2024/12/08 のログ
■大神 璃士 >
「趣味…か…考えた事もなかった。
ターゲットに打ち込んでいると…考えるのが面倒な事、煩わしい事…全部が、遠くに流れていく気がする。
その間だけは……煩わしい世の中の事に、心をすり減らさずに済む。」
現実逃避、と言われればそこまでだろう。
だが、それでもやはり、そうして拳を振るい、蹴りを放ち、
ターゲットを打ち据えている時は、雑念が入る事もない。
解放される瞬間、と言えば良いのか。
「――――――――。」
ふう、と大きく息を吐き、最後の覚悟を決める。
(外れ、だったらそれでいい。いつもの日常に戻るだけだ。
ただ、偶然通りすがって、すれ違っただけの事だ。)
そう、自分に言い聞かせながら、左手のレザーグローブを取り…その手の甲を金色の髪の少女に見せる。
「――――これに、何を感じる?」
向けた手の甲には――真正面、見る者に視線を向け、牙を剥く狼を思わせる意匠の、刻印。
それに力を入れれば…ぼんやりと光を放ち始める。まるで、空にかかる月のような光。
同時に、ただの模様かと思われた刻印が、「力」を放つ。
夜を駆ける者、月に最も親しき者の力。人狼の力と気配。
つまり、それは刻印の持ち主である男が――――
――お前は誰だ。
――お前も、人間たちと同じなのか。それともお前は違うのか
そう、無言で問いかける。
■ハインケル >
「ふぇー。世の中のことってそんなに面倒で煩わしい?
心がすり減ってくのはアタシもヤだな~」
境遇とか、色々
目の前の彼なりに生きるのが大変なんだな、と理解
「──うん?」
グローブを取り払い、手の甲をこちらに向ける少年
そこには刻印があり、それは淡い光を放っている
その光は、月の光にも似て───
「―――」
少女の大きな紅い瞳に映るその光
まるでその光を移すかの様に、少女の瞳が黄金の色に染まる
そう見えたのは、一瞬
次の瞬間には帽子の唾を手指で深く下げ、少女目元を覆い隠していた
「──カッコイイタトゥーだね? 最近の流行り?」
目元を隠したままに、少女はそう言葉を返す──
■大神 璃士 >
「――――。」
眼の色が、変わった。
帽子で以て目元を隠す、その一瞬を見逃す程、男の眼は悪くなかった。
疑念が、確信へと、傾きを少し変える。
「……「刻印」と、呼ばれている。俺の異能の証…いや、生まれの証、の方が正しいか。
人外の者の証明……人狼の証だ。
目元、隠しただろ。お前の眼が、色を変えたのが見えた。」
誤魔化しても仕方がない。
ストレートに、その変化を告げる。
「幸い――今日は月もある日の筈だ。
フカシだと思うなら、「実演」してもいいぜ。」
その場合…衣服の問題で、一度脱がねばならないが。
■ハインケル >
「なぁるほどぉ…"お揃い"なわけだぁ」
少女もまた人狼
しかし少年とは違い、刻印などは持たない
もしかしたら、体内や…見えないもの…魂に刻まれているのかもしれないが
それは少女自身、知る由もない
「や、別に疑ったりしないけどさ。
別に自分が世の中に唯一無二だなんて思ってもいないし」
ひらひら、と余った服の袖を振りながら、声色は存外に明るい
「難儀ね」
「そりゃあ世の中も煩わしくなるわけだー」
少女はポケットからロリポップを取り出し、包装紙を起用に口で剥がしてそのまま咥え込む
「さっきは軽口、なんて言ったけど案外マジで運命の出会いだったりして?」
くすり、悪戯めいた笑み───起源はおそらく違えど同種
そのことに、少女自体は然程気後れも、恐れもしていないようだった
■大神 璃士 >
「やっぱり…お前もそうなのか。
俺が今まで遇った人狼は…もう死んだ俺の父親以外じゃ、お前が最初だ。」
ふぅ、と一息をついて力を抜く。
同時に光を失った刻印を、レザーグローブで覆い隠す。
「……ああ、本当に、煩わしい。
ヒトと関わるのは、正直疲れる。特に、人外嫌いな相手には本当に精神をすり減らされる。
それでも、この島は…人外染みた人間や、本物の人外も、いる。
此処の外よりは、まだ過ごし易い…と、思ってる。」
思わず空を見上げてしまう。
夜になるのが早い季節、既に空は暗くなっている。
「運命の出会い、か。
……父さんも、そうだったのか、時々考える事がある。
母さんは、俺が生まれてからいくらもしないで亡くなったから、どんな関係だったのか、聞いた事しか分からない。」
悪戯めいた少女の笑みには、真顔で…といってもあまりシリアス過ぎない雰囲気だが、そう答える。
笑い話、とはいかないが、思い出話程度には話せる程度の事、らしい。
相手が同族だと分かったから、口が少し軽くなったのかも知れないが。
