き破って中に飛び込む形になりながらすぐさま身を起こし。

(…四の五の迷ってる暇は無いか…まったく。)

狭間在処 > (…幸い、この辺りにあまり人の出入りは無い…連中が居るくらいか)

つまり、無関係の人間を巻き込む恐れも無い。元々暮らしていた連中も危険を察知してさっさと避難しているだろう。
なら、【四凶】を解放しても最悪の展開はおそらく回避は出来る。

(…落ち着け。この程度を乗り越えられないでどうする。ここで犬死には御免だ。)

ゆっくりと息を吐く。…異能の同時使用は不可能だが、現出させるだけならリスクは無い。
だったら――…

(四つを同時に現出させておいて、適宜切り替えて運用する。)

右手に出現する禍々しい暗色の斧槍、左手に出現する銀と黒の色彩の太刀。
更に、背中には漆黒の大剣と青黒い長弓を背負うように召喚…現出完了。

(……しんどいが、これだけなら負担も少ない。どのみち左足の状態も考えると短期決戦しかない。)

爆破、金属刃、そして重力。最低でもこの3人は潰さないと話にならない。
4つの異能そのものであり怪異でもある武装を携えて廃屋から弾丸のように飛び出す。

狭間在処 > 「―――ッ!!」

飛び出すと同時に爆破の嵐が襲い来る。即座に左手の太刀を横薙ぎに一閃。
能力である空間の断裂により、爆破そのものを空間の裂け目に呑み込んで消去。
それを完了したのを見計らい、今度は左手に持つ斧槍を振るう。地面から無数に生えた金属刃を、巨大な黒い獣の顎が纏めて飲み込む。
――どちらも一定の距離からでも能力を使えるらしい。まだ距離を詰める必要があるか。
再び、右手の太刀を振るう――大気操作。足元から風を生み出して、その反発で低く鋭く宙を疾走する。

(――見つけた。)

まず一人目。金属刃の能力者――無数の金属刃を発射してくるが、左手の斧槍を振るってまとめて”呑み込む”。

「……ッ…!」

早速、異能の反動で頭痛を始めとした全身に激痛と倦怠感が走るがそれは無視。
先ほど飲み込んだ金属槍を全方位へと撃ち込んで、牽制と同時に更に間合いを詰める。

『化物が…!!』

そんな憎々しい呟きが聞こえるが、むしろ誉め言葉にしかならない。失敗作の身からすればむしろ過大評価だ。

(――お褒めの言葉をありがとう――だけど死んでくれ。)

そのまま、右手の太刀で金属刃の能力者を一刀で切り伏せる。
休む間も無く跳躍。切り伏せた金属刃の能力者ごと爆破しようとしたようだが、それは寸前で回避。

狭間在処 > 爆破の衝撃を利用して空中に高く飛び上がり、身を捻りながら両手の武装を放り投げて背中の長弓を手に取る。

――能力者はあと二人。その他構成員は…邪魔だな。
矢を番えていない弓を引き絞り――真下に向けて放つ。
ただそれだけの動作で、有象無象の構成員達が何故か錯乱状態に陥った。
――精神攪乱。この弓が持つ能力の一つだ。同士討ちを始める連中を尻目に、弓は即座に背負い直して。
再び、両手に太刀と斧槍を引っ掴んで自由落下。…そろそろ重力の能力者も来る筈――…

(―――来たっ…!)

いきなり落下の速度が増した。いや、上から何かに押さえ付けられる圧力を感じる。このまま地面に叩き付けるつもりか。
だが、そう簡単に思い通りにはさせない。落下しながら右手の太刀を振るって空間の裂け目を展開。
その中に自ら飛び込んで姿を消し――…

(…目視で残り2人の位置は確認した…ちまちま時間は掛けられない。)

そもそも、青年の異能は長時間の行使が出来ない…肉体が持たないからだ。
突如、爆破の能力者の背後から出現し――太刀でその身を切り裂く。

(――二人目。これで後は重力の――…っ!?)

最後の足掻きか、切り伏せられると同時に自爆じみた無差別大爆破。
流石に回避は不可能で異能の展開も間に合わない。まともに喰らって派手に吹き飛んでしまう。

狭間在処 > (…こっちを巻き込んで自爆か…!!)

