2024/09/04 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に弟切 夏輝さんが現れました。
■弟切 夏輝 >
……最初は、ただ金が欲しかった。
■弟切 夏輝 >
「あまり貯め込んでなかったか。あてがはずれたね」
手元の紙幣の枚数を数え終わると、ゴムで留めて雑にポケットに突っ込んだ。
労苦に見合った収入とは到底いえず、ため息が出てしまう。
筋違いな文句をぶつけられても、倒れ伏した何人かの違反生徒にはもう言い返す気力もないようだが。
「あとは風紀委員にでも拾ってもらうといいよ。そのうち巡回が来る。
怪我は治してもらえるから。生徒指導室に押し込まれるまえにね……」
突如として襲われ、金銭を巻き上げられて壊滅させられた彼らに。
さして興味も示さないまま、踵を返して歩き出す。
先立つものが必要なので、ちょっと襲っただけだ。
どのみちこの程度の戦力じゃ風紀委員のガサ入れの前では無力だろう。
■弟切 夏輝 >
弟切夏輝は風紀委員である。ただし元がつく。
今や指名手配犯。委員が堕ちるなんてあまり珍しくもない話だが、
七件の殺人から余罪究明中となるとすこしだけ箔もつく。
今やその日暮らし、必要だから違反部活を襲うし、必要だから金を集める。
必要だから、ギフターと接触した。
「…………」
コートを引っ張り、心臓を守るために配した仮面を見下ろす。
――理不尽に反逆を。
そうのたまった男の目論見通りに自分が動けているかはわからないが。
少なくともどうにもならない事態に対して願いを唱え、
試練とやらを乗り越えた結果異能を授かったのは確かだった。
「もうちょっと使いやすい異能だと助かったんだけどな……」
■弟切 夏輝 >
逃亡資金の貯蓄は目標額には遠く、避けたかった事態がすぐそこまで迫っている。
都合のいい話はどこにもなく、どこで間違えたのだと自問自答するばかり。
そのために異能を得たというのに、あれからギフターは姿を現しやしない。
「……………」
必要経費として食費……あと。
「……ダメだな……」
無駄遣いする余裕はないのに、体が薬も欲しがっている。
いっそそれも奪ってしまうか、流通ルートなど吐いて捨てるほどある。
委員会時代に得た情報は黒い使い方で非常に役立ってくれている。
「………あっ」
不意に顔を上げた。遠くに見える空撮ドローン。
風紀……のものだろうか。こんなところまで、ご苦労なことだ。
……いや、そうだろう。風紀委員会は、そうやって日夜戦っているのだ。
凶悪な犯罪者を逮捕し、この島の秩序を守るために――凶悪な犯罪者を――
■弟切 夏輝 >
「…………ああ」
ドローンが墜落した。
後悔のため息はその後に続いた。
「………………」
これは異能でも、魔術でもなんでもない。
しかしドローンがなにが起こったのか記録することもない。
弟切夏輝の早撃ちはカメラに映らない。それだけのことだ。
犯罪者は、たなびく硝煙を纏いながら呆然としていた。
「見られたくなかったの」
風紀委員会には――
闇のなかへ、足を進める。薬の慈悲が必要だった。
そして、逃げるための渡し賃も。
一刻も早く。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」から弟切 夏輝さんが去りました。