2024/09/17 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に弟切 夏輝さんが現れました。
■弟切 夏輝 >
地上へつながる梯子を、ひとつ上がった。
それだけで、とんでもない時間がかかっているように思えた。
途方もない作業をしているようだ。
蜘蛛の糸を駆け上がった男の気が知れない。
水を吸って重たくなったコートが煩わしい。
「ふ………、……」
マンホールの裏側に、手を添える。
「…………ぅ……ッ」
力を込める。持ち上がらない。
破壊や崩落の危険性が常についてまわる場所だ。
この頭上が瓦礫に埋もれるなり、資材置き場になったなりしたのかもしれない。
……いや、違う。力が入っていないだけだ。
もうすこし―――すこしだけ……、僅かばかり、氣を……
■弟切 夏輝 >
「………う゛……ぁ!」
大岩でも持ち上げる心地で。
ずれたマンホール。陽光が注いだ。目が焼かれるようだ。
這々の体で、どうにか地上に這い出す。
「…………はーっ、はーっ……」
ぼたぼたと、地面に水滴が伝った。水道水……
ちがう、汗だ。顎に伝うものは。
「……ぷっ、……ぅぇ……」
ごほ、と咳き込み、鮮血がそのうえに散った。
その場に這ったまま、しばらく時間を過ごす。
暴れる心拍。それでもまだ、死なない――死ねない、という確信はあった。
だからこそ、ここに来て思考が戻ってきてしまった。
■弟切 夏輝 >
「……とっくに、……わたしのほうが、墜っこちてたんだ……」
渇いた笑いが、コンクリートのうえを這った。
なにひとつよすががなくなり、いまや落第街の、干からびるを待つばかりの蚯蚓は。
「……いい。それなら、もう……、諦めも、つく……」
……まだ諦めていなかったのか。
なにかが起こると、どうにかなると、考えていたのか。
親友に、あんな顔をさせておいて。
仲間に、あんな裏切りを突きつけておいて。
「…………あんたさぁ……」
肘をついて、……這う。身体を前へ。
「毎回チョコ食べるから、あんたがいるとき、綴が不貞腐れてたんだって……」
くっくっ、と空虚な笑いのあと、また咳き込む。
■弟切 夏輝 >
「……すこし、……休んで……」
――逃がし屋に、渡りはついている。
そのために金をかき集めて、落第街に潜んでいた。
島外逃亡の決行まで、あとは時間を稼げば良い。
「この、さきに……、廃ビル、が……あった、はず……」
そこで、眠ることくらいはできだろう。
ずる、ずる、と重たい身体を引きずるようにして、這う。
「……ああ、」
命が惜しい。
死にたくない。
七人の命を奪っておいて、当たり前のようにそんな言葉が出てくる。
罪悪感もないひとでなしは、ただぼんやりと狭い路地の間から青い空を眺めた。
「飛んでっちゃいたい……」
また、なにもない場所へ。
罪も罰からも逃げられる遠くへ。
そうすればきっと楽になれる。こんな辛い想いも全部忘れて。
また――新しく、はじめられる……
■弟切 夏輝 >
最初に奪った命、死んで当然のあの屑と。
気づけば同じ場所まで来ていて、同じことをしている。
「……逃げなきゃ……」
遠くに。
「…………逃げ、たい……」
誰もわたしを知らない場所へ。
そうすれば、この身体は洗われる。
「……どうして…………」
墜落するとわかっていたのに、翔ぼうとしてしまったのだろう。
――ふつん、と意識が途切れた。
倒れ込んだまま、動かなくなる。
羽毛のような幸せな夢に、溺れながら。
ご案内:「落第街 路地裏」から弟切 夏輝さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に九耀 湧梧さんが現れました。
■九耀 湧梧 >
「………何てこった。」
今日も今日とて落第街を歩いていた、黒いコートの男。
迂闊に歩けば厄介事に当たる落第街の路地裏だが、今回は特に厄介な案件だった。
目の前に、ずれたマンホールから出て来たと思しい人物がぶっ倒れている。
意識を失っているようだ…というか、瀕死だろう。
ひょい、と顔を持ち上げ、覗き込んでみる。
「………何てこった。」
本日二度目の嘆きの呟き。
確かここ暫く、風紀委員と思しい連中が探しに当たってたのがいた筈だが、
その特徴によく似ている。
というか、恐らく9割方の確率でご本人。
見なかった方がよかった。
ため息が出る。
■九耀 湧梧 >
「…………ああ、本当に最悪だ。」
