2024/06/30 のログ
エルピス・シズメ >  
「ありがとうございます。倫理がどう育つかは、地方によって様々とも習いました。
 道徳や倫理や宗教にも通じて、宗教は魔術にも関わるからよく勉強しました。
 僕の異能の理解にもあるけど……ってファレーマン先生、異世界の人なんだ。」

 予想していなかった言及に、少しだけ驚く。
 とは言え意外に思っただけらしく、認識が変わった素振りはない。

「うん。悪い面に働くこともあるのは自覚します。
 僕もたまに委員でもないのに体が動いちゃうこともあって……
 ……あ、今のはあんまり気にしないで欲しいです。」

 自覚があるのか、落ち込んだように頭を下げる。
 "良かれと思って"無鉄砲な行為を行った経験は多い。

「ありがとうございます。……僕たち生徒がAを考えるのはちょっと重いか、ら……?」

 "対話目的の暴力"に視線を上げる。
 なんだろう?と言った視線だが、すぐに気を取り直す。

「そうかなあ……100人居て、再生数100以上って言うのは定着してくれる人が多いってことだから、見てくれる人は見てくれてるイメージかも……」

まじまじと見つめる。
スマホや動画と言ったコンテンツに身近さを感じたのか、再び口調が砕けた。

 ……唐突にスマホから空、次いでスラムへと視線を移す。
 何かの動きを感じたらしい。

「……雨の匂い。ちょっと不自然で急だけどそういうこともあるのかな。
 駆け抜けた方がよさそうです。……せんせい、そろそろ帰りますね。」

 キリの良い所で天候の不順を切り出し、帰宅を試みる旨を伝える。
 何事もなければそのまま帰りそうだ。

ファレーマン >   
「あぁ、之でも幾つか世界を『わたってきた』身でのう、まぁ、今は此処に定住しておるといっていいが」
「ふぉふぉ、それこそ今渡した駄菓子の様に、此処に馴染んでおるじゃろ?」

驚いた様子に少し楽し気にあごひげを撫でつつ

「うむ、君はどうやら正義感が強いようじゃな、ならば一つだけ」
「君が誰かを助けた時、"過度にお礼を固辞する"事は止しておきなさい」
「そして誰かに助けられたら、無理の無い範囲でしっかりと"お礼"をしなさい」
「良心に則った行動とは、見返りを求めない事ではない『お互いに気持ちよく見返りを与えあえる』状況を維持しようとする心もまた、良心足りえるものじゃ」
「今風にいえば『SDGs』、持続可能な良心の向け合いと言った所じゃな」

「あぁ……ほれ、わしは『異種』道徳・倫理の教師じゃからの」
「会話という方法でコミュニケーションを取れない種、或いは世界も確かに存在するのじゃよ」
「なら、此方のやり方を通す前にまずは郷に従う必要も、時にはある」

片目をぱちり、と意味ありげに閉じながら口元を笑わせて

「ふぉふぉ、もし覚えていたらチャンネル登録、高評価よろしくのぅ~~」
「そうか、そうか、ではまた会おう、わしの授業も何時でも門徒は開いておるからな」
「では、気を付けて帰るのじゃよ、シズメくん、良き出会いじゃった」

ファレーマンはそこに立ったまま、去るならばあなたを軽く手を振って見送るだろう

エルピス・シズメ >   
「ギブ&テイクが偏っちゃうと不健康……じゃなくて……不健全ってことなのかな。
 ……うん、覚えておきます、ファレーマン先生。」
 
 自分なりの言葉で留意し、頷く。
 とは言え、イマイチピンと来ていなさそうだ。長続きする関係が薄い若さ故だろう。

 肉体言語に関してもたぶん実感が湧いていない。

「それじゃあ、ありがとうございました!」

 壊れた懐中時計だけ回収し、半機の身体を駆って路地裏の壁や屋上を跳んで去る。
 見た目通りとも見た目に反してとも取れるが、落第街をくぐれる程度にはしっかり動けるらしい。

 程なくすれば、影も形も見えなくなる。
 

ご案内:「落第街 路地裏」からエルピス・シズメさんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」からファレーマンさんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に落花彩晴さんが現れました。
落花彩晴 > 巷を騒がせている例の紅い特級怪異…その話は少女の耳にもちらほら届く。
…だが、既に自分は積極的に関わる事は出来ない。何故なら祭祀局を除籍された身だから。

