2024/07/07 のログ
■九耀 湧梧 > 「成程、でかいだけの蟻かと思ったが、存外に頭が回るらしい。」
兵糧攻め、波状攻撃、切れ目のない物量作戦。
確かに戦の常道だ。理に適ってはいる。
その手立てを悪辣だ何だと糾弾するつもりは端からない。
戦い――いやさ、"戦争"に正々堂々だの礼儀だのを期待する方が間違いだ。
「――そして、お前は言ったな。
"俺を殺すのは手に余る"、"勝利を見る程愚かではない"。
だがそれでも"避けて通る"選択肢は取らなかった。
つまり――――」
こいつらは恐らく、「病原体」のようなものを持っている。
それがどんな性質かは分からないが、思い当たる所は時間を置けばじわじわと効いて来るタイプ。
「――"俺に何かの手傷を負わせる"事が目的!」
その声と共に手にした刀を軽く宙へ放り――念を籠めると同時に、「それ」を巨人蟻が放つ弾丸の嵐に向けて翳す!
念動力で操られるように、超高速で回転する刃の壁!
シールド代わりに翳された超高速回転する白刃が、吐き出される多量の弾丸を次々と弾き飛ばす!
無論、そのまま棒立ちでいる程、この男は単純ではない!
こちらに銃撃を集中している巨人蟻の頭上に、瞬時に展開される赤紫の光の剣。
一本二本どころではない、逆さの剣山のように多量配置されたそれが、無音のまま五月雨のように巨人蟻に降り注ぐ!
■紅き弾丸ノ紬蟻人 > 「んんん。貴様も殴り合いだけが取り柄ではないようですぞ。」
「やりますなぁ!……下等種族のくせに!」
その通り。
少しでも傷つけられればいい。
大正解だッ!
そして、病原体…それも正解。
「くッ…!」
この銃弾の雨を防ぐとは……!
刃でだぞッ?!
そして反撃で来る光の刃―――ッッ!!
「ぐっ……!この……ッッ!!ふん――ッッ!!」
その巨体が、地を足蹴にして衝撃を巻き起こすッッ!!
こいつは遠隔攻撃も出来るとは聞いていたが、これほどとは……ッッ!!
衝撃で弾き飛ばし切れず、
巨体に剣が突き刺さってくる……!
初手で理解する、
劣勢……!
花では退くしかないわけだッッ!!
だが……!
「弾薬変更。―――侵蝕激酸弾ッッ!!」
生命そのものすら融解する異能性の凶悪な酸液。
着弾点よりそれを拡散する弾薬に打ち換えるッッ!!
飛沫する酸液は
防ぎにくさも
避けにくさも
卑劣さだって
折り紙付き――ッッ!!
■九耀 湧梧 > 「はっ、兵隊蟻にゴミ扱いとは心外――だね!」
不意打ちで頭上に配置した幻魔剣の雨で攻撃が一時でも止まれば、素早く刀を手元に戻す。
――その有様は、異様だった。
銀の白刃は、所々がひび割れ、剥げ落ちている。
その偽物の白刃の下にあるのは――黄金のような輝きを帯びる、木目も確かな、木刀のような刀身。
されども、その刀身は折れるどころか裂け目ひとつない。
そして、相手が新たな攻撃を仕掛ければ、
「――ひとつ、アドバイスをしてやる。」
その言葉と共に、何かを投げるような仕草。
それは、赤紫色の光の小剣。
「お前ら、自分達以外を嘗めてかかってるだろ。
でなきゃ一々、自分の能力の宣言なんかしない。」
酸の液が迫る。
投げた小剣は、巨人蟻のすぐ近くに突き刺さる。
「そんな真似をするから、」
■九耀 湧梧 > 『少し頭の回る相手には手の内を読まれて、噛みつかれる事になる。』
■九耀 湧梧 > 酸液が直撃する直前、その姿が忽然と消え去る。
否、すぐ近く、刃の届く範囲に現れる。
打ち込んだ光の剣をマーカーにしての、瞬間移動――。
直後、塗装の剥げた刃を真一文字に振るう。
刃の無い筈の「竹光」は――「剣気」を纏った刃となって、
蟻巨人の腹に、一文字の傷を付けんとする。
致命傷には届かない、否、敢えて「届かせず」においた、相手の卑劣に対する、最悪の挑発――。
■紅き弾丸ノ紬蟻人 > 「クックック……!嘗めてかかっている?」
「否」
「下等種族は下等種族故下等種族です。」
「貴様はゴミを嘗めてかかるのか?」
悪辣に笑う蟻。
「否」
「ゴミはゴミらしく足蹴にされるものですぞ。」
舐めてかかっている。
そうではない。
蟻人にとって、下等種族とは、
足元に転がるオモチャに過ぎない。
故に。
噛みつかれる。
「グッ……っふ…!」
その。
下等種族と見下した相手からの一撃に。
目論見通りに、
大きな腹に
敢えて致命傷を避けた傷を
受ける
「―――この、蟻人を」
「蟻人四天王を」
「この"バレッタ"を…!」
「侮るなアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!!!!!!!!!」
「チッ…!」
こんなゴミに…これを使うのか?
