2024/06/26 のログ
ご案内:「スラム」にイチゴウさんが現れました。
■イチゴウ > 落第街のさらに奥。
スラムでは囂々と煙が上がり、炎が一面を包み込んでいた。
熱せられて舞い上がる風に乗せられて何処からか
クラシック音楽アメリカン・パトロールの調べが
無機質なスピーカーを通して聞こえてくる...。
カチャン
カチャン
と規則正しく響く金属音。
「こちら風紀委員会、ユートピア機構、チャリティーアーミー。
現在、除染活動を実施している。」
ノイズがかった男の声で放送が行われる。
スラム居住区のあちらこちらに四つ足を持つ奇妙なロボットが歩いている。
その背中には大きなタンクと発射口を持つ火炎放射ユニットを背負い
ひたすらに炎を噴射していた。
それは無作為にというよりも何かを狙っているよう。
「当該住民に告ぐ。仮説居住区を設置している。
除染機には近づかずに、至急そちらに避難してほしい。
尚、此方の指示に従わない場合、身の安全は保障しない。」
火炎放射器を背負い規則的に動くロボット達の中に
何も背負っていない個体が一つ。
それは他と違い、柔軟に手足を動かして物事を伝えているように見える。
言い方を変えればこのロボット達の司令官といった所。
■イチゴウ > 炎を上げて崩れ落ちるバラックの隙間から
紅い蜂のような群れが沸き上がる。
除染ロボット達がそれを発見すれば背部ユニットから
轟音を立てて火炎が放射される。
それの繰り返し。
薄紅に染まった異様な空気に包まれているスラムの一角。
異常存在は紅色の蟲だけではなかった。
人間。そうヒト。
精神を異常に犯されたのか
スラムの住人を恐らく殺害しようとしている
スラムの元住人。
ロボット達はそれすら躊躇する事なく燃やす。
燃やされたヒトは悲鳴と共にのたうち回り炭へと化していく。
「当該住民に告ぐ。仮説居住区へ速やかに避難して欲しい。
また、外気も汚染されているため、呼吸は最低限にお願いする。
汚染された場合は除染対象となるため、気を付けてほしい。」
司令官と思しきロボットがスピーカーを通し勧告している。
除染対象はそう。落第街を中心に広がるSS級怪異。
その一部。
ご案内:「スラム」にDr.イーリスさんが現れました。
■Dr.イーリス > 「ッ……! ……やめなさい!」
先の戦いで右脚と右腕を失って車椅子に乗るイーリスが立ち昇る煙を見て急ぎ駆けつけてみれば、燃え盛るスラム。
灼熱に包まれたスラムに絶句した後、傍に控えていた漆黒のアンドロイド《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅲ》を動かした。
メカニカル・サイキッカーが四足歩行ロボの一機に急接近し、勢いよく右拳を突き出す。ただし警告を込めた攻撃で、避けるのは容易いだろう。
「皆さんは、逃げ遅れた人達の救援をお願いします。この辺りは子供も多くいる区画ですからね……」
イーリスの指示に、共に訪れた十数人の不良が頷いた。
不良A「了解しやした、姐さん」
不良B「しかし、許せねぇな! なんだよ、この残虐な仕打ち!」
不良C「俺達は、一人でも多く救うんだ……!」
不良達が散っていった。
■イチゴウ > 炎の最中、行われる機械達による除染活動。
その軍隊に急接近する黒い影。
左前足の鋏を地面に差し、エアスラスターを使った
飛びのくような超信地旋回。
攻撃対象となったロボットは
明らかに他の個体とは違う滑らかな動きでそれを回避する。
近づいてきたものを見る。
漆黒の機械。戦闘機械だろうか?
洗練されており、高い技術力を用いられていると考えられる。
一般に流通しているものではない。
となれば違反部活特製の違法機体(ハンドメイド)か。
次に機械は傍にいる少女を見る。
スラムの住人だろうか?それにしては妙ではあるが。
「やあ、こんばんは。
現在、紅い怪異の除染活動を実施している。
妨害行為は処罰の対象となる。
至急、仮設居住区へ避難してほしい。」
少女を見上げながら司令機イチゴウは少女に告げる。
些細な攻撃行為に厳しく言及するつもりはない。
スラムでは日常茶飯事であるから。
「お友達も一緒に避難することを推奨する。
除染機の行動に巻き込まれても補償はしない。」
散っていた不良たちに一瞬視線を移すと
機械はそう告げる。
■Dr.イーリス > メカニカル・サイキッカーの拳は回避された。
機械から発せられた言葉を聞く限り、どうやらこちらの警告を聞くつもりはないらしい。
「除染……? まるで、紅い怪異と共にスラムそのものを消し去ろうとするような除染活動ですね。単に除染するならもっとやりようがあったはずです。そのような権限があるとすれば、大方風紀委員と言ったところですか。貧困に苦しむ中、いきなり生活空間を燃やされる……あなた達にその苦痛を理解するのは難しそうですね」
落第街やスラム『ないものとする』という島の闇を理解している。だから、あのロボットにとっては、文字通り機械的に任務をこなしているに過ぎないのだと想像する。
イーリスの青い瞳に、焼死体が映り、息を飲む。
「……!?」
スラム住民の焼死体……。イーリス達不良はスラムで顔が広い。その焼死体は、イーリスとも親しい間柄だった。
右目は包帯で覆われながらも、左目から雫が垂れる。
「……私達のシマを滅茶苦茶にして、ここで暮らす人達を苦しめて、ただで済むと思わないでくださいね、風紀委員!!」
メカニカル・サイキッカーには異能や魔術の技術も備わっており、様々な異能や魔術を扱える。
ただし扱える異能や魔術は六時間ごとに三つまで。また偽物であるそれらは本物に及ばないという欠点がある。
まず一つ目の異能。
メカニカル・サイキッカーは背中の推進エンジンを点火させて上空に飛び上がった。そんなメカニカル・サイキッカーの周囲に直径三メートル程の岩が無数に形成される。
それ等岩が除染活動を行う全ての機械に降り注いでいく。