2024/06/27 のログ
■イチゴウ > 「その通り。除染活動だ。
紅い怪異の影響は深刻と言える。
空間単位で浸食が発生していると考えていいだろう。
故に空間一面に対して除染を行う必要がある。」
無数の蟲に、大気中の毒素。
中途半端な除染行為では「残ってしまう」だろう。
報告では当怪異の影響拡大力が一番の懸念事項とされている。
残してしまえば広がるのだ。
「それに、ボクはスラムを消し去ろうとは考えていない。
スラムはこの島に必要なものだからだ。
除染活動終了後には消火剤を散布し
避難住民に物資を支給する運びとなっている。」
落第街は島にとって存在していないものではあるが
同時に厄介な存在を隔離する区画として必要不可欠なのも事実。
綺麗なお部屋にはゴミ箱が欠かせない。そういうことだ。
そして機械はスラムの人達を維持するが
その個性を尊重するつもりはない。
なぜなら必要ないから。
涙と共に激昂する少女に
機械質の冷酷な視線が向けられる。
少女の激昂に呼応するように飛び上がった機体は
岩のような生成物を除染機に降り注がせる。
突然の質量の塊に幾つかの除染ロボットは潰れるようにひしゃげ、
あるいは打ち上げられて部品をばら撒きながら宙を舞う。
「因みにキミが見ている焼死体は紅い怪異に汚染されていた。」
涙ぐむ少女に慰めすらない淡々とした報告。
同時に複数の金属音。
イチゴウの背後に新たな四足ロボットが三機程歩いてくる。
「妨害行為から判断しキミを処罰する。
楽園は敵には容赦しない。」
そのロボット達の背中には除染ロボット達とは違う大型ユニットを積んでいる。
それは高出力電撃ユニット「スタンランチャー」。
違反生徒無力化制圧に特化した汎用ユニットだ。
■Dr.イーリス > 機械の説明を聞く限り、一度この区画を消し去ろうとしているのは当たらずとも遠からず。
紅い怪異の深刻性はイーリスも理解していた。
後に避難住民に物資を支給するのであれば、元の生活までとは言わずとも安全な場所で生活を再開できる。
焼死体が怪異に汚染されていた、というだけではどのレベルでの汚染か分からない。
まだ治療可能な段階なのか、あるいは手遅れか……。
少なくとも、ぱっと見たところ機械によりスラムが燃やされているようにしか見えなかった。故に、直ちに動く必要があると判断した。
しかし、機械の事情を聞く限り、相手をすべきは果たして風紀委員なのか……という疑問に行きつく。
この強引なやり方に感情的には反感がないわけでもないが、合理的な判断を優先して、左指で涙を拭う。
「……ひとまずあなたの主張に納得しましょう。先走った真似をして申し訳ございません」
メカニカル・サイキッカーは、地上に降り立つ。
「私を処罰するのであれば、身を守るために抵抗して反撃します。しかし、あなたの説明を聞いて、今真に戦うべきは怪異の方だと判断しました。焼却がやむを得ない方法として、私は、人道的な対処法を風紀委員に求めます。
第一に、現在行っている除染を即時停止して消火活動及び救援活動を行う。
第二に、除染活動は後日改めて行う事とし、事前通告した上で住民達に十分な避難時間の猶予を与える。
第三に、感染者は捕らえた上で治る余地のある者は治療、治る見込みのない者は出来る限り残虐性の薄い方法での処刑。
以上、無用に被害を拡大させず、かつ除染に差し障りなく、比較的人道に沿った方法であると提案します」
そう抗議して、指令機を見据える。
■イチゴウ > 激昂していた少女は機械の言葉を聞き反撃の手を止める。
戦闘機体を着陸させる少女に機械の軍隊は攻撃することはなく
その主張に耳を傾けていた。
「妨害行為を継続しないならば敵ではない。
キミは賢い子だと言える。」
イチゴウの背後に控えていた処罰機は蓄電していた
スタンランチャーの電力を放電し省電力モードへ移行する。
そうすれば指令機は少女の主張に返答を行っていく。
「第一、焼却による除染は大部分が完了した。
即時停止は問題ないと判断し、消化及び支援活動へと移行しよう。
第二、除染をフェーズ分けし後日行うという提案について、
