2024/07/04 のログ
■Dr.イーリス > 障壁を無意味と化す地形の変形。
高熱の業火が花を溶かしていく。
燃え上り、朽ちていく花。
意識が遠のく中で、イーリスはそんな花を目にした。
その光景が見れるのは、僅かな時間だけだろう。
溶岩に咲き誇る一輪の業火に煌めく花。
芸術的、そのような印象も抱いた。
だがその禍々しくも綺麗な花は、人々を苦しめた猛毒……。
「……き……れ……い…………」
意識を失う前にイーリスが最後に見たのは、そのような幻想的な火炎花だった。
花を撃つ事ができた……。
「(これで……スラムの皆さんが笑顔を取り戻してくれるでしょうか……)」
いや……まだ……。
紅き花の脅威が去っても、何も解決していない。
「(まだ……終わっていません……。針をばら撒く鼠にも逃げられました……。ま……だ……何も……)」
どうして、一回目に花を討滅できたと思ったのに、その花の奇襲を受けたのか、遠のく意識でイーリスは理解した。
屍骸同士の連携だ。
紅き屍骸同士は意思疎通しており、集にして個。
針鼠の針により形成された花に謀られた。
脅威は全然去っていない……。
「(だけど必ず……決着を……)」
新たな決意を固めると同時に、その意識は途切れた。
その後、動けなくなったイーリスを回収したのは仲間の不良達だった。
不良達によりアジトに帰還したイーリスは、自らが造りだしたカプセル型の医療機械で治療を受ける。ちなみに、かなり重いメカニカル・サイキッカーは大人数の不良によりアジトに運ばれた。
今はまだ、精神力で感染を免れている。しかし、幾度も精神力で感染が耐えられるとも限らない。
そして、二度、三度、四度と感染の危機を繰り返すたびに、薬液による治療が効かなくなってくる可能性も考えられる。
今回は痛み分けで花の討滅に成功した。
──次は紅き屍骸を殲滅せんと、イーリスが主導する大規模な作戦が始動しつつあった。
■紅き死ノ花 > ―――こいつは。
……どこまで、脅威となれば気が済むのだ?
やつは決死で鮫を打ち砕いた。
この街を守るために治療薬をばら撒いた。
表に出てまで治療薬を撒いた形跡すらある。
そして今日。
"花に対して最適解を持ってきて"
"想定外の自体―――"
"もう一体の刺客の妨害を"
"命からがら跳ねのけて勝利をつかんだ"
そして。
"死にかけてもまた戻ってくる"
"結束した仲間によって"
"あの重いモノを仲良く運ぶような忠誠心の高い奴らを従えて"
―――本気で…いつまでも、余裕をこいていられるのか?
最近新しく蟻人共を取り込んだが、
こいつの目に触れさせたら、
きっとまた
"最適解"を持ってくる。
この女は、危険だ―――
■紅き屍骸 >
切り札を、切る時が来たか。
ご案内:「スラム」から紅き死ノ花さんが去りました。
ご案内:「スラム」からDr.イーリスさんが去りました。
ご案内:「スラム」にイチゴウさんが現れました。
■イチゴウ > 「こちら風紀委員会、ユートピア機構、チャリティーアーミー。
間もなく食糧配給を開始する。」
機械が囲むスラムの一角。
最低限だが確かな食料と寝床が約束される場所、楽園。
ノイズが混じる男の声で放送が行われる。
香ばしい香りとスピーカーから愉快な音楽が奏でられる。
陸路からは風紀の紋章が刻印された無人電動トラックが
空からは巨大な無人輸送用クアッドコプターが
ひっきりなしに往来し物資を下す。
紅き大海原に孤島のように浮かぶ楽園。
その内に緊張は波立たない。
住まう人々は当たり前の如く明日を迎える。
着実と機械はスラムに根を張ってゆく。
■イチゴウ > ユートピア機構は落第街深部の機能維持の為、
紅き怪異への対策を今もなお実施している。
特に突如周辺に現れだした紅い色の奇妙な棘。
その動きは奇妙なほど遅く、楽園周囲では
数機の武装ロボット達がその処理に当たる。
人々が配膳ユニットを背負うロボットから
暖かい食料を受け取る最中、
ユートピア機構の脳味噌、司令機イチゴウは思考していた。
あの怪異の一部と思われる棘だ。
あの棘は人々をじりじりと本能に訴えかける恐怖を与えながら追い詰める。だが遅い。
針から走って逃げこの楽園に逃れた非感染者もいた程。
電気信号に違和感の波形を作る。
あの怪異は怪異因子を広げることを目的にしていると
本機構は考えている。
その考えに基づくならこの棘の速度はおかしい。
もっと速ければ多くの人間を串刺しにし、感染させられただろう。
「これは、感染拡大のためのものではない。」
そうだ。紅き怪異の攻勢ではあるが攻撃ではない。
別の狙いをもって仕掛けてきてると結論付けて良いだろう。
あれは何かの布石だ。
■イチゴウ > ここから導き出される一つの推論。
紅き怪異とは無機質な細菌のような存在ではなく
悪意を持った明確な知能を備えている。
単なる「駆除活動」では効果を示さない。
ユートピア機構はアプローチを変える。
今までは手札をふんだんに使っていた。
ここで手札を温存し、山札から引き続ける。
そもそもユートピア機構の戦力となる
四足ロボットことHMT自体は減っていない。
むしろ連日の輸送によって日に日にその総数を増していく。
紅き怪異は確かに落第街の生命を侵し多大な影響を与えている。
しかし機械を壊してはいない。
ユートピア機構にダメージは入っていない。
紅き怪異は高い知能を持っているゆえに機械を避けた。
あるいは今回の針のように何か別の意図があるのかもしれない。
運び続けられるロボット、設備、物資...
