2024/06/11 のログ
紅き殺刃鴉 > ――"コレ"が真の姿か?
――注釈を加えるなら"コレ"はただ単一の怪異で終わるものではない
――殺めた者を地獄の中へ投げ込まず、更なる殺戮の引き金を引くものである
――今は知らずとも、噂で聞くかもしれぬ。紙切れで見るかもしれぬ。紅き屍骸――その名を。


互い睨み合う

薄暗い路地裏

言葉はない
だが理解出来よう
その深紅のぎらついた瞳は常に貴殿を睨む

"殺してやる"
"傷つけてやる"
"死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね"

純粋なる害意
突き刺さった罠が躍るように殺意を奏でる



広げる羽
紅が天を舞い上がり

放射される死の刃
夜空を深紅色に染め上げ
雨の如く
注ぐ、注ぐ、注ぐ


溢れる殺意を――貴殿にのみ、注ぐ――ッッ!!!

狭間在処 > 今はまだ、青年はその怪異の名も目的も…何も知らぬ身だ。
これがファーストコンタクト。分かっている事は非常に少ない。
ただ、明確に感じ取れるのは純粋なまでの害意や殺意。
背中の刃を抜いている余裕はない。斧槍を構えたまま、僅かに身を低く沈める。

深紅の殺意の視線と、抗う青い視線が真っ向からぶつかりあう。
―ーヤツが動いた。否、飛翔した。同時に、真夜中の黒い空を赤く染め上げるかの如き深紅の雨が降る――…

「……。」

スゥ、と息をゆっくり整えて。ダンッッッ!!!と、力強い震脚一歩。
瞬間、跳躍した青年は弾丸のように真っ向から深紅の刃雨に突っ込んでいく!!

(他の【四凶】や具現化に切り替える暇はない。なら多少の被弾は前提、最短距離で仕留める…!!)

どのみち、既に赤い刃は受けてしまっている。手遅れならば今更何度か食らおうが――!!

「――ッ!!」

跳躍して一気にヤツへと迫りながら、斧槍を引き絞るように構える。
容赦なく、足や胴体、肩などに赤い刃が突き刺さるがお構いなしだ。

そのまま、斧槍を振り抜けば、その軌道線上に発生した黒い風のような斬撃が鴉を切り裂かんと迫り。

紅き殺刃鴉 > 迫る紅の殺意に怯まずに向かってくる貴殿


防がぬか
向かってくるか
良いだろう

――ならば貴殿と刺し違えよう!この純粋なる悪意の刃を以ってッッ!!

斧により巻き起こされし一陣の黒き風

斬撃が至近距離で鴉を捉え
引き裂く――!

紅く染まった夜空が

再び黒色を顕す



――見事。



真っ二つに割れた紅色が
どさり――と地の上へ墜落する

紅き殺刃鴉 > 敗れた紅き屍骸から
紅色が抜けていく

怪異からの支配がなくなったことを示すかのように

毒々しく、殺意的で、異常な見た目から
どこにでもいよう大きな鴉になり果てた――

ご案内:「落第街 路地裏」から紅き殺刃鴉さんが去りました。
狭間在処 > ――取った。
幾ら人から外れた身であろうが、己の弱さや未熟さはよく理解している。
半ば捨て身の特攻じみた一撃ではあったが、それが最短で仕留められると踏んだに過ぎぬ。

(――つくづく、本物の怪異というのは凄いな。)

殺されかけていたとしても、同時に素直に感嘆する自分は馬鹿かもしれない。
それが殺意であれ、悪意であれ、何であれ。そこまでの純粋な強い何かが俺にあるだろうか?

そのまま、真っ二つになって墜落していく赤い鴉と同じく青年も落下し――咄嗟に斧槍を建物の壁に突き刺す。
落下は止まらないが、それで速度を殺してから転がるようにして地面へと着地。

「………。」

真っ二つになった紅い鴉の躯からその紅が抜けていくのをしっかりと見つめて。
後に残るのは、ありふれたただの大きな鴉。

(…見事なのは”どっち”だろうな…やっぱり本体でも何でもなかったか。)

あくまであの怪異の一部、存在の欠片みたいなものだろうか?
ちゃっかり安全と分かったのか戻ってきた相棒の鴉が右肩に留まる。

狭間在処 > 『…今回は俺の勝ちだ怪異(ほんもの)。…偽物(しっぱいさく)にもちょっとは意地はある。』
狭間在処 > …既にそれはただの鴉の死骸でしかないが、そう声を掛けてから…ふらっと青年の体が傾いだ。
同時に、右手に持っていた斧槍も消えて路地裏の壁に片手を着いて倒れるのを阻止。

