2025/09/04 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に大神 璃士さんが現れました。
ご案内:「落第街 路地裏」にルメルさんが現れました。
落第街 路地裏にて >  
夏も終わりが見えて来た、落第街の路地裏にて。
終わりが見えて来た…とは言えども、猛暑が続くのは相変わらず。
そんな暑さが未だ衰えぬ、夕暮れも近い時刻。

落第街でも、特に路地裏は治安がよろしくない場所として知られている所である。
暴行、恐喝、表立って取引出来ない代物のやり取りは当たり前。
時には違反部活や犯罪組織同士の抗争、あるいはそれらに対する、風紀委員の中でも
戦闘特化の委員達による摘発・鎮圧などが行われている。

そんな出来事に比べれば、ごく当たり前の、「よくある事」に過ぎない一幕。

一人の少女を取り囲む、多数の男たちの姿。
服装からして男たちは明らかにまっとうな学生とは思えない見た目。
少女の方はまだ普通よりの服装であるが、こんな所にいる以上は恐らくはまっとうな学生では
ないのかも知れない。大目に見て、二級学生といった所だろうか。
ひどく怯えた顔の少女を取り囲む、多数のならず者たち。

学生街の非日常は、しかし落第街の闇から見れば、比較的「日常」の光景だった。

ルメル >  
「いつ来てもここの臭いには慣れないのよね……。」

 風紀委員としての業務を始め、現場への巡回・警邏を命じられるようになって数度。
 非致死性のゴム弾入りの拳銃を左手に、弾力性のある警棒を携えながらもう一方の手で空気をかわすように鼻を覆う。

 とは言えまだ単独では無く、複数人での運用の一人としての扱い。
 しばらく歩いていたところで、よく見る「日常」の光景に出くわした。

「……どうするのかしら?」

 ルメルが自主的に判断を下すことは滅多に無い。
 同行するものが同期でも上司でも、こうやって判断を任せる。
 

巡回委員 >  
この時、まだまだ新米の風紀委員である人魚に同行していたのは、3人。
いずれも、制圧用のゴム弾入りの銃器を所持している面々であった。

『……数が多い。』

苦虫を噛み潰したような表情で、チームのリーダー担当が呟く。
実際、数が多い。ならず者の数は、遠目から見て8人か、もしかしたら10人はいるかも知れない。

『…確か、遠くない場所で巡回に当たっている班が複数ある筈。
一人が一時離脱して救援の通信を取る間に、他の三人で遅滞戦闘を仕掛けながら
到着までの時間を稼ぐのが一番では。』

出て来た案は、他班への救援要請と違反生徒と思われる集団への「時間稼ぎ」の同時進行。
この人数での制圧は無理だが、かといって発見した以上、二級学生であっても看過は出来ない。
何とか時間を稼ぎ、対抗できる数が合流するのを待っての反撃と制圧、という案だった。
他の2人も、それ以上の案が出ないのか、無言で小さく首肯する形である。

ルメル >  

「……だいたいいつも通りね!」

 時間稼ぎ。新人が突出した火力で三面六臂の活躍をすることは滅多に無いし、そういうものだと思っている。
 特に不満を抱くこともなく、素直に頷く。

 八面六臂の活躍から風紀委員の刑事課に抜擢され、めざましい活躍を見せる者も居るとは聞くが、
 ルメルにとっては人間社会の活動を遵守しながら邁進する方が好みだ。
 風紀委員として学費を稼ぐのも立派な社会体験。そう認識している。

「じゃあ、私が前に立つわね。それともリーダーに任せて、通信に行った方が良いかしら?
 他の二人は……後方支援が良いと思うのだけれど。」

 思考を回して、呼び止められれば止まれる速度で前に出て、何時もの様に宙を泳いで進む。
 判断は任せるが思考を止めている訳ではなく、及び腰な同期へ面倒見もそこそこ良い。
 恐怖心を抱くことがなく、超然としている分余裕がある。
 

巡回委員 >  
『…此処は自分が前に出る。
睦月、だったな。お前はまだ経験が浅いだろう。
「こういうやり取り」も大事な事だ、経験しておくといい――!』

その発言は、彼女に「通信役」を任せるという事。
前に出て戦うばかりも風紀委員ではない。
他のチームへの円滑な救援要請…功名心や、そうでなくとも正義感が先走り、
前進戦闘だけしか出来なくなってはいけない。
それを教えるかのように、他の二人と二言三言の短いやり取りの後。