…!否。
こいつは侮った。
許される事ではない。
■紅き弾丸ノ紬蟻人 > 「弾薬変更―――絶対殺戮殺戮殺戮弾ッッッ!!!」
■紅き弾丸ノ紬蟻人 > その弾丸は
時に
毒であり
焔であり
酸であり
殺戮である
一撃一撃を
防がれぬように重く
避けられぬように幅広く
侵し
燃やし
溶かし
殺そう…!
■九耀 湧梧 > 「そら見ろ。」
にやり、と、獰猛な笑顔。
「どうだ? 下等生物に噛み付かれた気分は?
随分と伊達になったじゃあないか!」
その言葉と同時に、偽りの白刃が剥げ落ちた刀を素早く鞘に収め、構えの動作。
「侮る? 失礼だな、冷静な状況判断と言って貰おうか。
そしてもう一つアドバイスだ。
そうやって簡単に冷静さを失うから、」
「懐に入った獲物に逃げるチャンスを与える事になる。」
■九耀 湧梧 > 直後、放たれるは抜く手も見せぬ居合の嵐。
毒と酸は「流れ」と「空」を斬られて止められ、
焔は「界」を斬られて分断され、
殺戮は「純然たる技能」によって受け流される。
加えて、「界」を斬った事で一時的に「世界」が裂け、それが振るった者の姿を覆い隠す!
世界が「斬られてずれる」という奇怪な現象は、まるで跳躍するように、次々と巨人蟻から離れてゆき――
『――じゃあな!
生憎、お前らに興味はない。ただ、降りかかる火の粉を払わせてもらっただけなんでな!』
何処から響いているのか分からぬ声を残して、
黒いコートの男は、完全に見えなくなった。
■紅き弾丸ノ紬蟻人 >
「逃ィィィげるなアアアアアアァァァァァーーーッッッ!!!!!」
■紅き弾丸ノ紬蟻人 > ゴミに…逃げられた?!
傷をつけるだけ、つけられて…?!
