2024/08/06 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」にエルピス・シズメさんが現れました。
エルピス・シズメ >   
ううん……思ったより収入になったかも。」

 落第街の裏通り。
 "発禁指定された同人書物即売会"──"ウラケット"の売り子をした帰り。
 それなりの額の報酬を得て、裏通りでバイト代の勘定を確認している。
 
「それにしてもこの衣装……。」

 自分の衣装を見遣る。
 ノースリーブへそ出しのピンク色のナース服。
 ご丁寧に"小児科 えるぴす"の名札まで用意されたキワモノの衣装。

「あくまで売り子産の趣味、うん。」

ご案内:「落第街 路地裏」にシアさんが現れました。
シア > 「……うん」

この間知り合った人はスラムにいると聞いた。別に用事があるわけでもないが、スラムなる場所はどこだろうとまずそこが引っかかった。なんとなく調べているうちに、このあたりだろうかと予想をつけてきたのだが……

「わからないね、場所」

地図などあるわけもなく、場所に明るいわけでもない。行くべき場所がわからなくなった。

「……ん」

いい加減、戻るかどうか考えているうちに、このどちらかと言えば薄暗い通りに似つかわしくないピンク色が目についた。

「……エルピス?」

知り合いのような気がした。

エルピス・シズメ >  
「……まあ、それはそれ。これはこれ。」

 発禁処分になった内容は触れない。
『指定を超えるレベル』のものもあれば『表に出てはいけない情報』の書物もある。

 口には言えないようなものも多いが、廃墟写真集(落第街名所集)などと言ったものもあった。気がする。

 そんなことを考えるていると、自分を呼ぶ声がする。
 この声は──。

「……シ、シアちゃん?」
 
 狼狽混じりの声が出る。
 この姿を知人に見られる可能性を失念していた。
 
 

シア > 「……」

どうやら間違いではなかったらしい。改めて眺めてみると、袖のないへそ出し、ミニスカートの服だ。それも真っピンク。更にそこに燦然と輝く「小児科 えるぴす」の文字。

「……小児科?」

首を傾げる。記憶が確かであれば、子ども専門の医療機関の名前であるはずだ。

「また仕事?病院で」

エルピスが医者、ということはないと思う。それであれば最初からその仕事をしていればいいはずだ。
とすると、論理的にはまたアルバイト、というやつだろうか。

「そういう仕事あるの、此処で」

このあたりは、いかにもそういう施設がなさそうな地域である。しかし、あるというのなら思ったよりは環境が整っていたのだろうか。

「稼げそう?それ」

エルピス・シズメ >  
「えっと、これは"こすぷれ"って奴で……
 ……そ、その、病院じゃないよ。あんまり気にしないで。」

 山育ちの彼女にどう説明しよう。
 上手く説明できる気がしないので、濁して流そうか。
 
 そうも思ったが、シアが興味を示したことで"それは"ダメだと首を横に振る。

「病院のお仕事じゃなくて、『本を書く人』のお手伝いのお仕事。
 この衣装は、その『本を書く人』の看板娘の衣装で……」

 シアの知っていそうな単語に置き換えて説明を試みた。
 説明中もシアの視線が突き刺さって恥ずかしい。

「他のバイトぐらいには稼げたけど、もう終わっちゃったかな。
 "お祭り"みたいなものだから……。」

 終わった事は事実なので、ちょっとだけ誤魔化して説明する。
 妙なお仕事に、あまり興味を持たないように。
 
 
 

