2024/09/02 のログ
ご案内:「感染爆発地域」に黒面の剣士さんが現れました。
黒面の剣士 >  
――かけまくも 畏き 黒き御神――
――畏み 畏みも 白す――

――諸々の 禍事・禍魂・禍人 有らんをば――
――祓え給へ 清め給へと 白す事を――

――聞こし食せと 畏み畏みも 白す――


――我 黒き御神の 使徒なれば――
 

黒面の剣士 >  
多数の紅き屍人の徘徊する地域。

その一角で、ひそやかに舞う黒き影がひとつ。

薄手の黒いコートと、首の後ろで一つ結びに纏めた長髪を靡かせながら、ひとつ、またひとつと、
紅き屍骸と化した人々を討ってゆく、黒衣の剣士。

その太刀筋に、憎悪はなく、怒りもなく、歓喜も快楽もなく。

あるのは、ただ、討たれる屍人に対する慈悲のみ。

歪んだ生と死に縛られ、人を害するモノと成り果てた者達へと送る、正しき死という安らぎと祝福。

黒い狼の仮面の双眸に、蒼い炎をくゆらせながら、黒面の剣士は、舞うように、屍人を断ち続ける。

せめて、歪められた生の終焉に、安らぎある死があれと願いながら。
 

ご案内:「感染爆発地域」にホロウさんが現れました。
ホロウ > 常世の空に映える赫耀が、屍の徘徊する区画を通りかかる。
そのまま通り過ぎるかのように思われたが、急なカーブを描きながら仮面の剣士の元へと下る。
徐々にその速度を落とし、少女の間合いの外、地面まで3m程の高さで制止した赫耀の正体が口を開く――

「初めまして。私は『紅き屍骸』ではございません。風紀委員会の観測機のホロウと申します。
繰り返します、私は『紅き屍骸』ではございません。そして、あなたに敵対する者でもありません。」

女性のような機械と人間の挟間のような声色で剣士に話しかける。
両手を上げ、ジェット機からは赤い光を湛える様子に敵意は無い。

「観測の途中で危険地帯へ立ち入る方を観測致しましたので、観測及び注意勧告で参りました」

自分の見た目が全体的に赤い事を理解している故、紅き屍骸に攻撃を繰り返す剣士に少しばかし警戒し距離をとっているようだ。

黒面の剣士 >  
空から来る。何者か。
紅い。新手の屍人か、あるいはそれを生み出す『屍骸』か。
反射的に手にした刀を構えた所で、

「――――――。」

女性のようであるが、どこか機械染みた声。
本人は紅き屍骸ではないと語っているが、さて。

「――注意勧告、ですか。」

狼の仮面から発せられる声は、女性であるとは分かるものの、奇妙な響きを伴う声。
――これを出来るようにするのは、少し骨が折れた。

(――少し時間を稼ぎます。"観測"を。)

顕現している「仮面」に、心の中でそう伝えれば、双眸の蒼い炎が僅かに勢いを増す。
――仮面の権能の基本たる、死者観測の能力。
例え機械仕掛けであろうと、「生きている」ならばこれに引っ掛かる事はない。

「ご忠告は痛み入る。
されど、この屍人達を放置しては、更なる犠牲の増加を招こう。
――故に、彼等は送られねばなりませぬ。あるべき形、正しき「死」の姿へ。」

…相手の反応次第だが、これで観測までの時間は稼げる筈か。
 

ホロウ > 「この区画に存在する紅き屍骸を討滅することが目的という事でよろしいでしょうか。
この区画は危険ですので退避を勧告するつもりでしたが、無意味そうですね」

見られている。
観測する側が観測されている状況には気づきながらもこれといった反応も、拒絶も示さない。
剣士の観測結果には、死んでいないと出るだろう。
そしてこちらは剣士を観測しない。最低限死んでいない事は観測したが、それ以上は詮索しない。
身分を隠している相手の情報を詮索するのは、犯罪者相手でも無ければ無礼であると心得ているのだ。
それに

「でしたら、私も同行させていただけないでしょうか。
先ほどお伝えしたように、私は観測機です。
ですのでこの区画も観測を行いたいのですが、屍骸が多く観測出来ずにいます。
あなたは戦闘に長けているとお見受けします。もし宜しければ、近辺で観測を行わせていただけないでしょうか?
妨害は致しませんし、最低限の自衛手段は有しておりますので」

協力を願い出ようという相手に失礼な真似はできない。

黒面の剣士 >  
「………。」

観測の結果は、「白」。
目の前の機巧仕掛けと思しき女性らしき存在は「死んでいない」。
生死が歪んだ「紅き屍骸」ならば直ぐに観測出来る。

――風紀委員会の所属らしい名乗りも、嘘ではないとみて良いだろう。
ならば、

「――――っ!」

ひゅ、と、まるで駆け出す狼のような素早さで、観測機を名乗る女性に向けて一息に距離を詰め――

――そのままの勢いで通り過ぎ、女性の背後を取ろうと賢しく動こうとした屍人に、一閃を放つ。

(……安らかに、穏やかに。
死は、あなたも迎え入れてくれましょう。)

