2024/06/29 のログ
■九耀 湧梧 > 花の怪異が取った行動は模範的な行動だ。
背後を取ってからの毒の粉。
普通の人間であったならば、痛みと痺れで動けなくなり、死を待つばかりだっただろう。
もう一度繰り返す。
花の怪異が取った行動は模範的な行動だ。
強いて挙げれば、相手が殺害欲――殺気に準ずるモノに敏感な者でさえ、なければ。
「――――!!」
ピリ、と小さく走る刺激。そして、隠す気のない殺気。
それをキャッチした男の判断は速かった。
「疾ッ!!」
まるで、瞬間移動のような動き。
一足で十数メートル近い移動を可能とする者は――恐らくこの島でも、珍しくはない方ではあろうが。
その勢いで地を滑りつつ、男は振り向く。
「…何だ、花?
――にしては、随分と殺気をバラ撒く!」
■紅き死ノ花 > 空気が変わる。
それは比喩ではない。
文字通りあたりの空気が一変する。紅色となる。
だが。
その空気は、貴殿が跳んだ距離にまでは届かぬ。
振り向いた貴殿が目にするのは、深紅色の大輪の花。
サイズは人の大きさ程。
纏うは猛毒のヴェール。
繰り出すは真っ紅な殺害欲。
怪異が言葉を持たずとも何が言いたいか伝わろう―――
死ねッ!!
■九耀 湧梧 > 「――成程、こういう怪物めいた奴も出現すると。」
ふぅ、と気持ちを落ち着かせる為に、小さく息を吐く。
人間サイズの花、というものが珍しい訳ではない。
植物の知識としては充分にあり得るものだ。
だが、この花の撒き散らすものは、
「――殺気だな。殺気を放つという事は、少なくとも殺害についての思考が出来るという事か。
ただの花ではあるまい。」
赤く染まった空気を確かめながら、小さくぼやく。
その空気が何なのか、幾らかの予想は立てられるが、どれも碌なものではないという結論に達する。
「当然――死ねというからには、自分が殺される事も覚悟してるんだろうな。
身の安全の為に、抵抗はさせて貰うぜ。恨むなよ!」
その言葉と同時に、男の周囲に赤紫の光――否、光の小剣。
それが左右に広がるようにそれぞれ右4本、左4本、合計8本。
何処か禍々しい輝きを放つ光の小剣が、次の瞬間、紅い花に向けて一直線に飛んで行く!
■紅き死ノ花 > ―――なるほど。
"言葉"が通じずとも"意思"が伝わるか。
結構、実に結構ッッ!!
繰り返し、伝えよう。"死ね"、と。
殺意は呻き歪む風切り音に毒を乗せて伝えよう。
花は普通、動かない。
否
"動けない"。
故に、その攻撃を喰らえば串刺しになる事は容易に想像できよう。
だが…
紅き花への"害"を検知すれば、
一瞬だけその領域に明転する紅色の六角形の障壁。
右から、左から。
いずれも接触を未然に拒むかのように次々と障壁が明転しては、8の光剣を打ち落とす。
花は動けない。
故に身を守る術は斯様に身に着けている。
だが障壁は損傷する。
目が良ければ、ヒビが割れたのが見えよう。
棒立ちで黙って殺される気がないのは。
お互い、そうらしい。
■九耀 湧梧 > 放たれた幻魔剣、計8本。
今も尚強烈な殺意を垂れ流す相手である。棒立ちのまま串刺しになるとは最初から思ってはいない。
何らかの迎撃手段か防御手段は持っている筈、と踏んで仕掛けたが。
「ふむ、身を守る技は心得ているという訳か。
しかも常時の発動ではなく、タイミングを計っての展開。
思った以上に対応能力か、防衛本能は強いと見える。」
動けないならば動けないなりに、出来る事はあるという事か。
相手に対する警戒度が上がる。簡単に駆除される程軟な花ではない、これは相応に危険な「怪物」だ。
「――そして、毒を乗せた風、と。
解毒の手段が分からん以上は、あまり吸いたくない所だ――な!」
左手をコートに突っ込み、引っ張り出すように一振りの刀を取り出す。
何処に隠していたのか――否、コートの「裏地」から取り出したようにも見える。
"――空裂"
その呟きと共に、一歩を踏み出し、紅花の怪物――否、其処には届かない。
それが生み出す「空気」に向けて、一閃を放つ。
無論、只の剣技ではない。
それは、「空を裂く」一刀。
紅花の怪物が放つ紅色の空気を斬り削らんと放たれる一撃!
■紅き死ノ花 > ―――どこを、狙って―――
―――。
―――ッッ?!
毒が、払われる。
紅き花が纏う毒のヴェールが、風が、霧散し、消える。
―――こいつは厄介だ。
毒そのものを切り裂けるのかッッ!!
