2024/08/24 のログ
ご案内:「違反部活群 とある地下倉庫」にノーフェイスさんが現れました。
ご案内:「違反部活群 とある地下倉庫」に真詠 響歌さんが現れました。
■ノーフェイス >
一言に違反生と言っても様々だ。
独立独歩を望むもの、寄り合って組織となるもの、強固な組織を築くもの――
強いて言えばひとつめに近く、しかしそれとは似て非なるものもいた。
つながりを求めずに、能力を提示し、互いのメリットのために協力し合う。
友人ではない。仲間でもない。依存することのない。
相互を見ず、見つめる方向が時として噛み合っただけのものたち。
強いて言えば同志という、熱くも冷たい、どこか現代的な関係性を主軸に、
表から裏へと跨り活動するものたちもまた、当然存在している。
それらはひとりが捕まったところで、芋づる式に他が――という連鎖もない。
強靭な目的意識の持ち主が、たまたま利害一致で肩を並べるような。
ノーフェイスと名乗る怪人もまた、そこに分類されていた。
かつてのハロウィンで、広告塔という価値を提示したように。
今は演奏者のキャリアや違反生ミュージシャンが公演するための会場を提供するかわりに、
秀でた演奏技術と集客力を求めていた――だがここしばらく、灰の劇場の公演は停止している。
なにひとつ明日の保証がないのも、落第街と不法運営の常。
突然放り出されても自己責任。それが、暗黙の誓いでもある。
■ノーフェイス >
その演者のひとり、真詠響歌とも、プライベートの繋がりはほぼ絶無だ。
連絡役を仲介してのどこか冷めた関係の果て、彼女を誘ったのはとある違反部活が厳重に管理する貸し倉庫のひとつ。
地下道を抜け、ようやくたどり着いた重厚な扉の先、音声認証に呼応して照明が作動し闇を払う。
「……つーワケで、私物にしたいモンがあるんだったら持っていきなー。
運び屋のツテは自分で探せよ。そこまでは面倒見きれないからー」
ずらりと不規則に並ぶのは、『灰の劇場』で使用されていた音響設備やら楽器群。
その只中を先導するように進みながら、さして名残惜しむこともなく言い捨てた。
だけならず、件のブラックマーケットなので降ろされた衣類やらバーコーナーの食器群。
広大な倉庫を埋め尽くさんばかり。
その筋に噛んでいれば見ているだけで垂涎のコレクション。
市場価値となれば見積もっていくらになるか。
換金の手間を惜しまなければ宝の山と言っても過言ではない。
■真詠 響歌 >
深い深いアナグラの先の音声認証の扉。
一時とはいえ発話を制限された人間としては感慨深かったり。
「あはー、ビュッフェスタイルだ。
そーゆーの大好き」
さらりと言い放たれた言葉にわざとらしいくらいの歓声を上げて、さらりといくつかの表面を撫でていく。
無造作に置かれ、それでいてどこか雑多な雰囲気を抱かせない至宝たち。
一山いくらのガラクタと、一本で家が買えるプレミアが一緒くたにされていた。
分かる人に分かれば良いと言わんばかりに。
「ん、これ可愛い。コントロール多すぎて訳わかんないけど。
これだけ貰ってこうかな。楽器は自分で運ぶ主義」
言いつつvサイン。
スピーカーとかはともかく、直接手で触れて弾く子は自分で運びたい。
ポップな見た目に反して多機能極まる青いボディのトラディショナル・モデル。
市場価値で見ても上から数えた方が早いけど、それ自体はどーでもいい。
可愛くてキャッチーなじゃじゃ馬。ただの私の好み。
「で、劇場ホントに畳むんだ。
アナタも記念に何か持ってくの? ノーフェイス」
呼び捨て。特別仲良しでも何でも無いけど。お仕事だけの関係。
だからこそ信用しているし、信頼している。
ふらりと唐突に表れては価値ある物を築き上げていった人を惹きつける天才。
面白い事の為に言葉も人脈も全部を尽くす、手抜きなしで遊ぶ女の子。
■ノーフェイス >
「学んだコトのひとつに、引っ越しが大変ってのがあるな。
荷物は身軽であるに限る。なにをするにも、どこへいくにも」
持って行くのか、と言われれば、肩を竦めて否定した。
そぞろ拾い上げたスティックで名うてのメーカーのシンバルに振り下ろす。
破裂音に似た音声が倉庫のなかにけたたましく響いて、残響に指をふれた。消音。
「……トコヨミンクのコート。
これは持っていけない。バミューダワニのパンツ。もってのほか。
そういうのは処分してくれ。なんなら闇市に流せばお小遣いにはなるでしょー」
ブラックマーケットに流れていた違法品は、持ち出し厳禁だ。
これを衣装として纏えるのは、少なくとも認可が降りるまでは落第街でだけ。
「灰の劇場はそもそもボクの持ち物じゃない。
支配人がおやすみしてたから間借りしてただけなんだよ。
本来の役割を全うさせるために余計なものは運び出してる――それで?
