2024/06/15 のログ
ご案内:「スラム」に『虚無』さんが現れました。
『虚無』 >  
 既に浸食されきったスラム。そこの空から金属同士を打ち付けたような金属音が響く。刹那空から降るは無色の衝撃。地上に居た紅い小さい海月を吹き飛ばす。
 そのまま地上に降り立った。

「いくらなんでも多すぎる」

 どこかのスラムが花によって飲み込まれたとか、大穴とか海月とか。ここ最近この辺りで例の怪異の情報が多すぎる。
 当然と言えば当然だ。風紀は今は別の事で手一杯だろう。とこコレの見回り、そしてあっちこっちで頻発している風紀の襲撃事件に無差別攻撃。
 こんな”存在しない街”の怪異など気にする余裕もないのは当然だ。
 できるだけ自分も動いてはいるが、それでも足りない。

「海月か花か。どっちかを潰さないとか」

 だが情報が足りない。目立つはずなのに場所の情報が無いという事は接触した人物が”帰還できていない”という何よりの証拠。
 あちこちのスラムを回りながら見えた紅を叩き潰し続けてはやどれだけだろうか。

『虚無』 >  
 正直かなり目立つ。だが、今回ばかりは逆。目立つように動いている。
 怪異は生きた存在を襲う。目立てば集まってくるかもしれない。
 もし生存者がいるなら音に引き寄せられるかもしれない。
 勿論リスクはある。犯罪者が集まってくるリスク、それらと交戦になるリスク。
 勿論風紀が来るリスクもある。それでも目立つ方のメリットが上だと判断した。
 再び金属音。空高くへと跳ね上がった男は再び空から視察。紅を見つけるとそこに衝撃波を叩き込み、着地する。

「……バーベキューか。残念だが行くのは難しそうだ」

 奏詩としては少し行ってみたい気もしたんだがななんて1人愚痴る。
 紅は見えていた。近くの建物に拳を放つ。拒絶の力のこもったそれはコンクリートをあっさりを吹き飛ばしコンクリートの建物を倒壊させ、中の紅ごと押しつぶす。
 数は増えている。もうこのスラムもダメだろうか。だが増えているという事は目的の場所の可能性もある。

ご案内:「スラム」に紅き死ノ花さんが現れました。
紅き死ノ花 > 空気が
変わる

ヒリつく


―――"花"は突然現れた。

紅き花

舞い上がる毒

毒の粉

人を殺す紅色


貴殿の背後に咲き誇るは紅色の巨花


卑劣
卑怯
卑陋

なんなりと罵るがいい

"戦い"がしたいのではない
"殺し"がしたいのだから


紅き花

貴殿に向けるは

尋常ならざる―――

紅き死ノ花 >  


    殺 害 欲


 

『虚無』 >  
「ッ!?」

 後ろから現れる音。それと同時に向けられる殺意。
 ここまで接近されるまで自分が気がつかないなどあり得るのか。しかし現に接近を許した。
 確認するまでもない、背後にいるのは敵だ。

「シィ!!!」

 振り向きざまに蹴りを放つ。距離はあろうと関係ない、その足に膨大な拒絶の力を籠める直撃すれば家も崩し、離れていても衝撃波でもって押しつぶし。それほどの破壊力を込めた。はずだった。

「ッ、厄介な……!!」

 毒の粉がもたらす痛みと痺れ。それによって軸足がブレ、蹴りの威力は大きく下がる。それでも能力による衝撃波でせめて毒の粉だけでも散らそう。

紅き死ノ花 > 花は貴殿を嘲笑うかのように

殺意を
強き殺意を
今すぐ死ねという殺意を

向け続ける


貴殿より放たれるは強烈な蹴り
威力を削いだとしても強烈な蹴りの起こす衝撃波

だが―――

それは一瞬だけ明転した花を覆う"六角の紅き壁"に阻まれる

毒の粉を振るい落とす、が

花には届かぬ



さて、何故貴殿が背後を取られたか―――

―――疑問に答え、注釈しよう。
―――この怪異は異能を持っている。

―――名称:なし
―――属性:空間
―――効能:中距離感を転移可能
―――利点:瞬時に任意の位置を取れる

―――弱点:使用者に相応の負担有。"この花が現実的に使用可能"な回数は、1時間に2回限り。
―――弱点:広く知られている量産型転移異能。調べれば、タネがすぐに割れる。阻止も容易。

『虚無』 > 「チッ」

 あっさりと防がれた。痛みと痺れが走る体ではあれを撃ち抜く事は困難だ。
 であればやるべき事はふたつ。まずひとつは適応。この体の痛み、そして痺れに対して体を適応させる。自身の流派にはそれを可能にする技がある。
 そしてふたつ。それを短時間で行う事……対毒装備がない自分では長時間の戦闘は絶望的だ。口周りと服がある場所なら防げる。だがそれ以外はどうにもならない。目も防御不能だ。
 攻撃を捨てれば可能だがそれではジリ貧も良いところだ。ここで奴は潰す必要がある。

「カウンターが狙えないというのは厄介だが」

 体から力を抜く。ユラリユラリと風に流されるように。そして瞬時にそれは動きを見せる。
 剛から柔へ。体には一切力を入れず、能力で動く。
 水の流れるように障壁と言える紅の壁に振るわれる左腕。拒絶の力を秘めた1撃。本来はカウンター用、しかし今の体であればこの方が良い。
 そしてこの状態での能力を駆使すれば十二分に威力を持つ。小銃程度の威力は遥かに上回る拳。

紅き死ノ花 > 怪異も
また
すべきことを
確信する

"毒の粉を払った"
"なら毒は通じる、通じている"
"なら殺せる"
"毒で殺せる"

そして

"あの距離で反撃を行った"
"子海月を無数に潰しやがった"
"つまり強い"
"生半可な攻撃では殺せない"

だが、
ゆえに、

"貴殿には殺す価値がある"

―――答え合わせが出来た。

ああ
砕くがいい!
撃ち抜くがいい!
貴殿の攻撃で障壁はたやすく砕けよう!!