そして針の一斉掃討を抑え、備蓄を重視した。
機械達のリソースは怪異対応当初からは
想像もつかぬほどに膨れ上がっている。
■イチゴウ > 運び込まれる物資やロボットは
楽園に住まう人々に少なからず安心感を提供する。
管理体制というものは非常時にこそ一番揺らぐ。
身の回りの出来事による不安が伝播し
それが不信感へと繋がり人は暴走する。
それを機械は知っている。
物資配給の時間は決してずらさない。
光は必ず灯し続ける。
運び込まれるロボット、物資をあえて見せる。
楽園内に被害を一切出さない。
徹底した統制により人々の思考を支配する。
そして増え続けるリソースにより楽園の拡充も進む。
一角を取り囲む高強度フェンスの建造。
さらなる種類のHMTユニットの配備。
大型電源ロボットの投入により高出力レーダーユニットが稼働。
超広域での探知が可能となった。
しかしその一方でだ。
本機構が幾ら強力になった所で
かの怪異の性質は変わらない。
機械を避ける。その一点の性質によって
機械だけでは怪異に迫れない。
数値で観測できぬ紅き針の主に迫れない。
別の可能性が必要だ。
■イチゴウ > そう、別の可能性だ。
■イチゴウ > 楽園の拡充が進められる最中だった。
超広域レーダーが捉えたものがある。
それは2つ。
1つ目。
スラムへ本機構が最初に対応に当たった毒素の霧。
それを散布したと思われていた転移する数値。
これが途絶えた。
最初は変動し移動したのかと思われていた。
だが違う。「消滅」したのだ。
なお、公的な記録に新たに怪異の討伐はない。
そして2つ目。
新たに観測された数値があった。
それは今までに現れていなかった数値。
その所在は...
「空」。
但しその数値は長い時間を経たずして消失した。
そして今に至るまで再出現はしていない。
それが何であるか断定は出来ない。
だが機械は怪異の一端を「知った」。
小さい誰かが起こした可能性が
大きな風となって空間へ波及してゆく。
■イチゴウ > 機械には圧倒的な物量がある。
卑怯者を、写し出せ。
この時から。
楽園から延びる赤い照準レーザーが夜空を照らす。
ご案内:「スラム」からイチゴウさんが去りました。
ご案内:「スラム」に紅き羽搏ク針鼠さんが現れました。
■紅き羽搏ク針鼠 > ―――。
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるな。
■紅き羽搏ク針鼠 > 全部、全部あの女のせいだ…!!
あの女の前で"姿を晒した"せいだ…!!
機械共が夜の空の索敵をし始めやがった
何処に潜伏しているか、おおよそあたりをつけやがったんだ。
―――つまり。
"攻撃行動が出来なくなった"事を、意味する。
やつらの索敵網にかかるからだ。
■紅き羽搏ク針鼠 > 手も足も出ない。
…撤退しかないのか?
つまり―――それは…
負けを、意味する?
この俺が?
機械共に?
負ける?
否
否
否
否ッッ!!!!
■紅き羽搏ク針鼠 > やつらは監視していると
"不安感"への対策の食糧補給と防衛網の強化
"兵糧攻め"への対策の戦力増強と輸送の強化
はしている。
やるな!