「……かといって野放しに出来ませんし…私に出来る事が何かあるかもしれませんから。」

落第街の路地裏を独り歩きながら呟く。…分かっている。何が出来るかなんて。

――術式を纏って物理で祓う。シンプルで呆れるくらい脳筋だと我ながら思う。

「…件の【紅き屍骸】は…封鎖隔離はされていたのでしたっけ。」

そうなると、出没する範囲はある程度限定はされている…とはいえ。
その特性などを考えると、矢張り人手が少々足りないのはありそう。
何せ特級怪異だ。まず個人でどうこう出来る相手ではない…少なくとも私には無理。

落花彩晴 > それに、この騒ぎに乗じてまた別の怪異か、あるいはそこに類する存在が動いている可能性だってある。

(…まだ在籍出来ていたら、もう少し深く関われたのでしょうけどねぇ…。)

嘆いても今更だけど。わざわざ外部から招聘されたのに、私はとんだ恥晒しだ。
当時の先輩や同期達には今でも頭を下げたい。何せ自分のせいで重傷者を複数出している。

「……除籍”程度”で済んだのは温情なんでしょうね…と。」

路地裏が交錯する。丁度十字路のような場所。こういうのは”良くない”。
自然と一度足が止まる。今の所、人の姿も気配も無い…怪異の気配も。

ご案内:「落第街 路地裏」にエルピス・シズメさんが現れました。
落花彩晴 > 「……ん。」

十字路、その真ん中の交錯点に立ちながら四方を見渡す。
何も気配が感じられない…普通ならそれで終わりだろうけど。

「…こういう時にうちの【呪い】が余計なものを引き寄せて来る可能性がありますし。」

左目だけに掛けた片眼鏡を指先でコンコンと叩きながら、何処かぼやくように。
残念と言うべきか、少女の”祓い方”はその9割近くが物理によるものだ。
他の、現役の《祓使》の先輩方の方が遥かに手札は豊富だろう。

「……最前線でド突き合いが一番適性高いとか、乙女の端くれとしては悲しいものですね。」

エルピス・シズメ >   
 少しの時の後、何かがやってくる。

「今日も見つからなかった。やっぱりないのかな……」

 やや気落ちしたような義手義足の少女のような少年が、十字路の一つの建物からずざざざと土埃を立てながら降りてくる。

 速度を出していた分、気配などは隠していない。
 何事もなければ、少女の近くの建物へと着地するか。
 

落花彩晴 > 「…何か来ましたね。」

感覚的に怪異の類とは違うようだが。場所が場所だけに気を抜く事は出来ない。

(…気を抜いたら地が出てしまいそうですしねぇ。)

まぁ、そんな乙女の懸念は兎も角。何やら奇妙な出で立ちをした少女…少年?が、上から降りてきた。
土埃が舞い上がっている事から、壁伝いに降りてきたのだろう。

さて。一応声はかけるべきだろうか?実は私はちょっと人見知りなので少し躊躇う。
だが、このまま見て見ぬ振りをするのもそれはそれで駄目な気がする。

「あ、あの…!」

と、遠慮がちに声を掛けてしまう所が少女の人見知りを示しているかもしれない。

エルピス・シズメ >  
「ほえっ……?」

 遠慮がちな声が届くと、反射的に気が抜けた声を返す。
 その先の姿を認め、同じ学生と気付けば気を取り戻した。

「ぼ、僕? えっと、どうしたの? もしかして委員会さん……?」

 "汚れていない服装に幾つかの不思議な装飾。"
 "スラムの住人ではなさそうな綺麗さ、おのぼりさんにも見えない。"

