2024/07/04 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」から角鹿建悟さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に緋夜鳥 子音さんが現れました。
緋夜鳥 子音 >  
常世島の外れに位置する落第街、その更に外れにある路地裏の入り口。
そこに一人の女生徒が足を踏み入れようとしていた。
艶のある長い黒髪をストレートに流し、目元は狐を模った面で覆い隠し。
身に纏う黒のセーラー服は『対穢装束』と呼ばれる特殊な礼装。
―――女生徒の名は緋夜鳥(ひよどり) 子音(しおん)
怪異を祓う者として、この地を騒がせる存在を滅する為に此処にいる。

「さて……情報通りなら、この辺りのはずやけども」

夜の帳が下りているにも関わらず広げた和傘の陰から視線を巡らせ、周囲を見回す。
およそ落第街には似つかわしくない絵面だが、彼女は既に臨戦態勢であり―――

「(伊都波はんに手ぇ出した落とし前、付けさせたる)」

かの怪異の縄張りに独りで出向いてくる程度には、冷静さを欠いていた。
先日できたばかりの友人から緊急の連絡を受けたのが数日前。
たまたま別の任務に当たっていた子音は対応できず、帰還後に友人が怪異に襲われたことを知る。
その時の衝撃、悔しさ、怒り……どれも今まで抱いたことのなかったもので。
齢16の少女には到底 御せるものではなかったのだろう。
油断も隙も無いように見えて、付け入る隙は大いにあった。

ご案内:「落第街 路地裏」に紅き流離蟻人さんが現れました。
紅き流離蟻人 > ガァンッ!!ガァンッ!!
紅き流離蟻人 > 何かを叩きつける音がする。
それは動物を殺戮する音色だった。

―――注目せよッ!
暗き路地裏に際立つ、
紅き蟻の体。
赤黒き靄のような剣。
迸る殺害欲。

そいつは『蟻人』にして『紅き屍骸』。
過去常世島を騒がせた怪異が
現在常世島を騒がせる怪異に取り込まれた姿。

―――まさに貴殿が祓うべき存在であろう?
―――そしてこの姿こそは
―――まさに貴殿が探していた憎き敵、であろう?
―――流離蟻の人間体。

「おや。」
下等種族(にんげん)か―――見ない格好をしているな。」

それは"優しい声かけ"や"世間話"などではない。
殺害欲。

うっかり
"口を開いて答えたり"
"構えが遅れれば"

容赦なく殺戮の先手を貰おう、というわけだ。

卑劣、卑怯。
罵るがいい―――

これは、試合ではない。殺しだ。

緋夜鳥 子音 >  
路地の奥から響いてくる不快な音。
面の下で目を細めながら辿っていけば、そこに"奴"はいた。
異形の身体、悍ましい紅色、そして聞いていた通りの姿
人語を解するのか―――という感想もそこそこに、まず応じたのは。

「えらい喧しいなあ。田んぼでミミズでも鳴いとるんかと思たわ」

怒りの感情から口をついて出た、皮肉であった。
表面上は冷静に返したつもりでいながら、はらわたは煮えくり返りそうになっている。
すぐに和傘を逆手に握り、仕込んだ刀を抜こうとするが……結果的に一手遅れる形となった。

紅き流離蟻人 > 紅き蟻人は。

「クク……!」

嘲る
見下す
剣を翳し不意を打つ

以上、3つの行動を1秒の間に詰め込んだ。

「ここに"田んぼ"に"ミミズ"が見えるなら」

翳される赤黒き悍ましい剣の閃。
ただの斬撃に非ず。

「貴様は相当"目も耳も"悪いらしい」

横薙ぎの1つの裂撃は。

「否―――」

幾多もの裂撃として爆ぜるように分裂する。
殺戮の斬閃が幾重にも広域を引き裂かんと広がる。

攻撃範囲の誤魔化し
タイミングの誤魔化し
初見殺し
不意打ち

「悪いのは高等種族(われら)に楯突こうとする頭かね。下等種族(ゴミ)。」

さて。
この卑劣極まる最低な一撃を以って問いかけよう。

"貴殿は傷つくか?"
"貴殿は殺せるか?"
"貴殿は感染する?"
"貴殿を感染させる価値は?"

