常世学園も学園都市という一つの都市であるために、闇の部分も生まれていった。
その代表がこの落第街であり、このスラムであった。
落第街の路地に形成された貧民街では、学園都市から見捨てられた落第生が二級学生、不法入島者などが集合住宅やバラックに居住している。
ここはそう言った場所であり、そういう境遇の人間が何かの事件や実験に巻き込まれたところで、よほどのことがない限り表に出ることはない。
参加者(0):ROM(1)
Time:05:58:55 更新
ご案内:「スラム」からF.U.R.Yさんが去りました。
■F.U.R.Y > 怒りの悪童が吠える。
この無法地帯にはいつもの事。
だが、いつもの事であるからこそ。
気負いなく。 誰にも気にせず気兼ねなく。
■F.U.R.Y > まァ。
別に表の人間が来ようとこまいと。
ここで騒ぎを立てる奴など、事欠かず。
『フューリィのガキャア何処じゃあ!!!!』
昼寝にふけようとすれば、喧噪にたたき起こされることだって、ここじゃ珍しくはないのだ。
「ハッ。
俺に何か用かァ…? 誰だかわかんねェツラしてるけどよォ!!」
そんな連中がいようと、このスラムじゃどこの誰とも知れぬ”一般市民(モブ)”みたいなものだが。
だが、平和よりかは張り合いがある。
平和に生きるには荒事に慣れすぎた身。その身の半身、左側を変質させながら。
くろがねの左腕握りしめ、騒ぎの元ににやりと牙向ける。
「おゥ、来いよ!!
てめェらも溜まってんだろォが…!相手してやらァ!!!!」」
■F.U.R.Y > とはいえ、だ。
争いが好きなわけじゃァない。
スラムに居つくような無法者とは違う。男は別に違法を求めて来ているわけじゃない。
ただ、ここにしか居場所がないからここにいるだけの男だ。
自分の居場所を守る為に戦うしかない男なのだ。
そういう生き方、してる分。
暇という状況には慣れが少なくはあるか。
「藪つつく気もねェが」
突けば周りにいる奴らにも面倒降り注ぐのだ。
それは男にとっても望むことではない。
戦うだけが生きがいの男、それ以外にはとんと、無頓着であるからして。
■F.U.R.Y > 落第街の奥の奥。
スラムと呼ばれる無法地帯で、欠伸をしながら昼寝に興じる男一人。
「暇くせぇ…」
なんぞ、最近は”外”で怪異の騒ぎもあるらしいが。
ここじゃそんな危険は日常茶飯事だ。今更取り上げる事でもなし。
何がどう怪異になろうと、誰がどう怪異になろうと、ここじゃどうせ人権も何もねぇのだから。
「ふぁぁふ」
だから興味は引かねぇ。どうせ、表の連中が対処に勤しんでんだから。
逆にその分こっちに来る奴らが減って、気が楽ってもんだ。
「ま…張り合いねェが」
ここに来る連中相手にしてる自分としちゃ。
やり合う相手が減る分、暇は増えちゃいるが。
ご案内:「スラム」にF.U.R.Yさんが現れました。
ご案内:「スラム」からF.U.R.Yさんが去りました。
■F.U.R.Y > 「他人に分ける前に自分の心配しろバァさん」
苛立ちながらそうお裾分けを突っぱねて、活気づいたスラムのゴミ山の上まですごすごと逃げていく。
スラムだろうと、人は生きてるもんで。
一体どこからこんだけの人数出てくるんだって思いながら、固形肉をつまみに酒をかっ食らう。
「はァ…」
どうせ、ここにいる連中も皆不法住居者。ここ以外に居場所もねェ。
よりどころという奴が必要なんだろう。それを俺に求められるのが気に入らねぇが。
そんなこと思いながら、少しだけ明るくなったスラムの闇夜を眺めるか。
■F.U.R.Y > 「ったくよォ……」
頭をガシガシと掻いて、周りのお祭り騒ぎにため息一つ吐く。
ここの連中は都合がいい事にはすぐに乗っかかる。弱者の常って奴だ。
そして、これも弱者の常という奴で、顔を知ってる奴にはとんと甘いもんな訳だ。
助け合いなんて言えば聞こえはいいが、結局はそうして顔を知って協力しないと生きていけないだけ。
『ひゅーりー、あれやってよあれ!』
『らーすおぶどぅおっての!』
「やらねェ」
俺もこのスラムの中じゃただの”気難しい兄ちゃん”らしい。
いつだか、まぁ何度もスジの通ってねェ連中をノしてきたせいか、勘違いした弱い奴らが寄ってくる。
そいつらのねぐらを、気が付いたら守ってた形になったことも少なくねぇ。
そういうのが積み重なった結果、今こうして弱い奴らどもに群がられてる訳だ。
『おにいさん、今日はこんなの作ってきたんだけどねぇ』
たまにこうして、ジジババから飯まで持ってこられやがる。
自分のねぐらまで用意されるだのもいつもの事だ。
本当に落ち着きやしねぇ
■F.U.R.Y > 「あ”ー…」
久々のスラム。