その場合は除染実施まで不測の事態に備え、当該区域に武装機を配備する。
第三、本提案の同意はできない。
本機構には治療や安楽死のための物資は存在しない。」
これが少女の抗議に対する指令機の答え。
■Dr.イーリス > 結果として先に仕掛けたのはこちらだ。イーリスが最初から事情を把握していれば、風紀委員の機械を破壊する事もなかったけど、後の祭り……。
イーリス側に戦闘の意思がなくなったとしても、機械達が反撃してくる可能性は考えたが、あちらも攻撃の意思はないとして安堵の息を漏らす。
ただし、当然と言えば当然だが機械達は警戒を緩めていないようであるが。
「こちらの願いを聞き入れていただきありがとうございます」
車椅子に座りつつ、指令機に一礼した。
「紅い怪異が蔓延する落第街やスラムですから、武装機の配備は助かりますね。治療や安楽死のための装備などがないのでしたら……確かに物理的に不可能になりますね……」
出来ない、というのなら指令機が第三の提案に同意できないのは無理もない。
「それでは、治療可能な感染者は期日までに私の方で治療しておきます。治療が敵わない方については……そちらも私の方で……なんとかしておきます……」
イーリスは殺人を忌避するので、瞳を伏せる。
完全感染した人達は、死体だ……。死体を二度……殺すだけ……。そう心の中で言い聞かせて。
「それでは、急いで消火を行いましょう。逃げ遅れている人も助けないといけません」
メカニカル・サイキッカーは第二の異能を発動させる。
右手がポンプに変形し、大量の水を噴射した。噴射された水が燃え上るスラムを消火していく。
■イチゴウ > 「礼は必要ない。スラムの維持は本機構の役割であり
基本的にキミ達が何かする必要はない。」
一礼する少女をイチゴウは見上げながらそう一言。
ただし機械の視線には優しさなどといった暖かい感情はない。
ただただ無機質な役割がそこにあるだけ。
背後でスラムを跋扈していた除染機の動作が一斉に停止したかと思えば
引き返し始め駐屯していた輸送トラックのコンテナへと帰っていく。
代わりに巨大な放水ユニットを背負ったロボット達が次々と降車していき
消火剤の散布を開始し始める。
熱傷を負った者を背中に乗せたロボットも仮設居住区へと向かっていく。
「紅い怪異は目下、落第街における大きな脅威だ。
様々な危険性の報告が上がっている。」
様々な形、能力を持った個体が居ると報告書が積まれている。
このスラムで蔓延しているものもその内の一つに過ぎないのだろう。
本機構でもようやく「紅の怪異」探知に特化した
偵察HMTの配備を始めたばかりだ。
「キミの言葉から判断するに、
キミは本怪異について知識を有しているのだろうか?」
イチゴウは少女に問う。
治療するといった言葉。
ただの落第街に住まう少女に出来る筈が無い。
違反部活生か。
それよりも怪異を理解し治療が出来るという事実が重要だ。
この少女は紅い怪異を何か知っている。
■Dr.イーリス > 「何もしなければ生きていけないのが、このスラムの住民ですよ。しかし、スラム維持を目的としたロボット……。という事は、以前に私の仲間に食料を恵んでくださったのもあなたでしたか。それは……重ね重ね恩を痣で返すような真似をしてしまい申し訳ございません」
ぺこりと頭を下げる。
以前、スラムで四足歩行ロボットに食料を恵んでくれたという話を不良仲間から聞いた。それがこのロボットの事だったのだろう。
残骸となったロボットを見れば、ものの見事に痣で返してしまったと痛感……。
不良達もまたロボットと一緒に、負傷者を仮説住居区へと運んでいく。
「私もそれは同意ですね。紅い怪異は、落第街をじわじわと浸食しています」
ロボットからの問いには、こくん、と頷いた。
「私の右腕や右脚がないのは、SS級怪異の一つ、紅の鮫にやられたからですね。紅の鮫はその時に協力者と共に討伐しましたが、手痛い傷を残してしまいました……。傷を負ったという事は、感染してしまう可能性があったという事になります。その時に感染源を採取して、研究のサンプルにしております」
そう口にして、失っている右脚、右腕が見やすいように体を捻る。