一言呟くと、ぐい、とぶっ倒れて瀕死であろう人物を持ち上げ、
歩き始める。
風紀委員に通報して突き出すのが一番なのだが、生憎手軽な通報手段がない。
――というか、それまで持たない気がする。
要らん責任を背負うのは嫌だったが、見てみぬ振り出来る程現在冷酷にも
なれなければ、風紀委員に放り出す適当な理由も見つからない。
「何でお前さんは、こんな所で行き倒れてるんだよ。
全く以て嘆かわしいぜ……。」
取り合えず、昨日の寝床に使った部屋にでも運んで、最低限
死なない位の手当はして置いてやろう。
その後は――まあ、どうでもいい。
殺し合いにならないなら、持ち上げてるこの指名手配犯が無事に
逃げおおせようが、遭えなくお縄になろうが、個人的にはどうでもよい。
■九耀 湧梧 >
「逃亡犯って時点でそんなに殊勝な方じゃあない気はするが、
ま、懺悔か愚痴程度だったら、神父代わりに聞いてやるのもありか。」
まさかそんな事はないだろう、と思いながら、黒いコートの男は人目を避けて道を行く。
差し当たり、一番に考える事は、このズタボロの有様の何処から
手を付ければ一番マシな手当てになる事か、暗いだろうか。
「後でまた薬でもこさえないといかんな……。」
ああ、口を開けば愚痴が飛び出てしまう。
ご案内:「落第街 路地裏」から九耀 湧梧さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 >
「はぁ、はぁっ…はぁ……っ」
──そこに辿り着いた少女は、珠粒の様な汗を零い、膝に手をつき荒く息づいていた。
少女の体力を知る者ならば、落第街中を駆けずり回った既に辿り着いたのだろうことは用意に理解る。
──監視対象である彼に、親友の抹殺指令が下って幾許。
標的とのかつての間柄を考慮され、その指令のことは"秘匿"されていた。
しかし情報とは、流れそして伝わるもの。──随分と残酷な真似を、平然とやってくれる。
言い換えれば、もう長引かせはしないと判断されたとも言える。
………七人が殺害、相次いで風紀委員が負傷。……無理もない。
それでも自分よりも上の命令権から出た指令に介入することは許されない。
単独警邏の途中、異能を頼りに彼と彼女の交戦位置を割り出した。
が、到着した時にはその廃ビル群の一角は崩落───。
…斬奪怪盗の時と同じ、流体からは異能を使えない。
■伊都波 凛霞 >
──それから何をしたかと言えば、
ひたすらに落第街を走り回り、手当たり次第に記憶の残滓を読み──。
文字通りの虱潰し、学生街と違い舗装された道も少なく細い路地も多い落第街…。
制服もあちこちに引っ掛けほつれが目立ち、肌にも数か所目立つ切り傷が在る。
そんなことを気にする余裕もなく、焦燥感に駆られひたすらに駆け回った。
そうして、辿り着いた。
「っ、…はぁ……、はぁ……ッ」
呼吸を落ち着けながら見る先は、蓋のズレた、マンホール。
その周辺の地面は濡れ、まだ乾いていなかった。
遅かった。
けど、漸く掴んだ足取り。
ふらふらとマンホールの近くへとへたり込み…その蓋へと指先を触れる。
■伊都波 凛霞 >
…まずは、生きていることに安堵。
彼が無事であったことも、そうだった。…もしも、どちらが命を落としていたら──堪えられそうになかった。
「(夏輝…どこに……?)」
目と閉じ、集中する──。
物質に宿った記憶の残滓、その映像が脳裏に映り込み、再生され──。
ガリ、と…ノイズが走った。
■伊都波 凛霞 >
「っい、ぎッッ!?──あ゛ああぁッッ!!」
まるで脳を直接ハンマーで叩かれたような頭痛に、それは阻害された。
思わず両手で頭を抱え、その場で蹲る──。
あちこち駆けずり回りながら残滓を読んでいた──、明らかな、能力の使い過ぎだ。
「っ、───」
ずきん、ずきん。
後を引く程の頭痛が続く……それでも。
もう一度、震える指先を伸ばす。
ものすごく痛いだけなら、我慢できる───。
■伊都波 凛霞 >
"ガリ、ザリ、バリ…"
ノイズだらけの、記憶の残滓。
派手にノイズが走るたびに、頭が割れる様な頭痛に襲われる。
やがて、ノイズだらけの製造はばつん、と強制的に電源がオフになった様に寸断される。
脳疲労の限界。強制的に、異能が"オチた"
「───」
その場に崩折れるように膝をつき、斃れかける。
「(誰か……見えた………誰かが、誰か、を…連れて──)」
一人は、恐らく彼女…夏輝。
じゃあ、連れて行ったのは……?