数日間離れただけではあるものの、その数日は黄泉の穴での…常に死と隣り合わせの狩り合いの中だっただけに、表に出れば気も緩むもの。
それでも普段なら他人を寄せ付けないのだが、今日は出くわした相手がよくなかった。
ガキだ。このスラムで生まれ育ったんだろう、浮浪児のグループ。
男はガキが嫌いだった。弱くてすぐ泣き、すぐ死ぬ。
自分もそうだったからなおの事腹が立つ。だからガキに手を出すような真似は譬え飢え死にしかけていても、することはなかった。
それに加え、見たものを放ってはおけない性分であるものだから。
つい、声をかけてしまうなんてこともままあるのだ。
結果として…
「この数日で稼いだ金が随分消えちまったじゃねェか…」
腹をすかせたガキ一人、たまたま顔見知りが寄ってきやがったから。
黄泉の穴で勝ち取った怪異の亡骸売って作った金で、丁度飯を食ってる途中だったから。
一人の相手してたら気が付いたらぞろぞろと。どいつもこいつも腹空かせてやがったから。
んなら好きに食いやがれと屋台に札束叩き付けちまったのが運の尽き。
気が付きゃガキもジジイもババアもやってきてお祭り騒ぎときたもんだ。
宴なんてガラじゃねェってのに。
ご案内:「スラム」にF.U.R.Yさんが現れました。
ご案内:「スラム」から緋月さんが去りました。
■緋月 >
「――――太陽が昇る東、とこしえの葦原。
島連なり、藺草繁る野、我らが主の治める、黄金のアアル。
憐れなる幼子らよ。
せめて、汝らが少しでもその地に近づけるように――――」
……スラムの一角に、幽けき鎮魂の旋律。
書生服姿の少女が、己の喉のみで奏でる、霊鎮めの歌。
その旋律は、どこかで聞いたようでいて、どの国の音楽にも似ていない。
静かに旋律が奏でられ、死した子供らの魂の嘆きが少しなりと収まるのを確かめてから。
書生服姿の少女は懐から携帯端末を取り出し、少し拙い手つきで風紀委員会へと通報を行う。
「――もしもし。
突然すみません、スラム…に、迷い込んでいたら、子供達の……はい、遺体が。
ひどく痛ましい有様でして…お手数でなければ、何とかできないかと――」
今は眠らせている盟友の口調を出来る限り真似て、現場の状況を報せる。
幸い、手の空いている者が処置に来てくれる、との事だった。
感謝を伝え、通話を終える。
「……せめて、人らしく弔われるように。
我には、これ位しか出来ぬが。」
そうして暫く待ちながら髪と眼の色を変えて置き、手の空いた風紀委員がやってくれば、
遺骸が収容される様子を見守り、事情聴取を受ける為に自身も同道する事に。
去り際、振り向いた時には、もう子供らの霊の姿は見えなくなっていた。
■緋月 >
「――――」
死者観測の力で以て確認すれば、其処には互いに身を寄せ合い、すすり泣く、半透明の子供らの姿。
その思念も、己の耳に届いて来る。
『おなかすいた』
『ひもじい』
『なにかたべたい』
『いたい いたい』
『どうして こんなこと』
『ここまで されることなの』
「……なるほど。」
子供らの霊の言葉から、凡その状況は把握できた。
凡そ、空腹をしのぐ為に誰かに――恐らくは手を出してはならない性質の者に手を出して、
結果、八つ当たりか気晴らしか…そんな動機で、バラバラにされたのだろう。
――非道だが、「よくある」事、なのかも知れない。
盟友の知識を引き出してみると…どうもこの地はこういった「事件」が起こり易く、
しかも余程でなければ表沙汰にもならない…言ってみれば「光と共に出来る影」の、より濃い部分らしい。
「……済まぬな。」
そう一言だけ、謝罪の言葉。
今の己は、かつての力の大半を失っている。
出来るのはこうして死者の姿を見たりする事位。
――安らぎの地へ、この子等の御魂を招く力は、今の己には存在しない。
「本当に……済まぬ。」
■緋月 >
「――――――。」
部屋に引き籠っていては、人間、精神が気鬱に傾く。
……「己」に限ってはそうではないのだが、流石に部屋に閉じこもったまま、何日も過ごすのには無理がある。
そう考え、多少の気を晴らす目的で、少し外に出てみたが、道を間違えたのか
随分と暗い雰囲気の街並みへと出てしまった。
さて何処を歩けば戻るだろう、と考えながら歩いている合間に、ふと感じたのは「よく知れた」気配。
――「死」の匂い、だ。
引き付けられるように歩みを進めれば…凄惨なバラバラ死体の数々。
「……子供、か。」
辛うじて分かる「残骸」から、そのどれもが子供のものと分かる。
おまけに、バラバラの屍骸はどこも随分と発育が悪い。
食うにも困るような事情だったのだろう。
「どの時代にも、似たような出来事はあるものだ。」
少しばかりの憂鬱と憐みが混じった言葉。
ふ、と右手を顔に当て、双眸に青白い炎を宿す。