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるな。
激憤を抱きながら、
弾丸ノ紬蟻人は、
当然
裂けた世界に隠れる男に
追いつくことも出来ず。
虚しく怒声を響かせるだけだった…
ご案内:「スラム」から紅き弾丸ノ紬蟻人さんが去りました。
ご案内:「スラム」から九耀 湧梧さんが去りました。
ご案内:「スラム」に『虚無』さんが現れました。
■『虚無』 >
七夕の日。空から甲高い音が鳴ると同時にそれは降下。その場を吹き飛ばす。
感染地帯。既に紅に染まったその地を即座に殲滅する。前までは裏切りの黒として隠れる必要があった。だが、今は違う。隠れ蓑を得た。
どれだけ暴れようと公安にひっかぶせばいい。もはや彼に枷など存在しない。
「いくつだったか」
既に小規模を合わせれば感染地帯をいくつ潰しただろうか。彼女の部下の手向けとしては上々。裏切りの黒の仕事、つまりはこの街の秩序の維持という意味でも上々の戦果だ。
着陸したその感染地帯は少し大規模だ。流石にすぐに殲滅とはいかないだろう。
「少し探るか」
感染地帯を悠々と歩く。毒があるかもしれない、だが既に種は割れた。であれば自身の能力で空気中の毒を弾けばいいだけ。
空気による毒はもはや自身には効かない。
■『虚無』 >
とはいえ、現状大物は始末出来ていない。ゾンビ等の所謂小物ばかり。
大物を倒さなければ奴らへの直接的な被害にはならないだろう。だが、逆に自分にヘイトが向く分には願ったり叶ったりだ。
協力者が彼女を救い出せるまで、徹底的に奴らのターゲットになり、そして彼女が戻った時により絶望的な状況に陥っていないようにする。それが自身の仕事なのだから。
出会いがしらのゾンビを拳の1撃で沈める。ゾンビからは破裂するような音がしてその場に崩れ落ちた。
「ここもゾンビ程度か」
とはいえ、ヘイトを集めるにもやはり大物を落とす必要がある。潰したゾンビに心の中で手を合わせながら感染地帯を突き進む。
ご案内:「スラム」に紅き羽搏ク針鼠さんが現れました。
■注釈 -生体解説- > 紅き羽搏ク針鼠
翼の生えた超大型針鼠。
かなり危険な怪異。その姿を見たならばすぐに逃げる事。
隠れることを好むため、逃げるだけならば容易い。討伐を狙う場合は串刺しを覚悟せよ。
空から生命をめがけ、コソコソと罠を仕掛ける姿は卑劣そのもの。
■紅き羽搏ク針鼠 > "そいつ"は知恵を持つ
故に"そいつ"は姿を現さない。
最低の卑怯者。
紅き屍骸を
刈り取る
貴殿の
背後の隙を
ずっと伺っていた
そして今ッ!
一撃で屍骸を屠った隙を見て、
計10の"邪悪な殺戮の針"が
貴殿の背後より放たれたッ!!!
■『虚無』 >
後ろから迫る10の殺意。もし彼が普通の者ならばその攻撃は通り、ここには穴の開いた新たな紅の化け物が転がっていたかもしれない。
だが、彼は普通ではない。秘密組織であり隠密機関……それらに特化した組織。その実働部隊筆頭の1人だ。
「前の攻撃、お前か」
前に後ろから狙われた事を思い出す。後ろから迫る針はまるで見えざる壁に阻まれるがごとく、甲高い音と同時に跳ね返される。
「丁度良い、あの機械を取り囲んでいた奴も厄介だった……同時に、始末させてもらう」
ユートピア計画。あれを阻むのがたしか針だったはずだ。あのまま兵糧作戦をされるのはこちらとしても厄介だった。願ったりの相手だ。
刹那甲高い音と同時にその姿が消える。
「いきなり、終わってくれるなよ……メッセンジャーになってもらう必要があるからな」
闇を喰らう闇。その真髄を敵に回したと。そしてそれが、今更ながら本気で排除に動き出したと。
現れるのはそのネズミの頭上。能力で保護したその腕が振り下ろされる。頭上に一撃。終わるな、そう言いながらも直撃すれは致命足りえる1撃を。
■紅き羽搏ク針鼠 > さて
この針
貴殿は嫌というほど見覚えがあるはずだ
あの時貴殿を襲った卑劣な針
ユートピア計画を阻害した卑劣な針
そして
たった今さっき
"貴殿が壊滅させた感染集団を皆殺しにしていた針"
つまり
"そいつ"は大物中の大物である事を、意味する。
言葉は持たない。
だが
知恵は人を超える
その辺の雑魚蟻人は勿論
下手をすれば
四天王を名乗る蟻共よりも、だ
そして―――!!