映像にノイズが酷すぎて、男か女かすらも、理解らなかった。
ズキズキと痛む頭を手で抑える。
止め処なく、続く頭痛にじっとりとした汗が顎先を伝い、落ちる。
■伊都波 凛霞 >
ふらり、立ち上がる。
おぼつかない足取りで歩き出す、そこへ。
数人の風紀委員が走り、やってくる。
たまたまこの辺りの警邏に訪れていたのか──運が良いのか、悪いのか。
『!? 大丈夫ですか』
『フラフラじゃない!大丈夫!?』
「だ、大丈夫…に見えるわけないか」
力なく笑みを浮かべる。
さすがに、これを誤魔化すのは難しい。
その風紀委員の中に一人混じっていたのは…刑事課の後輩にあたる女の子。
複雑そうな顔は…そう、どうして自分がこんな無茶な捜査をしたのかを理解っている。
『凛霞さ…』
「ごめん…でも、ただ待つなんてできなくって……」
──刑事課オフィスの風紀委員達の陳情。
弟切夏輝の捜査に関しては、検討する──との旨の言葉を預かっていた。
……そこに下った凶刃への抹殺命令…。
まさか、と思いつつも身体が勝手に動いた。
どれだけ冷静に努めようとしても、大事な人間が絡むと相変わらず、感情的に動いてしまう癖だけは直らない。
──こんなだから、彼女の捜査から跳ねられる。正しい判断だと思う。
『連れ帰りますよ、いいですね?』
後輩の男子生徒の強い目線。
本気で自分が振り切ろうとすれば、出来ることを理解っている──。
■伊都波 凛霞 >
「───」
小さく、息を吐いて俯く。
「ごめんなさい。手間、かけちゃって──」
目の前が白む…。
ああ、とっくに限界だったかな。
気を抜いたら、こんなにすぐ。
『───!!』
『─────』
抱きかかえられるような浮遊感と、誰かが騒いでいる様な声が、遠く聞こえた気がする。
気を失って、それから目を覚ましたのは犯日後、病院のベッドの上だった──。
ご案内:「落第街 路地裏」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」にエルピス・シズメさんが現れました。
ご案内:「落第街 路地裏」にフィスティアさんが現れました。
■エルピス・シズメ >
「はあっ、はあっ……く、っ……。」
某日。昼下がり。
逃走劇を繰り広げる少女のような少年と、統一性のない不良らしき集団。
白黒の仮面を付けているものも散見されるが、統率系統はない。
■不良集団 > 「ンのらあッ……ちょこまかと!」
「さっさと……こっちに来いッ!」
「悪いようにはしねぇからよぉ!」
逃走劇の果て、集団の一人がエルピス・シズメの腕を掴む。
明確な体格差──と、肉体強化系の異能だろう。
身長135cm弱まで小さくなり、肉体能力が低下したエルピスでは振りほどけない。
「だ、やめっ……!」
思わず、悲鳴のようなものをあげる。
■フィスティア > 今日も見回りを頑張っていきましょう。
先日の一件以降自信がついたおかげで堂々とできます。
私にもやれることがあると分かったのです。
「!
あれは…!」
そんな中、走る少女と、その背後を追いかける集団を発見しました。
これは事件の予感です。
「急ぎましょう…」
彼らを追いかける為に走りだします。
以前と違って人数も多いですし、白黒の仮面も見えました。
騎士さん達に頼ったほうがいいかもしれません。
そんなことを考えているうちに彼らは動きを止めて、少女の腕を浮かんでいました。
これはいけません!
「あなたたち!その手を放してください!