シア > 「こすぷれ」

聞き慣れない単語を復唱する。復唱しても当然、意味はわからない。わかるはずもない。
病院の服を着ていても、病院ではない。謎しかない。

「『本を書く人』の手伝い……看板娘の衣装……」

さらなる説明を同じく復唱していく。

「理解した、なんとなく。
 仕事で看板娘の格好をした、エルピスは。」

言わなくていいことを、確認のように復唱する。

「……看板娘?」

ちょっと首を傾げた。何かに気づいてしまった模様。

「お祭り……そう。見てみたかったな、それは」

どうやら知らないお祭りがあったらしい。特に、こういった場で行われているというのは珍しい。
どんな催しだったのか気になる。

「ん。帰りなのかな、じゃあ。」

エルピス・シズメ >     
「看板娘……そ、そんな感じかな……。」

 渇き気味に笑う。間違ってはいない。
 男の子だけど。 

「本当の病院のお仕事は『資格』が居るからね。
 お祭りの方は、また来年かな。あ、でも『トコケット』なら……」

 "明日もやってるかも"、とつぶやく。
 表側のお祭りを見る分には問題ないだろう、との判断。

「その帰り。僕の家もこの辺にあるからね。
 じゃあ……って、ちょっと待ってシアちゃん。シアちゃん、どうしてここに?」

 落第街の裏通り。
 よくよく考えれば、彼女とここで会うことそのものが想定外。

「この辺は……前にも言ったけれど、危ない場所。
 賊や不良のような、悪い人が居る所。……大丈夫だった?」
 

シア > 「男……娘……あるか、そういうことも。
 着れてるし、ふつうに」

男の子が看板娘。明らかに何かが矛盾している。
どこかおかしいけれど、キチンと着れているのであれば問題はないのだろう、と変な納得をする。
似合う似合わない、というのはよくわからないが、違和感はない。

「『トコケット』」

それがお祭りの名前らしい。この島を知るためにも、見ておこうか。

「……ところで。お祭り、どんな?」

不思議な名前な上に、この島の催しである。なにか特別なものであるかも知れない。
先に情報を仕入れておかないと。

「……ん。ああ。」

なんで、と聞かれた。そういえば、前に危ないと教えてくれたのはエルピスだった。

「スラムにいるって聞いた、前あった人が。調べてた、スラムって何処か。
 知ってる?エルピスは」

この辺に住んでいるなら、知っているかも知れない、と気づいたので聞いてみる。

「危ない……変な人はいた、少し。大丈夫、それくらいは」

前に来たときも、何人かに囲まれていた記憶がある。それも大した相手ではなかった。
この間の魔獣のほうがよほど危なかった。
今回も、なんだかそれらしい人が居たけれど、それも大したことはなかった。

エルピス・シズメ > 「う、ん……。」

 言及される度に顔が赤くなる。
 違和感はない。エルピスの身体つきと仕立てた者の技術の両面の賜物だ。

 彼の身体は細い。筋肉もあまりないように見える。
 身体能力も義手義足に依存する所が大きい。歪な体の為に鍛えられない。

「『本を書く人が集まって、色んな本を売り合うお祭り』。
 娯楽作品もあるし、趣味の知識を纏めた本もある。個人の"好き"を発表して、交換し合うお祭りかな……。」

 トコケットの方の説明を行う。
 少々悪い気を覚えながらも、この話はトコケットに被って貰うことにした。 

「名前を聞けば分かるかもしれないけど……
 ……スラムに住んでる人は、やっぱり多いから。」

 "こちら"に話を戻す。
 スラムに住んでいる──それだけだと絞り込みきれない。
 ……場所ではなく、住人を聞かれていると誤解したらしい。
 
 ひとまずシアが落第街を問題なく歩けていると知れば、安堵。

「なら良かった。荒事面はともかく、悪い人に騙されたりしてないか心配だったから。うん、安心かな……」

シア > 「いやなの、エルピス?」

なんとも言えない反応に、首を傾げた。
嫌なことも頑張って働いたということだろうか。

「……ん。つまり。
 病院の本だったの、エルピスが手伝ってた本は?
 すごいね、病院の本。治療法とか?」

トコケットの話を真面目に聞く。先程の最初の話も合わせて考えてみた結果がこれであった。
看板娘が病院の格好をしているということは、そういうことだろう。

「名前……赫っていってた、確か。
 大丈夫。場所だけでも聞きたい、スラムの。探すから、ボクが」

場所さえわかれば、それで十分、広い場所だろうけれど、一人で探せるはずだ。
たぶんきっと。

「そういえば。この辺に住んでるの、エルピスは。
 大丈夫なの、心配する貴方自身は。慣れてるのかな、もう」

氷割りの時のことを思い出せば、問題はなさそうだけれど。

エルピス・シズメ >    
「ええと……その……
 ……じゃないけど、友達に見られるのが恥ずかしくて……
 男の子がこういう格好しているのは、ヘンにみられる事が多いからね。」
 
