2024/09/05 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 > 本日も警邏。
事前に十全な準備を欠かさなかった故の超検挙率。
異能、魔術、格闘、剣戟、火器…全対応。
──そろそろ、こちらの顔を確認して向かってくる者も少なくなった。
逃げる者も、想定済みの逃走経路に張ったテイザーネットにて確保。
ほんの僅か、想定外のルートを抜け逃げた数人を追って、廃倉庫の入口へとやってきていた。

「…辺りに気配もないし、此処に逃げ込んだとも考えづらいけど…」

追跡をミスしたか、それとも別のルートがあったか。

この倉庫は確か…落第街での売春をアテンドする、違反部活のものだった筈。
別の施設の地下を丸ごとそういった会場とし、違法な映像などを作成し売り捌いていた。
そんな違反部活の『跡地』だ

伊都波 凛霞 >  
配倉庫の前に乱雑に放り捨てられた建材に指を触れる。
異能の力(サイコメトリー)を使い、記憶の残滓を読む───。

真新しい記憶の中に、それらしい人影が倉庫に向かっていったようなものはなかった。
外れたかな、と思った矢先、
瞼の裏に投影された映像に数名のグループが廃倉庫へと入っていく様子が見えた。

「(? 直近のものじゃない…数週間以上前?……なんだろう)」

そうなると現在の騒乱よりも前。
今回の件とは直接関係のないことだろう。

が…かつて違反部活が使用していた物件である。
一度摘発されたとはいえ、再度集結し何かをしていてもおかしくない。

「──。
 凛霞です。過去に売春を斡旋する違反部活が使用していた倉庫、ありましたよね?
 警邏の途中ですけど、気になる映像(メモリー)が見えたので、内部の調査に入ろうと思います。
 定時連絡は欠かさず入れますので、途絶えた場合は応援をお願いします」

何もないだろう、、とは思いつつも。
手帳(オモイカネ)での連絡を終えれば、少し足早に朽ち果てた倉庫へと向かう。

伊都波 凛霞 >  
錆びたシャッターには当たり前のように鍵はかけられていない。
中には何もなく、隙間風が吹き込み、内部はボロボロ。
住処とするには雨風を多少防げるかどうか。
ただ住み、潜むだけならもっと良い物件は落第街やスラムにも結構ある。
故に打ち捨てられたように、この場に佇んでいる。

「、んっ…!」

搬入口のシャッターを持ち上げる。
錆びついていて軋みをあげながら迫り上がるそれはそれなりに重い。

「(電気は…通ってるわけないか……何、この匂い…)」

カビ臭いとも違う、鼻を突くような充満する匂いに思わず鼻を押さえながら、中へと歩みを進めた。

伊都波 凛霞 >  
小型の魔術照明のスクロールを取り出し、起動する。
一気に倉庫の中が明るくなり、視界が開けてゆく。
倉庫と言っても大型のプレハブのようなもの。そこまで広くはない。
人間が隠れようとするなら、多くても十人ちょっとが限界。そんな場所だ。

「───……」

饐えた匂いの正体はすぐに理解る──思わず、その嫌悪感に眉を顰めた。

適当に重ねられたボロボロのマット。
その上に乱雑に放り出され汚れた衣服や下着、そして使用用途が余りにも限られる奇妙な形状の玩具。
そんなものが、あちこちに散らばっていた。

込み上げるものを感じて口を抑える。
……幸いなのは、この倉庫の中に誰かがいる気配はなかったところ。

「──一度そういうコト使用(つか)われた場所だからって」

恐らく、外れにあり大声を出しても誰も来ない。
風紀委員も、一度摘発し蛻の殻となってることを知っている。
自分とて、記憶(メモリー)が視えなければ恐らく内部に入ることはなかった。

伊都波 凛霞 >  
──このエリア(落第街)ではよくあることなのかもしれない。
しかし犯罪行為に使われている可能性も否定は出来ない。
何より…違法な薬物であるとか、そういったものが氾濫する温床にもなりかねない。
散らばっているものの中には注射器や、錠剤の包装シートなども混ざり捨てられている。

何も知らない一般生徒が落第街に踏み込んで…なんて話もないわけじゃない。

…状況は撮影、一部は…証拠品として持ち帰る。
なるべく汚れていないものを選んで、小さなビニール袋に入れ、封をして──。

「(…視ないほうがいい、気もするけど……)」

落ちていた注射器、比較的新しいものに見えるそれに触れ…集中する。

伊都波 凛霞 >  
映し出された映像は、不鮮明なもの。
けれど、聞こえる。
女の子の泣き叫ぶ声と。
男達の笑い声。
その声は次第に小さくなっていく。
そして…男達の罵倒と笑い声だけが聞こえるだけの空間になる。
──わんわん、と頭の中に反響するように、そんな下卑た声が───。

「───、ぅ」

込み上げるものを感じて、強制中断───現場を汚すわけにもいかない。

性犯罪の温床となっていた倉庫は、今も尚。
細々と、隠れ家の如く、そういったことに使われている。

「…はぁ、気持ち悪い……。
 ちゃんと、封鎖するか……取り壊しも、視野に…」

身体に極度の不調を感じる。
記憶の残滓を読むこと、それ自体は負担はそれ程かからない。
ただし、脳が再生するその映像は──一種の追体験だ。

あまりにも、気持ちが悪すぎて。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」に黒面の剣士さんが現れました。
黒面の剣士 >  
すさ、と、小さく何かが擦れる音。
武術に優れた者ならば聞き逃しはしないだろうし、同時に気配も感じる筈。

