2024/07/01 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
「ちょっと、待ってっ」

今日は巡回の日。
体が治って日が浅いが、そんな事も言ってられない。

何日か休みはもらったのだし、人手が少なくなっているのも理解しているから、復帰したその日に。

『スリ』にあった。

小さな子ども、に見える影を追って、ここまでやってきてしまった。
浅いところだけ、のはずだったのに。逃げ足が早いから、なかなか追いつけない。

誰かが曲がり角を曲がった。

――右に、曲がったっ

そのまま追いかけて、廊下を曲がって。

「止まってっ」

呼びかけながら、荒い息のまま、走っていく――

ご案内:「落第街 路地裏」に紅き流離蟻人さんが現れました。
紅き流離蟻人 > ザァンッ!!ザァンッ!!
紅き流離蟻人 > 二度、黒き剣が振られる音が聞こえた。

血飛沫。
殺戮。

貴殿が追い求めた子供は、

今、死んだ。

目の前で、

曲がった瞬間に。
姿を晒すのは。

「おお―――もう一人来たようだな。……下等種族(にんげん)が」

紅き蟻人。

風紀委員であれば、知っているかもしれない。
過去、常世島を騒がせた怪異、『蟻人』を
現在、常世島を騒がせる怪異、『紅き屍骸』を

伊都波 悠薇 >  
「え……?」

呆然。
『聞き覚えがある』音、だった。昔、教えてもらったことある、音だった。

でも、そんなに日常で聞いたらいけない音だった。
曲がった瞬間、赤が、咲いていた。

視界に埋める、赤。赤あかあか……

血しぶきが、顔にかかっていることに後で、気がついた。

――臭い。

「……っ」

警戒態勢。それは、日常の訓練の賜物。
でも――体は、震えていた。

当然だ。テンタクロウ、との、ただの会話でさえ、怯え、恐怖し、震えていたのだから。

ただ、構えただけだ。でもそれだけでも――妹にとっては、上出来だった。

(報告にあった怪人!? テンタクロウさんと同時期に騒がせていたやつ。『私』が、姉に、近寄らないようにしていた!?)

でも、報告と、違ったのは。

――会話できる?

なら。

「何を、しているんですか?」

テンタクロウさんのように、知ることが、できるかもしれないと。

紅き流離蟻人 > 「下等種族よ、感謝せよ。貴様は一段上の種になれたぞ。
 ……チッ…邪魔だ。
 ……退けッッ!!」

経った今殺されたガキは。
真っ赤に染まって"蘇生する"
そうとも、これこそ、紅き屍骸の本領。

殺戮

屍骸化

だが
ガキは
この場には
邪魔だから
蹴り飛ばして退かす

吹っ飛ぶガキ

向かい合うは貴殿と我のみ

「クックック……!」
「……何を?」
「何をしているだと?」

なんという滑稽な問いッッ!!
なんという愚劣な構えッッ!!

こいつはザコだ。
確実になあッッ!!
ならば死ね!

