2024/06/08 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に『虚無』さんが現れました。
『虚無』 >  
 闇の街、その中でも特に闇の深い億の奥。
 そこに1人の男が立っている。その男は前を通った人物に何かを手渡される。それはUSBメモリー。

「……まぁ、確実か」

 小さく、確実に情報を渡せる。そういう意味ではたしかに便利だ。
 それを携帯電話にケーブルを介して繋げる。

「……色々とあるな」

 自分の知らない情報を売ってもらった。それが今である。
 今開いているのは人によっては……それこそ、風紀ならば欲しがるであろう代物。様々な犯罪のデータが記されたメモリーだった。
 その中で自分達のターゲットになりえるか否か。それを判断するのが自分の仕事だ。いくつか目を惹くが。

「学生通りで襲撃か」

 直近で目を惹いたのはこれだった。
 ただの襲撃事件。それならば目に留める必要もない。だが、場所が問題だ。
 もしこの一件で風紀が本格的にここの調査に入れば厄介な事になる。それどころか下手人はまだ捕まっていない。もう一度起こす可能性もある。
 だが間の悪い話、あそこまで堂々と動かれるとヴィランとして動けない。照月として止める必要がある。だが勝てるかと言われれば不可能だ。100回やって100回負ける。

「厄介な手合いだ」

ご案内:「落第街 路地裏」に『拷悶の霧姫』さんが現れました。
『拷悶の霧姫』 >  
学園都市に落第街という層があるのなら、
落第街にもまた層はある。
比較的浅い層――歓楽街、黒街からうっかり生徒が入り込んでしまうような、表層。

この場は落第街でも奥まった層にある。
誰もこのような闇には近寄りたがらない。
まともな神経か、信念を持ちあわせて居るのならば。

「……『虚無(ヴァニタス)』」

何の色もなくその名を呼ぶ声は、彼の頭上から舞い落ちるように。
真っ白な雪の様に透き通った声が、闇の中に静かに生まれた。

周囲を警戒。既に男は立ち去って、この辺りには何の気配もない。
人も、人外も、異能・魔術の痕跡も。
そこまで確認した上で、人形は言葉を紡ぐ。

「ご苦労さまです。
 ……何か、目をつけておくべき情報は手に入れられましたか?」

『拷悶の霧姫』(ミストメイデン)――仮面で顔を隠した少女は、そのように問いかけた。

『虚無』 >  
「変装用でもうしわけないな」

 流石に情報を仕入れる時まで組織の象徴のお面。彼の場合は下半分の狼のお面を付けておいては目立ちすぎる。
 故に今は普通のマスクなのでそう告げた後。

「いくつかは見つかっている。最近組織の数が増えているらしい。新参や今後の動向を注視する組織もあるかもしれない」

 目につくようなと言われると端末が見えるように少し傾ける。
 新しくできた違反組織、流入してきた一団。それらがまとめられている。
 とはいえ全てを網羅出来ているわけではない。勿論漏れもいくつもあるだろう。

「直近だと、学生通りでの襲撃騒動だ……見せつけるような犯行に見える」

 特定の誰かではなく、見せつけるように苦しめて無差別に。
 
「襲撃とか攻撃自体は俺達の対応外だ。そこまで始末していたらキリが無いし何よりそれは俺達の理念とは別だ……だが、個人の勝手で表で暴れすぎてこっちに火の粉が飛んでくるくらいなら暴れる前に始末する必要があるかもしれない……とは思っているくらいか。最も恐ろしいのは実は背後で組織が動いていたケースだが」

 それなら見せつけるような行為が必要かどうか。
 そういう所からそこまでは測りかねている。組織か個人か。

『拷悶の霧姫』 >  
「こちらこそ、失礼しました。別所を巡っていましたので」

仮面を少しずらして、顔を見せる。
人形の如く整った、そして何の色も感じられない、
そんな少女の顔が僅かな月光の下に浮かび上がった。
月の光を反射する紫色の瞳だけが、彼女が生きていることを
示しているかのようだった。

「そうですか。
 表側の人間も、
 そろそろこの暗部に興味を持つ者も出る頃合いでしょう。
 
 一部の人間達がその時期を狙って活発に動き出す流れは、
 以前にも見たことがあります。
 しかし、組織の増加は引っかかるポイントではありますね。
 貴方の情報を元に、私の方でも調査を進めてみます」

じ、と。
青年の語る言葉に耳を傾ければ、最後にこくり、と頷いて。
少女はそのように返答した。

「仰る通りです」

理念の話が出れば、そのように相槌を打つ。
少なくとも組織としてはそのような行動は慎むべき、
理念に反する行動である筈だ。
そういった所は風紀や公安にでも任せれば良い。
彼らの手が届く範囲なのだから。

「……表と裏が入り乱れるのは、避けたい事態ですからね。
 捜査が大きく落第街にまで及ぶようであれば、
 貴方の仰る通り、事前に手を打つのは有効打になり得るかと。
 ……しかしそれはあくまで、最後の手段の一つでしょうね」