スピード、剣技、遠隔攻撃。
いずれも極めて厄介だ。
ただ一手。
一手でも入れられれば良いのにッッ!!
一手が、入らぬ。
こいつは"こちらの一手を喰らわぬように立ち回っていやがる"。
どうすればいい。
どうすればいい。
どうすればいい。
どうすれ、ば……ッッ!!
防がれると分かってもう一撃? 否、また消されるだろう。
転移で背を取る? 否、自らの退路を亡くすだけだ。
ありったけの毒を撒き散らす? 否、これでは矛を失いただの案山子。
であれば―――罠を仕掛ける。
これしかない。
素知らぬ顔で必死に対応策を練るさまをしながら、
仕掛けるのは目に見えぬ毒の糸。
幾重にも張り巡らせた殺意の罠。
退路、進路、
何れにも仕掛けよう。
卑怯かね。
卑劣かね。
なんとでも、罵れ。
―――遅ればせながら。
怪異に言葉があったなら、敢えて最初の問いに答えよう。
怪異は貴殿と"殺し合い"がしたいのではない。
貴殿に"殺される覚悟"などない。
―――そうとも。
■紅き死ノ花 > ブッ殺したいんだよオォォォッッ!!!一方的になァァァッッ!!!!
■九耀 湧梧 > 「――――。」
紅い空気が断たれ、消える。
これで、後は本体のみ――そう思った直後。
「………。」
空気が変わった、と感じた。
先程までの突き刺すような殺意が、何処か粘つくような、じわりと地面から這い上がってくるような。
一言では、どうにも表現しにくいが、どこか「質が変じた」ような空気。
目の前の紅花の怪物は、動く気配を見せない。
何らかの抵抗をして来ても良い筈なのに、その気配を見せない。
先程のように紅い空気をまた撒き散らすなり、突然背後を取ったように転移するなりしても良い筈なのに。
ゆっくりと、刃渡り三尺の刀を鞘に収める動作を取りつつ、男は推理する。
(紅い空気を展開しなくなったのは…燃料切れ? 否、牽制には使える筈。つまり「無駄」だと判断したからか。
背後を取らないのは…恐らく転移だろうが、何かしらの制限がある? 例えば、連続しては使えない、とかか。
毒を撒かない…これは謎だ。効かないと買い被られたか、あるいは何かを仕掛けている……。)
其処まで考えて、この粘つくような殺意に符合する事項。
(――――罠か。)
何某かは理解できないが、この紅花の怪物は罠を仕掛けている可能性がある。
根拠は、敢えて言うなら経験則という奴か。
その罠が何かまでは、看破出来ない。
だが、少なくとも「どんな手を使ってもこちらを殺したい」という考えは――感じられる。
(脅威度を上方修正せんといかんな。罠を仕掛ける知性を持つ可能性あり、か。)
さて、そうなると此処からどう動くか。
(――決まっている。)
罠を仕掛けられ、それを看破出来ないならば、
罠ごと食い破れる攻撃で乗り切るしかない。
小さく瞑目し、
"――――界断チ"
■九耀 湧梧 > その呟きと共に、一閃が奔り、
男の姿が同時に消え去る。
否、斬られた世界に紛れて見えなくなる。
硝子が斬れてずれるように世界がずれ、
その斬撃が、連続して放たれながら紅花の怪物に向かう。
仕掛けられた罠が分からないのならば、罠ごと斬り破る。
何たる暴虐の結論――!
■紅き死ノ花 > まずい。
まずいまずいまずいまずい。
瞬時に、男の姿が消えうせる。
見えぬ罠ごと切ってきやがったッッ!!!
このままでは引き裂かれるしかないッッ!!!
罠が、障壁が、
次々に砕けていくッッ!!!
無数の六角の障壁が連撃によってどんどん崩れ去るッッ!!
このままでは斬られる!!
否
否
否ァァァ!!!!!!!!
全て、全て防いで凌ぎ切ってやるぞぉおおお!!!
殺されるのは怪異ではない、貴殿だァァァァ―――!!!!!!!!!
―――そこに残るは、"盾"を失った無防備なる大輪の花。
だが。
まだ矛は残っている。
怪異の出した結論。
"貴殿は殺すには手に余る"
"次の一撃は絶対に致命打"
"故にここは撤退すべきだ"
だが
"それはそれとして殺傷せねば気が済まぬ"
"一つでも傷を負わせねば気が済まぬ"
"一方的な負け戦では気が済まぬ"
認めよう。
貴殿は強い。
圧倒的に。
花では"一手"を入れる事すら困難な程に。
だが、
蠢動だと言われようと、
何と言われようと。
絶対に"一手だけ"は入れてやるッッ!!