「ハーッハッハッハッハ!!!」

大笑い

「オオマヌケが…!見て分からんか?」

黒き殺戮の剣を
構える

「ならば"その身で思い知れ"」

繰り出される斬撃。

ただの一振りの軌跡が

炸裂し

無数の裂撃を生み出す

―――言葉が話せる。
―――それは正しい。
―――会話ができる。
―――それは誤り。

伊都波 悠薇 >  
――ごめんなさい

今まで姉や、父に叩き込まれた状況反射から、思考が戻り、起こった出来事を認識して、謝罪した。
もしかしたら、『そんなこと』と追わなければ。

姉であったなら。

黒條さんであったなら。

橘さんであったなら。

緋月さんであったなら。

少なくとも自分ではない、誰かであったなら。
眼の前の、知らない、風紀委員が守るべき誰かは、死なずに済んだかもしれないのに。

ガタガタガタ、と葉が震えた。
そんなことよりも、恐怖が先に勝ってしまったから。

謝罪の言葉が、頭に浮かんだ。

「――ッ!!?」

そして、起き上がる『誰か』は。もう、誰かではなかった。
それはもう『モノ』だった。
自分が認識できない恐怖を抱く、モノ。
おばけや、怪異と言われるもの。

悍ましい――

「うぷ……」

吐きかけた、何かを飲み込む。
落ち着け、落ち着け。
会話ができるなら、まだ……

「え?」

そう思ったのもつかの間。
飛んでくる斬撃。

『避けれるはずもない』。

取れたのは、致命傷を避けるだけ。
身を切る音が、響く。
間違いなく殺意が乗った一撃。
頬を、足を、脇腹を、腕を、『裂く』。

避けなければ、死んでいた。

「ハァッ、はぁっ、は、は……」

理解する。ちゃんと身を以て。

「……人殺し、を」

こぼれ出たのは、見てわかる、当然のことだった。

「どうして?」

でも、何故かは、わからなかった。

紅き流離蟻人 > 「……フゥン…!」
下等種族(ゴミ)め」

こいつは……
"荒事に慣れていない"のか?
"風紀委員の制服を着ている"のに?

紅き屍骸と化した光景を見て
"嘔吐"した?

貴殿は……
……こいつは……

本ッッ当に雑魚だなァァァァァァァッッッ!!!

「冥途の土産に―――」
「答えてやろう」

戯れだ。
このまま殺すも良いが、
ちょいと嬲ってから
楽しんでから
殺そう

蟻人とはそういう種族

他者の命を何とも思わない

そうではない

他者の命を弄ぶ事を愉悦する
敵対性怪異

ニヤリと、明らかに笑うバケモノ。

下等種族(にんげん)よォ……」

「大成功したいか?」
「生産的でありたいか?」
「他者より上でありたいか?」

「なら殺戮だ」

紅き流離蟻人 > 「 殺 戮 あ る の み だ ッッッ!!! 」
伊都波 悠薇 >  

「さつ、りく……?」

裂傷した、じくじく痛む、傷に、言葉が途切れ途切れに。

殺戮。
人を殺すということ、ということ。

嗤った。
少なくとも、この行為を楽しんでいるということ。

こちらを見て、死んだ子供を見て、ゴミと口にした。
つまり、自身を上位種であることを疑わない。
かつ、こちらを下と見ている、だけではない。もはや、生物であるとも思っていない。

つまりは――

頭が、すーっと、冷静になる。

きっと、これは初めての経験だ。
震えは止まらないし、テンタクロウと対峙したときなんて比じゃない。

純粋な、『別種』。

「殺戮することが、存在証明、である。そういう、ことですか?」

怖い怖い怖い怖い。
でも――『とある認識』をしっかりしないといけないから。

訊ねた。

怯えた、猫、いや、鼠。ソレ以下の少女に対して、眼の前のバケモノは、応えてくれるのだろうかと、疑問を持ちながらも。

聞かずには、いられなかった。

紅き流離蟻人 > 「チッ…いちいちつまらん問いだなァ……?」

色々聞きたいことはあるだろう。

…で?

下等種族(ゴミ)の問いに上位種族(われら)が答えなければならぬ理由はなんだ?

そんなものはない。
ないのだ。

貴様らは喜んで殺されていれば良いッッ!!

「クックック……!」
「だが、おびえる貴様を見ていると」
「すぐに殺すのももったいないかね」

…あまりにも雑魚だ。
怪異は
戦いがしたいのではない
殺しがしたいのだ

だが、それにしても雑魚だ。
戯れ…
戯れてやるか…

「我とゲームをしようか。下等種族(にんげん)。」

蟻人の口から弾丸のように赤黒い毒液が吐き出される。
不完全感染と痛みを伴う、毒。

意志が弱い者を苛み、殺戮衝動へ誘う毒。
無論、容易く、治癒は出来ようが。
今この場では、出来るまい?