『…行け、睦月! 手早く頼むぞ!
お前ら、フォーメーションはBだ!』

そう告げて、人魚を通信の為に下がらせ、リーダーと他二人のチームメンバーは銃器を構える。

『――風紀委員だ! その場の全員、手を上げろ!』

ルメル >  
「はぁい。」

 功名心があまりない彼女にとっては、少しつかみきれないニュアンス。
 『大事だとろう』言うことだけ受けとり、そのまま飲み込む。

 バックステップでくるりと翻り、流水のようにするすると前線を退く。
 十分に離れた所で支給された通信機を弄っているが、上手く繋がらない。

「もしもし、もしもし、あー、あー……繋がってるのこれ?」
 
 座標をピンで報せるボタンをガチャガチャ連打しながら小首を傾げる。
 回線が悪いのかルメルの操作が悪いのかと言えば、多分両方。
 

大神 璃士 >  
文明の利器も、使いこなせなければ意味がない。
そこの所も、人魚にとっては覚えるべき課題だった、と言えよう。

そんなこんなで繋がっているのかいないのか、分からないままガチャガチャを続けている間に――
思いもかけない方向から、「それ」が飛んでくる。

『――ぶべっ!!』

人魚の少女から見て死角になっていた、小さな路地。
其処から、潰れたような叫び声を上げて、明らかに違反学生と思しき風体の男がひとり、「飛んで」来る。
そう、吹っ飛ばされたように飛んできた。幸いにも、人魚との直撃衝突は人一人分程ずれていたコース。

「――これで、終わりか。」

そう、ぼそりとぼやきながら、違反学生が吹っ飛ばされてきた路地から、ゆらりと姿を現す人影。

黒いジャケットの下は、ひと目で分かる風紀委員の制服。
シルバーのメッシュが入ったウルフヘアに、鋭い目つきの深い紺碧の瞳。
どこか、野性の獣を思わせるような雰囲気の、一人の男。
その手には、ぐったりしたままのこれまた違反学生と思しき男が引きずられている。

「――ん?」

ちら、と、其処でようやく風紀委員の制服を着た人魚に視線が向く。

「…おい、其処のお前。一体何してる?」

風紀委員の制服を着ていたのもあったのだろう、尋問というよりは、単純な質問というような雰囲気の言葉。

ルメル >
「あ、風紀委員の人よね!
 これが上手く繋がってるかいないのか分からないのよ。」

 制服だけ一瞥すれば、即座に支給された通信機の一つを差し出す。
 何かしらの救助を求める位置情報の送信(ピン連打)だけされていて、
 通信自体はガチャ切りを繰り返しているような状況だ。

 吹き飛ばされている違反学生や警戒の無く、超然が抜けきらないさまは人外のそれ。

「チームリーダーに増援を呼ぶ様に言われたけれど……貴方は違うわよね。」

 増援でないことは理解しながら、状況と困りごとを口に出す。
 ズレはあるが、業務を遂行しようとしている意図を伝えようとしているのは見えるか。
 
  

大神 璃士 >  
「ああ、そうだが……。」

短く答えながら、通信機を見る。
…成程とため息、位置情報だけ送信されており、内容が分からない状態。
恐らく、受信した他の巡回班もどうすればいいのか困ってる所だろう。

「臨時の巡回支援だ。今しがた、違反部活の活動を見つけたから鎮圧を済ませたが…。」

そう言いながら、引き摺っていた男を少し乱暴に地面に放る。
どす、と音を立てて地面に投げ出された男は、しかし白目を剥いたまま起きる気配もない。
その様を確かめる事もなく、僅かな思案の後に通信機を取り出し、

