2024/09/06 のログ
伊都波 凛霞 >  
怨霊、悪霊、怪異に亡霊。
そういったものに対しては、正直手が出ない。

小さく肩を竦めて、その様子を見守る。

「こんな場所までこなきゃなんて、正直大変通り越してる気がするけど…」

此処は外れの廃倉庫。普段は現地の人間も無用に近寄らない。
何かしら、そういった感知の手立てでもあるのだろうか。

オカルト研究会とかに引っ張りだこになりそう。
なんて、やや緊張感のないことを思いながら。

黒面の剣士 >  
「――それが、私の役目ですゆえ。
例えささやかであろうが、放っておいて良い道理にはならぬ。」

すぅ、と、男たちの霊に右手の刀を向け、振り上げる。
その気配に、怒りはなく、逆に哀しみもない。
敢えて言うなら、「私心」というものが存在しない、と言えばいいのか。

感じられるモノは――慈悲。


――かけまくも 畏き 黒き御神――
――畏み 畏みも 白す――

――諸々の 禍事・禍魂・禍人 有らんをば――
――祓え給へ 清め給へと 白す事を――

――聞こし食せと 畏み畏みも 白す――


――我 黒き御神の 使徒なれば――
 

黒面の剣士 >  
耳に慣れぬ祝詞が唱えられ、白刃が一閃、更に一閃。

――振り抜かれた刃に断ち切られた男たちの霊は、吹き消える蝋燭の火のように掻き消える。

その最期の瞬間にあった、男たちの表情は――解放される、安らぎが、僅かながらに浮かんでいただろう。
 

伊都波 凛霞 >  
彼女の帯びた役目か、使命か。
それを自分に推し量ることは出来ない。
ただ、そういうものも必要なのだろう。
浄化、成仏。言い方は色々だろうか。

そういったものには少々疎くもある。

「えっと…」

「お疲れ様?」

見た感じは、終わったのだろうか。

おずおず、と剣士へと声をかける。

黒面の剣士 >  
「――いえ、こちらこそ巡回と警備の邪魔をしてしまい、申し訳ない。」

すらりと刀を鞘に収めると、静かに一礼。
顔を上げると、ぱちん、と指を鳴らせば、風紀委員の少女の目に灯っていた蒼い炎は
吹き消すように消えるだろう。
そうすれば、再び元の視界が帰って来る。

「――紅き屍人を探していたのですが、生憎…否、幸いにも、
この周辺には居なかった模様。
以前、此処より暫し離れた場所で、多数の紅き屍人を見ました。
この一帯を巡回されるなら、くれぐれも気を付けられませ。」

かつ、かつ、と、ブーツの音を鳴らし、倉庫の出口へと向かう。

「――言いたき事もありましょう。
訊ねたき事もございましょう。されど――

――人よ、我が名を問われるな。
今、この身は死に切れぬモノを死出へと送る者。
黒き御神の使徒たる身なれば。」

その言葉に、狼の仮面の蒼い炎の双眸が揺らめく。
――言いたい事があるのは分かるが、訊ねてはくれるな、と。
あるいは、懇願するかのような言葉。

伊都波 凛霞 >  
「それは、いいんだけど──」

ふっ、と視界が普通に戻る。
…少し変な気分。夢から覚めたようでもある。

なぜこんなことを?

以前、落第街には近寄らないほうが良い、と伝えた身としては。
聞きたいことも勿論あったが───。

それは言葉にて、静止される。
……彼女にも彼女の事情があるのだろう。

「聞けなくても、私はいいんだけども」

小さく頬を書く。

こんなことをどう報告書に書いたものだろうか。
彼女を正体不明とぼかしつつ、あったことをそのまま書くしかないか…。

黒面の剣士 >  
「――何時の日にか、互いの立場が邪魔をせぬ時。
斯様な時が来たならば――その時に。

然らば――御免。」

その言葉を残し、たん、と黒面の剣士は地面を蹴る。

まるで野を駆ける狼のように、黒い風となった黒面の剣士は
たちまちのうちに落第街の中に紛れ込み――見えなくなっていく。

果たして、そのような時が来るのか――それは天のみぞ知る、という所か。
 

伊都波 凛霞 >  
言葉を残し、跳び去る黒面の剣士。
その様を眺めながら、廃倉庫の外で凛霞はしばし佇む。

人には言えぬ事情も在るもの。
いずれ必要な時が来れば、話してくれるだろう。

…口調とか、そのままの味が出ちゃってたけども。

くす、と小さな笑みを浮かべてしまう───。

「──と、しまった定時の連絡の時間…」

手帳(オモイカネ)を取り出して、秘匿通信。

「──伊都波凛霞です。廃倉庫の中の確認を終えました。
 急ぐ事案はありませんでしたので帰投後にまとめ、報告を上げます。
 何事もなく……とはいかなかったですけど。ええ…」

雲間から覗く月が僅かな光を運ぶ。
そんな落第街の外れ、風紀委員の少女の通信への声だけが響いていた。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から黒面の剣士さんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」から伊都波 凛霞さんが去りました。