2024/09/27 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」にDr.イーリスさんが現れました。
ご案内:「落第街 路地裏」にエルピス・シズメさんが現れました。
■エルピス・シズメ >
落第街に存在する、『数ある事務所』。
元々は単独経営であった程度には、小規模な組織。
その数ある事務所の、便利屋──わかりやすく言えば、何でも屋としての活動。
非日常の中で暮らすための日常として、エルピスとイーリスは子供探しの依頼を受けていた。
報酬は……どの程度だっただろうか。金額ではなく内容で即決したことは覚えている。
「辿りながら大分歩いて、ここまで来ちゃったけど……。
……イーリス、一休みする?」
スラムを経て落第街の路地裏に。
周囲に気を配りながら、調査を続けている。
■Dr.イーリス > 便利屋『数ある事務所』に舞い降りたご依頼。
子供探しであった。それも、落第街の路地裏に迷い込んだ可能性もあるのだという。
命に関わる事だった。
イーリスが思い返すのは、十年前の事……。
当時スラムに住んでいた四歳のイーリスは、気が付けば落第街の路地裏に迷い込んだ事がある。
どこを歩いているのかも分からず不安に駆られていたイーリスを助けてくれたのが、タイムトラベルしたエルピスさんの姿の一つ、正義のロボットさんだった。
その時の事を思い出して、イーリスは微笑んだ。
「お気遣いありがとうございます。そうですね、ずっと歩きっぱなしなので少し疲れました。一休みしましょう。水分補給も大切ですね。エルピスさん、冷たい飲み物はいりますか?」
イーリスがバッグから水筒を取り出してエルピスさんに差し出した。ワンタッチ式の水筒で、コップがなく直接飲むタイプ。
水筒の中身は、スポーツドリンク。
■エルピス・シズメ >
混沌とした落第の路地の中。
多くのものは絶えぬ変容を続けていれど、面影を残すものもある。
路地の形に懐かしさを見出して、眼を細めた。
正義のロボットさんを担っていたエルピスにとっては、イーリスの10年前は最近のこと。
「うん。一口貰えると嬉しいよ。イーリス。」
適当な室外機を椅子がわりにしようと促しながら、
エルピスからもイーリスに近付いてスポーツドリンクを求める。
「既視感から流れを追ってみる限りだと、この辺な気もするけど……
……子供、大丈夫かな。」
■Dr.イーリス > この辺り、と聞き周囲を見渡す。
見える範囲にはいない。
エルピスさんに水筒を渡した後、スマホを取り出した。
スマホに映る画像は、迷子になった子供。六歳ぐらいの少女。
六歳でこの辺りを歩くのはとても危険……。
イーリスも幼い頃、殴られたり蹴られたりで、落第街で凄く痛い思いいっぱい経験してきた……。
「休憩を終えた後に、この辺りを重点的に探してみましょうか」
■ミケちゃん > 「にゃあ~」
《ミケ三型試作機》猫型ロボットのミケちゃんが現れて、室外機に座るエルピスさんのお膝の上に上って丸くなる。
■Dr.イーリス > 「ミケちゃんも、あの子を見つけられませんでしたか……」
ミケちゃんにも捜索させていたけど、残念ながら見つからず……。
■エルピス・シズメ >
「んく…………うん。美味しかった。」
ゆっくりと水筒からスポーツドリンクを一口相当分飲んで、
残りをイーリスに渡した。
散策から戻ってきたミケちゃんがエルピスに乗っかれば、
少し戸惑いながらもやさしくあやすように背中を撫でる。
エルピスくんは、思ったより動物に避けられやすい。
なので、動物の扱い(メカであっても)に不慣れらしい。
「僕の既視感も当たる訳ではないからね。
……此処じゃない可能性も、高いかも。」
既視感から生じる流れを読んで追う、直感や先読み・予測などを含んだ混合技術。