その太刀に、やはり憎悪の類はない。正確には、激する感情が乗っていない。
飽くまでも、慈悲と安らぎ…あるいは祝福を与えるかのような、安らかなる死の斬撃。

「――同行したいというのであれば、止めはしませぬ。

なれど――この屍人達も、ある意味では被害者。
理不尽に生を奪われ、歪んだ生死に囚われた者達。

同じやり方を強制はせぬ。
なれど、せめて頭の片隅に、留め置いて頂きたい。」

ひゅ、と、軽く手にした刀を振るう。
白い柄巻に金の鍔の刀は、この凄惨な状況に於いてもなお、美しさに陰りが見えないようにも思えるか。
 

ホロウ > 「ありがとうございます。」

観測機と名乗るだけあってか、剣士の切っ先の向く先も、屍骸が接近していた事も察知したようで。
眉1つ、指先一つ動かさずに背後へと回った剣士の方へとふり向く。
ふり向いた機械の表情からは、色が感じ取れるだろう。
剣士へと向く興味の眼差し。

「ご協力感謝致します。
それでは、同行させていただくに際して剣士様の意思を尊重させていただきます。
剣士様が望むように出来るかは少々自信がございませんが、可能な限り努力させていただきます」

自信、努力。機械にあるまじき言葉が、その機械がただの機械ではない証とも言えよう。
そして、剣士に敵意が無いと確信したのか浮遊を続けていた状態から地上へと降り、剣士の背後数mから徒歩で追従しようとするだろう。

「それでは剣士様。よろしくお願い致します。」

「剣士様、一つお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか。」

追従する中で、剣士へと質問しようとするだろう。

黒面の剣士 >  
――口調は、何と言うか、事務的ではあるが、その発言内容は妙に人間らしいものを感じる。
自信がないが努力はする。0か1かの両極に在るモノが出すには、随分と「曖昧な」言葉。

(……これもまた、この島なればこそ、なんでしょうか。
害在るモノ、害為さぬモノ、その垣根を敢えて無視すれば…本当に、色々なヒトが集まる。)

と、内心考えつつ、無言で先を行く。


少し歩いた所で、かけられたのは質問を求める声。
――周囲に屍人の影はなし。
質問に答える程度の余裕はあると見た。

「……何事か、気にかかる事でも?」

小さく、首の後ろで結ばれたグレーの長髪が、軽く揺れる。
今は見えなくとも、あまり注意を疎かには出来ないので、振り向く訳にはいかなかった。これは勘弁してほしい。
 

ホロウ > 「はい。
人間が死者を悼む文化を有している事は存じ上げております。
ですが、無関係な死者を悼む方は稀有であると存じております。
剣士様はこの区画の感染者の生前と親しい間柄だったのでしょうか?」

違反組織の人間と知り合いだったのか、という問いかけだが、それよりは死者を悼む剣士の姿勢に対する質問。

「剣士様のやり方に異を唱える訳ではございません。
ですが、そのやり方を尊重するうえで、剣士様の思いを知りたいのです。」

見よう見まねよりも、その本質を知りたい、迫りたいという機械なりの想い。
人間の可能性を追う者として、人間の人らしい部分を知りたいと思っているのだ。

黒面の剣士 >  
「――――――。」

思ったよりも常識的な質問だ、と考える。
確かに、己の取る方法や屍人へのスタンスは、奇妙・異端といえる代物であるかも知れない。
普通の人間であれば、それこそ紅き屍骸は屍人を増やす脅威。
恐れ、憎まれこそすれ、慈悲を以て相対する存在ではないだろう。
もしあったとしても、それは精々屍人と成り果てた者の近親者や知己がそれを悼むくらいだ。

だからこそ、追従する彼女の質問は「常識的だな」と感じた。

少し間を置き、再び奇妙な響きの混じる声が返る。

「――そうですね。
あなたの疑問は、ごく当然のモノでありましょう。

…質問に質問で返す事は容赦を。

あなたは、「死」とは何であると思われる?」

――それは、己が以前に投げかけられた問い掛け。

(……この質問の答えに、私はしっかりと答えられるでしょうか、『先輩』。)

ホロウ > 「死ですか。私は死はその生命の終わりであり、生命維持活動を停止する事を指すと考えます。」

教科書にでも乗っていそうな答え。
これがこの機械にインプットされた知識である。
そして、感染爆発が起き死が死でなくなったこの場を一瞥して。

「言い換えるなら、死が齎されたなら、その生命は終わるべきである、とも思います。
もしそこで終わらなかったのであれば、その後の元生命は生存しているとも死亡しているとも言えない状況と言えるでしょう」