(…と、強がってみたものの、かなり食らってしまったからな…死にはしないだろうが。)

人間ベースの怪異なので、出血もケガも普通にする。そもそも失敗作だ…本場の怪異に比べたら塵芥だろう。

流石に手当てが必要だが、怪異の攻撃なので普通の治療でいいのか疑問が残る。
生憎と魔術は習得していないし、異能はそもそも回復の類は無い。…困った。

相棒の鴉が「だから言わんこっちゃない」と言いたげに一声カァ!、と鳴くが仕方ないだろう。
他の強い奴らから見たら大したことが無かったかもしれないが、自分はそこまで強者ではない。

狭間在処 > 手当てもそうだが、誰かに目撃されたら色々と面倒でもある。
痛みは気合で誤魔化しながら、突き刺さっていた赤い刃を出来るだけ引き抜いて投げ捨てる。

――間の悪い事に、こんな時に激しい偏頭痛が襲い掛かってきた。顔を僅かに顰めて。
人間から怪異へと改造された際の後遺症、みたいなものだ。異能の反動、というのも少なからずある。

(…流石に、これで倒れたら格好――悪、い…。)



そして、青年は倒れた。ヤタが驚いて青年の周りを飛び回って喧しく鳴いている。
大丈夫、死にはしない。ただちょっと暫く動けそうにないだけだ。

(――ヤタ、すまん。ちょっと気絶する。後は頼む。)

相棒に変に冷静に頼みごとをしつつ、一時的に青年は意識を失った。

ヤタは思った。「ご主人マジで気絶しやがった!!」と。
その後、鴉が誰かに救援を求めたかしたかもしれないし、通りすがりの誰かに拾われたかもしれない。

ご案内:「落第街 路地裏」から狭間在処さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に狭間在処さんが現れました。
狭間在処 > ――意識が覚醒する。倦怠感のようなものを抱えつつも、ゆっくりと瞳を開く。

(…取り敢えず生きてるみたいだな。無事、とは行かないが)

まずは状況確認。あの後、路地裏に倒れてからかなりの時間が経過したようだが…。
幸いなのかどうか、誰も通り掛からず身柄の回収もされなかったようだ。

ただ、怪我はそのままなので当然あちこち痛む。出血は止まっているようだが。
相棒はといえば、何だかんだずっと見守ってくれていたのか直ぐに近くの壁の上から飛んできて青年の右肩に留まる。

(…悪いなヤタ。迷惑掛けた)

青年自身は喋れない為、心中で礼を述べながら鴉の頭を指で軽く撫でる。
しかし…この倦怠感は妙だ。風邪の症状…とは違うか。そもそも風邪を惹いた事は無いが。

狭間在処 > 「……。」

意識は正常…肉体の方は怪我を差し引いても謎の倦怠感。
ただ、動き回るのにそこまで支障は無いと判断する。

相棒の鴉が、何やらカァ!と青年の注意を惹くように一声鳴いてから念のようなものを送ってくる。

(……これは…あの紅い怪異の情報か?)

断片的ではあるが。どうやらヤタが飛び回って仕入れてくれたらしい…有難い。
また、遭遇する可能性もあるので少しでもどんな怪異かは知っておきたかった。

(【紅き屍骸】…俗称かそういうコードネームか?…危険度判定がSS…?)

思わず目を細める。本来なら自分程度はどう足掻いても勝てない遥か格上の怪異だ。
だが、危険度というのは単純な戦闘能力だけで決まる訳では無さそうだ…まだ何か別の脅威がある?
流石に、座りっぱなしの訳にもいかないのでゆっくりと立ち上がる。若干立ち眩みがするが問題ない。

ご案内:「落第街 路地裏」にシャンティさんが現れました。
狭間在処 > 情報はあくまで断片的なものを搔き集めただけのようで、所々肝心な所が分からない。
ただ、矢張り昨夜己が戦った紅い鴉は【紅き屍骸】の一部、みたいなものだったのだろう。

(と、なると。…この倦怠感は毒などとは違うようだが、あの怪異の特性が影響している?)