「その激苦に耐えながら、我にもう一度問いかけてみろ?」
「そうすれば、答えを考えてやるぞ…クックック……!」

答えるとは、言っていないけれど。

伊都波 悠薇 > 「え……?」

気づいたときには、太ももが、貫かれていた。

「い、ぎ、あああああああ!!!!?」

イタイ痛い、イタい居たい、いたい。

――コロセコロセコロセコロセコロセコロセ。

頭に、誰かの顔が浮かんだ。

悠ちゃん――
気遣ってくれた、青紫色、をしていたような少女が頭に浮かんだ。
――コロセ

お姉ちゃん――
迷子になった、少女が、仲良くしてくれた女の子が頭に浮かんだ。
――まいごじゃない、キットコロサレニキタンダ

伊都波さん――
ラーメンを一緒に食べた人、あぁ、あのひとたしかこういうのせんもん、だったからきっとコロサレテくれる。

はーるか♪
ダイジナ、モクヒョウ、オネエチャン、コロシタイクライ。



悠薇ちゃん。いいかい? これは――


コウギ、アゲル。コロ……――

伊都波 悠薇 > 思い切り、唇を噛んだ。

巫山戯るな。

こんなの、こんなの、『あのひと』と一緒じゃない。

こんなのは、ただのお遊びだ。
なにも、なにもない。誇りも、矜持も、想いも、なにもない。

なんの意味のない行為だ。

これが、大成功?

これが、他者より、上である証?

これが――『悪』?

ナメるな!!!!!!!!

「――あなた『たち』の、名前、は?」

――認めない。

これが『テンタクロウ(あのひと)』と、同格であるなんて。

絶対に、認めない!!

こんなのはただの。

下等生物(ゴミ)

「耐えてます、よ。応えて、くれる、のですか?」

考えると言った。保証はない。逃げる準備をしろ。

命がけで――


頼れ。自分が誇る、友人を、姉を。

そこまで、つなげ。

自分ができることなんて――

  それくらい。

でもそれくらいできるって、抗議をあげるのはやめてたまるか。

そうですよね、先輩

紅き流離蟻人 > 「ほうー?意志が強いらしいな」
「やるなぁ!下等種族(ゴミ)の癖に」

嘲る。
呆れる。
見下す。
以上3つの行動を2秒のうちに詰め込んだ。

「チッ…つまらん問いだなあ、本当にッ」

……だが、まぁ。

「殺す前に、答えてやろう、戯れにな。戯れに。」

「我が名は"ワンデリィ"――蟻人拠点襲撃部隊四天王が一人。」

一つ。

「我らが名は"蟻人"。いずれこの地を支配する筈だったモノ。今はもうどうでも良い。」

二つ。

「そして―――」

「我らが真なる名は…"紅き屍骸"。遍く生を殺戮する支配者。」

三つ。

「…以上、満足したか?」

「では―――」

黒き悍ましい
殺戮の剣を掲げる

紅き流離蟻人 >  
「死ね」
「ここで死ね」
「今すぐ死ね」
 

紅き流離蟻人 > 黒き斬閃が放たれる。

殺戮。
殺戮あるのみ。

それは一瞬にして張り裂けて
再び無数の斬裂を生み出し―――

伊都波 悠薇 >  
「ありがとうございます」

情報は、得た。

妙に頭が冴える。
名前は呼ばない。呼びたくもない。

『悍ましい』

無数の斬撃が飛ぶ。

震えてた、怖かった。
もう死んでしまうかと思ったのに。

まるで『別人のよう』。

くるりと、背を向けた。

ぶしゅっっと、太ももから、血が吹き出す。

「ぐうううううううっ」

目にいっぱいの、涙をためて、耐えて。
足にいっぱいの力を込めて――

――走れ!! 私には、『立派な動く両足』があるんだから!!!!

――ギィ。

なにかに、オモリ、が、乗ったような気がした。

「あああああああああああっ!!!!!!」

逃げた。斬撃を、避けながら。
必死に、必死に、全力疾走で、逃げた。

――ゴールは……

風紀委員が来れる場所。

端末を取り出す、片っ端から、連絡を取る。

場所を打つだけ。落第街、路地裏。

ただ、それだけ。


それだけでも、来てくれると、信じるしかないから。


ただ信じて、奔る!!!!!

伊都波 悠薇 >  
 
 
 
 
「いやなこった!!!!!!!!!!!!」

 
 
 
 
 
 

紅き流離蟻人 >  


    「逃ィィィげるなァァアアアアッッッッ!!!」


 

紅き流離蟻人 > 怒声…!
爆発的、怒声…ッッ!!

路地裏へ響き渡る狂気の声ッッ!!