まるで、針鼠は"消える"ように一撃を避けた。
否
"消えた"
針をばら撒いた後、
回避行動の後に
消えた
比喩ではなく
消えた
―――そう、こいつは姿を隠匿する術を持つ
ただし、隠匿中は低速になる
故に
回避の後に
姿を隠す
さあ、卑劣と罵るがいい
その間に殺してやるぞ…!!
■『虚無』 >
「……」
姿が消滅した。それに慌てるような男ではない。
とはいえ、厄介な相手である事は間違いない。自身の能力は決して探知型の能力ではない。つまり隠れられれば発見は不可能……だと思われている。
「卑怯、等とは言わないさ。俺達だって同じだ」
闇に隠れ、正義を謡い、結果傍観に徹し、最後の最後で現れて秩序を気取る。それが必要だと理解していながらも……その行為もまた卑怯者だ。
そんな自分がどうして姿を消した相手を罵れようか。
「だからこそ、引っ張り出してやる」
だが、自身はもう舞台に上がった。相手にも同じ土俵に立ってもらおう。
既に感染地帯。そこに生存者はいない。虚空を殴りつける。甲高い音と同時に空間がグニャリと曲がる。
そして吹き荒れる破壊。スラムの脆い建物であれば周囲を吹き飛ばし、もうもうと土煙が上がる。針は視認しにくくなるだろう。だが、このまま透明の相手をするよりは余程ましだ。
もし本当に姿が消えたわけではないのなら。もし隠れただけならばその土煙の揺らぎが奴の居場所を暴き出すだろう。
■紅き羽搏ク針鼠 > 怪異の思考を、開示しよう。
―――姿を…炙り出せるのか…?
まずい。
まずいまずいまずい。
一方的に有利な状態で
殴るという手が通じない
土煙の揺らぎが
針鼠の居場所を示す
―――だが、黙って暴かれて
"はいそうですか"
等と殴られるような
"良いヤツ"ではないのは、知っているだろう?
そうとも
"死ね!"が答えだ
一手
もし姿が見えたと飛び込んできたなら、貴殿に向けて
体中を穴だらけにしてやろうと迎撃する
まるでウニのような突出した針を伏せたトラップ
二手
打ち落としたと思った先ほどの針が
再び自律移動して背中を狙う
三手
天より注ぐ蹂躙の針
敢えて明確に狙いは付けない
土煙の中
見づらく
避け辛い
広範攻撃ッ!
罠、不意打ち、範囲攻撃―――
この一瞬で全て用意した―――
俺からの出題は3問ッッ!!
何問正解できるかな…!
さあ
■紅き羽搏ク針鼠 >
答え合わせの時間と行こうじゃないか。
■『虚無』 >
暴きだされたその姿を確認する。刹那、針鼠の予想の通り飛び込む。範囲攻撃では致命的な1撃は加えられないからだ。
そして……答え合わせといこう。その結論は……2問は正解。1問は部分点で加点。それが答えだ。
「そうだろうな」
無数に死体を見て来た。故に上から針を振らせる攻撃がある事は既にわかっていた。故に空からの攻撃に対しては備えは万全だ。踵落とし、奴の近くで足を振り上げる時に能力を発動する。
空に向けて伸びた足によって拒絶された空気は破壊力を伴う衝撃波となる。自身の上から迫る針に関してはこれにて封鎖。周囲には降りしきるだろうが自身には被弾はしない。
そして二つ目。トラップ。これに関してはなんとかなる。元々防御系の能力と偽る程度だ。殺意をもって打ち出された針ならばいざ知らず、迎撃するように発射され、加速が乗り切る前の針では自身を覆うように展開した能力を突破は出来ない。全身を貫くように作られた針は自身の体を貫通しない。
そして部分点。もうひとつの問題。これが彼にとっては最も難問だった。
「ッ!!」
後ろから飛来した針。これに関しては情報として会得する事が出来なかった部分。その上、奴をあぶりだす為に起こした土煙で視界も悪い。故に対策等取れない。
ここで逃げれば機を逃がす。既に攻撃体勢に入っている。ならば。
「ッアァァ!!」
体を貫かれる。それでも、強引に攻撃を進める。
振り上げたその足を一気に振り下ろす。ギロチンのように相手に向かって突き進む剛脚。針で進行を妨害されている為全開の威力とはいかないだろうが、それでも命中すればダメージは通るだろう。
回避は失敗、しかし強引に攻撃にこじつけた。故に不正解ながらも部分点で加点。その攻撃が通るか否か。
■紅き羽搏ク針鼠 > テメェはまず姿を見るなり飛び込んできた―――やるねぇ?