■ハインケル >
「おおっと、ちょっと話そうとは言ったけど身の上話なんてするにはまだ早いよ~?」
口からちゅぴっとロリポップを取り出して、笑みを交えながらそんな言葉を向ける
今まで出会ったことのない同種の存在に出会い、何かしら思うところがあるのは、理解できる
自分にはいた"仲間"といった存在も、その口振りではもしかしたらいないのかもしれない
しかし、まだ多くを語らせるには早い
「この島ってヘンなの多いからさぁ~、アタシらみたいなのも案外受け入れられちゃうワケ。
お月様見て狼になっちゃうくらい序の口?かもしんないよ~♪」
もっとやべーのになるヤツとかもいたりして
実際いそうだけど
「リヒト、だったよね。人狼化は自分で抑制できるの?」
つまんだロリポップを振りながらの問いかけ。
アンコントロールなのか、それとも理性が抑え込めるのか
同じ人狼でもそれで大きく社会の中でのその存在の重さが異なる──
■大神 璃士 >
「…確かにそうだ。
少し、口が軽くなってるのかもな。」
今度は右手のレザーグローブを外し、軽く頭を掻く。
こちらは至って普通の右手。刻印もなければタトゥーもない。
「それについては、此処に越してきてから何回か実感してる。
ヒトに関わるのは煩わしいが…そのお陰で、完全な人間嫌いにならずには済んでる。」
ヘンなのが多い、というのは実感してる所である。
風紀は…人間が多いが、それでも「コイツ本当に人間か」と思いたくなる奴が居ない訳でもない。
そのせいで幸か不幸か、今の所「人付き合いの悪い無愛想な奴」程度で済ませられているのだ。
「ああ、月が出てれば…それがどんなに細くても、「変わる」事は出来るし、自力で戻る事も出来る。
そう、父さんに仕込まれた。自制も含めて。
ただ、流石に満月の日だけは大変だ。
その時だけは…変異を行うと、理性は残ってるが…完全に「狼」の姿になる。
戻る時も、やたら疲れる。精神的に。」
最も、「それ」をやった回数は本当に少ない。
満月の日はとんでもなく力が高まるので、いちいち変異せずとも足りる用事が多いからだ。
■ハインケル >
「へぇー、じゃあ全然大丈夫じゃん。
人前で変化さえしなきゃいーんだから。
煩わしいのもわかるけど勿体ないよー?せっかく半分はヒトなんだからサ♪」
少女が同種の存在をわかるや、口が軽くなったことも含めて
なんとなく人間嫌い…というか不信があるのはよく伝わった
それが彼の過去に起因するのかどうか…なんかは、まだ出会ったばかり、踏み込んでいいことじゃない
「こーやってにこにこ笑ってお話すればけっこーイイヤツも多いし」
そう言っててくてくとリヒトへと近寄って、見上げながらにぱーっと満面の笑み
人付き合いは笑顔と愛嬌が肝要であるという意見を体言するかのようだった
「まぁ…満月はねー…アタシもいちばん、力が増大する時だし。
いやー、そのへんはお互い苦労するねー♪ でも制御できるんだから、気楽に生きていこーぜ☆」
満月の夜については、少女は少女でまた別の悩みもあったりはするのだが、それはそれ
ぺんぺん、と手を伸ばしてリヒトの肩を叩く
悩み多き同族だろうと思っての少女なりの励まし…なのかもしれない
■大神 璃士 >
「……そういうお前は、随分…こう、距離感が近いな。」
揶揄や嫌味ではなく…寧ろ、戸惑いの方が強い。
恐らくは、他のヒトにもそうして接しているのだろうと分かるような素振りだと、見上げられて
肩をぺしぺしされながら、シルバーメッシュの男はそんな感想を抱く。
「其処は、誰も似たようなものなんだな。
人狼もだが…もし居れば、吸血鬼の類もか。
生憎、俺は見た事がないが。」
厳密には風紀委員の中でも特に有名な人物に心当たりはあるが…彼女はダンピール、純粋な
吸血鬼という訳ではないので、此処では除外して置く事にした。
それ以外で真正の吸血種に出会った事はない。
「勿体ない、か……そんな風に考えた事は、なかった。
いや、もしかしたら其処まで考える余裕がなかった…のかもな。
…後は、偏見、か。
俺の知ってる話だと…人狼はヒトに追われて、数を減らした、って言われてるからな。
どうしても、其処が頭から離れないのかも知れない。」
嫌な性格だ、とぼやきながら、軽く手を伸ばして金髪の少女の帽子を軽く指先で上下させようとしてみる。
他愛の無いイタズラだ。
■ハインケル >
「イヤだったら離れるよ?」
くすくす、悪びれなく笑うと、少女はくるりと背を向け、振り返る
「誰も似たようなもの…というか、
怪物もいれば、怪物より怪物な人間もいたりするし、
自分の種族とかで悩むの、けっこーバカらしくなってくよ?
