2024/09/25 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に青霧 在さんが現れました。
■青霧 在 > 「手がかりは未だ無しか」
「早い所突き止めなければならないというのにな」
数日前までは蒸し暑かった夜風はここ数日で突然やわらぎ、そのまま秋を感じさせる肌寒い物へと変わっていた。
気候の変化が突然であった事や、委員会の仕事に追われていた為に衣替えが出来ていない。
夏服のままという事もあり肌寒さを感じながら落第街を探索する。
「この状態は想定にないな。非常に良くない状況だ」
「《インスティゲイター》は必ず止めなければならない」
青霧がここ二日、衣替えをする時間が無い程にかかりきりになっている案件。
それは、《インスティゲイター》と名乗る違反組織。
詳細な目的も動機も全体の規模も把握出来ていない違反組織。
それでも一つだけ分かっている事がある。
「強制的な開門など許される事では無い」
その目的は、この世界と異世界を繋ぐ門を開く事。
開く目的すら判明していないが、時空に干渉し強制的に門を開く行為は間違いなく危険だ。
何より、繋がった世界やそこから招かれた存在によっては常世学園や都市の住民に被害を齎す可能性すらある。
黄泉の穴という前例がある以上、決して楽観視出来る物ではない。
現在は青霧を含む風紀と公安の十数名が調査を行っているが、二日経って尚一切の進捗がない。
非常に良くない状況に青霧の表情も険しく引き締まる。
■青霧 在 > 状況が悪い理由はそれだけではない。
主な理由は二つ。
《インスティゲイター》の潜伏期間が判明していない事、そして手がかりが発見された場所が黄泉の穴であるという事。
黄泉の穴は相当な危険区域だ。学園関係者や風紀、公安と言えど触れるのは多大な危険を伴う。
三日前、そんな危険区域に何者かが侵入した形跡が見られた。
その形跡を発見出来たのも半ば偶然。偶然近辺を通りかかった風紀委員会の生徒が違和感を察知し、固有の異能を用いて発見したというもの。
別の生徒であれば気づけなかったかもしれないその形跡は非常に巧妙に隠されており、隠蔽を行った侵入者の技量の高さが伺えるもの。
急遽組まれた小規模な調査隊が持ち帰ったのは、《インスティゲイター》を自称する組織がのこした会話の残滓。
黄泉の穴の魔力に乱された残滓は有用な情報の殆どを損なっており、《インスティゲイター》という名前と『門を開こうとしている』という目的しか判明しなかった。
それでも、黄泉の穴に侵入しその形跡を高度に隠蔽出来る人員を抱えた組織である《インスティゲイター》は非常に危険な可能性があると判断された。
「ギフト騒動が収まってきたと思ったらこれだ」
「この島の治安はどうなっている」
言ったところでどうにもならない文句を零しながら早足で落第街を進んでいく。
腰につけた装置は黄泉の穴の魔力の波長をベースに作成された探索機。
これを基に《インスティゲイター》の足掛かりを掴もうというのが青霧の現状出来る役割。
専門的な調査は公安や刑事課が行っていると聞いているが、そちらも進捗は無いと聞く。
■青霧 在 > 黄泉の穴の魔力は極めて不安定だ。
それをベースに作られた探索機は当然不安定かつ有効期間も短い。
更に言うならば高い技量を持つ人員を抱えているであろう《インスティゲイター》がそのような手がかりを残しているとも考えづらい。
「一体いつから潜伏していたんだ?」
「動機、規模、活動内容の何も分らん状況か…」
風紀も公安も、決して素人ではない。プロの集まり。
その目を掻い潜り続けてきた違反組織というのはかなり洒落にならない。
何かしらの活動をしている限り、少なからず影響が発生する。
公安を始めとした治安維持組織は僅かなそれを察知する事が出来る筈だ。
だが、出来なかった。
それが意味するのは一体。
「余程小規模に行動しているか、何らかの隠れ蓑があるのか」
「それとも、違法行為を行っていないのか」
影響を極限まで抑えれば公安でも察知出来ない可能性はある。
そもそも違反行為を行っていないのであれば、影響など発生しない。
極限まで楽観的に考えるのであれば、《インスティゲイター》が犯した違反行為は二日前の黄泉の穴への侵入のみである可能性だってある。
だが、そう考えることはできない。形跡の隠蔽具合は計画的なものであると風紀委員会刑事課により断定された。
黄泉の穴への侵入は計画の一部である可能性があり、あれほどの危険区域に侵入する目的があった事が容易に想像できる。
■青霧 在 > 《インスティゲイター》の組織規模などを考慮し、調査に割り当てられた人員は何れも高い能力を持っている。
にも拘らず手詰まり。何度でも言おう、手詰まりだ。
怒りでも悔恨でも憎しみでもなく、焦燥と疑念が募り眉間の皺が深くなる。
感情の昂りに疎い筈の青霧も、こんな状況に二日も中てられ続ければ心が揺らぐ。
焦りも迷いも持つべきではない事は理解し、可能な限り遠ざけている。
思考と行動から排除された焦燥は表情に現れ、ただでさえ陰鬱な表情はさらに濁っていた。
「探索機の有効期限は精々今日までと言っていた筈だ」
「今後の調査は手がかり無しで行う事になりかねない」
蜘蛛の糸が如き手がかりすら損なわれようとしている現状は焦燥を煽るには十分であった。
次なる手を打つという話も聞いていない。
事態が進展せず手が出せない場所へ行こうとしている。
焦燥感に苛まれているのは青霧だけではないだろう。
臨時で作成された《インスティゲイター調査部》のグループチャット。
めぼしい成果が一切あがってこない状況を見て悲観的な感情を抱かない人間はいないだろう。