2024/08/28 のログ
ハインケル >  
「───へぇ」

こんな小娘一匹を殺すために、こんな規模の攻撃を繰り出すのか。
ああ、理解った。
なぜ比較的平和的な自分が即座に臨戦態勢になれたのか。

──、に。と笑みが深まる。

「凄いな」

「"殺意"はとびきりの一級品だね♡」

そんな言葉も烈風の轟音に遮られ届いたか届かなかったか。
ともあれ───、逃げる場所も、隙間も、時間もなさそうだ。

「せぇ……の───」

その場で屈伸をするように、屈み───溜めた力を爆発させる。
宙へ舞い上がった怪異へと、真っ直ぐに。
攻略法というにも粗雑。単純明快。
一瞬であの紅い烈風を突き抜けるのが一番ダメージも少ないだろう、と。

肉を切らせて骨を断つ。

痩身にしか見えない、それでも"怪物"である自身の頑強さに被弾の全てを任せての、地対空ミサイルが如き突撃。
風の刃が衣類を裂き、肌を切り裂こうが命に届かなければ意味がない。

その殺意は、命に届いてこその筈。

あちこちを斬り刻まれ朱の風を纏った金髪の獣が怪異の真上、月を背後に照り映える。

「──犬っころが空を飛ぶなよ♪」

血風を撒き散らしながら放たれる、両腕を頭上で組み上げての、渾身の叩きつけ(ダブルハンマー)──!!

紅き疾風ノ狂犬 >  
"なんだ、この躊躇のない跳躍はッ?!"
"風凶器の前に自分から入っていくのかッッッ!!"

狂犬の前に"跳ぶ"



最早"飛ぶ"といっていい

天より開いた烈風の窓を抜ける姿ッ!
注ぐ災厄すら打ち滅ぼすソレは


切り裂けど
切り裂けど
切り裂けども

"傷"にはなれど
"殺"には届かぬッ!

正しく神滅の一撃

狼が放った叩きつけにて、


紅き疾風ノ狂犬は―――

紅き疾風ノ狂犬 >  

      撃沈(チェックメイト)、だ。


 

紅き疾風ノ狂犬 > ―――見事。

貴殿の身体に幾多の傷を残した狂犬は
地に伏して砕け斃れた。

傷より不完全な感染毒―――
殺害欲を煽るモノが侵食するやもしれないが、
それは貴殿の意思が強ければ、砕けよう。

仮にそうならずとも、治す事も、容易だ。

ハインケル >  
"それ"が怪異の誤算だったのかどうかは理解らない。

しかし今宵、怪異が殺意を向けた相手は、獣。
それもとびきりの、常に自分を鎖で縛り上げている程の(暴れたがり)だった。

向けられた殺意を…。

恐れるでもなく。
怯えるでもなく。
警戒するでもなく。
嫌がるでもなく。

悦んでしまうような(相手)だった故の───。

「───はァ…」

地に斃れた怪異の元へと降り立った金髪の、人の形をした獣。
それは、その屍骸を見下ろして───。

「…キ、ひっ」

嗤う。

「あは、あははははは!!アはハハはははははッッ!!!」

斃れた怪異がその場で消えるのか、どうなるのかは知らない。
しかしその場に多少の時間なりその残骸が残るのなら───。

踏み潰し、引き千切り、まるで無数の獣に牙に食い千切られたかの様───凄惨な光景を、金髪の少女()は魅せる。

「あ゛ァ……、愉しかった♡」

ズタズタに避けた衣類を纏い、全身に傷を負った血まみれの姿。
月の下で恍惚の笑みを浮かべる様は、まさに魔の獣。

意思…あるいは本能…普段少女が閉じ込め抑え込んでいた魔獣としての本性。
怪異の齎す感染毒による殺害欲は、それとは似て非なるものだろう。

しかしその程度抑え込めなくては、この魔獣が人と同じ世界で生きることは出来ない。
一度それが解き放たれてしまえば───、このような光景が生まれるのだから。

紅き疾風ノ狂犬 >  
そこには
紅色の"残骸すら"も


残らなかった…

ご案内:「落第街 路地裏」から紅き疾風ノ狂犬さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」からハインケルさんが去りました。