おめでとう。
まずは20点あげよう。
―――さて、新たに射出せず動かせる針の残数は、
あと…360くらいか。
十分だな。
■紅き羽搏ク針鼠 > ラストアタック。
この行動が俺の機械共への最後の一撃。
今明かそう。
―――伏せていた3つめの理由を。
針を、
途中までゆっくりと、
そして―――急激に加速させる。
無差別に。
機械も、生命も、
動くものを狙う。
それも"配給を行う武装手薄な時間帯に"だ。
■紅き羽搏ク針鼠 > さあて。
"遅さ"に慣れ切った人間ども。
"狙われるはずがない"と思っている機械ども。
いつも通り楽しい食事が食えると思っているオオマヌケ共。
この急激な変化のある悪意の針に対応できるかなぁ?
楽園はいつまで楽園であれるかなぁ?
全員、死ねッッ!!
■紅き羽搏ク針鼠 > 機械諸君ッッ!!
お前らはこの"答え"に辿り着けたかな?
100点満点に出来るかな?
さあ―――
■紅き羽搏ク針鼠 >
答え合わせの時間と行こうじゃないか。
■紅き羽搏ク針鼠 > その日を最後に、針の襲撃は来なくなった。
索敵から逃れる卑怯者―――。
ご案内:「スラム」から紅き羽搏ク針鼠さんが去りました。
ご案内:「スラム」に先生 手紙さんが現れました。
■先生 手紙 >
「よ、っと」
派手に割れたアスファルトを飛び越える。地震か雨の影響か、それとも戦闘痕か。何でもいいのだが、ココの整備にまで、表の人数は回せまい。
そんな荒れた道と廃れた家屋。棄てられた人と物の行き着く先で、男は探し物をしているわけで。
「あー。頻繁に寝床返るっつってたか。アポなしの凸は骨が折れそうだな、っと」
封鎖区域を壁の出っ張りに足を引っかけて飛び越える。こんなのはただの曲芸だ。ついでにお捻りを貰えるような芸でもなければ、彼らにそんな余裕もなかろうよ。
■先生 手紙 >
――虱潰しにドアを開けて回る、は悪手だ。押し入り強盗と大差がない。
となれば確かな宛てか……そうでなければアテカンか。まァどちらも大差ないなァ、と目星を付けた建物の一つに足を向ける。
「ごっめンくださァ~……」建付け悪っ。えい。この。おりゃ。ばたん。
「~~ァい」
声を掛けちゃいるがパッと見は完全に不法侵入者のソレであった。
■先生 手紙 >
「…………?」
中身はもぬけの殻だった。いや、それは別にいい。
破れたソファ。電源が入っていないのか、風に任せてくるくる回る換気扇。ガタついたテーブル。荒れた室内だ。
(血痕……)
そんな『廃屋』に、ドス黒く乾いた『赤』が着色されていた。
煙草を銜える。火を点ける。紫煙を吐く。
「ふーっ……」
加味すべきかどうか。血は乾いて久しいと見てわかる。――それが、血であったことも。
■先生 手紙 >
「…………」
ぎしり、とホコリまみれでスプリングもイカれたソファに腰を下ろす。
――此処で何があったか、をトレースする意味、というか技能が無い。異能のある世界で、特に自分と関係の薄い状況の過去を洗う意味は。
『此処で何かはあった』程度に留めておく。
「それより言い訳考えとくか」
家主が普通に住んでたら、鉢合わせた時にバツが悪い。でもこの生活感の無さはどうだ?誰かが暮らしている、という進行形を否定できる。
なら考えるべきは……ここが空き家だとして。新たな入居者がいないというところか。
■先生 手紙 >
「或いは……あァ、嫌だ嫌だ」
ソファから立ち上がる。ケツをパッパと払って屋内を見渡す。手入れの行き届いていない、このスラムによくある廃屋だ。
ただの、を枕詞に付けるには早い。
机の位置はどうだ?妙な調度品は?――ほんとうに、嫌になる。
『今』ソレを捜査して何になるのか。大筋から外れた行動だ。
ぎしり、と床が軋んだ。
「あー、クソ」
踏み込んで一服して、それ以前にホコリの無い……動かした痕跡を見つけてしまった自分にこそ毒づく。
それは、それこそ座っていたソファのすぐ横だった。血痕の上にもホコリは積もっていた。なら、ここで事件があったこと。それより後に、この部屋でソファが動くようなことがあったということじゃあ、ないか。
どかす。大した力は要らなかった。
――本当に。こんなことをしてる場合じゃあ、ないンだが。
『入口』を見つけてしまったからには、仕方がない。
違反部活かただの悪党か。それとも怪異の巣窟か。候補はいくらでもあるし、男が踏み込む理由でもあった。
■先生 手紙 >
――さて。鬼が出るか蛇が出るか。
「ソレくらいなら、楽なンだけども」
黄泉の穴の分家筋でもあるまいし。
果たして男は、虎穴か渦中か。ともあれその『穴』へと踏み込んだ。
ご案内:「スラム」から先生 手紙さんが去りました。