キミのほうは行くアテあんのか」
珍しく、先行きのことを話す。
腕を組み、体をアンプの横側に倒して支えさせた。
■真詠 響歌 > 「ん-、何処って決めては無いけど、そろそろ自前のトコは欲しいかな。
連れたって根無し草で辻斬りみたいにライブやるのも良いけど、詰めてくと不自由だし。」
不自由なのは趣味じゃない。
かつて自由な歌姫でいられたのはスポンサーがあったから。
マネージャーが居て、メンバーがいて、ファンがいて。
思い返す日々があればこそ、自由は程遠い。
「私もこっち来た時には手ぶらだったしね。
パッションがあれば何処でも行けるし何処でも歌える」
拍子をとれる手足があって、この喉を震わせる事ができるなら。
何処へだって。
――どはいえ。
「ん、その辺りのは適切に箱に詰めてく。
何人か呼んで、粗方持ってく事になるけど良いんでしょ?
都合の良いバイヤー(お友達)いるからマーケットは荒らさないようにはしとくね」
出来るだけ、と付け足して。
そう。先立つものは大事なのだ。
チャリティなんて可愛い事言って回る程お花畑じゃないのは、何処でもいっしょ。
だからこそ、音響機材の類を見ていた視線とは完全に別の視線で禁制品の山を見る。
自分の趣味じゃない、文字通りの宝の山。
「劇場の持ち主の人、知り合いなんでしょ? お礼言っておいてよ。
ついでに良い不動産があったら紹介してくださいって」
安いとこしか買えないけど、と軽口を叩いて笑う。カラカラと。
クセの付いたコードが、機材が。ステージに立った日の思い出と一緒にそこにある。
随分と昔、お世話になったライブハウスの閉店が決まった時と同じ、郷愁のような物。
■ノーフェイス >
「角鹿建悟って男を探しなよ。
自分の城が欲しいなら、彼を動かせればどうとでもなる。
彼も――まだ未生の花ながら、夜に吼えるものだ」
その名は、自分の仲間だ、という称号ではない。
独立独歩の、強靭な――欲望の持ち主のことだ。
「将来性も含めて、創造性のポテンシャルでいえば。
この新しい世界を探しても、あれほどの逸材はそういないだろう。
――ここから殻を破れるかどうか、そもそもあの頑固者を心をノックできるかどうかは。
キミのプロデュース次第だ。ちなみに、女の色香が通じる相手じゃないよ」
真詠響歌。かつてのファム・ファタールの武器のひとつでは刃が立たない。
「……………ああ、もう、これはボクの手を離れたものだから。
必要としてるやつのところにいきわたるように取り計らってくれていい」
熱を語る。
深い地下の底で、表情なく、美貌の怪人は見つめていた。
どこか――冷たく。
「………――――」
握りしめた手のひらをひらくように。
それを語った。
■ノーフェイス >
その手のひらに握られていたものを掴むために。
熱情と挑戦を謳いながら、しかし。
どこか冷酷に、冷徹に、着実に。実績を積み上げ続けてきた。
「風紀の猟犬にケツ追っかけられて、ここにしかいられないヤツが。
どこでもだなんてよく語れたもんだな」
失墜の偶像に、静かに声がかかる。
嘲るわけでもなく、黄金の瞳はその実情を離れた位置で見つめた。
「行くアテってのは、そういう話。
明日のない、パッションに押し流される日々を悪いとは言わないケド」
肩を竦めて、落として。
現状の自己肯定の言葉を聞くたびに、募る疑問がある。
「キミ――逃げてない?」
向き合わなければいけない、大きな問題から。
眼を反らして生きることが、自由なのか。