このザコごときに?

下等種族(ゴミ)に逃げられるだと!?

それは―――
上位種族のプライドを!
全ての動物を殺める流離の名を穢すことを…意味する!

ふざけるな!
ふざけるな!
ふざけるなッッ!!

「ウオオオオオオオヲヲヲヲヲヲヲーーーーーーーーー」

「死ね」
「死ね死ね死ね死ね」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

狂ったような声が響くッッ!!

打ち出されるは毒の弾丸ッッ!!
炸裂する斬撃ッッ!!
降り注ぐ火炎ッッ!!

こんな雑魚を逃がすなどあってはならぬ!!!

ならんのだッッ!!

絶対に…絶対に…絶対にならぬ!
そうだ、殺戮だ…殺戮あるのみだッッ!!

伊都波 悠薇 >  

今まで余裕であった、バケモノから怒声が聞こえる。
そう、絶対的優位者であり、殺すことが目的であり、殺すことが存在証明である。

そう『シッタ』。

そうコロセコロセコロセコロセコロセコロセ。頭に鳴り響くなにかが、そう教えてくれる。

なら、生き残ることが『負けないこと』に繋がる。
いつだって自分の目標は負けないことだ。

そう考えたら。

やることは変わらない。

震えは、止まっていた。

怒りは、行動を単調化する。はず――でも、バケモノにその理屈は通らない。

「おねえちゃんのーーーーーー」

でも、すごい、バケモノだろうと。

「遠当てにくらべたらあああああ、こんなものおおおおおお!!!!」

掠る。避けきれなくても。

眼の前のバケモノは姉より弱い。

「この痛みももおおおおおおお」

痛い痛い。でも――

「先輩に食らったものに比べたらああああああこんなものおおおおお!!!!」

涙が出る。でも、それでもあの時よりも全然マシ。

お願いお願いお願い、誰か誰か誰か。

申し訳ないけど、知ってる戦えそうな人たちには全部送った。

助けてほしい。

逃げることしかできない、逃げ切れ逃げ切れ逃げ切れ!!!!

――こんなところで置いていかれてたまるか!!

紅き流離蟻人 > 「キッ……!!キサマァ―――!!」

理解する。

こいつは今……ッッ!!
我を侮ったッッ!!
姉?先輩?
それが何なのかは知らぬ。

知らぬが……!!

こいつは今

"下等種族より我が下"

だと言った事を、意味する。
ゴミの分際でだッッ!!

「我を更に怒らせるとはな―――!!」
「このワンデリィを侮るなよ……下等種族(ゴミ)がァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

「貴様ごときザコには使うまいと思ったが―――これで死ねェェェェェェ!!!」

黒き殺戮の剣が
形を変える
まるで魔法のように黒靄になり

生命を刈り取る鎌に変じる……!!

奥義―――首狩り。
シンプルだ。
当たれば命はない。


―――注釈しよう。
―――紅き屍骸、封鎖ライン。
―――この怪異は封鎖されている。
―――故に。
―――貴殿のゴールテープはそこだ。
―――或いは誰かが…助けに入る、かもしれぬ。
―――逃げ切りまで、あと―――

伊都波 悠薇 >  
ただの言い聞かせだ。
ただの、強がりだ。

そんなわけない。自分には、あの攻撃は全部同等だ。
ある一定のラインから、認識できないんだから。

でも、信じて逃げる、自分の反射を信じて逃げる。

ギィギィ……錘が乗っている音が耳に響く。
たまたま『運良く』生きている。

コロセコロセコロセコロセコロセコロセ、ニゲルナニゲルナニゲルナ……

頭に響く音と、言葉がうるさい。頭痛がする。

「――っ!!?」

悪寒。
ゾッとする、首への殺意。

殺意には――『慣れてる』。
首を狙った明確な殺意。これが今までと同じ疎らなものであったのなら、避けれなかった。

でも、コレなら。

「いーーーーち」

タイミングだ。
感じてから、3秒。
振りかぶるまでの時間。

振りかぶって、振り下ろすまでの時間はない。

「にーの、んっ」

ワンテンポ、呼吸。

―――これで死ねェェェェェェ!!!