 そんな印象から認識?したのか、段々と声が弱くなる。
 

落花彩晴 > 「…あ、はい。むしろ貴方と私くらいしか今はこの場に居ませんし…。」

やや遠慮がちだが、割とズバッと突っ込みは入れつつ頷いてみせて。
委員会?という相手の問い掛けには、少し悩むもややあって頷いた。

「えぇ…一応は。とはいえ、風紀委員とかではありませんが。」

ましてや生活でも公安でもない。式典委員会…の、ド新人である。
まぁ、そんな女が何でこんな時間にこんな場所を独りでうろついているのやら、という話になるが。

「…一先ず、貴方に危害を加えたりだとかそういうつもりは一切ありませんのでご安心を。」

こういう時、矢張り第一印象は大事だと思う。なので居住まいを正して礼儀正しく会釈を。

エルピス・シズメ >    
「よかったー……あ、僕はエルピス。一年生の男子生徒。
 キミの名前、聞いても大丈夫?」

 露骨に安堵し、名乗りまでする。
 警戒心も解き切っている。

「最近魔法のスランプになっちゃったから、
 魔法の悩みを扱ってそうなお店を探してこの辺を探っていたんだけど……ちょうどいいいお店が見つからなくて。」

 目的も明かす。
 明かしたことで自分の目的を思い出したのか、再び落胆した。

「キミも、何かの探しもの?」
 

落花彩晴 > 「エルピスさん…ですね。私も同じく1年生の落花彩晴といいます。」

ぺこり、と彼の自己紹介にこちらもきちんと自己紹介を返して再び会釈。
彼がすっかり警戒心を解いているのと逆に、少女は人見知りの気もあってかまだ若干警戒心は残しつつ。

「…魔法のスランプ…ですか?…そういう話なら、ここよりも異邦人街とかの方がその手のお店は見つかるような気がしますが。」

自身も幾つか魔術は使えるが、片寄りがある。落第街は確かに色んな店はあるだろう。表側に無い店も。
ただ、異邦人街の方が色々な種族の方も居るし、彼の悩みを解決する手段も見つかりそうな気がする。

「…私、ですか?えぇ、まぁ…探し物、という程でもないのですが。」

まさか、【紅き屍骸】を始めとした怪異を探しているとは口には出せない。
何せ、少女の立場的にわざわざ探し回る必要も何も無いのだ。既に関わるべき立場からは除籍されている。

エルピス・シズメ >  
「やっぱりそうだよね。あっちの方なら確実に……でもなんだか、この場所に良いお店がある気がして……
 ……名前すら思い出せないから、気のせいだと思うんだけど。テストまでは探してみようと思って……」

 変なこだわり方をしている自覚はあるらしい。
 真っ当な指摘を受けると、さらにしょげた。  

「そっか。探しもの、見つかるといいね。
 ……でも最近はこの辺も危ないって色んなところで聞くから、お互いに安全第一なのかな。
 特に最近話題になってる……紅き……ええと……何だっけ……ゾンビのような怪異がよく出るって聞いた気がするけど……」

 警戒されてるし、濁されてる。
 踏み込むことでもないため、彼にとって取り留めもなく、一番噂されているであろう怪異の話を持ち出した。
 本人にとってはお茶を濁したつもりだ。本人にとっては。

落花彩晴 > 「まぁ、この街は絶えず”移り変わる”街ですから…何処にどんなお店があるか、全て把握できている方はいらっしゃらない可能性もありますね。」

混沌を街の形にしたのならば、きっとこんな感じになるんでしょうね、と思う。
彼の拘りについては、それを初対面の己がどうこう言う権利は無い…本人が納得するまでやるのが一番。

「…あー、【紅き屍骸】ですね。…かなり厄介で危険な怪異そうですし、お互い気を付けましょう。」

まぁ、ピンポイントにそこの話題が出ると若干少女に動揺が走る…が、何とか持ち直す。
嘘や腹芸がそもそも彼女には向いていない。良くも悪くも実直ではある。
それでも、誤魔化すというか話には聞いた事がある、というレベルに落とし込みたい。

まさに、その怪異…あるいは、そうでないにしても別の脅威足りえる未知の怪異。
その手のを探していると知られたら、流石に不信がられるか変に気遣わせてしまいそうで。

エルピス・シズメ >    
「うん。特に歓楽街のこの辺は移り変わりが激しいし……。」

 四辻を見渡す。
 建物はあれど、自分と目の前の少女以外に気配はない。
 これも”移り変わり”の一つなのだろうと納得した様だ。

「そうそう、【紅き屍骸】。何だか怖いよね。
 ……あとは……最近よくわからない機械を見かける気がする。」

 ごまかしには成功したらしく、話題が移り変わる。
 彼の感覚では、そういうものが多い印象らしい。痕跡や噂話を由来とする情報なのか、確信はなさげだ。

「気のせいかもしれないけど、ちょっと不安。落花さんはそういうの、見たりする?」
 

落花彩晴 > 「…まぁ、お互いここに長居はしない方が良さそうですねぇ。」

と、努めて穏やかにそう口にする。実際の処、紅き屍骸もそうだがこの少女の場合。
祭祀局の人間に見つかると、除籍の経緯もあって雷が落ちるじゃ済まない事になる。

(流石に、【紅き屍骸】の活発な活動と被害も考えるとあちらも本腰で人員を投入するでしょう。)

特級怪異に単騎で対抗出来る人材が、もし居るのならば投入される可能性だってある。
無論、そこまでの大きな駒をあちらの上層部がそう簡単に動かす事は無い、と思う。

「…機械、ですか?それは私は…多分目撃した事は無い、ですね。」

それは初耳だ。そもそも、少女は頻繁にこちらに足を運んでいる訳ではない。
だが、見知らぬ機械…中々にきな臭い、というより状況が入り混じっている気がする。

(…その機械が、例えば風紀や公安からの手札ならば…祭祀局との連携?話が付いている?)