ある種の技術にまで昇華されているものの、常に当たる訳ではない。
むしろ、最近は当たらない方が多い───安全に寄せた判断を取っているのもあるが、
技量や状況の混迷さによってどうしても限界はある。それなり以上には、彼の得意分野ではあるが……。
自分の未熟さに自省しながら空を仰ぐ。
どうしようか、と思案して。
「場所をずらしてみる? それとももっと深くか、攫われたか……ううん。」
■ミケちゃん > 「にゃああぁぁ」
エルピスさんに背中を撫でられたミケちゃんは、とても心地よさそうにしている。
ミケちゃんの方は、エルピスさんに懐いている様子だった。
■Dr.イーリス > 「むっ……。ミケちゃん、エルピスさんも長く歩いて疲れているのですよ」
イーリスは嫉妬で頬を膨らませて、エルピスさんのお膝にいるミケちゃんを抱えて地面に降ろした。
ミケちゃん、とても不服そうな表情をした後、またエルピスさんのお膝に戻った。
「あ、ミケちゃん……! う……ぐ……」
ぐぬぬ、と嫉妬心を醸し出しつつミケちゃんを睨んでいる。
エルピスさんのお膝でなでなでしてもらうなんてずるい……!
「エルピスさんの既視感がこの辺りだと察知しているのですから、この辺り探していきましょう。見つからなかったら、また考えればいいですよ」
あくまで見える範囲にいないというだけで、近くにはいるのかもしれない。
だが同時に、不安な点もある……。
「攫われた……ですか。近くには、違法部活の拠点が多く立ち並ぶ地域がありますよね……」
イーリスは暗く視線を落とした。
■エルピス・シズメ >
「おちつくのかな……?」
降りた後に戻ってくるミケちゃん。
どうしようかな、と少しだけ思案して右側の肩に乗っけてみた。
整備の終わったばかりの、機械義肢。
「ありがとう。うん。……これだけ探しても手掛かりは乏しい。なら、最悪を除外しながらやっていこう。」
乗っけたままイーリスにさりげなくにを寄せてくっつくこうとする。
イーリスの言葉と姿で気を取り直し、活動を再開する。
「全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙な事であっても、それが真実。
誰の言葉だったかな……とにかく、最悪の外堀を潰しながら地道に探し続けよう。」
故に、未熟は感じれど間違えることそのものは恐れない。
経験はそうし積みあがる。そう自覚しながら、拠点施設へと視界を向ける。
「荒事を避けながら、こっそり調べてみる?
ここまでくると……逃げおおせている可能性の方が少ないと思う。」
■Dr.イーリス > エルピスさんの右肩に乗るミケちゃん。機械義肢で爪を研ぎ始める。
「だめですよ、ミケちゃん! 義肢が傷ついてしまうではないですか!」
ミケちゃんの手を握って、爪を研がせるのを止めた。
エルピスさんの体と寄せ合って、イーリスは和やかに微笑んだ。
そしてエルピスさんに頷いてみせる。
「なんだか探偵さんみたいですね。私達のやっている事は、探偵業に近くはありましたね。つまり、この辺りの違法部活の拠点を隈なく調べるのですね」
攫われた可能性を排除できれば、安心感は増す。
もし攫われていても、早期の救出に成功したなら、まだ迷子の少女の傷も深くならずに済むかもしれない……。
「そうですね、こっそり探ってみましょうか。ふふ、十年前に、攫われた私をあなたが助けてくれた時の事、思い出しますね」
イーリスは目を細める。
■エルピス・シズメ > 「あはは……」
つめとぎ。
ちゃんと生身と義体を識別しているらしい。
可愛らしくも奔放なミケちゃんを微笑ましく見送った。
「近いものはあるのかな。少なくとも、僕はそうしてる。
考えることを諦めたく、ないからね。」
たとえそれで苦しくても、理性は捨てきれない。