そーゆーの、どんどんやってきて増えてくし」
くるくる、とロリポップが宙空に円を描く
それから、ぴっと指し示された方向は…方角的には転移荒野と呼ばれる場所がある方角だ
「同じよーな顔して、言葉も通じて、全然イケるって。
人間って、自分と共通点が多ければ多いほど安心するからネ♡」
自分の眼を指差し、続いて口を指差して、そう語る少女。
「んふふ、わかるよ~?
自分のルーツだもんね。気にならないほーがおかしいもん。私だって神が嫌いだし。
でもキミって多分いたずらにヒトを襲ったりしないでしょ?
人間とか人狼とか大きな括りで考えるヤツもいるけど、キミもそう思っちゃう系?」
彼のルーツとなる人狼がヒトによって数を減らされた、ということは
人狼はヒトに害を為すものという大枠で扱われた…ということ
しかし、彼がそれで持った偏見もまた、ヒトという大枠で扱ってしまっている
それは犠牲を知る者であるからこそ忌むべき考えの筈だ
しかしそれも言葉も足りず、どこか短絡的な言葉でしか少女はリヒトに語らない
「やー、育ってきた環境ってスゴいからね~。そういう風になっちゃうのも無理もな……あ、こら何すんのー」
目深く被った帽子のつばが持ち上がれば、まだ幼さの残る…ちょっとむっとした表情の顔がはっきりと見える
■大神 璃士 >
「……転移荒野か。
確かに、あそこからやって来たっていう連中は、話に聞いてはいる。
知らない顔が、いつの間にか教室に増えていたりとか、な。」
ロリポップの示した方向に、そう返す。
其処から誰かがやって来た、という場面にはまだお目にかかったことはなかったが。
「安心、か……。
だったら、いつからか、ただの狼人間がヒトの姿になれるように
なったのも、安心を求めたから…だったのか…な…。」
つい、そんな事を口にしてしまう。
我ながら嫌な性格だと思ってしまう。
「まあ…もっと昔、まだ数がいた頃は、追い立てて来る人間に抵抗しようとして、
人間と戦う為の技を考えた事もある…らしい。
今じゃ、俺が「最後」だからな。
無念なご先祖様方には悪いけど、いちいち人間襲って逆襲なんて、考えるのも面倒だ。
そんな事より、今月の生活費の事を考える方がずっと優先度が高い。」
事実、人間に襲われた事がないので、種族的な憎しみという奴は相当に薄い。というより皆無である。
ご先祖様の無念を晴らす、なんて柄でもないし、そもそも顔も知らないご先祖様の為に
骨を折る程、お人好しでもないつもりだと、シルバーメッシュの男は考えている。
それでも人間を厭う気持ちが残っているのは……やはり、父の存在と父から話を聞いただけの母の事が大きい。
「いや、お前の眼、綺麗だと思ってな。つい何となく。
…俺の知ってる人狼は…っても、父さんだけだが、こんな色の眼だったし。」
黒みを帯びた青色の瞳を軽く指す。
どうも、赤い瞳というものが新鮮なようだ。
■ハインケル >
少年の言葉を一頻り聞き終えれば、少女はなーんだ、と言ったような安堵の表情
それが何を意味するのかは、直後にその少女の口から語られることになるのだが
「今月の生活費!
なんだ、ちゃんと社会の一員になってるじゃん!