そこまで考えて、ハッと我に返る。今の自分の立場でそこまで考えても意味が無い。

「えぇと、エルピスさんが見掛けた機械というのはどういう感じのものでしょうか?」

一先ず、彼が見掛けた気がするという機械がどんなものかを尋ねてみる。

エルピス・シズメ >    
「そうだね。今日は嵐もなさそうだし……」
 
 空を見上げる。
 "先日のような不穏な嵐の風は感じない。"
 そんな直感から来る呟きだ。

「僕も直接は見ていない、と言うより怖い感じがするから見に行ったりはしてないけど……まるい……?」

 噂話と痕跡だけで不安がっているため、外見情報は重視していない。ゼロに等しい。

「ただ、スラム付近で付近で配給が増えた、みたいな話を聞いたんだ。機械?が水とかを配っているとか、なんとか。」

落花彩晴 > 彼に釣られたように空を見上げる。左右色違いの瞳に映る空は何の変哲もないもの。
…いいや。違う。少女の右目と左目では、見える”モノ”にズレがある。
それを口に出す事は勿論無く、ややあってから視線を彼へと戻した。

「…ま、まるい…ですか?」

困惑顔。成程、全く分かりません。情報に乏しすぎる。
ただ、何も分からないよりはマシ…だと思っておこう。

「…配給?…スラムに?……妙ですね。」

そんな配給がされていた事なんて今まであっただろうか?
少なくとも、少女がこの島に来て落第街やスラムの存在を知った頃からその手の話は聞いた事が無い。

(まぁ、私は割と新参ですから前例は幾らでもあったのかもしれないけど…。)

配給そのものは善行に思えるが、却ってそれが”軋轢”を余計に生み出したりしないだろうか?
…止めよう。ただでさえ記憶力が悪いのに、色々考えを巡らせても分からない、今は。

エルピス・シズメ >    
「強いて言うなら、丸みを帯びた機械を作るのは大変だから、
 大口の組織か天才のワンオフの可能性が高い……ぐらいだけど……」

 感覚で圧縮した情報に捕捉を入れるが、単なる連想。例外も多い。
 それ単体では、情報と呼べるものではなさそうだ。
 そもそも確証を持っていない。
 
「意外とある気がする。僕も何度か既視感を覚えたし……
 ……機械かはともかく、大体が風紀公安のイメージアップか実験だと思うけれど……?」

 そう言ったあたりで頭を押さえた。
 唐突な頭痛らしく、大分痛そうにしている。

落花彩晴 > 「…何処か大きな所が独自に動いている可能性もありますか…。」

まぁ、風紀、あるいは公安辺りと繋がりがあるか息の掛かった組織なり何なりでしょうかね、と。
とはいえ、彼の情報だけでは信憑性も何も無いので、あくまで参考程度に留めておくべきなのだろう。

「…まぁ、私はこちら側にあまり足を運んだ事が無いですからね。」

知らない所で定期的に配給なり何なりあったのかもしれない。
…あぁ。でも。なら矢張り軋轢は生まれそうだ。少し陰鬱とした気持ちになる。
そして、怪異や呪いは人の負の感情からだって生まれるのだ。何とも、といった所。

「…?エルピスさん?大丈夫ですか?ご無理なさらずに引き返した方が。」

少女はもう少しこの場に留まるつもりだが、彼の様子からして念の為に引き上げた方が良さそうな気もする。
頭を押さえている様子に、場所が場所だけに助けを呼ぶのも躊躇がある。
何より、回復系統の術式を彼女は一種類しか習得していないし、それは怪我に対するものだ。
頭痛に効きそうな術式というのは、残念ながら少女は習得していない。

