2026/02/22 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に火倉 刹那さんが現れました。
■火倉 刹那 >
「──申し訳ありませんが取り込み中です」
オモイカネから伸びるイヤホンを耳に当て、淡々とした少女の声が聞こえる。
ふとしてしまえばそれを聞き逃してしまいそうなのは───。
爆発音、炸裂音、雨のような爆撃と砲撃の間隙を縫うように口にしているためだった。
「違反組織がプラントとして利用している、生きた地下施設がいくつか見つかりました。
そのいくつかは今日まとめて潰しておきます。…ネズミは逃げるでしょうが、住処を奪えば表に出てきますよ」
戦時中の戦場を思わせるような音の嵐。
黒煙が噴き上がる様はおそらく同じ風紀委員をして見ても「やりすぎだ」と言わしめる程のものだろう。
■火倉 刹那 >
「…そんなことより」
「尻尾を摑ませない件の違反組織連中ですが」
光を灯さない薄紫の瞳には煌々たる戦火が映る。
そこに感情の揺らめきなどはなく、まるで対岸の火事でも眺めるかの如く。
「一度、公安委員会の主導で風紀委員の内部を洗ってください」
「特に、風紀委員であれば誰でも触れることの出来る情報網のログは洗い尽くすべきですね。
大きなドブネズミが紛れ込んでいるとしたら、逃げ道を与えていることになりますので」
■火倉 刹那 >
風紀委員は各々の正義を旨に活動する側面もある。
この少女には信じがたく、理解しがたいが…いわゆる「性善説」に基づいた考えの人間すらもいる。
『仲間を疑わない』──それは悪癖だ。
鼠はどんな手を使ってでも逃げ、生き延びようとする。賢いのではなく、狡賢く、しぶとく、薄汚い。
逃げ場を奪い、面制圧によって追い詰め、行き場をなくし表に出てきたところを叩くのは常套手段である。
「──目の届かない場所でなら、いつまでも好き放題できる…などと思ったら大間違いですよ」
島に潜み、犯罪行為を重ねる者全てに向けた言葉と共に、その場に蒼き幻影──在るはずのない巨大な戦艦の幻影が浮かび上がる。
そしてその砲撃は──違反組織群の潜伏する施設の一画をその地殻ごと平らに均すのだった。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」にサロゥさんが現れました。
■サロゥ > 「全部壊しちゃったんですか?」
砲撃が区画を均す轟音が止んだその時、
風紀委員の少女の後方より、気の抜けた声が聞こえる。
土煙が晴れて露になったのは、つい先日行方を眩ませた風紀の監視対象、サロゥ。
カジュアルな装いで戦場に踏み入れ、荒れ放題の地表を見渡す。
「ちょっと地下施設に用事があったんですけど……」
「どこに入口があるかとか、分かります?」
武器も防具も身につけていない、何かの能力を準備するでもない。
無警戒な振る舞いで、風紀の少女に尋ねる。
「あ!私は構成員とかじゃないですよ!」
「ただ、ちょっとお宝さがしがしたくって」
両手を前に掲げて、首を小さく振った。
■火倉 刹那 >
ビリ、と首元のチョーカーから微弱な電流が走る。
痛みは感じない。
この肉体は無痛に動き続ける。
故にそれは精神的な戒めとして身につけている。
過度に異能の力を、使い過ぎないように。
ここまでする必要はなかったかもしれない。
しかし、懸命に生きている人間を食い物にするような悪徳が平然と根付いているような地。
決して表情に出さぬまでも、足を踏み入れるだけで嫌悪と憎悪が噴き上がる。
それでやりすぎてしまうことを否定はしない。報告書も顛末書も始末書もいくらでも提出しよう。
それで首を切られるならばそれまでのこと。赤い制服に縛られぬ私刑執行者が生まれるだけだ。
──噴煙の中、そんなことを考えていると声がかかる。
場に似つかわしくない気の抜けた声。
「…見ての通りですが。入口もなにも、地下施設は全て崩落していると思いますよ」
あまりに無警戒に見える少女。ややこの場にそぐわない見目の少女を、眉を顰め見る。
「では何者です? …地下施設にお宝とは?」
警戒…は解かない。
この島ではどんな見た目の存在がどんな力を有しているか判断することが難しい。
■サロゥ > 「えーっと……と、トレジャーハンター……って感じかな?」
「少なくとも構成員じゃないし、人を殺したりはしてないよ!」
何かをはぐらかすような返答。
瞳が僅かに左へ泳ぐ。
そうして会話を継続しつつ、横歩きで施設の廃墟へと近づこうとする。
その過程で少女との距離も次第に近づいていくだろうが、
その足の向かう先は廃墟の中心地である。
「うーん、崩壊しててもとりあえず探索だけでも…」
「探せないと決まった訳では…ないじゃん?」
そう口にするサロゥの視線が崩落した地点へと向かう。
舐めまわすような目付き。
目の前の少女よりも、崩落した地下に興味があるようだ。
しかし、サロゥの外見は一般的で非力な少女だ。
崩落した地下を探索出来る準備があるようにも見えない。
■火倉 刹那 >
「…トレジャーハンター?」
少女、刹那にとっては映画か小説の中の存在だ。
怪訝に顰められた眉間が皺をより深くする。
「違反組織が利用していた地下プラントですよ。
あったとしてもこの島の法に触れるものくらいでしょう」
未だ黒煙と熱の残る爆心地へと不用意に近づいていく様子にため息までも漏れた。
「…崩れる地盤もあるかと思います。危ないですよ」
「それよりも、生徒手帳を提示してください。
提示できなければ二級学生か、不法入島者とみなします」