青年自身はまだ理解していないが、不完全な感染に加えて、失敗作とはいえ怪異もどき。
それらが奇跡的な嚙み合いを起こしたようで、青年の感染状態は今の状態から停滞している

(…少なくとも、ここで罠を仕掛けていたという事は落第街ではそれなりに被害が出ている可能性はある)

表側は分からない。そちら側の情報は少々疎いからだ。
風紀や公安などは既に補足していると考えてはいるが…。

シャンティ > 最近、一度に色々なことが起こりすぎている。
その異常事態に、思うところあって女は久々に此の街に足を向けた。

そこで――

「あ、ら……あ、らぁ……」

小さく、声をあげる
自らが喚び、自らが与えた道具たる鴉に導かれ
辿り着いた先には久しぶりの相手

「お元、気ぃ……?
 と、思った……けれ、どぉ……もし、かし、てぇ……元気、の……ない、感じ……かし、らぁ……?」

人差し指を唇に当て。女は眼の前の相手に問いかけた

狭間在処 > 「……!」

覚えのある久しい声に、まだ少ししんどいのか、路地裏の壁に緩く背中を預けつつ振り向いた。

『…スシーラか。…久しぶりだな。元気かどうかと問われれば、まぁ本調子とは言えない。』

右肩に乗る三本足の鴉の口から、落ち着いた青年の声が挨拶を交わす。
まぁ、見ての通り昨夜一戦厄介そうな怪異とやりあった後だ。
衣服はあちこちに穴が開いており、出血はしていないが痛みは現在進行形で続いている。
そもそも、青年は回復に関する異能も術式も無い。自然治癒か闇医者にでも世話になるしかない。

シャンティ > 『在処の衣服にはあちらこちらに穴が空いている。出血はないが、相応の怪我がある。』

朗々と女は謳い上げる。
普段の気だるさとは別の、奇妙なまでの声

「ふふ……なる、ほど? ヤタ、ちゃんが……騒ぐ、わけ……ね、ぇ?」

小さく、首を傾げるようにする
相手の様子を測っているかのように

「見た、とこ、ろ……喧嘩、でも……し、たぁ……?
 どう、も……それ、だけ……で、も……なさ、そう……だ、けれ、どぉ……」

また、首を傾げる

「喧嘩、好き……な、タイプ、でも……なか、った、と……思った、けれ、どぉ……
 色々、あり、そう……ね、ぇ?」

狭間在処 > 朗々と歌い上げられる言葉の内容は、己の状態をまるで俯瞰して眺められているかのような。
例えるなら小説のような、物語のような――…否、思考が逸れたか。

『…まぁ、マイペースな奴だが色々と頼りにはしている。』

右肩の鴉――ヤタが自慢げにカァ!と鳴いた。一人と一羽の関係は概ね良好らしい。

『喧嘩好きでもないし、どちらかといえば襲われた側だな。…中々に厄介そうな【怪異】だったよ。』

ついさっき、断片的にヤタが情報を仕入れてくれたばかりで青年も、襲撃者の事は大まかにしか知らない。
そもそも誤魔化しても良かったのだが、彼女にはヤタを喚んでくれた恩もある。素直に怪異に襲撃されたと語り。

シャンティ > 「……ふ、ぅん……?」

こと、此の地、常世学園においては怪異が出ること自体は珍しいことではない
だからといって常時在住しているわけでもない
なんとも不幸な事件
いってしまえばそれだけ、ともいえる、が

「あなた、が……厄介、という、のだか、ら……
 きっと……ほん、とう、に……面倒、そう、な……相手、だったの、ねぇ……?」

実際に眼にしたわけではない
実際に聞いたわけでもない
それでも、雰囲気や色々なことで伝わってくることはある
眼の前の相手は、弱くない

「そう、ねぇ……」

こつ、こつ、と小さな金属音を立てて女は相手に近づく
見えない眼で、見ようとするかのように顔を近づけて

「まず、は……怪我、くら、い……治す?」

小さく首を傾げて、問いかける
別にどちらでもいい、とでもいいたげに

「怪異、も、だけ、れ、どぉ……
 あなた、の、様子、も……聞いて、みた、い……し?」

狭間在処 > 実際、怪異が殊更に珍しい存在という訳でもない。
怪異以上にタチの悪い輩だって幾らでも潜んでいるだろう。
そういう意味では、通り魔にエンカウントしてしまった、運が悪かった。その程度のものだが。

『…これが実力者ならもっとスマートに切り抜けていたかもしれないが、な。
生憎と、まだまだ俺は未熟者なのでご覧の通り穴だらけだ。』

肩を緩く竦める。普通なら病院に担ぎ込まれる程度には、無数に刃のようなものが刺さった痕跡があり。
青年自身は若干不調程度という態度だが、実際は現在進行形で普通に痛い。