エルピス・シズメ >  
 心配そうに声を掛けられ、数十秒ほどの無反応が続く。
 しばらくすれば平静を取り戻し……。
  
「たまにちょっとだけ、知らない記憶が紛れ込むんだ。
 それが僕の異能で……とりあえず、たぶん最近の問題とは関係ない記憶だと思う。」

 かつてあったかもしれない、落第街とスラム街の記憶を思い出す。
 知らないような知っているような誰かが配給を行ったり、印象良化のための行動を行ったポジティブな記憶。
 および、その裏にある知らなかった、軋轢や強奪と言ったネガティブな記憶。
 
 話題と残留していた負の感情あたりを読み込み、偶発的に異能が発動した……と言った所だ。

「……そうだね。残る理由もないし引き返そうと思う。
 落花さんも、気を付けてね。」

その辺の廃標識を拾い上げて杖代わりにし、立ち去る姿勢を見せる。

落花彩晴 > 「…それは…何というか…その、大変です、ね?」

彼の異能らしいそれに、少女は何とも言えない表情を浮かべつつもそう口にする。
気遣いにしては下手糞に過ぎる、と自分でも思う、けれど。

(…異能を正式に学園に申請していない私からしたら、何とも肩身が狭いですね。)

まぁ、そんな私の個人的事情や思いは今は呑み込んで。
彼の様子を心配そうに眺めていたが、どうやら収まりはした?ようだ。

「…分かりました。エルピスさんもご無理はなさらずにです。」

とはいえ、標識を杖代わりに立ち去ろうとする姿は危なっかしい。
数秒、悩んでいたが「エルピスさん!」と、その背中に声を掛けて。

「流石にその状態だとあちらに戻るのも一苦労でしょうし、私がお運びします。その方が多分早いですから。」

自分の数少ない取り柄はこういう時に生かせる筈、と踏んでそう申し出る。

エルピス・シズメ >  
 呼び止められれば、ゆっくりと振り向く。
 
「……僕ちょっと重いけど、大丈夫?
 早く歩くのも他の人に会うのも怖いから、申し出は、すごく助かるけど……」

 近寄る。
 手を延ばせば肩を貸すなり担ぐなり出来る距離だ。
 何かしらの知識があれば、一時的に悪感情に引き寄せられていて、
 場所を移すだけでも十分回復する類とも判別できるかもしれない。

落花彩晴 > 「あ、大丈夫です。私、こう見えても力持ちなんですよ、そこそこ。」

そこだけ無邪気ににこりと笑う。
ともあれ、近寄ってきた彼の状態を察してか、この場を離れれば”引き摺られることは無さそう”と推測。

「じゃあ、ちょっと失礼します…あ、舌を噛むといけませんので気を付けて。」

と、何やら忠告をしつつあっさりと彼を”抱き上げる”。
…そう、お姫様抱っこである。これが手っ取り早い。

そして、彼を抱き上げたのならば、そのまま予備動作無しで跳躍、三角飛びの要領で一気に建物の屋上まで飛びあがり。

「街は―――あっちの方角ですね。じゃあ行きましょうかエルピスさん。」

僅かな滞空時間、そろそろ落下が始まる間際に彼に声を掛けて。

エルピス・シズメ >  
「わっ……」

 ごとん。
 何か、ではなく標識が手放される。

 そうしてから、されるがままに身体を預けた。
 お姫様抱っこの要領で持ち上げれば、身を丸くして抱えやすくするだろう。

「うん。ありがとう、落花さん。
 このお礼は何処かでするね。」

 後は運ぶだけ。
 なされるがままに身を預け、全うな歓楽街や学生通りなどに運べば問題なさそうだ。

 

落花彩晴 > 「どういたしまして…私の数少ない取り柄なもので。」

何処か誇らしく、同時に自嘲交じりに小さく笑いながら。
落下が始まる瞬間、思い切り建物の壁を”蹴り付ける”。
その反動で一気に前方へと飛翔するように跳ぶ。

そして、さらに別の建物の壁を蹴り付け、また別の壁を蹴り、飛翔する。
超人的な身体能力を発揮しつつも、そうやって”ショートカット”をしながら街へと戻るだろう。

(…【紅き屍骸】…いずれ、機会があれば必ず。)

未練なのは分かっている。もう私は祭祀局の一員ではない。
でも、それでも。私は誰かの為に動きたいのだ。

そんな思いもまた呑み込んで、彼を街へと送り届ける少女であった。

ご案内:「落第街 路地裏」からエルピス・シズメさんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」から落花彩晴さんが去りました。