蛇足かもしれない。
だが、この状況を目にしてそう思った。

黒面の剣士 >  
「模範的な回答ですね。
死は生命の終わりであり、命を繋ぐ活動の停止。
――とても正しい「定義」です。」

向けられた回答には、否定の色はない。
それを「正しき解」と認める響きが、奇妙な響きの声にはある。

「……私は、「死」というものは、「最期に待つ友」だと思っています。
「生」という喜び、怒り、哀しみ、楽しみ――幸福と、苦難の果てに待つ、最期の友。
等しく安らぎを以て迎えてくれる、生ある誰しもに寄り添ってくれるもの。

――痛みのない、苦しみのない、安らげるところ。」

其処まで答え、軽く息を吐く。

「飽くまでこの答えは「私のもの」。
生とは、死とは何ぞや。その問いには人の数だけ答えがあり、そのどれが誤っているとも、
絶対の真実だとも断定は出来ぬもの。」

す、と、気配に顔を上げれば、また幾人かの紅き屍人の姿。
それを目にして、黒面の剣士は刀を軽く振る。

「故に、私は己の答えと、黒き御神の伝えし禁忌に従い、彼の者たちを安らげる死へと送る。

……怒り、憎しみ、あらゆる私心で以て、死を与える事、罷り成らず!
死は安らげる地であるべし、祝福たるべし、慈悲たるべし。」



――――我、黒き御神の使徒なれば。


その言葉と共に、黒面の剣士は紅き屍人へと向かっていく。
その姿に、その刃に、一切の憤怒や殺意はなく。

――ただ、祈るように、歪める死者に花を手向けるがごとく、慈悲の剣舞は繰り広げられる。

ホロウ > 「友ですか。そういう意味ですと、死は恐怖だと思っていましたが、違うのですね」

機械にとっての死とは恐怖。
人間に限らず生物は死を恐怖する者ばかりだと思っていた。
しかし、剣士はそうではなく、友であると言った。
生きた最後に待つ存在。終わった生命の手を取り安寧を齎す存在。
随分と達観した死生観だと、自分の知らない価値観に不思議そうに首を傾げた。

「終われない生命、死の手を取れなかった者達に死の救いを齎そうというのですね」

機械は死を救いだと謳う邪教が興ったのを見たことがある。
恐怖すべき死を尊ぶ思想自体は存在する。しかし剣士のそれは、機械の十字の眼には違うように見えていた。
本来平等にもたらされるべきであった終わりすら齎されない紅き屍骸(哀れな者)に本当の意味で救いを齎す。
機械は死を望まない。だから、死を謳う存在にはどこか嫌悪感のような物すら持っていた。
しかし、剣士の謳うそれは機械に新たな死への価値観を齎しただろう。

「…」

剣士の切っ先に表現しきれない感想を抱く機械。
言葉にならない心情に演算領域がエラーを吐きながら、新たな処理機構を生みだしていく。
そうして

「天使のようですね」

機械は剣士の剣舞をそう称した。

黒面の剣士 >  
一閃。また一閃。
舞うように白刃が閃き、紅き屍人を斃してゆく。
されど其処に憎しみはなく、怒りもなく。
ただ、安らぎを祈る黒面の剣士の慈悲と――祝福があるのみ。

騒ぎを聞きつけたのか、更に押し寄せた幾人かも危なげなく捌き、止めを刺せば、黒面の剣士は
軽く白刃を振るい、その刃を白く塗られた鞘へと収める。
黒い服装の中にあって、真っ白い造りの刀はひどく目を惹く。

「…無論、死を恐れ、厭う者もいる事でありましょう。
それを否定はしませぬ。

されど、正しき命の流れの中にあれば、死はいつか必ず訪れるもの。
なればこそ――生という旅路の果てには、安らぎがあってほしい。

誰しも、何時の日か死を迎えるもの。
故にこそ、生きている事を大切に出来る
――死あるからこそ、生きている事は、素晴らしい。

それが、御神の教えの一つ――『死を想う』事。」

ゆら、と、双眸の蒼い炎が揺れる。何処か遠くを見るように。

「無論、万人に受け入れられるような教えだとは思いませぬ。
故に、この教えを絶対と唱える事も、広める事も、私はしない。

ただ、我が()に、道標のように、あってくれればよい。

あなたも、これは飽くまで数ある「回答のひとつ」であると理解して貰えれば、それで充分。」

た、と歩みを進める音。向かう先は、感染爆発地域から離れる方角。

「――今宵はこれまで。
己が屍骸に堕ちては面目が立たぬ。

引き際を定めるも、大事な事。」

紅き屍人を「送る」事を迷わずとも、決してそれに駆られて走り続ける事はしない。
ある意味、冷静な判断であるとも言える行動。