だが―――

花を守る障壁の破壊に夢中になっていていいのかッッッ!!!

黙って壊されているだけだと思っているのかッッッ!!!

巨大な花びらが巻き起こす毒の連撃は滝も同然ッッッ!!!
花の感染毒をありったけ貴殿にぶち込むッッッ!!!
赤黒い毒が打ち出されるッッッ!!!!!

さあ死ね!
今すぐに死ね!
怪異の同胞となるために!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねェェェェーーーッッッ!!!!!!!

『虚無』 >  
 それが蓋になっている可能性。それは頭の片隅には合った。だが壊さなければならない物である以上危険だと理解していても壊さないわけにもいかない。
 打ち砕いた瞬間にそれは放たれる。眼前に飛び散る死毒。滝のように放たれるそれ。

「殺気がある時点である程度は読んでいた」

 水の流れるように放った左の拳、流れは止まらず反対の右の手を前に突き出す。衝撃波。花を狙った物ではない、相手の毒の嵐を止め、受け止める為の物。
 甲高い金属音と同時に放たれたそれによって毒はあちらこちらへと四散する。
 全ては止めきれない。自身にもその毒が突き刺さる。一瞬ガクんと左ひざが落ちる。だがまだ。
 1歩近寄る。花を摘み取る為に。
 その落ちた左の膝を利用する。落ちた左半身。それを持ち上げるようにして振るわれる左の拳。能力を利用し舞い上がる瓦礫。そしてそれは上から降り注ぐ質量弾となる。

紅き死ノ花 >  
打ち出される毒、激突する両者ッッ!!

―――。

―――。

毒が、受け止められた――ッッ?!







否ァ――ッッッ!!!!

効いている!"全ては受け止められいない"!!!


このままいけば、―――殺せ、る―――ッッ!!?!

紅き死ノ花 > ズドォォンッ―――ッッ!!
紅き死ノ花 > ―――見事。

紅き花は、打ち出された"質量弾"の下敷きだ。

障壁という盾を失い

毒という矛を失った

花が、そこに―――

『虚無』 >  
 深く浸食した毒で僅かにせき込み血を吐き出す。早く治療しなければこっちもタダではすまないだろう。

「……」

 だがその状態にあって男はトドメを刺す事に躊躇する。
 経験が浅いのならここでやったと判断するだろう。だが、まだ完全には安心しきれない。
 本当にこれで終わりか? 頭の中を埋め尽くす言葉はそれだ。
 瞬時に後ろへと移動し、そして花を守る蓋を用意した。まるで外される事をわかっていたかのように構えていた花は今は嘘のように静まり返っている。
 違和感。勿論考えすぎの可能性もある。だがこの業界において考えすぎて悪い事等ない。
 近寄る足を止め、腰を深く落とす。

「もし考えすぎならそれでよし」

 考えすぎでホントに弱っているのなら次の一撃は回避できないだろうし、受け止めきれないだろう。
 そしてもし自身の予想通り最後の牙を持っている、もしくは擬態しているのなら……安全マージンを確保できる距離だ。
 空手の正拳突きに近い構え。それから放たれる衝撃波。ひと際甲高い音を放つそれ。
 散らばった瓦礫諸共押し寄せる。回避できないのなら押しつぶしてしまおう。

紅き死ノ花 > 紅き屍骸に傷害されたものは
生きていたとしても
意志の弱き者であればジワリジワリと
その体を不完全感染にて蝕むだろう。
貴殿が意志弱き者であるかは
貴殿の意思にて決める事



して。

貴殿の想定は正しい

実に正しい

紅き花は"まだ朽ちていない"。

だが

紅き花は矛も盾も喪った

故に怪異はこう計算す

"貴殿は殺せる、殺す価値がある"

しかし

"貴殿は現状では殺しかねる"
"これ以上の殺傷継続は利益より損失が大きい"

"次の殺傷の機会を待つべきだ"

故に―――


"ここで行うべきは撤退"

花は―――忽然と瓦礫の下からその姿を消し果てた。
まるで、最初からなかったかのように。

花は逃げたのだ。



だが、次は。次こそは―――!!






―――殺してやるぞ。

ご案内:「スラム」から紅き死ノ花さんが去りました。
『虚無』 >  
「……逃げられたか」

 体の真をドクドクを痛みが走る。毒は確実に体を蝕んでいる。
 意思の強さ。そういう意味では彼は弱くはないのかもしれない。だが罪悪感がそれを大きく塗りつぶす。心のどこかにいる正しい自分が自分自身に死んでしまえとささやく。

「治療手段は……闇医者でどうにかなるのかこれは」

 表の病院なら確立されているとは聞いた。だが、それはあくまで表の話。
 そして奏詩として治療を受ける事は表では困難だ、なにせ奏詩なんて人物表ではいないのだから。

「最後まで厄介な毒を残してくれる」

 流石にこれ以上の深追いも捜索も困難だ。男もまた退却を選択する。
 治療手段を探さなければならない。

ご案内:「スラム」から『虚無』さんが去りました。