ビンゴっ。

「さん!!!!!!」

スライディング。ひゅっと、切れた、『残った髪』。

そして、見えた――ゴールテープ。

そのまま、逃げ切るために。

転がって。

最後は、無様に。

血を撒き散らしながら、

「あで、いで、う、ぐううううううううっはぁはぁはぁっ」

がばっと、起き上がって後ろを見た。

自分がいた場所は――

ゴールを、超えていた。

紅き流離蟻人 > 「畜生がァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!」

空振り……!
このザコに!
傷だらけの雑魚に!
この一撃すら空振り……?!
髪の毛だけが…!!!

「……!!」

……走った。
この先は……まずい!
ここから先を踏み越えると"面倒な奴らが来ることになっている"―――!!!
そして"そいつらを呼び出すという事は我らの損失となる"……!!

「く…ッッ!!」

……あと、40cm―――
封鎖エリアが、狭ければ……!!
この転がった体を貫き殺めるというのに……!

ここから先は"存在しない街"ではない。

つまり…"闇から出ることを意味する"。

「覚えて、おれ…ッッ!!」

一歩、一歩、引き下がる。

―――だが、足を止める。
背を、蟻人の背を向けたまま…

「何やら面白い戯れの予感がする。」
「……戯れに貴様の名くらいは聞いておこうか、下等種族(にんげん)?」
「我だけ名乗るは不平等だろう?」

…今までの所業を考えると…そうでもないが。

伊都波 悠薇 >  
「はぁ、はぁ、はぁ……はぁ、はぁ、はぁ……」

息が、荒い。
無理だ、もう、一歩も動けない。

血も止まらないし、頭もイタいし、もう嫌な声ばかりが聞こえる。

名を聞かれた。
応えかけて――

ふと、思った。

ゲームを、していたのではなかったか、と。

「……――や、です。ゲームへの、ご褒美だったのなら。言う、義理は、ありません」

乱れた髪。覗く、左目。まっすぐ、見た。

「伊都波、とだけ。今度は、『勝ちます』」

もしかしたら自分ではないかもしれないけれど。

べっと、左目であっかんべーをする。

少し、強気なのは――何かが『感染った』からなのだろうか。

紅き流離蟻人 > 「貴様は下等種族(ゴミ)の雑魚だが―――」
「根性だけは大したものだ。クックック……!」

背を向けたまま歩き出す、蟻人。
不完全感染はさせられた。
…勝負は引き分け、かね?

「伊都波」

名を、反芻する。

「ふぅん…」
「敢えて言い返そうか」

「次こそは我が"勝つ(ころす)"」

怒り狂った口調が
冷徹で冷静なものに
変わる

「精々、他の下等種族(ゴミ)に首を刎ねられんようにせよ」
「ザコの貴様がぱったり死んでいては拍子抜けよ」

ちらり、と後ろを見ると。
……やってくれるじゃないか?

「伊都波よ。その貴様のクソ生意気な首を刈り取るのは、我でなければならぬ。」
「ではな…!」

流離の蟻人は、ゆっくりと暗闇へ姿を消した。

ご案内:「落第街 路地裏」から紅き流離蟻人さんが去りました。
伊都波 悠薇 >  
「……う、ぁ」

冷徹で冷静な声を返されると、恐怖が戻ってきた。
姿を消してから、ぐすんっと鼻を啜った。

「や、ば。お姉ちゃんに怒られる。黒條さんが先について、くれないかな……ごまかすの、手伝ってほしい……」

もう足がすくんで、コレ以上動けそうもない。

他の風紀委員の人が来るまでは、ここで待つしかなさそうで。

「お姉ちゃん来ないで―、こないでー、まだこないでー……黒條さん、おねがいー、ごまかすのてつだってー、はやくー、たすけてー……他に送った人ごめんなさいー……」

どさりっと、大の字で横たわり。

――悠薇ちゃん、ちゃんと走れたじゃないか。

「私には、両足が、ありますから」

幻聴が、聞こえた気がして。
そう呟いたあと。

最初に到着した、誰かに、説教やらなにやらされて病院に、運ばれたのだった。

ご案内:「落第街 路地裏」から伊都波 悠薇さんが去りました。