全身あちこちに衝撃と火傷を負いながらも、まだ一人仕留めていないので強引に身を捻って着地。
そろそろ限界が近くなってきたが、ここで能力を解除すると反動で動けなくなる。
左手の斧槍を背中に背負う代わりに、最後の一つである漆黒の大剣を左手に握る。
能力は肉体の超強化と高速再生…4つの異能では一番シンプルで分かり易い効果だ。
全身のダメージを高速再生でカバー…だが左足の怪我は矢張り治りが遅い。

(…高速再生でも無理か…。)

だが、それを考えるのは後回しだ。再び悪寒を感じたので、右手の太刀で空間を裂いて無理矢理飛び込む。
青年が姿を消した瞬間、その地点を中心に地面が圧壊する。…ギリギリの所だった。

(――もう猶予が無いな。一撃で仕留める。)

空間が裂けて重力使いの背後を取る――が、読まれていたらしい。
真上どころか、四方八方から重圧を食らって全身のあちこちから骨が折れる音が響く。

「―――っっぁ…!!」

それでも、左手の大剣の能力で無理矢理砕かれた全身を即座に再生しつつ、強引に大剣で切り伏せた。

『――四凶…!!怪異の…”なり損ない”め…!!』

口から血を吐き出しながら、怨嗟のような呟きと共に重力使いが倒れ伏す。

「………。」

その通り、怪異のなり損ないだ。是非も無い。気が付けば周りの連中も全員同士討ちの末に全滅している。
本来なら、証拠隠滅を図る所だが今回はその余裕が残念ながら無い。

(……痕跡は残したくないんだけどな…。)

しかしいい加減に限界だ。能力解除と共に4つの武装が掻き消えて。…一気に反動が来た。

「ぅ――ぁっ…!ゲホッ…ゲホッ!」

口から盛大に吐血。全身を強烈な痛みと倦怠感が襲う。更に貧血の症状も出ている。
…覚悟も予想もしていたが反動が矢張り大きい。まともに動けやしない。

狭間在処 > (…参ったな…さっさと撤収しないとなんだが…。)

結構派手に立ち回ったので、下手したら風紀の連中が来る可能性もある。
証拠隠滅する余裕も時間も無いので、このままだと不味いか。
しかし、相変わらず治りが遅い左足の怪我を始めとして、今の状態は最悪だ…。

――戦闘が一段落したのを悟ったのか、相棒の三本足の鴉が舞い降りて青年の右肩に留まる。

『――ヤタ、周囲に人影は?あと、巻き込まれた連中は居るか?』

相棒の鴉――ヤタは「カァ!」と一声鳴いた。青年には鴉の言葉、意思は何となく伝わる。

『……そうか…流石この街の住民たちだ…危険察知と逃げ足が尋常じゃない。』

お陰で、どうやら余計な被害は出さずに済んだようだが。
…いや、人的被害は出ていないが住民たちの家屋のいくつかは全壊している。
流石に少し申し訳ない気持ちもあるが、こちらもそこまで気を回す余裕は無かった。

狭間在処 > とはいえ、このまま蹲ってもいられない。
よろよろと立ち上がれば、なけなしの体力を振り絞って歩き出す。
…今回は苦戦してしまったが、こういうのは青年にとって何時もやっている事だ。
終わりのない潰し合い、終わりのないいたちごっこ、終わりのない八つ当たり。

(…本当、人生を楽しめていないな俺は。)

過去のあれこれを引き摺り過ぎているのは否めない。
だけど、前を向いても何処に進めばいいのかも分からない。
戦闘の気配が落ち着いたのを見計らって、住人達の気配も近づいてくる。

…姿を見られても困るので、最悪の状態ではあるが身を引き摺るように少しずつその場を離脱する。
何にしろ左足の怪我のせいで、ややびっこを引く形になってしまっているが。

狭間在処 > 翌日、この辺りで幅を利かせていた違法組織が”全滅”したのは少しだけ噂として流れたであろう。
――やらかしたのは誰なのか、それは幸い明らかにはならなかったようだ…。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から狭間在処さんが去りました。