言葉は不要。
この一撃への"対応"が
即ち"答え"。

では―――

答え合わせの時間と行こうじゃないか。

緋夜鳥 子音 >  
「―――――ッ!?」

目の前の怪異に対する侮りが、驕りが無かったといえば嘘になる。
あの子(悠薇)が生きて逃げ延びた相手』という評価の水準を、二つの意味で違えていたのだ。
そして、それは致命的な油断となって敵に先手を許してしまった。
こちらが構えを取るより先に放たれた斬撃は、回避も防御も困難な複雑極まる剣閃。

「っぐぁ……ッ!」

咄嗟に和傘を盾にするも、本命の読めない太刀筋を完璧に凌ぐことなど不可能に近い。
とにかく急所への直撃だけは避け、反撃に転じなければ待ち受けるのは一方的な蹂躙のみ。
装束が斬り裂かれ、腕や脚に刻まれた裂傷から鮮血が迸る。
狐面にはヒビが走り、そこから覗く瞳は苦悶に歪んで痛みに声を漏らした。

「はぁ、っく……皮肉に、決まっとるやろ……ド阿呆(アホ)
 これやから、ユーモアっちゅうもんの分からん奴は―――」

着弾の衝撃で後退りながらも、決して膝を折ることはなく。
なおも悪態を吐きながらボロボロになった傘を放り捨て、抜身の刃を怪異へ向ける……が、次の瞬間。

ドクン―――

血液が沸き立ち、心臓が大きく鼓動する感覚に目を見開いた。

紅き流離蟻人 > 「この―――オオマヌケがッ!」

嗤い、貶す外道の蟻。

「皮肉とは、見下す行為」
「ユーモアとは、対等なる立場でのみ許される行為」
「言葉にせねば伝わらないか、下等種族(ゴミ)

自らを、高等種族として疑わぬ存在。
言葉は通じる。
だが、会話ができるような存在ではない。
お前らはゴミ。
我らは支配者。
それが事実。

「―――ゴミ(おまえら)は、我らより下だ。」
「いつ"見下して良い"と言った?」

「クックック……!」

裂傷より侵食するは不完全感染の魔の手。
―――最も、その衣装を身に纏っているだけ、多少はマシかもしれないが…
意志の弱き者を殺戮に駆り立て、
不完全ながら紅き屍骸の仲間入りさせる
…極めて危険なシロモノ。
もっとも、治療法は確立されている。

一撃にて、答えが得られた。

"貴殿は傷つくか?"――――――傷つく。
"貴殿は殺せるか?"――――――殺せる。
"貴殿は感染する?"――――――感染する。
"貴殿を感染させる価値は?"――まだ不明。ただし―――

"この斬閃は下等種族(ゴミ)"を一匹殺すには過剰な火力だった。

つまり。
"その辺のゴミよりは価値がある"。
ならば殺そう。
次なる一手への構えをする―――

「敢えて伝えよう」

「大成功したいか?」
「生産的でありたいか?」
「他者より上でありたいか?」

「なら殺戮だ」

紅き流離蟻人 > 「殺戮あるのみだッッッ!!!」
緋夜鳥 子音 >  
「ぁ、ッが……ぐぅッ……!」

胸元のスカーフを握り潰す勢いで掴んで蹲る。
屍骸と対峙する時の"注意点"については事前に聞いていた。
万が一その攻撃を受けても、穢れへの耐性を得られる装束でなら防げると、そう思っていた。
しかし、それは単なる呪いや魔術といった類ではない。
傷口から細菌が入って病を患うように、子音の身体をじわりじわりと蝕んでいるのだ。

―――殺戮(ころ)せ。
頭の中で何者かの声がそう語り掛けてくる。

―――殺戮(ころ)せ。
胸の内から湧き上がるような激情がそう訴えかけてくる。

殺戮せ。殺戮せ。殺戮せ。殺戮せ。殺戮せ。殺戮せ。

殺戮せ。殺戮せ。殺戮せ。殺戮せ。殺戮せ。殺戮せ。

その声に、その衝動に、応えるように―――

「ッ……ぁああアアアアッ!!」

―――くしゃっ。
絶叫と共に、予めスカーフの下に潜ませておいた式符を握り締めた。
瞬間、拳の中から炎が轟と燃え上がり、子音の全身を包むように広がっていく。
それは傷口を灼き、強引に塞いで止血までしてみせた。

殺意(それ)なら、もう間に合っとるわ……
 お前だけは許さへん(ころす)って、決めてきたからなあッ!」

腕を伝って剣先まで迸った炎が、力任せな薙ぎ払いと共に熱波となって放たれる。
それは先の一閃ほど対処の困難な代物ではないものの、追撃を寄せ付けないだけの覇気は十分だろう。

「うちを支配したいんやったら、殺してみいや。蟻ンこ風情が!」

燃える黒衣の剣士となった少女は今一度、かの怪異と正対する。

紅き流離蟻人 > しっかりと、感染は効いている。
効いている―――効いているなら、やれる…!
そう思っていた…!が…!
こいつ…!
自分の体の傷口を、自分で"焼いて"塞いだのか…!