そこまで口にして、少女は落第街の闇の奥に視線を移す。

「襲撃事件、落第街の者も絡んでいるとの情報は得ています。
 組織か個人か、そこは現状の情報ではとても察することは
 できませんが……
 そのことも含め、私の方で調査を進めてみましょう。
 先ほどの、組織の増加の件も含めて、
 見ておかねばならないことは山程あります」

再び仮面を被り、少女は続ける。

「……そこで。
 『虚無』(ヴァニタス)、貴方は情報収集を続け、表側からも情報を探っていただけますか? そういった調査は私よりも、貴方の方がずっと得意だと考えていますので」

『虚無』 >  
「そうだろうな、表の人間からすれば裏の世界は無駄に輝いて見える……やりすぎる組織がでるのもこの時期が多い」

 入学から少し経ち、自分の力に溺れる奴らが出始める時期。
 群雄割拠とも言えるが、多くの組織が生まれ、そして消えていく時期でもあるかもしれない。

「やっぱりか、俺も攻撃を仕掛けるのは違うとは思っていたが」

 同じ組織内で賛同が得られるならとうなずく。少なくとも虚無として攻撃を仕掛ける事は無い。情報収集の一環として照月奏詩として戦闘をする事はあったとしてもだ。

「それは買いかぶりすぎだ……動きやすいバイトしているのは事実だが」

 掃除の仕事を取れれば大体の場所には大手を振って入れるのは強みではある。
 
「まぁ、残る懸念事項は……イベントか。表が騒がしい時は裏も騒がしくなる。とこコレ……だったか? 偽物のブランド品の密輸入が大量に出ているそうだ。まぁ薬や武器に比べれば可愛いものだが」

 それにかこつけて騒動を起こす事はないだろう。あったとして、それこそそれの鎮圧は風紀の仕事だ。こっちは関係ない。それが理由で裏と表の戦争になるなら話は別だが。

『拷悶の霧姫』 >  
「その辺りの対処については、他の方も動いてくれています。
 表側に、こちらの闇が漏れ出ないように。
 ……コインは表と裏で分かれていなければ、
 最早コインとは呼べません。ただの@混沌;てつくず;です」

であるならば、そうならないように、と。
少女は仮面の下で目を閉じながら、彼に言葉を紡いでいく。

「できることならば、彼が潰れる流れを作りたいですね。
 風紀、公安の(ツテ)を使った情報提要も視野に入れましょう。
 直接の交戦、始末といったことは最終手段かと。

 特に、今回は落第街出の者かどうかも、
 判断ができていませんから」

仮面の下から、青年の顔を見やり。

「いいえ。買いかぶりではありませんよ。
 私は……表で活動するのは不得手ですから。
 器用では、ありませんからね。
 
社会的ポジションを得ている貴方に長があるのは事実でしょう」

色のない瞳。色のない声。色のない顔。
それでもじっと見つめる仕草は、信頼を示そうとしているのであろうか。或いは。

「その手のものであれば、こちらで動くまでもないでしょう。
 まぁ……それでも。
 街を観察するにあたって、
 頭の片隅に入れておく必要はあるでしょうね。
 とこコレ、覚えておきます」

そこまで口にすれば、クロークを翻して。

「……無理はなさらず。引き続き、よろしくお願いいたします。
 何かあれば、連絡を」

それだけ言い残して。
何もなければ、闇の奥側に去っていくであろう。

『虚無』 >  
「心強い限りだ、俺も動ける時には動く。それこそ周りに二級学生も多い環境だからな、深入りしないようにそれとなく注意はしている」

 それくらいしかやりようがないとも言える。
 やりすぎた組織を鎮圧する事もあるが、それは本当に最後の手段だ。
 彼がつぶれるようにというのは頷いた。

「たしかにな、今回の事案は公安や風紀が下手人を捉えた。その後の調査で”この街とは関係が無かった”という結末が1番助かる」

 こちら目線ではそれが1番最良だ。それでも因縁をつけてくる相手もいるのだろうが、その因縁も含めてこの街だ。それくらいはいつもの事だろう。
 相手の評価を聞けばマスクの下少し笑う。

「ポジションなんて無いさ、ただ風紀に知り合いがいて、掃除のバイトであっちこっちに行ける。それだけだ、もっとも表の俺は貧乏なだけのいい子ちゃんではあるけどな」

 それこそ、裏で大暴れしているなど繋がる事は無いはずだ。相手が心でも読んでこない限り。
 情報を入れると言えばうなずいた。

「そうした方が良い……ガス抜きというのもなんだが、スラム辺りで非公式のとこコレをしてもいいかもしれないな。子供なんかはしたがるだろオシャレ」

 それでガス抜きになるのならそれもそれでありかもしれないと。少し平和的な解決方法。闇の中のささやかな日常も守られるべきではなかろうか。そんなうっすらとしたやさしさであった。
 彼女が去っていくのなら軽く手を上げる。止める事はしない、自分は情報を見て、見終わればUSBを処分するだろう。能力を用いて再生不可能なまでにスクラップにして。

ご案内:「落第街 路地裏」から『拷悶の霧姫』さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」から『虚無』さんが去りました。