"矛"を使えるだけ使い切る、決意ッッ!!!
花弁が舞い踊り、
巻き起こすは毒の竜巻ッッ!!
誠に
斬りにくく
捉えにくく
空気そのもの
広域に広げる悪意の渦ッッ!!
消しに斬られようと構わぬ!
押し切るつもりであるだけ毒を叩き込むッッ!!
後退するなら背中に張った罠に叩きつけるッッ!!
さあ。
"貴殿が一手でも許すか"
"怪異が一手すら入れられないか"
―――これが最後の大一番だッッッ!!!!!!
■九耀 湧梧 > 「――全く、とんだ隠し玉を持ってるじゃあないか。」
紅花の怪物が、恐らくはありったけを出し切って繰り出して来た、圧倒的な竜巻。
相手を殺傷せんとする悪意の具現たる嵐。
粘つくような殺意ではなく、もはや後を見なくなった者が放つ斬り刻むような殺意。
そうでなくてはならぬ。
如何な剣術とて所詮は命を奪い合う為の業。
それは全ての剣の技が抱える業。
故に、命を奪うならばそれに相応しい殺意がある。
この花は、己を殺しにかかってきている。
それが無理であっても、一撃は入れてやるという執念を、悪意の嵐から感じ取る。
斬り難く、捉え難き、荒れ狂う空気と同化したかのような悪意を。
ならば、全力で迎え撃つまで。
空を斬る技があるように、
界を斬る技があるように、
「――――。」
"風を斬る"技とて、存在する。
最初に挑む、大いなる出発点。
総ては、この技術を生み出した者が、「風を斬る事は出来ぬのか」という疑問から始まったもの。
"――――風斬、嵐絶!"
荒れ狂う竜巻に向けて放つは、風を斬る為の技。
その一撃を、全霊の剣気を刃に乗せ、嵐すら断たんとする勢いで、
紅い花が放った悪意の竜巻に対して打ち放つ――!
■紅き死ノ花 > 嵐がッッ!!!
深紅の毒の嵐が、裂かれた…ッッ!!
切り開かれる、夜空ッッ!!!
消える嵐。
紅の隙間から見える紅き花。
盾
矛
万策
悉くが破られた。
弓折れ矢尽きるとはこの事であろう。
―――誇れ。
勝負は、貴殿の勝ちだ。
故にこれは負け惜しみだ。
毒の一滴すらも乗らぬ突風を巻き起こし―――
花は、逃げるようにそこから消え去った。
ご案内:「スラム」から紅き死ノ花さんが去りました。
■九耀 湧梧 > 「――――。」
コォォ、と一呼吸置き、手にした刀を鞘へとしまい込む。
その間に、花は突風に乗って逃げ去っていく。
後を追う気には、ならなかった。
思った以上に消耗したというのもあるが、正直追い払う事が出来ただけで充分だった、というのもある。
「……色々と見聞きしてきた心算だったが、とんでもない花もあるもんだ。」
飄々とした響きではなく、「脅威」を切り抜けた安堵を以て、男はそう言葉を吐き出す。
出来れば、二度と遭いたくないものだ。
小さくそう口にして、男はブーツを鳴らしながらスラムを去って行った。
ご案内:「スラム」から九耀 湧梧さんが去りました。
ご案内:「スラム」に紅き死ノ花さんが現れました。
■紅き死ノ花 > ……スラムのどこかに、大輪の紅花が咲く。
■紅き死ノ花 >
ふざけるな……!!
■紅き死ノ花 > 花は一目見て怒り狂っていた
あの小さな女にしてやられ
機械にしてやられ
ロングコートの男にしてやられ
そして今日ッッ!!!
また、あの女にしてやられたのだ
■紅き死ノ花 > 怪異は怪異同士である程度情報がリンクする。
故に分かる。
ヤツが何をしやがったのか…!!
■紅き死ノ花 > 折角殺戮によって作り上げた仲間を…
やつは治療した。
やつは融解した。
つまり、またしてもこちらの手が封殺され、
紅色が広がらないという結末に終わらされたのだッッ!!
■紅き死ノ花 > 怒り狂う花は
突風を巻き起こして
紅き毒を乗せる
真っ赤な嵐が
スラムのどこかに立ち上る
■紅き死ノ花 > もはや
何でもいい
死ね。
殺害欲がまるで満たせぬ。
死ね。
人間でも、虫でも、動物でも、それ以外でも。
死ね。
とにかく何でも。
死ね。
■紅き死ノ花 > だが
単に殺しているだけでは
足りぬ
策も
手も
足りぬ
■紅き死ノ花 > …目的は殺戮ではない。殺戮の先の数を増やすことにある。
怪異にとって最重要なのはそこだ。
それを…いつまでもいつまでも妨害しやがって…!!