「チッ…!!」

焔。
剣先から振るわれる熱の刃。
―――そういえば、炎を扱う同胞はこの間やられてしまったな。

「蟻に対して―――炎を当てれば勝てるなどというのは…
随分失礼な発想だなぁッッ!!!
…!!
ぐあぁっ……!!
寄れぬ…ッ!!」

蟻は…大きく、"必要以上に"
その炎から遠ざかるように宙へ舞い上がって、飛びのいた。
……!
片腕、焦げたか…?!

この流離蟻は
"自分が攻撃範囲を誤魔化す技を多用する"
故に
"相手からの攻撃範囲の誤魔化しも同じように警戒する"
のだ。

……一つ気がかりな事がある。
この下等種族(ゴミ)―――なぜ、ここまで"敵意"を向けてくる?
ゴミの格好に興味はないが、幾らなんでもこんな変な面をつけていて、
こんな格好、喋り方をする奴がいれば、忘れるはずはない。

何故……?

……忘れているだけ?
……気のせいか……?
……誰かの仇討……?

……つながった。
つい先日、一匹逃がしたな。
誰か来てと叫んでいた。

そうか。
そうかそうかそうか。

「いとわ……ああ、アレの"可哀相なお友達"かね」
「道理で我の居場所を探り当ててくるなり、"殺意"を向けてくると思った。」

「お望みどおりにしてやろう」
深紅の高等種族(同胞)となり、"可哀相なお友達"と再会するが良い」

煽る―――
だが、この炎は厄介だ。
真っ向勝負を挑むなら、最悪燃やし尽くされるかもしれない。

寄れない。

どうすればいい……?
決まっている。

「そうだ。戯れに貴様にも同じことをしてやろう……!戯れにな。」

遠距離から、口から吐き出すは毒液の弾丸。
可哀相なお友達を可哀想にしてやった。
貴殿の脚を目掛けて飛ぶ…ッ!

だがこれも間合いの誤魔化しッ!

着弾寸前に毒弾は
"炸裂し"
"拡散する"ッ!

緋夜鳥 子音 >  
「はッ……随分ビビっとるみたいやなあ?
 その脳味噌ちっさそうな頭でよう覚えとったもんやわ」

飛び退く様を見て嘲り返してやりつつ、己を苛む激痛に歯を食い縛った。
いくら装束の保護があると言っても、全身が灼かれる痛みは想像を絶する。
正気のままでは意識が保たなかっただろう。
彼女をこうなるまで追い詰めたのも、奮い立たせているのも、友を傷付けられた怒りに他ならない。
安い挑発にも乗ってやろう。怒れば怒るほど、この剣は熱く燃え上がるのだから。

「逃がした魚は大きいで? それを思い知らせたる。
 ―――"雛罌粟(ひなげし)"」

スカーフに仕込んでいたのと同種の式符を何枚か取り出し、宙へと放った。
合言葉と共にそれらは燃え上がり、ひとつひとつが燕ほどの大きさもある炎の鳥(式神)と化す。
子音の異能と陰陽術の複合技。
簡単な命令通りに動く支援機でもあり、それ自体が飛び道具でもある。

「セコい手が何度も通用すると思ったら大間違いやで!」

先刻の一撃を受け、蟻人の戦法はある程度読めてきた。
間合いや軌道の読み難い攻撃でこちらを攪乱しつつ致命を与えるつもりだろう。
そうはさせまいと式神を飛ばし、毒弾が炸裂する前に迎撃して相殺する。
同時に本体は剣を構え、蟻人めがけて駆けていた。

「―――"牡丹(ぼたん)"ッ!」

肉薄を許せば、繰り出されるは炎を纏った袈裟斬り。
達人めいた速度も技量もないが、殺意を乗せた渾身の一太刀だ!