「……そうだね。あの時は失敗して、もう終わりかと思ったけど……
……シスターヒガサさんが持たせてくれたくまさんのおかげで、なんとかなったけど……
本当に、なんとかなってよかった。」
思い返して顔を青くする。
エルピスにとって軽いトラウマになっているらしい。
あの時のどうにもならないと思ってしまった時の絶望。
その時に起こそうとしてしまった強い感情からくる何か。
自分で振り返る度に、あの時の後悔と虚無、絶望感に背筋が凍る。
イーリスにとっては十年前であっても、エルピスにとっては最近の記憶。
「……とりあえず、僕は大丈夫。
ええと、そうだね。ミケちゃん、ちょっとあの方角の建物を探ってくれないかな……。」
■Dr.イーリス > 「人は知性と理性がある生き物です。考え続けるのはとても大切な事ですね」
エルピスさんに頷いてみせて。
「くまさん、懐かしいですね。どこに仕舞っていたでしょうか。お義母さんと私の元の自宅は、私一人では守り切れず違法不動産に持っていかれましたけど、大切な私物はスラムの教会に保管してくださっています。お義母さんが造ってくれたくまさんも、教会に今も仕舞われているはずですね」
くまさん……凄く懐かしい。
イーリスが初めてロボットを一人で完成させようとした時も、くまさんを凄く参考にした。
当時は大切なくまさんを解体なんてする勇気全然なかったし、出来る技術もなかったから、外観を見ての参考でしかなかったけれど。
「あの頃の私は、エルピスさんにとても負担をかけていた……みたいですね。申し訳ございません」
エルピスさんの表情を眺めて、イーリスは申し訳なさそうな形相になった。
「ところで、どうしてお義母さんが造ったくまさんがあの時に役に立ったのですか?」
きょとんと小首を傾げるイーリス。
お義母さんが義娘の事を心配してくまさんにGPSを仕込んだ事を知らない。
今のイーリスならいざくまさんを見れば解体するまでもなくセンサーでGPSの存在を把握できるけど、懐かしさを凄く覚える程にもう随分とくまさんに触れていないという事である。
不良時代は諦観した人生を歩んでいたので、昔を懐かしむ余裕もなかった……。
■ミケちゃん > 「にゃああぁ!」
お任せあれ、といった風に前足で器用に敬礼。
違法部活の建物へと歩いていくミケちゃん。
■Dr.イーリス > 「ねこちゃんで建物の中にまで侵入するのは困難ですからね。ミケちゃんが建物まで近づいたら、蚊型偵察機を使いましょうか」
蚊型偵察機。その名通り、蚊を見た目をした小さな偵察機である。
ミケちゃんが建物まで接近した後、ミケちゃんの毛に隠れるように潜ませていた蚊型偵察機が出動し、建物へと入っていった。
イーリスの眼前、虚空にモニターが出現する。
そのモニターには、蚊型偵察機が見ている光景が映し出される。
■エルピス・シズメ >
「そっか、教会にあるんだ。まだ残ってるんだね……。」
懐かしむ様子で頷く。
ちゃんと輪ずれに持ち帰ってよかった。そんな前向きな感情も浮かんだ。
「ううん。イーリスが悪いんじゃないよ。
イーリスを狙ったり、傷付けた人が悪い。だから……」
幾つかの言葉が脳裏を過る。
この次の句でどのような意志を示すべきか、暫く考え。
「二人で一緒に、困難に立ち向かおうね。
……これからも、大変なことはいっぱいある。ナナの追手もだけど……
……ギフターと、ネオ・フェイルド・スチューデント。」
一人で清算すべき過去もあるかもしれないけど、ふたりで立ち向かいたい。
彼にとっての大きな我儘を心に乗せて、二人で乗り越えることを望みにした。
だいすきなひとの危機を、陰から支えるだけの僕じゃない。
そうすべきできでない事もあるかもしれない。その方が最善ならそうする。