 墓穴を掘っている気がする。
 そう思いながらも、誤魔化し方が浮かばないので正直に答えた。
 
「えっと、その、ちょっと言い辛い本かな……
 僕が売り子した所には守秘義務もあるから、ちょっと内緒。」

 二重の意味で内容を口にする事は憚れる。
 説明は『トコケット』だが、エルピスの売り子は『ウラケット』。

 其処では発禁指定される類の本を取り扱う為、その内容の守秘義務も含まれる。
 彼が売り子をした本は『読んだ人に特定の状況(チャイルド・プレイ)を追体験をさせる』。
 ……と言った様な、倫理だけでなく身体・精神に負荷を与える技術が問題となった魔本だ。

 故にシアに内容を語ず、その義務を守る。

「知らない人だね。……あ、そっか、場所。それなら簡単。
 ここからならそう遠くない筈だし、人だかりも多いから……あっちの方。」

 場所なら分かると気を取り直す。
 ある方角を第三の腕で差し示す。

「あっちの方角で、人の足跡が多くて、ガラクタを避けた道が出来てる方。ここより賑やかな場所。
 落第街より秩序はあるけど、危ない事には変わりないから気を付けてね。」

 シアならこの説明で分かるだろう。
 方角と場所の雰囲気の2つで行先を説明する。

「ちなみに僕の家はこっちで、落第街はそっちの大通り。
 落第街の抜け方はさすがに大丈夫かな。」

シア > 「変? ああ。不思議だった、確かに。
 変ではないかな、でも」

正直な答えに、小さく首を傾げる。言った通り、最初に違和感を感じたのも確かである。
ただ、違和感を消化すれば別におかしいところはない、というのも正直なところである。
良くも悪しくも、見方が中立的であった。

「言いづらい……守秘義務……
 禁書……? 裏のお仕事……?」

知っている範囲内で考え、ちょっとだけ高度な知識を引っ張り出す。
それ以上のことは想像もつかない。エルピスは実はとんでもない仕事をしていたのか……?

「消される、話したら?」

真顔であった。

「ん。あっち?」

指し示された方を眺める。少し向こうの方ではあるが、おそらくそう遠くはなさそうだ。
ここよりは秩序がある、ということなら大丈夫だろう。

「うん。来たし、何回か。だいぶ慣れた。
 ……色々凄い処、確かに」

ほんの僅かに、エルピスの顔を見る。
……そして、もう一度視線をスラムの方に戻す。

「じゃあ。エルピス会える、この辺探せば」

もし次に会おうと思ったら、と

エルピス・シズメ >  
 真面目な話に戻れば、恥じらいや狼狽の余裕はない。
 真剣なまなざしでシアの瞳を見る。

「……消されるかもね。」
「うん。僕が行ったのは『トコケット』じゃなくて裏のお仕事の『ウラケット』。」
「内容は似たようなものだけど、扱うものが危険でね……誤魔化してごめん。」

 "鋭い"。そう思えば、隠さずに肯定し、誤魔化したことを詫びる。
 直感に因るものだろうか。改めて、シアの実力に底知れなさを抱いた。

「そう。あっち。その方向で問題ないよ。」

(この前の、氷割りの時も凄かった。)
(着想を得て動きを真似る事はあったけど、力づくで精一杯。)

(……山育ちと言ってたけど、本当に、底知れない子。)

「そうだね。この辺に来れば僕に会えると思う。
 この辺にしては珍しい、『普通の家』の匂いがすると思う建物だから、分かり易いかも。」

 湯と、電気の熱と、洗剤と、食事の匂い。
 彼の事務所から発される匂いは、落第街には似つかわしくない。