風紀委員会です!」
威圧を兼ねて騎士さんを5人呼び出しておきます。
1人では舐められるかもしれません。
捕縛は出来ませんが、まずは少女を助ける事が最優先です。
■不良達 >
「ンだコぁ? ベートレ様に様に逆らうって言うのかよ……!」
「風紀委員サマが、こんな所に来ンじゃねぇ!」
「こっちは叛乱してんだ!数で押しゃあ良い……ちと待て、こいつ……!」
五体の騎士に警戒を示したのは白黒の仮面。
体格も良く、エルピス・シズメの腕を暴力的に掴んだものだ。
警戒を促そうとした矢先──
「「「やっちまうぞ!!」」」
残りの多数が騎士に突撃する。
火を纏わせたバット持ち。ギターケースで殴りかかるもの。
ボロボロのコンバットナイフで切りつけるもの。
簡単な異能は見えるものの、さほどではない単純暴力。
勇猛か蛮勇か、5体の騎士に殴り掛かった。
■フィスティア > 威圧は失敗に終わりました。
むしろ逆上させてしまったようで、失敗だったかもしれません。
ですがどのみちこうなっていた様な気はします。
「ッ!怪我は覚悟しておいてください!」
騎士さん達に前に出てもらい、私も細剣を抜きます。
騎士さんは盾と片手剣3人、大剣が1人、弓が1人です。
騎士さん達はこういった単純な物理攻撃には強い部類です。
少なくとも防御は問題なく出来る筈!
実際ぶつかり合った盾と大剣の騎士さん達はそれぞれで攻撃を受け止めています。
切りつけても殴りつけても、その守りは簡単には崩せません。
そこに弓の騎士さんの援護射撃が入ります。
一射ずつ確実に腕や足などを狙って当てていきます。
私は隙を見てあの少女を保護したいのですが、まだ少し難しそうです。
■不良達 > 「硬ぇ!」
「っぜえっ!」
「こいつ……!」
三者三葉。
不良達はある程度の応戦を見せたものの、次第に力負けし、膝を付きます。
盾に遮られ、剣に討たれ、矢に追われる。
「わ……割りに合わねぇ! さっさとずらかんぞ!
逃げちまえば、何時もみたいにこいつに悪事を被せられる!」
白黒の仮面から響き渡る声。
同時に、膝を付いていない幾らかの不良がくもの子を散らす様に逃げていきます。
白黒の仮面を付けていたものも、躊躇なく仮面と少女(しょうねん)を投げ捨てて逃走を開始。
ちゃっかり逃走経路に少女(エルピス・シズメ)を置いている辺り、中々に狡い手合い。
……弱小集団だが、ギフトを必要としないものの動き。
恐らくは小規模な不良集団であり、
ギフト騒乱に乗って狡いことをしようとしたのでしょう。
追うもよし、残ったもの処理するもよし。
膝を付いたものは、おおよそ5人程。
■エルピス・シズメ > 「くぁっ……」
投げ捨てられた少女……もとい、少女のような少年は、その場にゴロンと転がりました。
多少の打撲の痕はありますが、暴行と呼ぶほどには至っていません。
ひとまず、無事そうです。
■フィスティア > 騎士さん達の活躍のおかげでなんとか撃退出来たようです。
数人動けない状況ではありますが、まずは少女の状態を…
「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
不安を与えてしまわないようにゆっくり声をかけます。
パッと見た所、怪我と言えるものは無いようにも見えますが、打ち付けた痕があります。
「少々お待ちくださいね…」
治癒の魔術を唱えます。
目を瞑って、故郷の言葉で詠唱します。
10秒ほどの詠唱で発動した魔術は痛みを和らげる魔術です。
傷そのものは治せませんが、これぐらいならば痛みを一時的に取り除ける筈です。
「どうですか?痛くありませんか?」
騎士さん達には動けないでいる方々を見ていてもらいます。
■エルピス・シズメ >
回復魔術。
魔術によって軽度の打撲はたちまち癒されます。
「わ……」
『回復魔術』を受けることは珍しかったのでしょう。
びっくりして、驚きの声をあげます。
治療の過程でよくよく見ると腕や足の肉つきから、
男の子かもと思わせるようなものはあるかもしれません。