視線を向けるならば、其処に立っているのは黒い人影。

何処か漢服を思わせる馬乗り袴型の袴に黒い上着、薄手の黒いコートのようなものを羽織っている。

最も異質なのは、顔。
その顔には、何処かエジプト風の造形の、狼を象ったシンプルな仮面を被っている。
その双眸には、まるで黄泉の灯の如き蒼い炎が揺れる。
その焔が仮面の目の部分を覆い隠し、身に着ける者の瞳を明らかにしない――。
 

伊都波 凛霞 >  
「っ…!?」

咄嗟。
数瞬前まで存在しなかった筈の気配。
擦れる音が鳴るとほぼ同時、そちらを振り返り抜き放ったテーザーガンを向けていた。

──小柄な風貌。性別はわからない。
子供か、あるいは女性か。

明らかに異質な容貌。
最大限の警戒をするのは当然のこと───。

黒面の剣士 >  
「――――。」

す、と黒い人影が動く。
分かり易い程にゆっくりと、右手を差し上げ、開いたまま、テーザーガンを向ける風紀委員の少女に
その掌を向ける。
――有り体にいえば、制止を求めるポーズ。

「――巡回の方か。
誤解無きよう、願いたい。当方に、貴殿と争う意思はない。」

仮面から発せられるのは、女性の声。
年若い、とは分かるが、仮面越しの為にくぐもっている上、奇妙な響きがかかり、特徴が掴み辛い。
ボイスチェンジャーを通したような声とは、また異なっているが。

「……此処を訪ねたのは、死したる者の無念、怨念が留まっていないかを確かめる為。

繰り返すが、当方に貴殿と刃を交える意思はない。
その意味が、ない。」

静かに、奇妙な声の主は繰り返す。
ゆらり、と蒼い焔の双眸が揺れる。

伊都波 凛霞 >  
「………」

す、とテーザーガンを構えた手が降ろされる。

そして対する黒面の剣士が声を発すると…。

小さく、首を傾げた。

「………えっと」

敵意がない、それは理解った。
解らないのは…なぜそんな格好をしているのか。
確かに声は聞き取りづらいけど、醸し出す雰囲気も違ったものになっているけど…。
いや、うーん……。
此処は、彼女に合わせよう。
伊都波凛霞は大人だった。

「──此処には死者の無念はないと思いますよ。
 性被害、性犯罪…おおむね、そんなところだと思います」

漂う悪臭も含めて、あまり居心地の良い空間ではない。

「で…結構怪しげな風貌に見えますし、あまりこういう場所を彷徨かないほうが良いんじゃないかと…」

手が早い風紀委員なら見た目で判断して先手必勝してもおかしくない気がする…。

黒面の剣士 >  
「――――。」

無言でつかつかと歩みを進める黒い人影。
首の後ろで一つ結びにした髪が、軽く揺れる。

「…この街には、死の影が多い。
紅き屍人は言うに及ばず。
――普通の人が知らぬ間に、悪意ある者に
命を奪われている可能性も否定は出来ませぬ。」

右手の人差し指を燃える双眸に近づけ――指先に、炎を映す。

「――覗いてみるとよろしい。
死者の魂が留まっておらぬなら、それでよいのです。」

す、と、その焔を通して覗いてみると良い、と、軽く示して見せる。
それで分かる、と言いたげに。

――蒼い焔は、死者観測の力。
もしも此処で――何某かの不幸の内に命を落とした者が居れば、その焔を通して、
その姿を観測する事が可能だろう――。

伊都波 凛霞 >  
───……

彼女のこの場での行いについては、言及はしないことにした。
何らかの事情。何らかの責務。
きっとそんなところだろう。
それに、此処での死者の有無は自身も知りたいところではあった。

彼女がどうしてそんな力を持っているかは不可思議。
その指先に灯された焔を、鈍色の瞳に映せば───。

男の姿がおぼろげに、二つ──。

──かつて此処に在った、小さくも悪辣を極めた違反部活の在りし日。
  踏み込んだ風紀委員に対し、醜くも抵抗し、命を落とした者。
  そして、その情報を風紀委員に掴まれたことによる、身内の粛清。
  成程、この場には確かに、"死"が在った───。

「──……成程」

「この場での"被害者"が"女性だけ"…とは限らない」

少し、穿った視点になっていたかもしれない。反省点だ。

黒面の剣士 >  
「――ご理解頂けたならば、何より。
例え如何な所業に手を染めようとも――

死した者は、往くべき場所がございます。
この世に留まり続ければ、生ある者を妬み、凶事に及ぶかも知れぬ。」

す、と、蒼い炎を風紀委員の少女の目に留まらせたまま、黒面の人影は歩みを進める。
向かう先は、朧げな男たちの姿の方角。

歩みを進めながら、すらりと腰から刀を引き抜く。
右手に握られた、白い柄巻に黄金の鍔の刀は、この場にあって場違いな程に、美しい。