あんまり煩わしい煩わしいって言ってるから心配しちゃったよ」
心配、なんて口にする割にはくすりくすりと笑みを浮かべてはいるが
「さがせば他にもいるんじゃないかな?アタシだけじゃなくて。
ふふー、そう?あんまりマジマジ見られるとサカっちゃうぞ♡」
つつい、指先でリヒトの胸板をするするとなぞってそんなセリフ
なんかマセたお子様のようにも見えてしまうのは御愛嬌
■大神 璃士 >
「今の世の中、山に住んで獲物狩って生きていけるなんて思っちゃいない。
そんな事が出来るような環境探すより、人に紛れて生きていく方が現実的…だからな。」
最も、それを教えてくれたのは、そしてこの島の存在を教えてくれたのは、父だったのだが。
それがなければ、どう生きるかに苦慮しながらその日暮らしで精一杯だったろう。
「盛る……アレか、やっぱり満月の夜辺りは来るのか?
俺も考え無しに外を歩いてると、自制が大変なレベルで中てられるからな……。
他には、何も考えないで狼に戻って、疲れて寝たくなるまで野山を駆け回りたくなる。」
満月の夜は、力の増大だけでなく動物的な本能の刺激も激しくなる。
それこそ、狼に戻って何も考えずに自然のある場所を駆け回りたくなったり、「本能」に忠実になりたくなったり。
胸板をなぞられれば、こちらもまた少女の帽子に指を伸ばして上下させようとしてくる。
尚、その胸板はシャツ越しにも分かる程に力強い筋肉がついているのが分かるだろう。
■ハインケル >
とりあえず社会経験もあるし馴染めているかどうかは別として生活もできているらしい
じゃあ、裏世界で生きている自分よりもよっぽど全うに人間に紛れている
「アレか… じゃないでしょ。
そーゆーのを真顔で返しちゃいけないでしょ」
ジョーダンで言ったのに
ほんのり頬を染めて、いつまでやってるのー、と帽子をいじる手をぺちん
相手をからかうのは好きだけど、真面目に受け取られると困るらしい
とはいえ本能部分が表面にでやすいのは確かだ
似た状況ではなくともお互い難儀なものである
「うーん、にしても性別が違うとこうまで…。
力仕事とか得意そーだし、仕事に困らなさそうでいいじゃん♪」
そう言って拳で胸板をどすん
ちっとも痛くはない加減のされたぱんちだ
さて、とくるりと指先で帽子をまわしてから、被り直す
「そんじゃーアタシはそろそろ。
たまたまの出会いにしちゃ出来過ぎだけど同族に会えてちょっと嬉しかったよ、リヒト♪」
そう言うと、くるりと近寄り背伸びをして、その頬へ不意打ち気味にキスを手向けた
それが成立したかしなかったかは置いておいて、彼女なりの挨拶でもあったのだろう
へへーと悪戯に笑みを残して踵を返すと、地を蹴り風を纏う
出会いの時の様に風を切って跳び上がり、廃屋を、電柱を、蹴れるもの全てを足場に少女は夜闇へと駆けて消えるのだった
■大神 璃士 >
「ん……ああ、確かに女に言うには不謹慎だった。悪い。」
流石にデリカシーがなかった事には気が付いたらしい。
帽子を上下させる手をぺちんとやられれば、またも悪い、と謝罪。
あまり積極的に他者とコミュニケーションを取らない事がこんな所で問題を見せた。
「まあ、な。怪我も治り易いから、多少の無茶も効く。
誤魔化しも効くしな。」
どすんとパンチを受ければ、ほんのちょっと身体が揺れた位。
結構力を抜いていたようである。
「そうか。まあ、嬉しかったのは――――」
俺も同じ、と言おうとして、頬に柔らかい感触。
思わず言葉が途切れた所で、悪戯っぽい笑顔と共に、金髪の少女は地を蹴って夜の闇の中へ。
「――――別れの挨拶くらい言わせろよ、ハインケル。」
少しだけ、名残惜しそうな、愚痴めいた言葉を残して。
ビールケースの椅子から立ち上がると、男もまた歩き始める。
人の歩くような速度で、ゆっくりと自身の住処に向けて。
そうして、一時の、偶然に偶然を重ねた出会いは終わり、残るのは冬の到来を告げる冷たい風ばかり。
ご案内:「落第街 路地裏」から大神 璃士さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」からハインケルさんが去りました。