そして、空からの攻撃を防いだ。予想した―――そりゃ凄い
背後から来た針に体を貫かれながらも攻撃―――参ったねぇ
その威力、さっきの一撃で証明済み。致命―――カンペキだな!
カンペキな―――
■紅き羽搏ク針鼠 >
オオマヌケだよ。
■紅き羽搏ク針鼠 > 良いだろう!
その一撃!
甘んじて受け入れよう!
ただでは済まない!!
減衰しているとはいえ…
あまりにも大きなダメージ…ッッ!!
体が砕けそうな程だッ!!
だが
それ故に
脚を振り下ろしてくれている間ッッ!!
隙を晒してくれた背中にッッ!!
追加の"プレゼント"を与えよう!!
打ち落とした針は"死んでいない"!
再び浮かび上がり―――
また上から?否
下からだ。
這い上がるように貴様を串刺しにしようと
自律移動の向きを変え
襲うッッ!!!
さあ、死ね―――!!!!
このままブッ殺す…ッッ!!!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!!!!!!!!!
■『虚無』 >
「俺も、一部だけ受け入れてやる」
その1撃を受け入れられた。命中したとも言える。
同時、背中から受けたその棘から体に流れ込むのは前に感じた感覚。意思の強さは前よりも強固、抵抗しようと思えばできるのかもしれない。だが、あえてそれをしない。受け入れよう、感染を。
故に染まる。故に体に走る。強烈な殺害衝動。眼前のそれを殺害せんとする強固足る意思。
「でも、もらうのは一部だけだ」
浮き上がり、下から串刺しにしようと迫る針。それに対抗するように空へと上がる。
そちらの王は月を使っていた。そんな物、自分には似つかわしくない。雲に隠れ月は消える。
真っ暗な空、飛びあがる。そちらが月ならば、彼と彼女が希望の光。つまりは太陽か何かだろう。そして……自身は黒。月すらない暗闇だ。
土煙、そして月あかりすらないスラムの街。普通ならば見失う。だが背中に突き立った針から受け入れたそれは目よりも雄弁に語る。殺せ殺せ殺せ。死ね死ねと。
感染させる為じゃない。ただの殺害衝動。故に相手など関係ない。周囲に存在する全てに襲い掛からんとする暴走だ。
今度は逆、空を蹴り出し地面に向かう。下から浮かび上がった針にこちらから突っ込む。能力で保護しようとも体を引き裂かれる。あちこちを切り刻まれる。鮮血が噴き出す。だがまだ命は取らせない。ここで命を取らせる程度では王等届かない。
自分は最低でも王の一部を取る必要があるのだから。
「共有するんだったかお前らは。なら……宣戦布告だッ!!」
流星、そのまま空から襲い掛かる。
虎爪。相手を引き裂く指の形。その指先を保護した上で加速を乗せたそれで。相手を切り裂かんと襲い掛かる。
■紅き羽搏ク針鼠 > ―――こいつ!
暗闇に月を隠して、殺害欲を利用していやがる―――!!!
まだ、冷静な口ぶりの癖に…!!
こいつは刺さったうえで行動してくるのか!
しかも、しかもだッッ!!!
針を突き刺されながら
それでも向かってくる―――!?
ま、まずい、逃げ…!!
"隠れ"…!!
―――そうだ。
隠れよう。
隠れて針まみれになり身を守ろう。
最悪の防御行動。
卑怯というがいい。
嗤うがいい。
これは"生存戦略"。
土煙の中で隠れても揺らぎから見つかるだろう。
だが
"最後の足掻き"だ。
さあ、引き裂け。
引き裂くがいい。
その時貴様は無事で済むかな?