「感染源を研究して、不完全感染の患者であれば治療法を既に確立しておりますね。私はDr.イーリス、スラムのしがない研究者で、医療にも精通しております。先程のお詫びと言ってしまえば何ですが、必要とあらば感染源のサンプルを提供する準備があります」
■イチゴウ > 「キミ達には必要なものがある。
ボク達は必要なものを必要なだけ支給する。
遠慮は必要ない。当たり前のものとして享受すればいい。」
残骸と化したロボットを他のロボットが分けて回収していく。
只でさえ安い量産機。構造も単純で修理も設備が有れば極めて容易。
代えは幾らでも効くのだ。
「無力化されていた紅い怪異の一つはキミが要因か。
強力な個体であった筈だ。
この件に関してはもう少し調査が必要だと考えている。」
紅の鮫。強力な個体として対策部隊を悩ませていた頭痛の種。
ある日、突然無力化されたと報告が上がっていたが
その要因がこんな所に居たとは奇妙な縁だろう。
協力者についても引っかかるが、一旦保留する事にする。
「Dr.イーリス。納得がいった。
常世フェイルド・スチューデントの重要人物か。
本機構としては違反部活から物資を受け取る事は出来ない。
しかし、本怪異は落第街全体の問題だ。
組織の垣根を超えた柔軟な連携も今後は視野に入れる必要があるかもしれない。」
高脅威怪異症の治療、ハイレベルな戦闘機体。
そして少女の名を聞いて、照合できた違反部活は落第街でも存在感のある組織。
しかしユートピア機構は積極的に違反部活を摘発する組織ではない。
この場においては無問題だ。
そしてイチゴウは振り返って少女に背を向ける。
「ボクは風紀委員会、ユートピア機構を統括するイチゴウだ。
全てを失った時には、楽園に来るといい。
楽園はキミもお友達も拒まない。」
その言葉をどう捉えるかそれは人それぞれだろう。
人の心までは機械は支配できない。
「ボクは、やるべきことを継続する。
くれぐれも紅く染まらないように気を付けて欲しい。」
最後にそう言い残して
イチゴウは同じ形の機械の群れに紛れていくだろう...
■Dr.イーリス > 「そう……ですね。正直なところ、物資を恵んでくださるのはとても助かります。ありがとうございます」
回収されていく残骸を横目で眺めて、再び指令機に視線を戻した。
「それはもう、強敵でございましたよ。地面に潜ってこちらから中々攻撃できませんし、牙が鋭く、何よりも強力な酸を吐いてきましたからね。紅き鮫の討滅に大きな被害を及ぼした事もあって、SS級怪異を止める上で多少の犠牲を覚悟しなければいけないのは理解しています。故に、あなたがこの区画を燃やしていた時は止めに入ってしまいましたが、事情を聞いて納得できました」
SS級怪異の対処法がスラムの一区画を燃やすしかない、そのような状況で手をこまねいていれば余計に被害が拡大するのは事実。
協力者については、諸事情あってイーリスの口からは話せない。
「私の事はご存知でしたか。風紀委員内での情報共有も進んでおりますね。違法部活から何も受け取らないとは、徹底しておりますね。とは言え、紅き怪異を対処する上で私達《常世フェイルド・スチューデント》は風紀委員に謹んで協力させていただきたいと思っております」
組織の垣根を超えた連携が必要な事態というのはその通りだ。
風紀委員側が拒まないのであれば、可能な限り積極的な情報提供も行っていきたい。
「ユートピア機構、イチゴウさんですね。お心遣い、ありがとうございます。いずれ、そのユートピアについても色々お聞きしたいですね」
ユートピア、それは文字通りイーリス達にとって“楽園”となる可能性があるのか……。
どちらにしても、何も盗まなくてもいい、被害者を出さなくていい生き方ができるのならば素晴らしい事だと感じるが、果たして……。
「お気づかい痛み入ります。私は既に感染を逃れた後ですからね。再び紅い怪異の攻撃を受けない限りは、感染の可能性はありません。それでは私も私のやるべき事をやりましょうか」
不良達は順調に負傷者を運んでいた。元々、イチゴウさんは火炎放射をスラムに放つ際も避難するよう警告しながらであった。容赦のなさは多少あったかもしれないけど、そこまで負傷者は多くないのかもしれない。