■紅き死ノ花 > このままでは、
いずれスラムのエリアでは
圧殺されるかもしれない
あの女と…
あの機械に…
■紅き死ノ花 > 一進一退ではない。確実にこちらが退いている。
このままでは、いつまでも数が減るだけだ。
いつまでも…
いつまでもいつまでもいつまでも……
■紅き死ノ花 >
いつまでも劣勢のままでいる、とでも?
■紅き死ノ花 > その場から、花は消え去った。
ご案内:「スラム」から紅き死ノ花さんが去りました。
ご案内:「スラム」にカロンさんが現れました。
■カロン > 緩やかに、スラムの上空を飛ぶ一つの黒衣の影。
横座りの姿勢で跨るそれは、魔女の箒…ではなく黒い櫂だ。
何かを探るように、確かめるように、静かにスラムを上から見渡している。
(……妙な気配を感じた気がしましたが、私の気のせいでしょうかね。)
そのまま、スゥ、と音も立てずに崩れ掛けたバラックの屋根の一つに着地。
まるで体重を感じさせない動きで櫂から降り立てば、それを右肩に担ぐように持ち。
「……スラム……私のような者には有難い場所ではありますね。」
先日の裏渋谷とやらでの共闘も記憶に新しい。ここであのような位相のズレが起きる事は無いと思いたいもの。
(…あのご老人のように、友好的な方だと色々と私も有り難いのですがね。)
だが、【渡し守】は自分の外見が胡散臭いのは勿論承知済みで、島の外から来た以上目立つ行動は憚られる。
それでも、己の役割はきちんと果たさねばならない…辛い所だが、それで投げ出す訳にはいかない。
■カロン > ただ。このスラムは自分のような出で立ちの者でも案外溶け込めるものだ。
そういう意味では、他の場所よりは落ち着ける場所と言えるかもしれない。
櫂を担いだまま、屋根から飛び降りて静かに音も無く地面へと着地する。
「――…さて。この辺りには特に居ないようですが。」
感知出来る範囲に、死者の魂や呪いの類は感じ取れない。
【渡し守】としては未熟な彼/彼女では、そもそも感知範囲は限られる。
(…どうにも、ここだけではなく落第街の一部なども騒がしいようで。)
何かが起きているのは明白。しかし【渡し守】の役割には関係無いと思っていたが。
場合によっては…人目に付かない、という前提を踏まえた上で行動する事も必要か。
■カロン > 「……さて、念の為…と、言うのも烏滸がましいですが。」
静かに、滑るような足取りである一点へと迷いなく影は歩を進めていく。
ある場所に辿り着けば、その足を止めて緩やかにフードの奥、見えぬ顔が周囲を見渡し。
(…ヒトではない、死者でもない、呪いとも違う……怪異の残滓、それもおそらく強力な。)
先日、遭遇した怪異の群れとは比較にならぬと見ていいだろう。
巷を騒がせる空気の一端はこの残滓の主なのかもしれない。
くるん、と右肩に担いでいた櫂を徐に頭上へと振り上げるように翳す。
そのまま、地面を強く小突くように櫂の先端を打ち付けて。
「―――”霧雨よ洗い流せ”」
瞬間、急に上空から小雨がその一帯にだけ降り注ぎ、地面が濡れていく。
だが、それも暫くすれば直ぐに止む。後には特定の範囲だけが不自然に濡れた地面。
「…浄式でこの程度となると、矢張り強力な怪異…でしょうかね…。」
濡れた地面に再び櫂の先端を軽く打ち付ければ、今度は一瞬でそれは乾く。
何らかの浄化の術式を用いたようだが、どうも効果はいま一つだったらしい。
そもそも、【渡し守】は魂を彼岸に送り届けるもの。怪異の専門家ではない。
■カロン > (もし、この残滓の主と相対した場合…は、あまり考えたくはないですが。)
もしもの時は何時訪れるか分からぬもの。備えておくに超した事は無いだろう。
再び櫂を右肩に担ぐように持ち直す。ちらほらと生命の気配を感じる…スラムの住人か。
「…私のような者と遭遇しても彼らに利はありませんでしょうし。」
呟けば、その場を一度また滑るような足取りで離れる。一区画分程度離れた場所に移動すれば。
「…さて。これから仮に一波乱あるとすれば…私の仕事が増える可能性もありますか。」
それは出来ればあって欲しくない事ではあろうけれど。
だが、死者や魂、或いは呪いを彼岸へと送り届けるのが【渡し守】。
例え死神のような扱いをされようと、蔑まれようと己が選んだ役割を放棄はしない。
「……まぁ、私はまだ半人前の未熟者と言ってもいいですが。」