2024/07/02 のログ
■虞淵 > 「──心配すんな。もう楽しんだ後だ」
未だ呻き、藻掻く虫を踏みつけていた足をあげ───振り下ろす。
ズン…ッ、と一瞬響く地鳴り。
それで"虫"は静かになった。
おしゃべりするには邪魔な虫だ。
「ここらには異邦人も良く来るが──」
「お前程わかりやすい格好はそうはいねェな」
暗がりでもよく目立つ、真紅の瞳が来訪者の男を見据える。
どこか人間離れした、獣のような獰猛さを感じさせる眼だ。
■九耀 湧梧 > 「そいつはどうも。気を使わせたようで何だか悪いね。」
軽く肩を竦め、獣の如き瞳をした男の視線に、黒コートの男も軽く視線を返す。
敢えて形容するなら、流れて固まったような血のような色の、赤黒い瞳。
その視線は、不吉さを思わせる瞳の色とは逆に何処か掴み処のない、飄々としたものを感じさせる。
「異邦人、か。成程、その口ぶりじゃあ、「他所」から人がやって来るのはそれ程珍しい訳でもないんだな。
恰好云々は見逃してくれ。これでも色々便利なもんでね。」
そう返しつつ、赤いマフラーを軽く後ろに流し直す。
随分と端がボロボロの、どれだけ使い込まれたのか分からない代物だ。
「しかし――ああ、喧嘩を売る訳じゃあないが、随分といい体格をした兄さんだな。
……方向性はまるっきり違うが、その剣呑さ。俺が探してる奴と、どっか似ている。」
■虞淵 >
「あァ、特に此処はな」
馴染めるヤツは異邦人街に格納される。
だがそもそも世界に適合できない連中が多いのは異邦人だ。
此処とは違う世界からの闖入者、大体が事故でやってくる。
そうなったヤツは不法入島者扱いでスラムに身を窶すのは全く珍しくない話だ。
「くく、何だ。喧嘩なら喜んで買うってのに」
まぁ、ヤル気がないヤツとはやる気はしない。
「なんだいアンタ。誰か探して旅でもしてんのか。
くく、剣呑な相手が探し人とは、変わったオッサンだな」
男は肩を竦め、煙草の灰を落とす。
「だったらこの辺りは向かねえな。
人もゴミも散乱してる見ての通りのスラム街だ。
探し人どころか迷子を探すのも一苦労ってモンだぜ」
■九耀 湧梧 > 「冗談。」
喧嘩を買う気満々だった相手には、苦笑しながら小さく手を広げてみせる。
「どんな鍛え方をしたんだか――あるいは天賦の身体って奴か。
俺もそれなりには鍛えてるつもりだが、兄さんにはとてもとても。正面からの殴り合いじゃ勝てる気がしない。」
世辞でも卑下でもなく、心からの言葉である。
もしもこれが天賦のものだというのなら――己の鍛え方が酷く小さく感じられてしまう。
全く修練が足りない。口の中で、小さく己への愚痴を噛み潰した。
「ま、確かにそりゃそうだ。普通の相手を探してるなら、此処は不向きだろ。
――だが、あの女ならこの辺をほっつき歩いててもまるで不思議じゃないからな。」
其処まで口にして、む、と眉根を寄せる。
「…少し口が滑ってしまったな。ま、探してる相手ってのは女さ。
それも割と危険な女。――女の尻を追いかけてるなんて、女々しい奴だろ。」
それでも、自身はそれを決して愚行とは思っていないのか。
口元がつい、と少しだけ剣呑な微笑を浮かべる。
■虞淵 >
「クク。そりゃあそうだ。
そもそも戦力に関して俺と俺以外を比べること自体が無意味だ」
自負心に溢れた言葉。それは実体験も含めてのものか。
しかし大口には然程聞こえないのはその威風の為せる業か。
「…どんな女だよ」
思わず呆れ顔。
こんなスラムをほっつき歩いていておかしくない女?