「――こちら大神。増援要請を受け取った。対応を開始する。」

それだけを告げると、通信を終えてしまう。そうして人魚の方を向き、

「…担当エリアと、どっちから来たかは覚えているか?
支援に入る。現場まで案内が必要だ。」

噛み砕けば、手助けに入るので案内して欲しい、との言葉。

ルメル >  
「これは良いの?」

 放り投げられた大男を見遣りながら、大丈夫なのかと質問を投げかけ。
 いずれにしても道を尋ねられれば得意げに胸を張り、滑空するような速度で道を往く。

「道は覚えているから、案内するわ!」

 するりするする。
 迷わずに入り組んだ道を進み、後すこしと判断すれば走りながら声を掛ける。

「──こっち!もうすぐ見えるわ!」
 

大神 璃士 >  
「後で手すきの巡回班が拾ってくれる。暫くは目を覚ましもしない。」

ちら、と目を出て来た路地の奥に向ければ、更に何人かが折り重なって気絶している姿が薄ら。
言葉通り、起きてくる気配はない。通信もしているので、恐らく後から手の空いている班が収容に来るのだろう。

「足が速いのは助かる。速度が第一だ。」

そう声をかけながら、黒いジャケットの風紀委員は殆ど上体を上下させぬまま、野を駆ける獣のような速度で
滑空する人魚の後をぴったりと追跡していく。近すぎず、離れ過ぎず。

人魚の言葉通り、見えて来たのは――人数差に圧されて、追い詰められつつあるメンバー達の姿。
所持していた非殺傷性の銃器が効果を出しはしたのか、3人程が離れた所で唸りながらも後を追おうとしている。

「……武器は持ってるな。手負いの奴らは分かるか?
一人では骨かもしれないが…これも訓練だと思え。」

既に手傷を負っている相手とはいえ、3人。一人での制圧は少々難しいかも知れない。
それでも、黒いジャケットの風紀委員は人魚にそれを任せると――残り7人程の、他メンバーを追い込んだ
集団へと、まるで獣の如き勢いで以て跳躍し、背後から奇襲をかける――!

ルメル >    
「うーん……あんまり分からないのよね?
 ひとまず、やってみることにするわ。」

 ルメルは業務に於いて滅多に自身の能力を行使しない
 極力与えられた装備で遂行する様に努めている。

「って、貴方が7人をやるの? すごいわね……。
 ……でも、これなら私でも分かりそう。」

 誰を相手にすべきなのか明確になれば後はするだけ。
 左手の拳銃を振り回しながら、残る3人の間近に躍り出る。

「さあさあ! お縄につきなさい!」

 人間の撃ち方ではない、人外所以の高い膂力と精密性を前提とした大雑把な構えからゴム弾を乱射する。
 雑に構えて撃っても、補えるだけの力で照準を安定させ、吸い付く様に目や鼻を撃ち続ける。

 それから少しが経ち──。

(人間さんの武器って凄いわよね……さて。)

 飛んだり跳ねたりしながら非致死性の銃で撃ち続け、攪乱しながらの制圧射撃。
 息切れも疲労もなく、弾込めの間も速度が落ちない。
 ひたすら動き続け、じわりじわりと戦線を維持しながら状況を伺うことにした。
 

大神 璃士 >  
『クソッ、この、魚女……!』
『痛ぇ、いてぇ…。』
『だ、駄目だ、立ってられねぇ…。』

攪乱と、的確な場所を狙っての制圧射撃。
非致死性のゴム弾と言えども、何度も命中すれば当然ながらダメージは蓄積され、体力は削られる。
既にダメージを負っていた事も手伝い、3人の違反学生に既に抵抗するだけの余力は残っていない。

そうする間に――もう一方も、決着が着く。
黒いジャケットの風紀委員が向かった7人の方は、人魚の攻撃によって残りの3人が戦意を失っていく間に
完全に制圧がされていた。

最初の奇襲で一人が、混乱している間に更に二人が蹴りで。
三方向から襲い掛かった三人は、震脚のような動作に姿勢を崩した瞬間に次々と投げられ。
その様を目の当たりにした最後の一人は、震えながら両手を上げて抵抗を停止。

――黒いジャケットの風紀委員は、確かに一人で7人を完全に制圧してしまっていた。

震脚の動作の瞬間、鈍い振動音が聞こえた事に人魚に制圧されかかっていた3人も気がついたらしく、
僅かに視線を向けた事で自分達以外のほぼ全員が「落とされた」事に気が付いたようで。
大人しく両手を上げながら、その場にへたり込んでしまう。