毅然とした声色が向けられる。
職務としては当然なのだろうが、言葉に優しさが全く無い。怖い。
■サロゥ > 「うわっ……っととと」
少女の忠告通り、サロゥの足元が崩れる。
幸いにも小規模なもので、バランスを崩す程度で無事に姿勢を立て直す。
しかし、崩落地点に踏み込んだ踵が、崩落につられて沈みこまず静止していた。
瞬き程の出来事だが、物理法則に反しているようにも見える動きである。
「あー……見せないとダメ……ですよね~……」
目を丸くして、深く息を吐いている間に少女が問いを投げかける。
その問いを何とか回避しようとするも、すぐに諦めの姿勢に入った。
右手を制服の内ポケットに差し込み、渋々ながらもすぐに何かを取り出す。
外見は生徒手帳。電子化が進んだ今では珍しくなりつつあるアナログの生徒手帳。
それを手元でそっと開き、よく見えるように少女へ向ける。
「こ、これですー……」
恐る恐る、縮こまりながら見せた生徒手帳は間違いなく公式に発行されたもの。
しかし、現在は一時的に無効化されている。
何故なら、そこに記されているのは異邦の脱走者の名。
一年生 サロゥ。
失踪からすでに丸二日。
委員会内部で指名手配が行われていてもおかしくない。
■火倉 刹那 >
「っ…」
言わないことじゃない、と。思わず手を伸ばしそうになるも。
彼女…おそらく彼女だろう、が姿勢を立て直せば、その手を下ろす。…全く、危なっかしい。
不自然な動き、にも見えた。何かしらの異能者であることは、この島では珍しいことでもないが。
その一瞬の違和感は、しっかりと記憶しておくことにする──。
「ダメですね。一般生徒が立ち入るには危険な場所です」
どちらにしても風紀委員による指導の対象だ。
彼女がおずおずと差し出したそれを、オモイカネでスキャニングする。
アナログの手帳は久しく見たが、今でも愛用する人はいると聞く。
スキャンの結果に視線を落とし、大きくため息を吐く。
「一年生、サロゥ」
「本人のもので間違いないですね。
…風紀委員預かりの監視対象ではないですか」
声色が呆れたようなものへと変化する。
こんな場所で保護とは、…余計な報告書を作成する手間が増える。
「生徒証明として無効になっていますね。
監視から脱走してこんな場所へ……補導しない理由を探すほうが難しいですよ」
職務としてそうしなければならない、と語る少女であるが。正直その憮然とした表情も声色もこう語っている。
『めんどくさい』と。
■サロゥ > 「ば、ばれちゃったか……」
たはは、と乾いた笑いを見せながら、手帳を仕舞い込む。
開き直ったのか、縮こまらせていた姿勢を解き、
きっちりと少女の方を向いて直立し、話し始める。
「だってぇ……何回も何回も呼びだされて、やりたいことも出来ないし…」
不貞腐れたように頬を少し膨らませ、それでも姿勢は大きく動かさない。
唯一の動きはその手ぶり。肘より先を動かして、胸の前で指をすり合わす。
―――地下で続く小さな崩落の音に紛れて、音叉のような音が聞こえ始める。
空気に交じり溶けていくような、気のせいとも思える微かな音。
「少しぐらい……やりたいことをやりたいなって……」
眉を顰め、視線を落とす。
擦り合わせている指先も力を失い、力なくだらりと下がる。
―――しかし、音叉とは決定的に違うことが一つある。
音が次第に大きくなっていく。
気のせいとして切り捨ててよかった程度の音は、今や耳鳴りの様である。
「だから……ちょっとだけ見逃して?」
小さく首を傾げた。
―――不審な音の発信源は、サロゥの背後。
傾げた首の裏に一瞬見えるのは、紫色の糸。
■火倉 刹那 >
「見逃して良いかどうかは私が判ずるところではありません」
ふと、目の前の存在の声にまぎれて聞こえてくる音に目を細める。
崩落の音の一部かとも思ったが──違和感として耳に残る。
「…やりたいこと、とは?」
耳鳴りがする。
何かがおかしいことには気づきつつも、その原因が目の前にある…と判断するには時間が足りない。
振り払うように首を左右に振る。
「此処でなくとも良いことなら──」
言葉を向けつつ──視界に入ったその紫色の糸に言葉が詰まる。
やはり、なんらかの異常が起こっている。
そして、違和感を奏でているもの…その根源がそれにあると直感的に理解する。
当然の対処として身構え…一歩、その存在から距離をとった。
■サロゥ > 「いや、此処じゃないとだめなんです」
瞬間、耳鳴りが止んだ。
「やりたいことは」
「知的好奇心を満たしたい……何をしてでもね」
落した視線を上げ、目の前の少女を直視する。
無表情、無感情。
瞬きもしないままに視線を合わせ、一秒。
―――サロゥの背後から紫の糸が溢れた。
堰を切る濁流の如く解き放たれた無数の糸。
音も無く四方八方に飛び散るように思えたのも束の間、その全てが地中に向けて突き刺さる。
如何に細い糸と言え、地盤を破壊するには十分過ぎる数。
しかし不思議なことに、破壊どころか音も振動もない。
糸は瞬きの間に、崩落した地下に満ちていく。
意志を持つように、研究設備を除いた壁や床などの瓦礫だけに巻き付きながら満ちていく。
そして地表へと飛び出す。
瓦礫を巻き取った無数の糸が、膨大な質量の瓦礫の山を放り投げる。
狙いなど全くない。
少女もサロゥも巻き込んで、周囲一帯をもう一度均すかのように瓦礫が降り注ぐ。
「多分大丈夫でしょ?」
ニコリと笑う。
そして同時に駆け出した。
降り注ぐ瓦礫の山の中を、瓦礫の殆どが失われた地下へと向けて。