―――じゃあ、最終問題かもしれんな。
その"宣戦布告"
この"卑劣な一手"の前に
"完成"させてみろッッ!!!
■紅き羽搏ク針鼠 >
貴様が如何ほど脅威かを"王"へと魅せろッッ!!!
■『虚無』 >
全身血濡れだ。無事な場所を探す方が難しいだろう。
その上、自身が攻撃しようとする相手は針に包まれている。
攻撃など冗談じゃない。このまま攻撃をすれば間違いなく腕はズタボロだ。今なら間に合う、攻撃をせずに引き返すべきだ。普通の状態ならば。
だが今は違う。暴走、殺害衝動によって狂った状態だ。そんな理性など斬り捨てている。ある意味で冷酷な機械といえる。自身を顧みず、ただただ相手を殺害する。そんな状態に。
「この……程度……!!」
針に腕を貫かれる。
それでもマシだ。仲間を殺され、無力を味わった彼女より。
それでもマシだ。理不尽に家族を、仲間を奪われたスラムの人達より。
何も出来ないまま拡大する被害を見るよりよほど……マシだ!!
「っああああ!!」
腕を強引にねじ込む。不正解も良いところ。であればこれは不正加点と言えるだろうか。
殺意と気合。それで無理やりに攻撃を続行する。片腕は引き裂かれ、ボロボロになり、針で留められる。だが言い換えれば相手の居場所を確実に捕らえている。この針の先に奴はいる。
反対の手を振り上げる。自身が巻き込まれる事もいとわない。
至近距離、衝撃波。自身諸共吹き飛ばそうと言わんほどに強烈な破壊を引き起こす。
吹き飛ばされる自分。だが、防御系の異能を持っている自分はまだなんとか耐えきる。何度も地面を跳ね、まともに機能しない片腕では受け身も取れず、ボロボロになりながらもなんとか地面に立つ。
相手はどうだろうか。
■紅き羽搏ク針鼠 > なんという…
なんという自己犠牲的暴力ッッ!!!
こいつは自分から"大量の針の中に腕を突っ込んだ"んだ。
マヌケだ。
オオマヌケだ。
だが。
ハハハハ…
そんなにがっつかれて、
避けられると思うか?
普通、見逃すだろ?
なんで、攻撃してくんだよ…
なんで、ひるまないんだよ…
なんで、攻撃を続けるんだ…
ああ、不正解だ。不正解だとも。
そいつは不正解なのに。
……合格だ。
針鼠は
衝撃波に飲み込まれて
至近距離の猛撃の前に、伏した。
紅き色が抜けた。
羽が潰えた。
もう立ち上がることはなく
死んだ事を示すように、
あれだけ猛威を振るっていた"全ての針"が消滅した。
―――見事。
貴様の勝ち、だ…。
ご案内:「スラム」から紅き羽搏ク針鼠さんが去りました。
■『虚無』 >
「ハッ……ハッ……ハッ……!」
意思の力である程度感染は制御できる。それも前の状態で把握した。とはいえ今回は意図的に受け入れた所もある。前よりも進行は早いだろう。
だが、メリットもある。より攻撃的に動ける。索敵もしやすい。それに殺意により攻撃能力も上がる。
とはいえ、やはりデメリットは日常生活に多大な影響がでる。今はまだ抑え込める。だがこれが進めば。
「……今更か」
どうせもう自身は血に染まり切った存在。今更だろう。
針が消える。突き刺さっていた針が消えれば血が噴き出す。フラリとよろめく。
「……まだ死ぬには早いな」
なんとか歩き出す。安全地帯、闇医者がいくつか隣の区画にあったはずだ。そこまではなんとかたどり着こう。
なんとかギリギリでたどり着いた彼は闇医者から再び遅延の薬を受け取る。とは言え前よりも更に深い感染状態である今、効果がどれほど持つかは未知数だ。
ご案内:「スラム」から『虚無』さんが去りました。