近付いてきた女に、碧眼を不思議そうに僅かに細めて見遣るが…。
正直、その申し出は有難い。何せ自力で怪我を治す手段がほぼ無いのだ。

『…そうだな。手間を掛けさせて悪いが頼めるだろうか?』

と、軽く頭を下げて素直に治療をお願いする。何故かヤタも一緒に頭を下げていたが。

ただ――…

(…俺の近況とはいっても、そんな大した事は何もないが)

落第街から殆ど出ていないのもあるのだろう。思わずヤタの口ではなく心中で呟いて。

シャンティ > 「ふふ……スマー、ト……ね、ぇ?
 そん、な……”実力者”、が……いる、なら……今、頃……
 その、怪異、は……とっく、に……消え、てる、と……思う、け、どぉ……?」

くすくす、と相手の言いように笑う。
そんな実力者など一体どれだけいるのだろうか

「と、は……い、え……結構、穴、ある……わ、ねぇ……
 ん……”見て”、も……いい?」

少し考えて、問いかける
実際に見えるわけではないが、怪我の様子を”見る”のは変わらない
つまり、肉体をみることにかわりはない
それを許すか、と聞く

「治、す……精度、とか……の、問題、だか、らぁ……
 見な、く……て、も……ある、程度……治せ、る、のは……治、せる、けどぉ」

そのどちらを選ぶか、ということでもあった

「ふふ……怪異、の……話、とか……で、も……いい、の、だけ、れどぉ……
 あと、は……困った、こと、とか……?」

どうも、シンパシ―、というのとは違うが、何か通じるものがある相手だ
ついつい、ゆるくなってしまう

……自分も、変わったものだ、と女は思う

狭間在処 > 『…俺が撃退したのはどうも、怪異の一部というか分身…みたいなものだったようでな。
どのみち、一部を相手にこの様では…まぁ、生き残っただけマシと考えてる。』

まぁ、確かに、そんな実力者が居るなら一部だろうが大元だろうが、あの【紅き屍骸】という特級の怪異を制するだろう。
ただ、それだけの実力があっても様々な理由で動かない、というのも多々ありそうだが。

『―――…。』

彼女の問いかけに青年も、ヤタすら沈黙する。
体の中を見るという事は、それだけ怪我の状態や後遺症などが無いかを見るのには最適だ。
だが、体の中を見られれば…おそらく、人工的に作られた怪異の失敗作なのも気付かれる。

(…別に殊更に隠している訳でもないが。)

少し悩むように数秒の沈黙が続いていたが、やがてゆっくりと息を吐き出して。

『――構わない。それで頼む。』

スシーラへと、ヤタの口を借りてきっぱりとそう答える。
怪我とは別の謎の倦怠感。あの怪異の攻撃で何か貰った可能性が矢張り高いのだし。

『…困った事……と、言われるとすぐには浮かばないな。』

中々、パっと出てくるものでもなかったのか、青年が真面目に考え込むように。
強いて言うなら、現状この怪我とかに困っているが、それも彼女のお陰で解消されそうであるし。

(後は…それとなく表側の情報を仕入れておきたいくらいだが、それは困った事、とは違うからな…。)

怪我の痛みを押し殺しながら、口をへの字にして考え込む。生真面目である。

シャンティ > 「ん……分身、ねぇ……それ、は……厄介、そう……だ、わぁ……?
 つま、り……その、怪異、が……一杯……いて、も……おか、しくな、い……と」

そういえば、そんな怪異の噂を見たことがあっただろうか
そういう類の怪異は冒険譚としてはぴったりかもしれないが……
どちらかといえば、ホラー映画じみた方だ

……グランギニョルにしても、少々……

「そう……いい、の、ね……?」

相手が、許してくれるのであればいいだろう
相手の怪我の様子を”見る”

「……穿孔、とは、違う……けれ、ど……裂傷、という、のも……少し、違う……
 ん……そう……そん、な……感じ、なの、ね……?」

ぶつぶつ、と呟くように口にする
何を見ようが、平然として

「ん……なに、か……妙、な……もの、も……つい、て……る、わ、ねぇ……
 た、だ……これ、なら……あな、た……さ、え……し、っかり、して、れば……発症、は、しな、さ、そう……?
 どう、する……?」