まぁ、たまにはいるが…。男に追われるタイプの女どもじゃないな。
「ふ、口は開けば開くほど滑るもんだ…。
ああ実に女々しい。それが別に悪いとも思わんが」
要するに危険な女に惹かれ追っている、と。
「さて、しかし危険な女ねェ。
落第街の噂話は大体は耳に入ってくるが、最近は聞かねェな…」
■九耀 湧梧 > 「ははっ、他の奴なら兎も角…あんたがそれを口にすると、まるで疑う気が起きないな。世界ってのはホントに広い。」
事実である。今まで色々なモノを見て、色々な者に遇って来たつもりだったが、此処までシンプルで、かつ
完成されていると言える「力」の象徴者は、見た事がなかった。
――最も、完成されているというのは語弊があるかも知れない。
男は若い。未知の可能性を抱えている事も、充分考えられる。
「そうだな、一言で言うなら――刀のような女だ。
一度抜き放たれれば簡単には収まらない、恐ろしく斬れる妖刀のような女。
で、その刀をモノにしたくて、女々しくその尻を追いかけてるのがこのオッサンって訳。」
酔狂だろ、と軽く腕を組んで、小さく息を吐く。
酔狂どころか、物好きの狂人としか思えない。
「ふむ――正直、どんな情報だろうと俺には貴重だ。有難い話を聞けた。
となると…あのクソガキ、ガセを掴ませたんじゃないだろうな…。」
噂を聞かないという言葉には感謝の意を示すが、何処かの誰かに向かって小さく怒りの呟き。
■虞淵 >
「そんなヤツが表立って現れてたら俺が真っ先に味見に行くってもんだ。
似たようなヤツはいたが…そいつはアンタよりちょい若いくらいのオッサンだったからな」
かつての奴との殺し合いを思い出す。
何度かやり合ったが明確な決着はつけられなかったのが心残りではある。
それでは倒壊しまくった廃ビルどもも浮かばれないってもんだ。
「くく。命知らずでないなら確かに酔狂だが。自覚があるヤツは珍しい。
そんな女がいたとしてここらで表をうろついてりゃあ噂にはなるだろうからな」
となれば、表に浮上していないか。
男が呟く怒りの先が漏らしたガセネタか。
■九耀 湧梧 > 「おっと、こりゃ失言だったか。
しかしまぁ、何処の世界にも物騒な奴はいるもんだねぇ。」
男とはいえ、似たような奴がいるという言葉には思わず顎に手を当てる。
そんな手合いがいたら一手御指南頂きたい所だが、生憎今は探し人の方が優先である。
「むぅ……本格的にガセだったか、あるいは表に出ずに身を隠してるか。
こういった世界の法的状況じゃ、言っちゃ悪いがあの女は犯罪者だからな。
ま、見切りを付けるにはまだ早い。
もう少しばかり悪足掻きを続けてみるとするさ。」
時間を取らせて悪かったな、と軽く手を上げると、黒いコートと赤いマフラーを靡かせ、男は歩き出す。
一度だけ、獣の如き男の方を振り返り、
「――九耀湧梧だ。名乗るのを忘れていた。
興味がないなら、直ぐに忘れてくれて構わんぜ。」
そう言い残し、ひらと手を振ってこの場を歩き去っていく。
最後まで、風紀委員の事を気に掛ける素振りは見せなかった。
ご案内:「スラム」から九耀 湧梧さんが去りました。
■虞淵 >
「九耀湧梧、ね」
ありゃあやるヤツだ。
飄々とした雰囲気を出してはいるが、内に秘めてるもんがある。
かの人斬りほど血気盛ん…とまではいかないのが惜しい。
最後まで横たわる虫を気にする素振りは見せなかった。
前にあった女教師もそうだったか。
まぁ、こんな場所に来るヤツはどこかイカレてんだろう。
「オイ」