肉つきの良い女の子にも見えなくはありません。
「あの……えっと、ありがとうございます。」
少し高めの、ボーイッシュな……もとい、男の子寄りの高い声。
救出されたエルピス・シズメは、ぺこりと頭を下げます。
「ちょっと、普段より力が出なくて……大丈夫かな、と思っていたけど油断してたみたいです。
僕はエルピス・シズメって言います。この辺に住んでいます。お姉さんのお名前、聞いても大丈夫ですか?」
分を弁えた、控えめな所作と態度。
この辺りに住むが故の、丁寧さと微かな委員への警戒が見受けられます。
■フィスティア > 「いえ、もっと早く助けになれなくてすみません」
後悔している訳ではありませんが、申し訳ないという気持ちはあります。
少女かと思いましたが、女の子にしては肉付きがいい気がします。
しっかり食べられているようで少しホッとしました。
「私はフィスティアと言います。ただのフィスティアです。
よろしくお願いします、シズメさん」
この辺りの住民の方でしたか。
私に対しての警戒もそれが理由でしょう。
風紀委員会はどうしても警戒され気味ですから、仕方がありません。
「安心してください。私はあなたに何かしようというつもりはございません
ここに住んでる皆さんを守りたいだけですから」
一歩下がって微笑みかけます。
■エルピス・シズメ > 「ここを……?」
フィスティアへの腕章へと目を向けて、その後に周囲を見渡す。
ふしぎなものを聞いたような、口ぶり。
「……存在しない場所なのに、守りたいの?」
“んーっ"と目を凝らして、あどけない瞳がフィスティアを見つめます。
ただし、言外の意は理性のあるもの。警戒、と言うよりは疑問。
落第街は表向きには歓楽街の一部で、存在しない場所。
同時に、無法も多い所。
フィスティアの人となりを知らないエルピス・シズメは、
風紀委員が言うここに住んでいる皆様を守りたいに、疑問を抱いています。
■フィスティア > 「落第街という場所は存在しないかもしれませんが、そこに住んでいる人達まで存在しないという訳ではありませんから」
常世学園は落第街を存在しない場所としている、というのはこの島ではもはや常識ではあります。
風紀委員会も積極的に介入しようとはしていないように感じます。
ですが、そこに住んでいる人は存在するのです。住んでいる皆さんも人で、生きていて、生活があります。
「私はここで生きている方々を蔑ろにしたり、見捨てたりは決してしません。
それに、ここでしか生きられないという方がいるかもしれません。
ですので、ここを否定したりもしません」
人は様々な事情を抱えて生きています。
私もシズメさんも、先ほどシズメさんを襲っていた方々も。
それを否定したりはせず、寄り添っていきたいと思っています。
■エルピス・シズメ >
「……そっか。」
優しくも強く、フィスティアの感性を言葉と感覚で理解します。
本当にそう思っていると、気を許したように警戒を解きました。
「とってもやさしい委員さん、なんだ。
助けてくれて、ありがとね。」
再度、頭を下げて礼を述べます。
おおきく頭を下げたので、柔らかい髪がふわりと浮きました。
「でも……たいへんじゃない?
ここに来るのも……色んな人がいるのも……。」
ちらり、と、膝を付き、そのまま逃げ切れずにいる5人へと目を遣ります。
■フィスティア > 「そう言っていただけると励みになります。
ありがとうございます」
素直な子です。
それに、ありがとうと言われるとこちらもうれしくなりますね。
表情に出ていないでしょうか?
「そんなことは無いですよ。
確かに危険な目に会うことはありますが、大変とは思いません」
シズメさんの視線を追って騎士さん達が見てくれている五人へと視線を向けます。
彼らも何か事情があってここにいるのでしょう。
彼らのしたことが許される事ではありませんが、彼らが真っ当に生きらるようにしたいとは思います。
ですが、捕縛はします。
「シズメさんこそここで暮らすのは大変ではないですか?