メカニカル・サイキッカーは引き続き右腕から放水を続けており、消火も順調に進んでいた。
今回で多くの部分の除染が完了した。
イチゴウさんが約束を守ってくれるならば、時間の除染は日時を指定して、住民がちゃんと必要な荷物などを持って避難できる猶予を与えられるはず。
イチゴウさんにより予め避難先が指定されているのならば、住民達は事前にその避難先へと向かう事になろうか。なければ《常世フェイルド・スチューデント》やスラム住民達で避難先の準備をする事になる。
第二回の除染までにイーリスは区画内の感染者を集めて治療、完全感染の者は安楽死させた。
何事もなければ、第二回の除染は何の問題もなく終える事ができるだろうか。
この区画において、例え最初は自分達の住処がいきなり燃やされて理不尽に思えても、その後の支援、また紅い怪異に脅えなくて済む環境作りが成ったのであれば自然と支持されていくだろう。
逆に、この区画におけるイーリス達《常世フェイルド・スチューデント》の求心力は相対的に低下したといっていいだろう。
結果として、ユートピア機構の行いにより違法部活である《常世フェイルド・スチューデント》の勢力を間接的に削ぎ落したという事だ。
ただ《常世フェイルド・スチューデント》にとってはスラム住民の生活が守られればいいので、風紀委員の介入でも何でもそれが成せればいいという考えに変わりない。
ご案内:「スラム」からイチゴウさんが去りました。
ご案内:「スラム」からDr.イーリスさんが去りました。
ご案内:「スラム」に紅き死ノ花さんが現れました。
■紅き死ノ花 >
―――どうなっているッッッ!!!
■紅き死ノ花 > 紅き怪異の花は突然
現れた
否
戻って来た
焼け果てた地に
鎮圧された地に
毒を撒いた地に
■紅き死ノ花 > 確かに
毒を
死を
殺害欲を
撒き散らしたはずだ
だが
■紅き死ノ花 > そこには
最小限の被害のみで
鎮圧された
痕跡が
残る
だけではないかッッッ!!!
■紅き死ノ花 > 何より
もっとも
怪異にとって腹立たしいのは…
殺せなかった事?
否
鎮圧された事?
否
■紅き死ノ花 >
"仲間を全くもって増やせなかった事"だッッッ!!!
■紅き死ノ花 > 紅き怪異は、
紅き怪異同士でリンクしている。
故に分かる。
"これをやりやがったのは誰か?"
"折角毒をぶちまけたのを邪魔しやがったのは一体だれか?"
"今すぐにでも殺すべきその犯人が誰なのか?"
■紅き死ノ花 > 四足歩行の機械。
漆黒の機械。
紅き怪異は、機械を忌避する。
何故なら機械に死の概念はない。
殺したとて鉄くずになるだけだ。
そして、女。
―――鮫を殺しやがった、あの女。
こいつ……!!!
■紅き死ノ花 >
そうか。
そうかそうか。
そうかそうかそうか。
■紅き死ノ花 > 怪異は、あの女を
"仲間を沢山連れているから殺す価値がある"
と理解していた。
だがその理解は
全くッ!
完全にッ!!
圧倒的にッ!!!
大間違いだ。
■紅き死ノ花 >
あの女は、絶対に。絶対に。絶対に。殺すべきだ。
■紅き死ノ花 > "個としての強さ"
を持つ存在は、はなっから無視すればいい。
不要だからだ。
如何ほど力を持っていても、どうでもいい。
だがあれは違う。
"群を率いる強さ"を持つ。
冷静な判断をしやがる。
あんな奴を生かして置いたら、仲間を増やすことなどできないッッッ!!!
■紅き死ノ花 >
確かにヤツは"力"は弱い。
だが、"力"以外の全てにおいて放っておくわけにはいかない。
まず、機械を連れている。
最悪だ。
そして、この街の生命を守ろうと動いてやがった。
これも最悪だ。
最後にやつは自己犠牲を厭わないクセに莫大名精神力を持っている。
ああ、最悪だッッッ!!!
殺すしかない。
■紅き死ノ花 >
怪異の花は、怒り狂う。
撒き散らされる毒と―――
■紅き死ノ花 >
殺 害 欲。
■紅き死ノ花 > ―――紅い毒の水溜まりだけが、そこに残った。
ご案内:「スラム」から紅き死ノ花さんが去りました。