地べたで寝てる虫を蹴り転がし、起こす。
「いい加減お前らのボスを此処に連れてきな。
誰のこと?理解ってンだろうが。お前らを鍛えてるヤツがいる筈だ。
以前はここいらで派手に違反部活をやり合ってた筈なんだがな───」
煙草を落とし捨て、踏み消す。
「ソイツが出てくるまで見かけるたびにお前らを狩ってやる」
低く、響くような声でそんな言葉を言い残し、男は踵を返し歩き去った。
ご案内:「スラム」から虞淵さんが去りました。
ご案内:「スラム」に六道嵐さんが現れました。
■六道嵐 >
「おまちあれ」
ぺた、ぺた、ぺた。
うらぶれた街の成れ果ての路を素足がゆく。
硝子片、瓦礫、それらを踏もうと止まらない。
「わたしめの用」
きり、きり、きり。
硬く舗装されている路を削るは鋒。
矮躯と言って遜色ない身の丈に、似つかわしくない長尺が。
火花を立てて引きずられる。
「まだここに……」
哀訴……そんな切なげな声。
喉の渇いた高音は、隙間風のよう。
■六道嵐 >
それは追走の歩み。
矮躯の少女に背を向けたは此処に蔓延る無頼漢。
必死に駆けるやつんのめり、息切らして逃げの一手。
「去りがてに……」
ぴた。
金属の音が止む。
腕が持ち上がった。
「見せたあの業」
とん。
瓦礫散らすは、素足が跳ねる。
風に揺られた風船のように奇怪な軌道で舞う少女。
瞬く間に間合いを詰まる。
「いま一度……」
嗚呼然し、届かない。
少女の尺では、届かない。
ひゅ、と風を切った刃の鋒と男の背、悠に一尺は隙間があった。
■六道嵐 >
しかし。
男は倒れ込み、その服の背にじわりと広がる赤。
如何なる異能か鎌鼬か、ぶんと血を振る音は大仰。
「後生にて……」
それでもどうにか逃げんとする男に、月を背に立つ影ひとつ。
小さい諸手を柄に這わさば、くるりと刃は反転し。
大地を向く鋒ぴたりと、その傷の中心を指す。
「見せてくれねば……」
少女の表情は薄暗いまま。
しかしそこには見咎めの色。
どうしてどうしてと、男の無頼に振り回されたような。
男の恐懼の声が響く。お前はなんなのかと。
「……お命を」
■六道嵐 >
振り上げられる。
血の伝う刃が月光を吸った。
ぬるりと若鮎のごとく跳ねる残光が。
「………遅かった」
翳る――
慌ただしく、響く足音の群。
「多勢に無勢……」
これではよくはない。
見回りの類が増えている。
ぎゅっと悲しげに眉を寄せた。
「いざ、去らば……」
とん。
ひと跳ね、少女は消ゆる。
秩序預かりに、男は連れてゆかれるだろう。
こんな場所に来るのが悪い。
下手人は、そんな程度のもの。
今は未だ。
ご案内:「スラム」から六道嵐さんが去りました。
ご案内:「スラム」にイチゴウさんが現れました。
■イチゴウ > 闇に包まれていたスラムの一角に
空の彼方から日が差し始める。
夜明け。
殆どの生命体が寝静まるこの時間。
スラムに轟くミニガンのけたたましい銃声。
規則正しい金属の雑踏音。
物言わぬ疲れも知らぬ機械達は
時間帯など気にせず動き続ける。
■イチゴウ > 「当該区住民に告ぐ。絶対に外には出ないでほしい。
繰り返す。絶対に外には出ないでほしい。」
目覚め始めたスラムの住人達が聞くのは
男の声の放送と不気味なサイレン。
今まで鳴ったことのないその警報は
異常事態が起こっていることを如実に表していた。
「食糧及び生活用水の配給は3時間後に実施する。
絶対に外には出ないでほしい。」
機械の声は外出の禁止を繰り返し呼びかける。
楽園の外で何かが蠢く...