「…そっちも制圧出来たか。」

少しの間を置いて、人魚に向けて声がかかる。
歩みを向ける黒いジャケットの風紀委員には、特に疲労や怪我の様子もなく。
その後ろでは、少しながら傷を負いつつも3人の風紀委員達が気絶した違反生徒の捕縛と、
囲まれていた女子の保護に入っていた。

ルメル > 「ふぅ……珍しく制圧できたわ。」

 時間を掛けて制圧しきれば、銃を下ろす。
 普段は時間が掛かり過ぎ、増援がなければ弾切れや状況判断で撤退することが多い。
 
 本来のリーダーへの状況報告を済ませてから、名も知らぬ先輩の風紀委員の男──大神のもとへと戻る。

「ありがとうって言うのよね。おかげで何とかなったみたい。
 改めてお礼を言うわ。……あ、私はルメルって言うの。あなたは?」

 頭を下げる仕草と、お礼の言葉。
 その後教科書通りの名乗りとともに、名前を尋ねる。
 
 

大神 璃士 >  
「…大神。大神、璃士だ。」

名前を訊ねる声には、あまり愛想のよろしくない返答。
ぶっきらぼうというか、何と言うか。

「通信機の使い方は、後で覚え直しておく方が良い。
座標が伝わっても、あれでは用件が伝わらない。近場に運よく居合わせるチームがいるとは限らないからな。」

少し、耳に痛いかも知れない指摘。
とは言え、覚えていないと大変な事でもある。そういう意味では、厳しめだが覚えるべき事を指摘してはいる。

「軽いとは言っても、他の委員は怪我をしてる。
収容に来る連中と一緒に、今日は引き上げた方がいい。
あっちの班長にも、そう伝えてはおいた。」

班長からも、此処で収容に来る車両を待って委員会の本庁へ帰投する旨の言葉は伝えられているだろう。
人魚達の今日の巡回は、これで終了のようだ。

ルメル >
「はぁい。後で小鳥遊サンにでも聞いてみるわ。
 ちゃんと使えないと大変だものね。」

 こくんと頷く。メモを取る様子はないが、聞き分けは良いらしい。
 通信機での救援要請での経験を経て、しっかり学習するのだろう。

「そうね。私は無事でもほかのみんなはそうでもないもの。」

 今日の巡回の旨を告げられれば大きく伸びをする。

「今日のお仕事はこれで終わりみたい。
 ……大神サンはやっぱり風紀委員を続けて長いのかしら?
 七人、あっという間にのしちゃったわね……。」

 きょろりと一瞥して、状況を改める。
 瞬く間に七人を制圧した光景は人魚ながらにもすごいと感嘆したらしい。
  

大神 璃士 >  
「所属年数で言うなら、それなりの年数は経っている。
特に所属先も決めていない、雑用係のようなものだが。」

雑用係、といえば聞こえは悪いが、風紀委員の仕事は荒事ばかりではない。
確かに荒事も目立つが、過去の資料の整理や防犯の為の周知活動など、地味な仕事も決して少なくない。
今回の巡回も、非常の事態にならなければ地味で目立たぬ仕事の一環である。

「――――」

何かを口にしようとして、一度口を閉じる。
僅かな思案の後、

「…帰還したら、今回の件の報告書も忘れずに纏めておいた方がいい。
特に今日は、深手ではないが班長が怪我をしている。お前に代理が回って来る可能性が高い。」

当たり障りのない、書類仕事へのアドバイス。
制圧しておしまいではないのも、風紀委員の仕事の一つだった。

ルメル >
「それなり? 人間さんじゃないの?歳をとっているようには見えないけれど……
 ……あ、人間さんのそれなりはもっと短いのよね。それなり……。」

 小首を傾げる。
 彼女の換算でそれなりだと、咄嗟に出てくるものはざっと結構な年数になる。概ね50年。

「───?」

 何を言い掛けたのかは分からない。
 少しだけ不思議そうに言い掛けた視線を傾げた。
 
「報告書よね。ちゃんと書くわよ。
 書類の書き方はしっかり小鳥遊サンに教わったもの!」

 胸を張る。どことなく自信ありげだ。

「捕り物も書類の内勤、どっちも風紀委員の日常、なのよね。
 風紀委員のお仕事は楽しいけど大変だわ。」