おそらく、感染する類の怪異か
ただ、体質のせいか、他の要因か。軽症そうである。

「あと、は……だい、たい……わか、った、わ、ねぇ」

ぽつり、と何某かの術を唱える
それに従い、光が身を包んでいく

「ふふ、困った、こと、は……アフター、サービス……みた、いな……もの、だか、らぁ……
 気に、しな、く、ても……いい、の……だけ、れ、どぉ……」

真面目に考える相手にくすり、と笑う

「なん、に、して、も……生き、て、いたの……なら、いい、こと、だ、わぁ?」

狭間在処 > 『俺が遭遇したのは、刃を無数に飛ばしてくる紅い大鴉だった。
…が、倒した時には普通の鴉の死骸に戻った。…寄生、か感染か分からないがその類の特性があるかもしれない。』

つまり、無機物は怪しいが生物の姿をした根本的には同一の怪異がまだまだ居てもおかしくはない。
――いや、居ると断言してもいい。危険度の高さがそれを裏付けしていると青年は見ている。

こちらの体の中を”見て”呟いている彼女を眺めつつ、内心で一息。
まぁ、そういう事を気にする人でもないと分かってたが、やっぱり気が楽になる。
別に人体をあれこれ弄られて改造された、なんて物珍しくも無いのもあるのだろうけれど。

『――矢張り、か。先ほどから怪我の痛みとは違う妙な倦怠感を感じていたが、それのせいか。』

矢張り見て貰って正解だったようだ。発症はしていない、というのは自分の中途半端な怪異の性質のお陰か。
さて、発症していないとはいえ感染者である事に間違いは無い。ここで除去して貰えるならそれがいい。

『――そうだな。可能ならば、でいいんだが”ごく一部だけ”残して感染を除去は出来るか?
無理そうなら、まとめてきっちり除去して貰えると助かる。』

不完全の感染に加え、ほんのひと欠片程度の因子なら…むしろ残しておく利がある。
だが、あの怪異は特級レベル認定されているようだし油断はならないが。

(――リスクはあるが、因子を俺の中途半端な肉体に適合出来れば、感染は進まずにヤツの力の一部くらいは)

例えば、あの紅い刃雨とか。あそこまでは無理でも攻撃の手札が一つ増える。
まぁ、青年もそういう打算くらいはする。あくまで可能ならばの話だ。
光が発せられるのを見つめながら、本物に対する嫉妬もあるのだろうな、と薄く自嘲し。

『…お陰さまで、この通りちゃんと生きている。別に死にたがりでも何でもないからな。』

ちょっと偶に過激な事はしているが、それはそれ。ただの八つ当たりを語る必要もあるまい。

『…そういえば、表側では祭か何かでもしているのか?空気が賑やかな感じがしたが。』

ふと、世間話そのものな問いかけを。単純に気になっただけで特に他意は無く。

シャンティ > 「あ、ぁ……そう、いう……類、ね……?
 ます、ます……めんど、う……そう、ねぇ……」

小さく息をつく
根本的に解決するまで消えない怪異
それはそれで一つの性質ではある

「あ、らぁ……おもし、ろい……注文、ねぇ……」

相手から返ってきたのは、なかなかの注文
面倒ではあるが、方法がないわけでもない

あとはするかしないか、だけであるが……

「ん……そう、ね。
 菌、みたい、な……もの、だか、らぁ……
 たと、えばぁ……うち、こまれ、た……ところ、の……一箇所、だけ……残す、なら……でき、る……かし、らぁ?」

何箇所かに傷跡――すなわち、感染源がある
そのうちの一つだけを残せば、一部を残す、という注文を叶えられないことはない

「じゃ、あ……そう、しま、しょう……?
 ……癒やしの手(ヒールハンド)

翳した手から癒やしの光が放たれる。
それを、傷跡のほぼ全てに翳した

「……さ、て……こんな、感じ……かし、ら……ね、え」

一通り翳したあと、一息つく
調子はどう?とでも言うように首を傾げながら

「ま、あ……無理、は……ほどほ、ど……に、ね?」

八つ当たりのことを知ってか知らずか
そんな注意を与える
気だるい声のそれは、真面目にも、からかうようにも聞こえる

「あ、あ……たぶ、ん……とこ、コレ……とか、いう……の、ね?
 ファッ、ショ、ン……ショー……よ
 男、と、女、と……服を、着て、見せ、て……見た、目を……競、う……感じ、の……」

噂だけは女も見ている、が
なにしろ、着飾ることに興味がないので半分忘れていた

「……気に、なる……な、ら……ま、た……表、でて、み……る?」

小さく、首を傾げてみた

「でろ、とは……いわな、い、けど」

くすり、と笑って