衣食住は整っていますか?」
■エルピス・シズメ >
「そっか……強いんだね、フィスティアさん。」
堂々とした振舞いを見て、そんな感想を零しました。
捕縛されていく不良達は、諦めた具合で捕縛されます。
事情の在りそうな後で調書してみれば、落第街で火遊びしている不良集団の常連と分かります。
大きな犯罪までには至ってないようです。放っておけば、より強い悪意に食われる手合い。
少し頭が回るからと、単なる気晴らしと下心で火遊びをする人たち。
どこにでも、とは言わぬものの軽率な人間。
「うん。今回は遅れを取っちゃったけど……普段はもう少し、動けるから。
この先の……ちょっと大きな建物で、4人で暮らしているよ。」
腕で方角を指し示します。
少し遠いですが、落第街にしては新しく整った建物があり、
その建物からは湯気や洗剤の香りなどが漂い、生活の匂いがします。
エルピス・シズメ達が住まう、『数ある事務所』、と、呼ばれる建物です。
「だから、大丈夫だよ。着るものとお金には困ってないし、食事は……
……大丈夫だけど、料理のお勉強中かも……。」
衣食住は問題なく、料理をする余裕もある。
落第街では、珍しいものかもしれません。
■フィスティア > 「いえ、私は全く強くありませんよ」
実際、つい数日前に大泣きしたばかりです。
今こうして気を強く持てているのはある種の偶然かもしれません。
5人を連行するのは難しそうですから、応援を呼んでおきましょう。
端末を操作して簡単な報告と応援を数人要請します。
「すごい、ですね。
ここにもあんなに立派な建物があるのですね」
驚きのあまり失礼な事を口走ってしまいましたが、本当に驚きました。
新築でしょうか?あそこに住んでいるのなら困る事は無さそうですね。
「シズメさんもですか?私も実はお料理は勉強中でして」
お勉強と言えるほどではないかもしれませんが、再会した親友に食べてもらいたくて最近少し頑張っています。
「お互い頑張りましょう!」
■エルピス・シズメ >
「そう……?」
フィスティアから自尊心の低さを感じたものの、深くは追求しません。
応援を呼ぶ動きを見ると、その動作を目で追います。
「えへへ。僕の大事なイーリス……同居人さんが、頑張ってくれてね。」
驚いた素振りには悪い気はしなかったらしく、ほんの少しだけ嬉し気げです。
「一人で住んでる訳じゃないから、そろそろ料理覚えなきゃ、って思って。
フィスティアさんもお勉強中なんだ。お互いに頑張ろうね。」
同居人の一人が家事や料理を担ってくれている事を思い出しながら、投合するように頷きます。
ぐっっと手を握る仕草は、見た目相応に無邪気そう。ただ、状況は理解しているらしく──。
「えっと……応援さんが来ると状況が複雑になっちゃうかもしれないから、僕は帰るね。
僕の事は、あんまり調書に書かないでくれると、助かるけど……」
今では落第街に住む住人なので、少しだけ不安げ。
それはそれとして、フィスティアのことは信頼していそうです。
場所を明かしたことも、その一因かもしれません。
■フィスティア > 「素敵な方なんですね」
大事と言ったり、想い人と呼んだり。
とても素敵で大切な人であることが分かります。
聞いていて私もなんだか嬉しくなりますね。
お幸せに。
「そうですね。引き留めてしまったようで申し訳ありません。
追及があったりすると大変ですからね。ぼかしておきます。
お気をつけてお帰り下さい」
風紀委員としてはダメかもしれませんが、私としてはシズメさんに迷惑をかけたくありません。
これは、シズメさんでなくても同じです。
私はシズメさんを襲っていた方々を連行する仕事があるのでここに残ります。
手を振ってお別れします。
また会えると嬉しいと伝えようかと思いましたが、シズメさんにとっては出会わない方がいいかもしれませんので、言わないでおきましょう。
■エルピス・シズメ >
ととと、と、数歩走ってから、思い出した様に振り向きます。
フィスティアの想いを知ってか知らずか、
ふわりと緩やかな笑みを浮かべて、こう告げます。
「えっと……またね。
料理、上手くなったら食べさせてね。」
特に他意もなく、自然に再会を望む言葉をつげます。
フィスティアさんは良い人で、風紀委員。
応援を呼んだことと、再会を望まない事はまた別です。
エルピス・シズメは、大丈夫だと思った人には懐っこい側面もありました。
「ほら……それはそれ、これはこれ。って、良く言うし。とにかく、またね!」
重ねる様に挨拶を告げてから、そのまま帰路へと走り去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」からエルピス・シズメさんが去りました。
■フィスティア > 「…!
はい!また会いましょう!
料理も頑張ります!」
もう会わないほうがよいと思われている、そう思い込んでいましたが。
意外とそんなことは無かったようです。
驚いて目を丸くしてしまいましたが、こちらからも笑顔で聞こえる声で伝えます。
シズメさん、良い方でした。
平和に暮らしていてくれると嬉しいです。
「お待たせしました。みなさん、事情聴取だけよろしいでしょうか?」
切り替えて、捕縛済みの五人へと視線を向けます。
お仕事中ですからね。
この後は無事応援と合流して彼らを連行しました。
ご案内:「落第街 路地裏」からフィスティアさんが去りました。