2024/09/03 のログ
ホロウ > しばし剣舞を眺めながらも、地に伏す正しい意味での屍骸の痕跡や感染爆発を齎したであろう紅き屍骸の痕跡を観測する。
剣士の天使のようにも思えた剣舞を観察するのは幸福に似た感覚を覚えるが、そればかり見ている訳にはいかない。
本来の目的通り、観測を行うだろう。

一度だけ、屍骸が機械を襲った。
折れた剣を握った屍骸は、その剣を振るい機械を切り裂こうとしたが、逆に機械のエネルギーブレードでその頭部を切断され死んだ。
エネルギーブレードという都合上、剣士程安らかな死を齎す事は出来ない。
それでも、なるべく楽な終わりを齎したつもりだ。

「生命の在り方を否定しない思想ということでしょうか。
終わりに怯えながら死んでいくよりは救いのある思想ですね」

本来機械に死は無い。
故障などによる終わりは来るが、機械はそれを認識しない。
だが人間に近い思考を持つ機械はどうだろう。いずれ来るかもしれない終わりは死と同義なのではないだろうか。

「私は機械ですが、いつか終わる時が来るかもしれません。
その時、参考にさせていただくかもしれません。」

これまで終わりに恐怖したことは無い。
それでも、いつか恐怖する日が来るかもしれない。
その時は、剣士の神の教えが機械の心の支えになるかもしれない。

「去られるのですね。
この度は観測ご協力いただき誠にありがとうございます。
死についてのお話も大変興味深いものでした。ご教授いただけたこと、併せて感謝致します」

区画の外へと歩み去る剣士に向けて恭しく一礼。

黒面の剣士 >  
「気にされずともよろしい。
これは、ある意味、私の我儘で行っている事。

――あの紅き屍人達は、存在してはいけないモノ。
なればせめて、最期は慈悲を以て送りたい。

…そのような、我儘染みた思いです。」

観測機を名乗る女性にはそう返し、双眸の蒼い炎はゆらりと揺らめく。

「ホロウ殿、と申されたか。
名乗りを頂き、誠に心苦しいが――――

――人よ、我が名を問われるな。
今、この身は死に切れぬモノを死出へと送る者。
黒き御神の使徒たる身なれば。

――貴殿に訪れる死が、未だ遠き先であるように。
その遠き先に訪れる最期が、安らぎあるものであるように。

……然らば、御免。」

その別れの言葉を最後に、黒面の剣士はまるで野を駆ける狼の如く、風のように走り出す。

やがて、幾許もしない間に、その姿は観測の外へと消えていく事だろう。
 

ホロウ > 剣士の紅き屍骸への想いは、機械の目には慈悲の心に満ちているように見えていた。
我儘と言いながら、自分本位には無いように見えていた。

「かしこまりました。
剣士様もお気をつけて、死が遠い事を願って」

首をあげて、別れの言葉を告げる。
名を尋ねる予定ははじめからなかった。
悪事を働く訳でも無く、むしろ怪異を退治する者に仇なすつもりなどない。
故に引き留める事もしない。その身の無事を願って見送った。

「これをもって紅き屍骸の感染爆発が確認された区画の観測を終了し、島内の巡回観測を再開致します。」

長く留まれば紅き屍骸に襲われる可能性がある。
そうなる前に、簡単に観測記録を保存して静かに飛び立つだろう。

空に映える赫耀は、剣士とは逆方向へと飛び去つ。
振り返らなければ、剣士の視界に入ることは無いだろう。
これ以降のその日、観測機が仮面の剣士を観測することは無いだろう。

ご案内:「感染爆発地域」から黒面の剣士さんが去りました。
ご案内:「感染爆発地域」からホロウさんが去りました。