■イチゴウ > 日付が変わった辺りからだ。
楽園の周辺に無数の紅い棘が現れ始めたのだ。
それはゆっくりと蠢き、生命体を追尾する。
例の怪異に起因するもので間違いはないだろう。
しかし、このような特徴を持つ要素は無かった筈だ。
つまり恐れていた事態が発生した。
高性能観測機Unknownことホロウによって存在が示唆されていた
紅の怪異の「新型」がスラムへ攻勢を開始したという事になる。
毒素を散布し移動する個体。
そしてこの棘に関与する個体。
恐らく2つの個体による同時攻撃を受けている。
ユートピア機構の対応としては
怪異因子処理及び非感染者探索のため
スラム中に散らばっていた武装ロボットを
楽園防衛のために集結。
おびただしい数の武装ロボット達によって
棘の徹底的な掃討が行われる。
紅い怪異への攻勢から防戦へと転換する形となる。
■イチゴウ > どうやらこの「新型」。厄介な性質を持っている。
そもそもユートピア機構は紅の怪異対策のために
偵察ロボットを設置し観測を行っている。
毒素をばら撒く個体についてはこの観測でその存在を補足することが出来た。
ただこの「新型」。
楽園を取り囲む棘以外に反応が検出されていないのだ。
言い換えれば本体が見つからない。
此方の探知に対し極めて高いステルス性能を持っている。
現状打つ手がない。
どこからともなくやって来る棘を叩き落し続けることしか出来ない。
更に恐るべき事実がある。
この明確に楽園を狙った攻撃を「新型」が繰り出してきたということだ。
つまり、あの怪異は共通のネットワークを用い
個体間で情報を共有しているということになる。
本体を撃破しない限り、永遠にいたちごっこが続く。
■イチゴウ > だがあの怪異は因子を媒介できない存在。
今の場合は機械を避ける。
だから機械では紅の怪異の本体に迫ることは極めて困難だ。
それは即ちあの怪異に感染し得る存在でなければ
紅の怪異に致命的な一撃を叩き込めない事を示している。
ゆえに機械は間接的に紅の怪異に打撃を与えようとしてきた。
怪異因子を媒介し得る存在の処理を徹底的に進め
未だ感染していない者たちを多くこの一角に収容した。
しかしそれが見事に仇となった。
生命の気配に誘われ
蠢く紅き棘がどんどん溢れかえる。
■イチゴウ > ゆっくりと追い詰めるようににじり寄る棘は
人々にとって不安と恐怖の象徴となる。
潰しても見えない所からやってくる
終わりのない紅い脅威。
絶望すら感じるだろう。
人であれば。
「拡張弾倉認識。
残団確認、残り10000。」
楽園の司令機が背負うミニガンユニット。
その他の武装ロボットが背負うものとは異なり
ドラム状の巨大なマガジンが装着され
圧倒的な継戦能力が約束されている。
機械は絶望を感じない。
疲れも知らない。
無機質な性質と物量を以て
機械の軍勢は紅き脅威に立ち向かう。
確かに機械では紅き怪異を滅せない。
だがそれは別の可能性が生まれない事を意味しない。
司令機が歩みだす。紅き闇の渦中へ。
■イチゴウ > 紅く染まりゆくスラム。
機械達の、地獄の防衛戦が幕を開けた。
ご案内:「スラム」からイチゴウさんが去りました。
ご案内:「スラム」に紅き羽搏ク針鼠さんが現れました。
■紅き羽搏ク針鼠 >
最 低 の 卑 怯 者 。
■紅き羽搏ク針鼠 > スラム街
最低の卑怯者が"どこからともなく"
姿を隠匿し
機械どもの喧騒を見下ろす。
この怪異は言葉を持たぬ。
だが、
もはやその思考は
人間と同等
言葉を解して
思考すると言って良い。
故に
怪異の思考を開示しようか?
■紅き羽搏ク針鼠 >
素晴らしい…
素晴らしいねぇ…
お前らは、本当に…素晴らしいオオマヌケ共だよ…!!
■紅き羽搏ク針鼠 > 針を落とした。
ゆっくりと動かした。
生命体を狙った。
やつらは"思った通り"迎撃してくれた。
つまり"排除する必要がある"モノだと認識してくれたわけだ。
"人の生活を脅かす"ものだと。
■紅き羽搏ク針鼠 > ……ところで、
気づいているかね?
"あえて"ゆっくり動く針を大量に撒いていることに。
■紅き羽搏ク針鼠 > ゆっくりゆっくりと。
まるで
"人の目に触れさせて"
"迎撃してください"
と言うようになッ
■紅き羽搏ク針鼠 > 理由は3つだ。
1つ。人間どもに"わざと見せて恐怖心をあおるため"
2つ。打ち落としやすい脅威で"弾薬"や"燃料"への兵糧攻め返し。
3つ。これが最も重要だ………
■紅き羽搏ク針鼠 >
何だか、分かるかね?
考えて見るがいい。その機械の脳味噌で。
この問題は―――機械共への挑戦状だッッ!!
■紅き羽搏ク針鼠 > 最低の卑怯者は…また、消えた。
ご案内:「スラム」から紅き羽搏ク針鼠さんが去りました。
ご案内:「スラム」にDr.イーリスさんが現れました。