2026/02/28 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」にサロゥさんが現れました。
サロゥ > 少女と少青年の少し高い声が聞こえる。
しつこく強請る少女と、怯え気味に断る青年の声だ。

青年は少女より頭二つほど大きく、身なりは貧相。
ロクに食べていないのか、やせ細っている。
異邦人なのか、額の第三の目と一対の捻れた角、先端が三又の尾を持つ黒い肌の悪魔のような姿だ。

話して数分もしないうちに、少女が青年を組み伏せる。

青年の態度はひたすら弱気だ。
馬乗りに青年を抑えつける少女に対して、覇気のない言葉を投げかける。
やめて、いやだ。
そんな情けない言葉を吐きながら少女に向けて両手を振り回すが、少女はそれを両手で地面に抑え込む。
そして耳に顔を近づけて囁く。

「安心して。痛くはしないし、殺したりもしないよ」

有無を言わせぬ行動に反し、その言葉は優しく穏やかもの。
しかし、それが恐怖を誘ってしまったらしい。
青年は顔を真っ青にし、目尻に涙を浮かべて首を振る。

やめて放して何もしないで。

青年の絶叫が路地裏にこだました。

サロゥ > 青年がどれだけ暴れても、少女はびくともしない。
眼下の青年を見下ろし、穏やかな微笑みを絶やさない。

「乱暴にしてごめんね。でも大丈夫、じっとしてればすぐ終わる」

再び少女が口を開く。
低姿勢に、諭すような言葉。

短く悲鳴を漏らした青年が涙を流す。
額にある第三の目から、一筋の涙が溢れる。

少女と青年は見つめ合っている。
少女は第三の目を、第三の目は少女の目を。
お互いに瞳の奥を見透かし、お互いの底を探り合う。

周囲に音叉の音が響く。
少女の爪先、地面に触れた場所に紫の糸が集い、地中へと消えた。
そして地表に飛び出し、青年の頭部と両手に巻き付き地面へと引っ張る。

青年の頭部と両手は引っ張られるまま地面に固定され、動かせなくなる。
その状態に危険を感じたのか、青年が一心不乱に暴れ始める。
足をばたつかせ、全身を捩り、尻尾の先端を振り回して少女の足に刺す。

しかし、少女は動じない。青年の第三の目ばかりを見つめて、やがて空いた手を前に出す。
青年の、第三の目に向けて―――

サロゥ > 伸ばした手、その指先から音叉のような音が響く。
紫の糸を纏う指先が青年の第三の瞳に触れる寸前、糸が第三の目へと潜り込んでいく。
まんべんなく全体に、ゆっくりと沁み込むように潜っていく。

言っていたように痛みはない。
しかしながら、当事者にとっては痛み以上に恐怖が勝るらしい。
当然だろう。
数多の糸が眼球に突き刺さっているのを一人称で見続けるのだ。
恐ろしくない訳がない。

青年の抵抗が激しくなる。
固定された頭部を動かそうと、動かせる全てを動かして拘束からの脱却を試みる。
当然、第三の目もぎょろぎょろと落ち着きなく動き回る。

「危ないよ。やめた方がいい」

それでも少女は動じない。
指先を器用に動かし、眼球に潜り込む糸を操る。

ついに限界を迎えたか、青年が金切り声があげる。
人間のものと思えないような甲高い声、遠くまで響くような高い音だ。

「ハイストップー」

先程まで何もしなかった少女が即座に応じる。
喉元を空いた手で抑えつけ再び音叉の音がすれば、青年の金切り声がぴたりと止む。
それでも青年は止まらない。出ない声を振り絞ろうと口を開き続けている。

少女もまだ止まらない。
第三の目に糸を潜らせてから、既に5分が経過している。

サロゥ > 更に10分程経過した頃。
青年は既に気を失い、大きく見開いた三つの目の周囲には涙の痕が残っている。
数分前までは暴れていたが、気力が果てたようだ。

そしてまた数分、糸が第三の目から引き抜かれる。
するりと抜けた糸の群れは少女の掌に吸収されて消えてゆく。

沈黙が場を支配する。
両者動きはない。
少女は意識があるようだが、瞬き一つせずに青年に視線を固定したままである。

突如として少女の額が沸騰する。
何かが内で荒れ狂うように、膨張と収縮を繰り返す。
そんな状態が数十秒続いた後、少女の額に縦一筋、線が引かれ

第三の目が開いた。

そして無言のまま青年の頭部を掴み、再び音叉の音が響けば青年の意識が覚醒する。
青年の目に生気が戻り、直後少女を見れば短く悲鳴を上げて後ずさる。

拘束は既にない。
少女も後ずさりに合わせて立ち上がり、青年を縛るものは何もない。

青年が悲鳴を上げて逃げていく。
暴れて限界の体力を振り絞り、何度も転びそうになりつつ逃亡する。

少女はその様子をじっと見ている。
出来立ての第三の目で、その背が見えなくなるまでただ見つめる。