でも……素直な感情としては、極力感情を示したい。
「だいすきないーりす。傷付けられてとられたくないから、一緒に頑張りたい。
……流石に気付かれそうだから、ここからは偵察機だね。ありがと、ミケちゃん。」
■エルピス・シズメ >
「あ、そうそう……あのくまさんの中には高度なGPSと専用アプリが入っていてね。
それを辿る事で、最短経路でたどる事が出来たんだ。
……僕もああいうの、作れたら……使いこなせたらいいな。」
虹の希蹟としてイーリスの知識を継いで尚、イーリスの知識と技術の大半は扱いきれてない。
知識の重みが違うし、運用も難しい。
……夜中にこっそり変身して学習と練習したり、変身に頼らず機械の勉強をしている。
そんなエルピスの姿は見掛けたこともあるかもしれない。
■Dr.イーリス > 「大切なもの、全部残してます。お義母さんの、宝石がついた指輪とかも大事なものらしいです。お義母さんがこの島を出る前に、預かっていてほしいと言われました。必要な時まで大切に仕舞っておくようにも言われています」
宝石がついた指輪。
それは、石碑に向ける事で地下聖堂への地下階段が開かれる装置としていたもの。
イーリスは地下聖堂の存在も、指輪の用途も知らない。
「……お心遣いありがとうございます。風紀委員として、ワイズマンさんが今どうなっているかも調べてみました。三年前に寿命が尽きて獄中死してしまったらしいですね」
ワイズマン自体は十年前に落第街で大きな影響力を見せていたので今も知る人はいるかもしれない。だが、投獄してからのワイズマンを知る人はそういないだろう。
皮肉な事に、不老不死を求めたワイズマンは普通に寿命でお亡くなりになった。享年三十代(時が止まった時空に五十年いたため)。
「感謝致します、エルピスさん。そうですね。これからも私達、二人で希望を切り開きましょう。あなたの事をとても頼りにしています」
笑顔でこくんと頷いてみせる。
向かってくる困難は、いっぱいある。
エルピスさんと二人で困難を乗り越えていく。
「ギフターさんですが、私達とお会いしてくださるそうですよ。私はギフターさんの連絡先を知っておりますので、連絡してみました。どうしてか、今朝に矢文で帰ってきました。
今朝、登校しようと『数ある事務所』の玄関扉を開けた私の傍に突き刺さった。さりげなく、少し矢かイーリスの位置がずれていたら、大惨事だった。
ギフターさんもわざとではないだろう……多分。たまたま矢を飛ばしたタイミングと玄関扉を開けたタイミングが奇跡的に合致していたのだろう。
「くまさんにGPSが入れらていたのですか。当時の私はお義母さんに守られていたから実感があまり湧かなかったですが、危険な地域に住んではいましたからね。何かあったらすぐお義母さんが助けにきてくださったのも、くまさんに仕込まれたGPSがあったからだったのですね」
言われてみれば物凄く心当たりがある。子供の頃、何かしらピンチに陥った時にすぐお義母さんが助けにきてくださった理由がくまさんのGPSがあったからだと、この年になってようやく気付いた。
お義母さんにとても感謝。
「それではこのお仕事終わりましたら、スラムの教会にくまさんと、あと《虹の奇跡のイーリス》の絵本を探しに行きましょうか。エルピスさんがメカの製作を学ぶ上で参考になるでしょうからね」
今のイーリスなら、想い出のくまさんを分解する事も怖くはない。すぐ元に戻せる。
こっそり、エルピスさんが機械のお勉強をしている事も、イーリスは気づいていた。
さりげなく、エルピスさんとイーリスのお部屋の机の上に置き去りにしている風に、機械に慣れていない人でも分かりやすい機械の解説書を置いていたりもした。
そして、蚊のメカだが一軒目の建物ははずれだ。
一旦、蚊はミケちゃんに戻り、二軒目へと向かっている。